ジェイアール東海バス株式会社
- 業種
- 運輸業
- 導入規模
- 300名以上
- 利用目的
- 全社DX推進、業務効率化
利用率は9割以上。現場を巻き込んだ導入でカミナシの全社展開を実現
現場の反発を乗り越え、10年先を見据えた業務改革を現場と共に
JR東海のグループ会社であり、高速バス事業などを展開するジェイアール東海バス株式会社は、グループ全体で「10年後を見据えた業務改革」という方針を掲げ、積極的なデジタルツールの導入を推進。その一環としてカミナシを導入し、社内の各所に残存していた紙に記録する業務のデジタル化を実施。導入当初はスモールスタートであったが、導入から1年経った現在ではユーザー数を導入時の3倍以上に増やし、システムの利用率は9割を超えている。これにより、同社では社内の幅広い範囲で業務効率化を実現している。
導入前の課題
- 紙の帳票を用いた業務が数多く残存し、業務効率を低下させる要因になっていた
- アナログな文化が根強く、デジタル化に対する現場からの反発が強かった
導入後の効果
- 研修や施設管理など、さまざまな業務にカミナシが導入され、社内のデジタル化が加速
- 現場に寄り添った導入によりシステムの定着が加速。利用率は9割以上に
JR東海のグループ会社として、
名古屋を中心に関東、関西、北陸などに高速バス路線を展開
JR東海のグループ会社であり、愛知県を中心にバス事業を展開するジェイアール東海バス株式会社(以下、JR東海バス)。高速バス事業では、名古屋や静岡、浜松を起点に、東京、大阪、京都、金沢、広島、甲府などに路線を展開している。さらに、バスツアー事業である「つばめツアー」では、国内各地への旅行サービスを毎月提供。安全・安心・快適なバス運行を通じて、人々の暮らし、ビジネス、リゾートなど幅広いシーンを支えている。
グループの方針「10年後を見据えた業務改革」を
きっかけにデジタル化に着手
交通インフラを担う事業者として社会貢献を果たす一方、近年、JR東海バスはデジタルツールの導入を通じたDXの推進にも取り組んでいる。きっかけはJR東海が示したグループ方針だった。この方針のなかで、JR東海は10年後を見据えた業務改革の重要性を強調。こうした流れを受け、JR東海バスはデジタルツールの導入に力を注ぐことになる。取り組みのきっかけについて、企画営業部営業管理課課長代理の北堀隆宏氏は説明する。
「『10年後を見据えた業務改革』と言われて、最初に気にかかったのは『働き方』でした。近ごろは少子高齢化が急速に進んでいますし、当社で働く人が今後急激に増えるかといえば疑問です。だとすれば、現状の働き方を10年後も維持するのは難しいでしょう。実際に、内勤や現場に限らず、当社の業務には紙の帳票を用いることが多く、業務効率に関する課題は以前から感じていました。そこで、デジタルツールの導入を通じて、既存の働き方を変革する取り組みをはじめました」(北堀氏)
JR東海バスは、RPAやデータ分析ツールなど、さまざまなデジタルツールの導入に着手する。既存の働き方に課題を感じていた経営陣らも取り組みに好意的な反応を示した。「経営陣からは『まずは導入して、使いこなせないならやめればいい』と後押しの声をもらっていました」(北堀氏)。こうしたなかで、JR東海バスは働き方の変革に向けての試行錯誤を繰り返していく。
担当者の熱意を評価しカミナシを導入。
現場に寄り添う姿勢がシステムの定着を後押し
JR東海バスがカミナシの導入に着手したのは2022年8月頃。目的はバスの乗務員や管理者が業務に用いている紙の帳票のデジタル化だった。例えば、JR東海バスは座席予約などを受け付けるコールセンターを設置していたが、オペレーターの教育に用いるマニュアルやチェック表はほとんど紙の帳票で運用されていた。そのほか、バスの乗務員の携行品記録や施設の巡回記録などにも紙の帳票が用いられており、アナログな業務は社内の各所で散見された。
こうした状況の改善を目指し、JR東海バスはカミナシを導入する。導入の決め手になったのはカミナシ営業担当の真摯な姿勢だった。当初、北堀氏ら担当者は、利用しているグループウェアと同じベンダーの業務アプリソフトを検討していたが、商談時の提案内容や熱意に信頼感を抱き、スモールスタートでカミナシを導入することに決めた。
しかし、導入時には少なくない「壁」に直面した。その一つが現場からの反発だった。当時の状況を運輸安全部乗務員指導課の北本拓氏は振り返る。
