株式会社グリーンサービス
- 業種
- 医薬品等運送業、倉庫業
- 導入規模
- 〜500名
- 利用目的
- 車両等点検、業務標準化、拠点管理
ドライバーと車両の安全を保証し営業停止リスクを防ぐ。 18営業所の車両点検をカミナシでペーパーレス化
デジタル化推進のカギは「作って終わりではなく、現場の声を聞いてカイゼンすること」
本社を愛知県名古屋市に置き、東海地方を中心に5県に拠点をもつ株式会社グリーンサービス。地域に根ざした運送が特徴で、品質や安全性に最大限配慮し、尊厳性の高い医薬品の運送を主に実施。そのノウハウを生かし、他のジャンルの運送も引き受けている。さらに最近では、東海エリアで災害対策や見守り支援など地域に根づいた企業にしかできない取り組みや最先端の技術を用いた配送にも積極的に取り組んでいる。そんな物流・運輸業において、車両の日常点検や3ヶ月毎の法令点検はドライバーの安全を守ることと日々の事業を安全に遂行することにおいて必須業務となっている。企業の方針や業務改善の視点から、その点検や承認作業をペーパーレス化する動きになり、カミナシを導入。導入時の勉強会の実施や紙との併用で現場メンバーの声を改善する動きなどもあり、わずか2ヶ月で完全ペーパーレス化へ。その背景を、代表取締役社長の榊原氏と現場で旗振り役となって尽力した池谷氏、三島営業所長の鈴木氏に話を伺った。
導入前の課題
- 車両不備が原因の事故で、営業停止になる不安があった
- 18ある営業所の所長が車両ごとに紙で点検の承認業務を行っており、煩雑になっていた
- ドライバーによって点検基準が様々であり、業務の標準化ができていなかった
導入後の効果
- リアルタイムで車両の状況がわかり、確実に点検されている安心感に繋がるように
- 運行管理者の承認作業はiPadのみで実施、提出がない車両がその場にいなくてもすぐにわかるように
- トラック協会の写真を用いたマニュアルを作成し、点検基準を統一し業務の標準化へ
直感で活用できると思った。
「カミナシの営業はできる人だな」
医薬品卸売業の中北薬品の子会社として、尊厳性の高い医薬品の配送をおこなう株式会社グリーンサービス。カミナシを導入するキッカケは、「医療業界全体でのDX化の波や中北薬品にDX本部が設立されたことがあった」と、代表取締役社長の榊原 正道氏は当時を振り返る。
「カミナシを見た時に、直感で活用のイメージが湧いた。様々な業務がある中で、ペーパーレス化も必要だと感じていて、実際にカミナシの提案を聞いてみると『カミナシの営業はできる人だな』と思った」
榊原氏は「カミナシの製品ももちろんだが、当社の業務に即した提案資料や細やかなレスポンスなど、カミナシの営業担当と一緒に仕事をしてみたいと思ったことも惹かれたポイントだった」と答えた。グリーンサービスでは、ペーパーレス化以外の活用方法(作業手順書など)もあるのではないかと可能性を感じ、導入を決めた。
またオフライン機能(Wi-Fi環境がなくても、オフライン環境で点検記録をつけられる機能)があったことも導入時のポイントになった。配送や倉庫などの環境によってはWi-Fi環境を整えていないこともあるので、オフライン機能は活用を進める上で重要な機能であった。
医薬品の運送は温度や衝撃に注意が必要。
まずはドライバーの始終業点検からペーパーレス化を開始
グリーンサービスでは、尊厳性の高い輸送物である医薬品を運ぶ。倉庫内から指定の医薬品をピックアップし、間違いがないように従業員が細心の注意を払い、コンテナに詰め、慎重に配送する。その配送を担当するドライバーがおこなう車両の始終業点検から、カミナシの導入を進めた。
現在18箇所の営業所で利用されている車両点検をすべてカミナシで実施しており、導入後1年で紙を使用していた際にかかっていた年間50〜60万円のコスト削減につながっている。
具体的には、出発前と帰庫後に各ドライバーがおこなっている車両の点検を紙形式の報告書からカミナシでの記録へ、その後運行管理者の承認作業までをカミナシで実施。さらにはドライバー教育の観点でもカミナシの取り入れを進めている。
確実に点検がされているという安心感が
経営者視点で嬉しいポイント
経営者視点でカミナシを導入することのメリットは「日常点検の漏れが格段に減ったことは、目に見える成果として感じている」と榊原氏は言う。
紙ベースの記録では運送業のような離れた拠点をもつ場合には営業所ごとの点検状況の把握を短期間で実施することが難しかったが、デジタル化をすることによって誰がいつ見ても日常点検業務が完了しているのかどうか、また異常がないかが即時でわかるようになっている。万が一、事故が起こった際に記録が取れていなかったり、記録されていても対応がなされていなかったりした場合は、車両ごとに1ヶ月や2ヶ月の営業停止処分にも繋がる可能性もある。自社の車両に不備がないか、ドライバーの体調管理がきちんとされているかが、一目瞭然なのは、経営者として安心材料に繋がる。
カミナシ導入前は、点検書類の管理が煩雑な状況で
リアルタイムでは安全性がわかりづらかった
運送業では、ドライバーは毎日出発前にタイヤの擦れやブレーキの効き具合などのチェックを実施、管理者とともに車両の不備がないかを確認してから配送業務を開始する。帰庫後も同様のチェックをおこなう必要がある。
グリーンサービスでは、法律で定められている日常点検や三ヶ月に一度の定期点検は実施できていたが、どの車両に不備があるか、注意して見ておく必要がある車両がどれに当たるのかをリアルタイムに把握することが難しい状態であった。
参考: 道路運送車両法 第四章 道路運送車両の点検及び整備(第四十七条―第五十七条の二)|e-GOV 法令検索
