柳沼様:当社の拠点は福島県郡山市で、味噌、あま酒などの糀加工製品を製造・販売しております。従業員は約40名で、本社に味噌とあま酒の2工場を有しています。味噌は年間300トンを製造、あま酒1,000トンを製造しています。創業が明治39年で、2023年で117年目となります。創業当初は糀製品の製造から始まり、数十年経て味噌製造を始めました。
あま酒は創業51年目に製造を始めています。あま酒は冬にしか売れない製品でしたが、とあるテレビでタレントさんが夏に飲む飲料としてあま酒を紹介されたことで、夏に飲む「冷やしあま酒」を先代社長が考案、製品化しました。それまであま酒は濃縮しているものが一般的でしたが、すぐ飲めるストレートタイプかつペットボトル飲料としたのは当社先代社長が初めてです。こういった背景があり、大手企業様より先にあま酒製造をしていたことで、数年前のあま酒ブームにも対応ができました。
柳沼様:HACCPや監査のルールが厳しくなる中、対応のために新しく日報を作成する動きがあり、管理帳票が膨大になっていたことが課題でした。対応する中で、製造部や品質管理部、管理者の負担が増え、大量の紙を扱っていました。日報の量が増えすぎて管理しているファイルが分厚くなり、「もうやめようか」という話が出たこともありました。
柳沼様:私自身が「絶対にやるんだ」という気持ちで臨んでいたこともあり、社内に反対する声は特にありませんでした。過去の水害で書類が5年分ほど使えなくなった経験もあり、30代以下の従業員はクラウド化を望んでいる様子でした。また当社では他業種から転職してくる方が多く、医療業界から来た方からは「まだクラウド化できていないんですか?」という声があり、「やってやろうじゃないか」という気持ちでした。年配のベテランの方々も、家族とiPadで日常的にやりとりしていることもあり、反対の声は出ていなかったように思います。数年前から新卒を採用しており、デジタル化を進める上で「誰に任せるか」という悩みもありませんでした。もともと私自身がデジタルツールが好きで、「書くよりタイピングや写真を撮ったほうがいい」と思っており、デジタル化に興味がありました。
柳沼様:メンバーがデジタル化に賛成してくれていたので、社内での抵抗はなかったように思います。むしろ若いメンバー、新人メンバーが「ベテランの方よりも自分達の価値が発揮できる分野が見つかった」、「専務に仕事を任せてもらえた」とカミナシ導入にやりがいを感じてくれました。抵抗感なく進めてくれるので、私のほうが置いていかれているくらいです。普段からスマートフォンを使っていることもあり、日常の延長線上のようになっているのかもしれません。ベテランが現場を守り、若手がカミナシの設定をする、という役割分担ができています。
柳沼様:私自身はずっとデジタル化を提唱しています。机の中に書類を入れないでスキャンしてデジタルデータにしておいて、と日頃から話していました。この取り組みをしていたお陰で、コロナ禍でもリモートで仕事ができる体制ができていました。将来的には、事務所の机の配置をフリーアドレスにして自分の机を持たないようにしていきたいと考えています。机を持っていても昔の書類が入っていたり、使わないものが入っているケースが多いんです。若い人達の中には、「DX」というものに対する憧れもあると思うんですよね。iPadで仕事をしているのがちょっと格好良いというか。様々な食品業界の中でも、味噌屋さんって格好良いか格好よくないかで言うと格好よくない方だと思うんですよ。そんな中でも「味噌屋さんでもこんなに進んでいるんだ」と思ってもらいたい。採用の現場でも「清潔な服を着て、ステンレスタンクを使って、iPadで記録しています」というと「面白そうですね」と言ってもらえるんです。そんなこともあり、会社全体としてデジタル化は自然な流れでした。私自身、今までのやり方を疑う、ということを大事にしています。私が入社したときに、製造現場での手順を見て「なぜこういうやり方をしているんですか?」と聞いたことがありましたが、質問に答えられる人がいなかったんですね。「前からこうやっているから、こうなっている」と。
