株式会社ほしゆう
- 業種
- 印刷・パッケージ
- 導入規模
- 〜 150名
- 利用目的
- 製造現場の業務効率化、全社DX推進
製造部のデジタル化の一歩目にカミナシを導入。毎月3,000枚以上の帳票がゼロに
印刷・パッケージ業界で先進的な製造の電子化は取引先からも高評価
ものづくりの町として日本の製造業を支える新潟県燕市に本拠をおき、国内有数の設備と技術力でパッケージやPOPのデザイン・提案から製造までを行う株式会社ほしゆうは、全社的なデジタル化を進める中で、製造現場のこれまでの働き方を改革すべく「カミナシ レポート」を導入。取引先からの問い合わせの早期対応の実現や信頼向上だけでなく、従業員の意識醸成にもつながっている。
導入前の課題
- 毎月使用する紙の帳票は3,000枚以上になり、確認や管理・保管が手間になっていた
- 取引先から問い合わせがあった際に、指定の帳票を倉庫や段ボールから探す必要があり、早期対応が難しかった
- 記録の抜け漏れがあり、内容の不備や信憑性に不安があった
導入後の効果
- 3,000枚の紙帳票の準備と保管スペースの確保が不要になった
- 取引先からの問い合わせに対して、すぐに該当の帳票が提出できるように
- 一つ一つの作業を丁寧に確認・記録する意識が従業員の中で醸成された
「ハコは プロダクトである」をモットーに
こだわりの素材・技術でデザインされたパッケージを作るほしゆう
ものづくりの町、新潟県燕三条に軍手を販売する商店として1957年に創業した株式会社ほしゆう(以下、ほしゆう)。流通用の段ボールの取り扱いを始めたことをきっかけに、現在では著名なブランドやメーカーのパッケージの企画・設計・デザインから、印刷・製造までを一気通貫で行っている。国内有数の設備と技術力を持ち、パッケージに貼るシールや梱包資材、店頭に掲示するPOPやディスプレイまで幅広く対応することで様々な取引先の要望に応えている。
ほしゆうの強みは「ハコは プロダクトである」という企業に根付くDNAだ。一昔前は商品をまとめて梱包する、流通のためのツールの一つに過ぎなかった。しかし小売のセルフサービス化やオンラインショッピングなどの流通のシステム化を見越し、顧客が一番最初に手に取る「ハコ」の重要性に着眼していたほしゆうでは、「ハコを開けるまでが顧客の購買体験」と定義し、取引先に企画・設計を提案していた。特にコロナ禍により、オンラインショッピングが一般的になったことで、パッケージングする梱包材を含めた製品のブランド化をする企業が増加。現在では、規模・業種を問わずさまざまな取引先からの依頼が後を立たない。使用する素材やパッケージの設計にもこだわり、取引先の要望と最終購買者の感動に応える「ハコ」を提案している。
山積みの帳票から書類を探すため、問い合わせへの早期対応が難しかった
ほしゆうが製造し納品するパッケージは、最終消費者に届くまでに1〜2年ほど掛かることもあるため、製造の際に記録した帳票は1〜2年間、保管する必要がある。製造する製品数も1日に20〜30になるため、製造完了後の帳票は段ボールに入れて倉庫などに保管をしている。そのため、取引先から問い合わせがあった際は、すぐに該当の帳票が探し出せず、取引先に回答を待ってもらうことが課題だと感じていた。
カミナシ導入以前は製造工程(製函・抜・印刷)ごとに各課の課長が紙の帳票をファイリングして管理していた。製造工程に関する問い合わせがあった場合は、品質保証部が一時対応をして、製造各課の課長へ該当の製品名と対象期間を伝え、帳票の提出を依頼。そして現場を管理する課長が保管している段ボールの中から対象の帳票を探し、品質保証部へ提出していた。
問題のある工程が明確であれば、該当する課の帳票のみを確認すればいいが、もし該当の工程がわからない場合は、3つの課それぞれで探さなければいけない。カミナシ レポート導入前の課題を専務取締役 兼 経営企画部 部長 兼 品質保証部 部長 海老塚氏と品質保証部 品質管理課 課長代理 小山氏は次のように話す。