三島営業所の所長で、運行管理業務をおこなう鈴木氏は、カミナシ導入後について「出発前と帰庫後に点検した結果をカミナシに入力するので、リアルタイムでレポートにまとめて見れるのが良いですね。毎日入力しなければいけないという意識が各ドライバーに根付いたのがよかったと思います」と振り返る。
3ヶ月に一回の法令点検はあるものの、日々リアルタイムで、タイヤのすり減りや扉の閉まり、ブレーキランプなどの細かい点でも報告があがってくるのは、運行管理者として安心だ。
恩を感じている榊原社長からの導入依頼
わからないことはサポートへ問い合わせ、設定を完了
池谷氏は自身の体調不良から一時期退職を考えたこともあったが、榊原社長から「まだ池谷にはやってほしいことがある」と言われ、カミナシ導入推進プロジェクトの旗振り役に任命された。
導入時は、目的と推進体制、スケジュール、対象帳票の4つを明らかにして進めていった。まずは池谷氏が導入しやすい営業所や特殊車両(4t以上の車両)を保有する営業所のメンバーとWEBミーティングを実施。その後は18の営業所が集まる部署を超えた会議で直接説明し、膝を突き合わせて話をしながら導入を推進した。
「仕事の流れはわかっているので、あとはカミナシの方に使い方を教えてもらって自分がシステムを理解できれば、形にできると思っていた」と池谷氏は語る。池谷氏は、何かわからないことがあれば、すぐに電話でサポートに連絡をして、設定を完了させていた。
現場のメンバーへの浸透はわずか1〜2ヶ月。
紙との併用で作業理解を深めた
カミナシを活用する現場のメンバーはどのような様子だったか。
「現場のメンバーを管理している私からすると、「『苦労しそうだな』とか『素直に受け入れてくれるかな』という不安は正直ありました」と鈴木氏は話す。グリーンサービスの従業員には、パソコン作業が発生するのを理由に前職を退職した方も居たという。そんな不安があるものの、鈴木氏は「目の前に池谷さんがいてくれたので、安心感はありましたね」と笑顔で答えた。
導入時、まずは紙とカミナシの併用で1ヶ月の試験運用、その後カミナシのみの本番運用と段階的に進めていった。ひな型作成でのコツを池谷氏は
① 紙帳票の項目をベースとしてひな型を作成する
② 一方で、紙の内容に囚われすぎずにあるべき論で項目を見直す
③作業の流れに合わせて順番を並び替える
の3点だと話す。
「作って終わりではなく、現場の従業員から意見や質問があれば、現場の声を聞いてカイゼンすること」と池谷氏は導入プロジェクトの要諦について振り返る。
全営業所展開のためには、社長の尽力と日々の地道なサポートも必要不可欠であった。社長から全体へメッセージを出してもらったり、毎日ダッシュボードを見て、できていない営業所へ連絡をしたりの繰り返しを形にしていくことがグリーンサービスのカミナシ導入に繋がった。
カミナシの導入で業務の見直しと教育面での活用も
現在、車両点検でのカミナシ活用が順調に進んでいるグリーンサービスだが、今後はさらなる活用も考えている。一つは既存業務の見直し、もう一つが教育面での活用だ。実際、車両点検業務をカミナシに移行した際に、法律で定められていない、軽自動車の日常点検業務を週1回の点検頻度(週次点検)に変更した。日常点検自体は、そこまで時間は取られないが、小さな積み重ねが大きくなることをわかっているからの判断だった。
教育面での取り組みは、まだ着想段階ではあるものの、医薬品の適正流通(GDP:Good Distribution Practice)のeラーニングもカミナシで実施しようと考えている。今までは、運行管理者の鈴木氏が、各ドライバーに説明する機会を設けていたが、それもカミナシ上で学べるようにするために、動き出している。
現在の点検業務でもトラック協会が提供している資料を使って、マニュアルを作り、写真でわかりやすく確認ができるようにしている。
デジタル化のコツは
「今の作業の流れを変えずに、まずは自分で作ってみる」
業務のデジタル化を検討する上で必要なことを、池谷氏は「まずは今の作業の流れを変えないで、カミナシ上で同じ帳票や点検表を作ってみること。従業員には、『基本的に紙でやっていたことと同じことをiPadでやるだけですよ』と伝えるのがいいのではないか」と話す。
グリーンサービスが車両点検で導入した際も基本的には、紙でのレ点チェックが、iPadに置き換わっただけだった。「現場のメンバーから見て、同じ作業が紙からiPadに移っただけと思えるような形で始められるのが理想の状態。そこから徐々にみんなのアイデアを取り入れて、使いやすい形にカスタマイズしていくのがいいんだと思う」と池谷氏はデジタル化のポイントを話す。
積極的に新しい取り組みを実施し、地域に根ざした配送を目指す
最後にグリーンサービスの今後の展望を聞いてみた。運送業者として大小問わず競合が多い中、「大手の宅配業者が今後医薬品配送に参入してくるが、地域との連携を組み確実に商品を届ける体制づくりを目指す」のが我々の使命であると榊原社長は話す。
現在では、東海エリアで100以上の連携協定を組んでいて、災害対策や見守り支援など地域に根づいた企業にしかできない取り組みも進めている。
また最新の技術を用いた取り組みも積極的に行っている。2023年12月には静岡県賀茂郡西伊豆町にて医薬品のドローン配送の実証実験をおこなった。CO2排出量の削減や人口減少・高齢化に伴う労働力不足、地域の物流網維持、防災・減災等の課題解決を図るためにおこなった実験である。
積極的に新しいチャレンジをしながら、地域に根ざした配送を目指すグリーンサービスに今後も注目だ。
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