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株式会社阿部長商店

業種
食品製造業
導入規模
301〜1,000名
利用目的
ペーパーレス、業務効率化、従業員の負担軽減

事業拡大に伴い煩雑化し続ける管理業務の課題をカミナシで解決

約100時間 / 月の業務時間を削減し、従業員のデジタル化への意識改革にも成功

宮城県気仙沼市を拠点に水産事業と観光事業を展開する株式会社阿部長商店の大船渡食品は、事業拡大に伴い煩雑化していた管理業務の負担を軽減するためカミナシを導入。衛生管理や施設管理など、幅広い業務で紙の帳票をデジタル化し、約100時間/月の業務時間を削減した。さらに、カミナシは現場の従業員に深く根付いていた「管理業務には紙を使う」という意識の変革にも寄与。デジタルツールを活用した業務効率化を推進するうえでの原動力にもなっている。

導入前の課題

  • 事業拡大に伴いより高度な品質管理が求められ、管理業務が煩雑化していた
  • 紙での品質管理により管理者の業務負荷が高い状態であった
  • 根深く残る「管理には紙を使う」という意識が業務改革を阻害していた

導入後の効果

  • 紙の帳票が大幅に削減され、施設管理では紙の帳票がゼロに
  • 100時間/月の業務時間が削減され、付加価値向上に繋がる業務の時間が増加
  • カミナシがデジタル化への意識を醸成し、業務変革を後押し

「水産事業」と「観光事業」で
気仙沼の水産資源を世界に発信する阿部長商店

宮城県気仙沼市に本拠を置く、阿部長商店は「水産事業」と「観光事業」の2事業を柱に、三陸の恵まれた水産資源を国内外に届けている。創業は1961年。気仙沼港の鮮魚仲買業としてスタートし、1971年には三陸の美しい景観や港町文化を発信するため観光事業を開始。

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現在では、気仙沼市を中心に5ヶ所の工場と6ヶ所の観光施設を運営する。2003年には皮目に炙りを加えることで香ばしさと新鮮さを味わえる「あぶりさんま」が、農林水産祭で最高賞の「天皇杯」を受賞するなど、商品の美味しさも折り紙付きだ。

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紙の帳票による品質管理業務により、負担が増大。
人手不足の中でも業務効率化を進める必要があった

「水産」と「観光」を掛け合わせることで、新たな価値を生み出す阿部長商店。売上高は2023年度に約150億円にのぼるなど、右肩上がりの成長が続いている。しかし、その一方で、直面する課題もあった。その一つがデジタル化の遅れだ。

食品の製造工場やホテル、直営販売店など、幅広い施設を運営する阿部長商店だが、その現場にはアナログな業務が根強く残っていた。特に水産加工食品を製造する大船渡食品では、品質管理などの管理業務のほぼすべてが紙の帳票で行われており、それに起因する問題が少なくなかった。紙の帳票にまつわる課題について、品質管理部の齋藤圭祐氏は説明する。

「当社は水産事業のなかでも鮮魚を扱う割合が多かったのですが、中食のニーズが高まった背景により煮魚や揚げ物などの二次加工品の需要が高まっていました。鮮魚の取り扱い時と比較すると、加工品は管理しなければならない項目が増える傾向にあり、そのたびに紙の帳票が追加され、その記載や管理に多くの手間が割かれるようになりました。現場の従業員は一日に何枚もの紙の帳票を記入しなければいけませんし、管理者は記入漏れや誤記、逸脱などがないか細かくチェックしなければならず、大きな負担がかかっていました」(齋藤氏)

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製造業全体で人手不足が叫ばれて久しい中、数多くの工場を運営する阿部長商店も例外ではない。紙の帳票の利用は、従業員のリソースを奪う要因になっていた。人手不足という状況において、デジタル化による業務効率化は避けられない状況にあった。

工場長を巻き込んだシステム展開や
熱心なレクチャーでカミナシの普及を推進

こうしたなかで、大船渡食品はカミナシを導入することに決めた。カミナシの第一印象について、導入を主導した経営管理部 部長の菅原圭介氏は振り返る。

「管理業務をデジタル化するツールを探すなかで、カミナシに出会いました。第一印象は、正直なことを言えば『どこにでもありそうな、ありふれたツールだな』といった感じでした(笑)。競合する他のツールと、それほど違いがあるようには思えなかったんです。ただ、カミナシの機能について調べていくうちに『これは他とは違うかも…』と印象が変わっていったのを覚えています。カミナシは、多言語翻訳機能やデータ活用の機能が備わっていて、単に紙の帳票をデジタル化するだけのツールではないなと。どの機能を、どのように使えば業務が変革できるのか具体的にイメージでき、それが導入の後押しになりました」(菅原氏)

