── まずは、株式会社ボローニャFC本社(以下、FC本社)の藤井様にお伺いします。ボローニャFC本社の事業内容を教えてください。
藤井様:FC本社は、東京都を拠点に、ボローニャ デニッシュ食パンを始めとした各種パンを商品展開する企業です。全国の百貨店やショッピングモールなどを通じて、こだわりのパンをお届けしています。また、全国9のFC加盟企業を統括するFC事業も展開しており、各社の事業推進などを行っています。
── 今回、カミナシを導入されたボローニャマックス株式会社(以下、ボローニャマックス)もFC加盟企業の一つですか?
藤井様:はい、おっしゃる通りです。ボローニャマックスは、佐賀県に所在するFC加盟企業です。中国・四国・九州エリアにおける各種パンの販売事業や、自社で運営する九州工場での製造事業を展開しています。九州工場は従業員数が約40名で、全国のFC加盟企業の工場のなかでも比較的、規模が大きい拠点です。
── カミナシ導入前には、どのような課題を抱えていたのでしょうか。
藤井様:私が所属する品質管理部は、商品はもちろんFC加盟企業も含めた品質管理全般を担う部署です。これまでも工場の現地視察などを通じて、品質や安全の維持向上に取り組んできました。
そうしたなかで、より効率的に各工場を管理できる仕組みの構築を目指していたのですが、その取り組みを阻害していたのが紙の帳票でした。
例えば、お客様から品質に関するお問い合わせがあった場合、品質管理部は各工場の衛生や製造に関する記録を確認します。このとき、記録が紙の帳票で管理されていると、該当する記録を探し出すまでに時間がかかるほか、その共有にもFAXやメールを利用しなければなりません。
品質に関するお問い合わせには、緊急性が高いものも含まれます。そうしたケースに早急に対応するためにも、紙の帳票をデジタル化し、各工場の記録を即座に閲覧できる仕組みが必要でした。
さらに、2021年6月からはHACCPが完全制度化され、衛生管理計画に基づいた記録の作成が求められます。これにも紙の帳票を用いれば、各工場はさらに紙であふれ返ることが予想されました。そこで、品質管理部が主導してシステムを導入し、紙の帳票のデジタル化を目指しました。
── システムを選定される際には、他社の製品とも比較検討されたのでしょうか。
藤井様:システムの導入を担当したのは、私の前任者ですが、3〜4社の製品で比較検討したと聞いています。そのなかでもカミナシは、他社の製品と比べて、価格が約1/3程度と安価で弊社には最適だったそうです。
また、クラウドサービスである点も重要でした、クラウドサービスならば、遠隔地の工場の記録を即座に閲覧できるため、当初の課題の解決も望めました。
── カミナシの導入について、FC加盟企業からの反応はいかがでしたか。FC加盟企業への導入は、社内における導入とは手順が異なるのではないでしょうか。
藤井様:たしかに、FC加盟企業とは組織体が別のため、導入をお願いする形になります。前任者も当初は導入への抵抗を見越していたようです。しかし、1社ずつ導入の必要性を説明していくと、各社ともそれほどの拒否反応はなく、前向きに検討をしてくださったとのことでした。
そこで、まずは、FC本社代表の松尾がオーナーを兼任する、ボローニャマックスの九州工場にカミナシを導入して、そこから徐々に全国の工場に導入を広げていく計画を立てました。
── カミナシの導入後、どのような効果が得られていますか。
藤井様:東京のFC本社にいながら、九州工場の記録を閲覧可能になったことに、大きな効果を感じています。例えば、HACCP対応に必須の冷蔵庫・冷蔵庫の温度記録や、異物混入防止のための金属探知機の実施記録は、カミナシ上で閲覧できています。
こうした変化により、従来は1工場につき年間5~10回は必要だった現地視察が、半分程度に削減できると見込んでいます。現地視察にかかる費用や時間を考慮すれば、十分な削減効果ではないでしょうか。
── 今後のカミナシの活用における展望をお聞かせください。
藤井様:まずは、今年6月の完全制度化に向けて、九州工場でHACCP対応を推進していきます。さらに、その後には、多拠点への展開を目指します。
カミナシはクラウドサービスのため、タブレットなどの端末を用意すれば、すぐに多拠点展開できる点が非常に便利ですね。直近では、福島、横浜、千葉のFC加盟企業への導入を予定しています。
── 藤井様、ありがとうございました!