醸造の世界では内部の情報を外に持ち出したくないので、外に勉強しに行く人が少ないと感じています。それを変えたくて、製造の手順や設備について勉強しに他社に足を運びました。福島県の酒造組合では「みんなで情報交換をして、みんなで技術を向上させよう」という動きが盛んです。私は味噌業界もこの動きにしていきたいと思っています。そのため、集中すべきことに集中したいです。物を探す時間、メモを清書する時間を減らして、クリエイティブな時間に充てたいと考えています。
柳沼様:カミナシでは、これまで利用していた紙の帳票を置き換えましたが、これまで作業者の感覚に頼っていたあま酒の粒の様態確認などを、写真機能を活用して客観的に確認ができるようになりました。これは私がやりたいと思っていたことでした。また官能検査をリアルタイムに確認ができるようになりました。他の作業者も確認したのだな、ということがわかります。はんこを押す必要のある書類が減ったり、私の出張中に出先で書類の確認ができるのもありがたいと思っています。日報の確認に10〜15分かけていましたが、今は3分で確認ができています。カミナシの活用範囲を広げていけばより効果が広がると思いますが、なかなか手を付けられていない状況ではあります。
柳沼様:導入は全て若手従業員に任せました。当社の品質管理のことを知らない人でも、前職の経験に関係なく業務ができるようにしたかったんです。カミナシで帳票を電子化していく上で「この項目は何で必要なんですか?」と質問が出てくるなど、若手メンバーの目線で省力化できたところもありました。また、前例もルールもなく、自分たちで考えながらカミナシの設定・運用していくというクリエイティブな仕事に携わったことが、自信に繋がったと思います。チームの体制としては、推進リーダーは現場のことをある程度知っている、ITに明るい新卒2年目のメンバーと入社1週間のメンバーをリーダーに抜擢しました。若手だけだと不安なこともあると思うので、アドバイザーとして課長を置き、協力して進められる体制をつくりました。一人だと絶対進まないんですよね。HACCP認証も、まずはチームを作るところからスタートします。複数の視点があることでプロジェクト進行が早くなるというイメージを持っていたこと、個人で得意・不得意をカバーできるようお互い意見を出しながら進めること、チームで取り組むと達成感を味わいやすいと考えていたことが、体制づくりの背景です。
一人だと負荷がかかりすぎたり、心理的ハードルが高くなってしまいます。頑張れば手が届くバーだと思って進めてもらいたい。導入チームは4〜5名ですが、プロジェクトに直接関わらなくても「この帳票をカミナシで作りたいからヒアリングさせてください」という場には、他の従業員も協力してくれました。私が、「カミナシ導入のプロジェクトは“時間が空いたらやる仕事”じゃない。作業の時間をしっかり取ってやるプロジェクトだ」と話していることもあり、カミナシの導入進捗を社内でも共有しています。
柳沼様:経営者、トップの方が取り組む意義を理解し、取り組みへの思いや重要性を社内に説いて、導入するメリットを理解してもらう。そして、そのための時間をしっかり取ることが重要だと思います。先日、退院したばかりのプロジェクトメンバーが、会社にパソコンを取りに来たんです。なぜパソコンを取りに来たのか聞いたところ、「勤務扱いにならなくてもカミナシ化をリモートワークで進めたい」と話してくれました。もちろん勤務扱いにするから、と持って帰ってもらいましたが、率先してやりたがるメンバーが出てきたら、より上手くいくのではないでしょうか。
現場のこだわりポイント
宝来屋本店様では、作業日の米状態や、気温、湿度に合わせて水分量を調節し、カミナシで記録しています。原料の米とその処理が美味しさを決めるため、蒸しあがった米をせんべい状に伸ばした時の硬さや、蒸した後の米の芯の有無など、職人による確認工程も欠かせないと言います。
デジタルだけでなく、熟練した職人の感覚を組み合わせることで、製品の安全、品質の更なる向上に取り組まれています。
※本内容は2023年5月現在のものになります。
※各サービスの仕様・デザイン等は改良のため予告なく一部変更することがあります。
※記載の会社名、各種名称等は、弊社および各社の商標または登録商標です。