「お取引先さまからの問い合わせは、初期対応がとても重要です。初期対応が遅れてしまうと信用問題になるので、いかに早く問い合わせに対応できるかが勝負だと思っています。しかし、これまでは倉庫で保管している段ボールの中にある山積みの帳票から探し出さなくてはいけなかったため、早期対応が難しい状況でした」(海老塚氏)
「問い合わせの内容から問題の原因が明らかな場合には、対象の課が明確なのですぐに該当の紙帳票が見つけられますが、全ての工程を確認しなければわからない場合は、半日ほど掛けて該当の帳票を探し出していました」(小山氏)
「使い方次第でカミナシがキラーアイテムになる」
製造部門のデジタル化の一歩目として帳票の電子化を決意
ほしゆうでは2021年から全社でデジタル化を推進。製造部の従業員への社用スマートフォンの貸与、営業部の経費精算のオンライン化など、様々な部門で取り組みを進めてきた。
「当社では数年前から積極的にデジタル化を推進しており、まずは営業部の経費精算から取り組みました。スムーズにツールが定着したことから、製造部門もデジタル化に挑戦しようと思い、一歩目として製造部門で使用している帳票の電子化を検討、カミナシ導入を決めました。製造部では様々な課題がありますが、潜在的に問題のリスクとして潜んでいる課題の解決には、仕事の進め方等「いつも」からなにかを変える=労力が発生するものです。労力が発生することにはネガティブなエネルギーが発生しやすい傾向がありますが、成功体験を積むことでポジティブなエネルギーに変えることもできると思います。今回帳票の電子化でカミナシを選んだ理由としては、様々な問題がある中で、導入のハードルが低く、十分な製品力やサポートにより成功体験を築きやすいと感じたことにあります。」(海老塚氏)
カミナシ レポートの導入時の印象を、製造部門の帳票を管理している小山氏と工場長の黒鳥氏が振り返る。
「『使い方次第でカミナシがキラーアイテムになる』と感じました。あとは自社でどのように活かすかが問題だと思いました」(小山氏)
「初めて聞いたときは、若手は問題なくついていけそうだと思いましたが、ベテランメンバーは対応できないのではないかという不安な気持ちがありました。しかしカミナシの提案を聞いていく中で活用のイメージが湧いてきました。紙の帳票を段ボールの山から探して、品質保証部へ提出することや保管スペースの確保をしなくてよいことなどが、製造業務の効率化に繋がると思いました」(黒鳥氏)
一方で、日々製造して記録をする従業員は「覚えるまで時間が掛かりそう」「新しい変化についていけるだろうか」という不安があった、と抜課の阿部氏と製函課の本間氏が話す。
「今まで紙に書いていたものが全てタブレットに置き換わるので、楽になるイメージはありましたが、覚えるまではすごく大変だろうなと思いました。使ってみると普段触っているスマートフォンと同様で、タップして選択肢を選ぶなどの簡単な操作だったので、意外とすぐに慣れることができました」(阿部氏)
「新しい変化について行くのに少し苦手意識があるため、多少の戸惑いはありました。少しずつ慣れていけるように努力していこうと思い、毎日記録をつけていった結果、今ではとても楽にカミナシに入力できています」(本間氏)
導入に際し、海老塚氏は「要件定義を自社で行い、外部の開発会社に依頼すればシステムは構築できますが、それだけでは定着しなかったと思います。カミナシの営業やサポートの方から提案をしてもらいながらひな形の設定ができたので、現場で働く従業員にも浸透したのだと思います」と話す。
導入プロジェクトでは各課の課長に周知し、その後、課長から現場の従業員に操作方法を周知した。まずは今まで使っていたチェックシートに沿ったひな形を作成し、最初の1カ月間はカミナシと紙の帳票を並行しながら徐々にカミナシ レポートに移行を進めていった。
「タブレットの操作や記録の仕方を覚えてもらえるか心配していたものの、意外とスムーズに浸透していきました。最初の1カ月はカミナシと紙の帳票を並行して記録を付けていたのですが、2カ月目にはカミナシへ移行できました。今までのチェックシートと変わらない状態をカミナシで作れたように思います」(黒鳥氏)