続いて、カミナシを工場に導入し、現在、HACCP対応を進めているボローニャマックスの九州工場に取材を実施。
同社常務取締役の松尾様に、カミナシ活用の状況や導入後の効果などについてお伺いしました。
── 現在、カミナシをどのように活用していらっしゃいますか。
松尾様:現在、九州工場は、業界団体が作成した手引書に沿って、HACCP対応を進めています。
その手引書のなかには、小規模事業者が行うべき衛生管理の項目が定められているのですが、その項目の記録にカミナシを活用しています。具体的には、従業員が工場に入室する際の衛生チェック記録や、冷蔵庫・冷凍庫の温度記録、金属探知機の実施記録などです。
ただし、一気にすべての項目の記録をデジタル化してしまうと、操作に慣れていない従業員の作業効率を低下させるおそれもあるので、使い慣れた紙の帳票と併用しながら、徐々に導入を進めています。
── そうした活用により、得られた効果はありますか。
松尾様:まず、工場の衛生レベルが確実に向上しています。
以前の衛生チェックに関する帳票は、◯を付けるだけの様式だったため、ながれ作業による記録も可能でした。しかし、現在は、カミナシ上で一つひとつの項目を確認し、記録しなければならないため、より入念な衛生チェックが行われるようになりました。
さらに、紙の帳票の削減により、工場内でボールペンなどを使用する機会が減り、食品への異物混入のリスクも低減されています。
また、過去の記録を検索しやすくなったもの効果の一つです。
例えば、取引先企業が工場の視察に来られたときには、しばしば過去の記録の開示が求められます。こうしたときに、帳票が保管されている倉庫から該当する記録を探し出すのは非常に手間ですが、カミナシを導入していれば、すぐに記録を検索して開示することが可能です。
カミナシは、取引先企業に安全・安心を証明する役割も果たしてくれています。
そのほか、災害時に過去の記録などを保全できるようになったのも、大きな効果です。
九州工場の周辺は、大雨などによる水害が発生しやすい地域です。幸いにも、これまで九州工場にはそれほど大きな被害はありませんが、今後、大規模な被害をこうむることもあり得ます。
そうした際に、オンプレミスで運用しているシステムの場合は、そのなかに保存されたデータは失われてしまう可能性が高いです。その点、カミナシはクラウドサービスのため、災害時のデータ消失のリスクにも備えることができます。
── 今後のカミナシ活用の展望をお聞かせください。
松尾様:今後は、今年6月のHACCP完全義務化に向けて、紙の帳票のデジタル化をさらに推進していきます。直近では、原材料受け入れ時のチェック記録や、パンの生地を仕込む際の衛生記録のデジタル化を予定しています。そして、最終的にはHACCPに関するほぼすべての記録をカミナシで行うつもりです。
また、カミナシを活用して、業務中の「探す時間」を可能な限り削減したいとも考えています。
往々にして、ひとは、物品やデータを探すことに多くの時間を費やしています。カミナシは、HACCP対応以外にも様々な紙の帳票をデジタル化し、その記録を容易に検索可能にするため、「探す時間」の削減にも大きく貢献すると期待しています。
── 最後に、今後のカミナシに期待することを教えてください。
松尾様:将来的には、音声認識機能を実装してほしいです。というのも、例えば、パンの生地は一定の時間内にこね上げる必要があるため、その最中に従業員はタブレットを操作することができません。パン類を製造する工場には、こうしたケースが数多くあるため、音声で入力ができたり、帳票が呼び出せたりする機能を実装してくれると非常に嬉しいですね。
── 松尾様、本日はありがとうございました!