「本社主導でカミナシの導入を決めたこともあり、現場の乗務員や管理者からは少なくない反発がありました。特に、カミナシについては運行等を管理する者からの風当たりが強かったように思います。アナログな文化が根強いとはいえ、バスの乗務員はスマートフォンやQRコードリーダーを業務内で用いますが、管理業務は紙の帳票で運用されていることが多いため、忌避感が強かったのではないでしょうか。本社側から『これ(カミナシ)を導入すれば仕事が楽になるよ』と説得したこともあったのですが、『どのように楽になるのか』をイメージできない様子で、理解を得るのに時間を要しました」(北本氏)
現場からの反発を受け、カミナシの導入は停滞を迎える。しかし、JR東海バスの担当者らは、積極的に現場のニーズに向き合うことで事態を打開していった。現場のメンバーを招いたミーティングを定期的に開催し、カミナシの利用方法や業務への適用方法などを丁寧に共有。さらに、現場からのニーズや導入にまつわる不安などをヒアリングし、カミナシのひな形や運用に反映していった。こうした取り組みのなかで、現場からの反発は徐々に和らいでいき、カミナシの定着が進んでいく。
利用率は9割以上。
ユーザー数も追加し、全社でカミナシの利用を推進
現在、JR東海バスでは、社内の幅広い業務にカミナシが活用されている。コールセンターにおけるマニュアルやチェック表から導入が開始され、その後、施設管理や窓口業務、乗務員訓練、車両整備などに横展開が進んだ。さらに、当初は名古屋支店、名古屋旅行センターの2拠点のみでの運用だったが、現在は静岡支店が加わり、すべての支店でカミナシが活用されるようになった。システムの定着も進んでおり、展開しているひな形の利用率は9割を超えている。
導入効果も着実に現れている。カミナシ導入後の働き方の変化について北本氏は語る。
「私が担当しているなかでも効率化された業務が複数あります。例えば、私はバスの乗務員が業務の手順や規定を遵守しているか確認する仕事を担当しているのですが、その際に利用していたチェック表がデジタル化され、紙の帳票の印刷や回収、Excelへの転記にかかる手間が削減されました。体感では、これらの管理業務にかかる時間はすでに半減していると感じています。ほかにも、コールセンターの管理者は、オペレーターの業務への習熟度を測るテストがデジタル化され、印刷や回収、採点などにかかる手間が削減されています」(北本氏)
さらにチャットサポートを含むサポート体制に、社内からのカミナシに対する評価も高い。カミナシはシステム上のチャットから直接、カスタマーサポートに操作方法などに対する疑問を問い合わせることができる。このサービスはカミナシの定着を進めるうえで大きな役割を果たした。北本氏ら導入担当者は現場のユーザーたちにチャットサポートの利用を推奨し、操作方法などの疑問を自己解決させる方針を採った。これにより、JR東海バスでは、導入担当者の負担を軽減しながらユーザーのカミナシへの習熟を促すことができた。北本氏も「チャットサポートは回答のスピードも早くて非常に重宝しています。なにより、どんな質問にも、まずは『質問ありがとうございます!』と返ってくるのがよいですね。また専任のカスタマーサクセス担当が、常日頃より手厚い支援で導入をサポートしてくれました。これが導入後の前進に大きく寄与しています。日々の対応の積み重ねが、カミナシに対する信頼感を醸成し、社内への定着を後押ししたと思っています」と話し、充実したサポート体制に満足しているという。
今後は全社研修へのカミナシの活用を通じて、
導入効果をさらに引き出したい
今後、JR東海バスはカミナシの活用範囲を拡大し、デジタル化の効果をより広い範囲に波及させる方針だ。その一つが乗務員訓練への活用。今後の展望について、北堀氏は説明する。
「当社では2ヶ月に1回のペースで全乗務員が参加する訓練を実施しています。この訓練では座学と実技の両方を行い、そのなかで数多くの紙の帳票を利用するのですが、それをカミナシでデジタル化できれば導入効果は飛躍的に高まると思います。幸い、多くの社員に社用のスマートフォンを貸与しているので、カミナシを導入できる環境はすでに整っています。全乗務員が参加する訓練に適用すれば、人件費換算でかなりの削減効果が見込まれます。今後は、こうした取り組みを進めながら、カミナシの導入効果をさらに高めていきたいです」(北堀氏)
これまで、本社側の担当者が強い意思を持ち、現場の協力を取り付けながらデジタル化を進めてきたJR東海バス。北堀氏の力強い口調からは、これまでの取り組みに対する手応えが感じられた。今後、JR東海バスのDXに向けた取り組みはさらに加速していくに違いない。本事例は、現場を巻き込んだDX推進を目指す企業にとって、よきモデルケースになることだろう。
TEXT:島袋龍太
※本内容は2024年3月現在のものになります。
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