毎月使用する3,000枚以上の帳票や保管スペースが不要に
確実に記録を残せていることが取引先からも高評価
導入から1年4ヶ月。カミナシ レポートへの移行を進めた製造工程では、毎月使用していた約3,000枚以上の紙帳票が不要となった。また取引先の要望で保管が必要な紙の帳票の保管スペースも不要になり、山積みの段ボールはなくなりつつある。今では、問い合わせがあった際には管理画面上から対象の期間や工程の帳票を検索し、すぐに確認・対応ができるようになった。さらに「取引先が監査にくると『ほしゆうさんは進んでいる。うちもこういうツールを入れて品質を高めたい』という言葉を聞く」と海老塚氏は話す。
「取引先の方や監査員が工場に来場された際にカミナシで記録していることを説明すると、きちんと記録・管理できていることに対して良い評価をもらっています。また社内でも『形骸化しやすいチェックシートを毎回しっかり確認するようになった』という声も出てきていることも嬉しい点です。本来チェックシートの目的は、問題のある製品を出さないことではありますが、現場の従業員の意識が変わったところも副次的な成果として感じています」(海老塚氏)
効率的かつ確実に記録することで、従業員の意識にも変化が
実際に現場で記録を行っている製函課の田中氏は「入力する従業員によって、記載内容のズレがなくなった」と振り返る。
「カミナシでは選択肢から選ぶ、写真に撮るなどの記録ができるため、長い名称の会社名や製品名などを省略して書いてわからなくなる、従業員ごとに製品名や企業名の書き方が違う、というようなことがなくなりました。紙帳票の記録の場合、記入することが目的になっていると感じていたので、カミナシを導入してから一つ一つ確認しながら、確実に記録をとるようになったのが良い点だと思います」(田中氏)
また紙の帳票では「紙の帳票に手書きで記録をしていたときは、商品名や納品先、ロット番号などを書くのに時間がかかっていましたが、今では写真を撮るだけで記録が完了するので、時間の短縮になったと感じています」と本間氏は話す。
カミナシ レポートを起点にデジタル化を進め
さらに活用を進めていきたい
今後について、「製造方法の記録や他の場面でも活用を進めていきたい」と話す。
「製造方法の記録もカミナシで管理していきたいと考えています。具体的には、パッケージの印刷で使うインキやのりの変更履歴もデジタル化したいと考えています。まったく同じ色でも違うメーカーのインキに変えてしまうと、性能やデザイン面で品質が異なるので、管理を徹底していきたい要素の一つです。社内で情報共有がされていないと、毎回営業が製造部に確認しにいくことになってしまい、手間が発生してしまうので、共有すべき情報はすべてカミナシで管理していきたいです」(海老塚氏)
「カミナシは自分たち次第で、ブロックを組み立てるように自由にシステムが作れるので、あらゆる業務で使えそうだと感じています」(小山氏)
食品や日用品など世の中に流通しているパッケージの製造をするほしゆう。これまで製造してきたパッケージは、会社ホームページの実績紹介で掲載されているお菓子やキッチンツールの箱、漬物の包装紙など、普段の生活で目にするものも多くある。
「3年後には、デジタル化に明るい業界と同じレベルにしていきたい」と話す海老塚氏。2024年8月現在、経済産業省が定めるDX認定(※)の取得を進めるなど、積極的なDX化を図っている(2024年10月にDX認定取得完了)。
今後もハコを通して感動を提供するほしゆうのデジタル化の取り組みはまだ始まったばかりだ。
※ DX認定制度:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-nintei/dx-nintei.html
(本内容は2024年7月に取材した内容となります)
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