こうしてカミナシを選定した大船渡食品だったが、導入にあたっては苦労も少なくなかった。特に、大きな壁となったのが、現場の「管理には紙を使うもの」という固定概念だ。現場の従業員たちはカミナシの導入に反対はしなかったものの、長年、紙の帳票による管理業務が続いていたこともあり、「管理には紙を使うもの」という意識は根強かった。

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そうした意識を変容させるため、菅原氏ら導入担当者はさまざまな工夫を凝らした。具体的には、「毎朝の朝礼で工場長がカミナシの利用を促す」「操作方法などをレクチャーする説明会を少人数で複数回実施する」「作成したひな形をユーザの反応を見ながらブラッシュアップする」など、ソフトとハードの両面でカミナシの定着を図っていった。「作業中の手袋をした指でタブレットを操作するのは難しい」という観点から、タブレットにタッチペンを導入するなどの細かい改善も施した。こうしたなかで、カミナシは現場の従業員たちの間に馴染んでいき、次第に導入効果を発揮するようになる。

施設管理では紙の帳票がゼロに。
工場全体では約100時間/月の業務時間を削減

現在、大船渡食品では品質管理や施設管理の業務にカミナシが活用されている。加工食品部で施設管理を担当する太田代歩氏は、カミナシの導入により日常の業務が大きく変化したと語る。

「私が担当している施設管理に限ると、100枚/月の紙の帳票がデジタル化され、現在利用している紙の帳票はゼロです。つまり、管理業務のペーパーレス化が実現し、印刷や保管などに費やされていた手間も不要になっています。これらの効果を試算したところ、施設管理だけで20時間/月の業務が削減されていることがわかりました。実際に、私自身もカミナシの導入効果は実感しています。以前は勤務中に紙の帳票を印刷するために工場から事務所に戻らなくてはいけませんでしたが、工場は厳格に衛生管理を行なっているので、一度外に出るとまた消毒作業を一からやり直さなくてはいけません。こうした工場からの出入りを削減できたことは、日々の業務の流れの中で大きな手間の削減になっています」(太田代氏)

iPadを使って殺菌日報を記入する様子

カミナシの導入は、品質管理や施設管理以外の領域にも広がっており、各種機能の活用を通じた効率化が実現している。その一つが転記ミス防止だ。物品に記載されたロットナンバーは記載箇所や記載方法がそれぞれ異なるため、転記ミスが絶えなかった。

しかし、現在ではカミナシの画像機能を活用し、タブレットでロットナンバー部分を撮影し、画像をひな形に添付する形で代替しているため、転記ミスや誤記などのリスクはほぼゼロになっている。こうした活用を通じて、大船渡食品は幅広い部門で業務効率化を実現。工場全体では100時間/月の業務時間を削減した。これにより、同社では従来は従業員の経験則で行っていた業務のマニュアル作成や商品の製造方法や仕様の見直しなど、付加価値向上に繋がる業務の時間が増加している。

画像を使って誤りのないように記録を実施

さらに注目すべきは、カミナシの導入が従業員の意識変革にも貢献していることだ。従来、現場に根強かった「管理には紙を使うもの」という意識は、カミナシの導入を境に大きく変化した。デジタル化による業務効率化の効果を体感したことで、従業員たちは業務改善に前向きに取り組むようになったのだ。こうした変化は、今後さらなるデジタル化を推進するうえで大きな推進力になっている。

カミナシ活用のポイントは「機能への深い理解」。
各種機能に習熟し、効率的な導入を

カミナシの導入を通じて、業務効率化に加え、従業員のデジタル化への意識改革も実現した大船渡食品。今後は、カミナシの導入範囲をさらに拡大し、資材管理や棚卸し、人事業務などのデジタル化を図りたいという。その先に目指すのは、社内の作業状況などが一目で把握できる「見える化」だ。そのため、これからは紙の帳票のデジタル化だけでなく、集計・報告機能の活用も進めていく。

今回の導入を振り返って、齋藤氏は「カミナシ導入のポイントは『各種機能についていち早く理解すること』だと思います」と総括する。円滑に導入を進めるには、まずツールが持つ機能について理解することが重要だという。

「これは私自身の反省も含むのですが、まずは機能を理解しないと『この帳票にはこの機能が使えるな』や『この機能を使えばこの作業は削減できるのでは』といったアイデアが浮かびにくいです。そのため、今後、カミナシを導入する企業の方には、まずは機能について勉強することをお勧めします。機能について熟知すれば、プロジェクトの工程やデジタル化する帳票の優先順位をうまく立てられるはずですし、より効率的な導入を実現できると思います」(齋藤氏)

デジタル化への扉を開いた阿部長商店は、今後さらにデジタルツールの活用を加速していく方針だ。人手不足や付加価値向上など、同社の前に立ちはだかる問題を乗り越える原動力として、カミナシが重要な役割を果たしていた。

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