カメヤ食品の皆様

カメヤ食品株式会社

業種
食品製造
導入規模
〜 100名
利用目的
認証取得、業務効率化

カミナシだからできたISO22000の取得。老舗の食品製造会社が地元食材で世界一のわさび屋を目指す

コロナ禍が販路拡大の転機に。
売上を伸ばすための品質管理体制の作り方

静岡県駿東郡清水町に本社を置き、地元の食材にこだわり漬物や佃煮、乾物、おろしわさびなどを製造、加工、販売するカメヤ食品株式会社。地域一の漬物屋・世界一のわさび屋を目指しISO22000を取得、日本のみならず海外での売上も順調に伸ばしている。しかし、認証を取得するまでには帳票の記録漏れや記入ミス、転記・承認作業による管理職の残業時間増加など、様々な課題があった。「振り返るとコロナ禍が転機だった」と話す、代表取締役社長の亀谷 泰一氏。カミナシの導入に至るまでの経緯や今後の展望などを同社の平和台工場 社長付 亀谷 亮平氏、本社工場の工場長 市川 誠氏、平成台工場の製造係長 守本 敦氏に話を聞いた。

導入前の課題

  • 製造するチームによって、記録表の書式が統一されていなかった
  • 体制面の問題でISO22000が取得できず、大手取引先との取引停止リスクがあった
  • 管理職の残業が常態化していた

導入後の効果

  • 記録表の書式を統一され、誰でも迷いなく作業記録が残せるように
  • 監査員から称賛される徹底した記録管理と従業員教育を習慣化し、ISO22000取得を実現
  • 紙帳票の電子化や業務の見直しで残業時間が三分の一に

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地域一の漬物屋・世界一のわさび屋を目指し、
海外展開を見据えてISO22000の取得へ

カメヤ食品では、静岡県産の原材料にこだわり漬物や佃煮、乾物、おろしわさびなどを製造、加工、販売している。特にカメヤ食品の代表格ともいえる製品の原料であるわさびは、年間8万〜10万株を自社農園で栽培し、すべて伊豆産の原料を使用するなど、特に力をいれた生産体制を構築している。

カメヤ食品が誇る様々な製品

カメヤ食品の生み出す様々な商品が確実な人気を築いている一方で、人手不足や原材料の市場流通量の減少による価格高騰、日本市場の伸び悩み、食品専門商社・食品メーカー・観光事業会社・ホテルなど多種多様・大小さまざまな規模の取引先がいることによる、管理基準の多さが経営課題として挙げられていた。特に管理基準に関しては、一定の基準に達していない場合は取引停止のリスクもある。2019年に亀谷泰一氏が海外の展示会へ行った際に「組織全体で食品の安全・安心を追求するシステムを整えていることの証跡があると、海外の企業が安心して取引できるため、ISO22000を取得しておいたほうがいい」とアドバイスを受け、本格的に認証取得へ動き出すことを決めた。現在、日本は人口減少や高齢化に伴い、市場が縮小傾向にある。そのため、食品業界で売上を伸ばすためには、販路拡大や海外進出のような手立てを考えて行く必要がある。しかし、販路拡大や海外進出を成功させるためには、企業や製品自体への信頼を担保できる状態にすることが必要不可欠だ。


「日本はどうしても人口が減っていってしまうので、市場の縮小が避けられないことが経営課題となっていました。そんな中で、海外の売上が2018年から2019年にかけて1年で4倍も伸びていたこと、海外の展示会でISO22000の取得を勧められたこともあり、海外輸出に本腰を入れるためにISO22000の取得を決意し、帰国しました。すぐにチームを編成、取得に向けてプロジェクトを進めたのですが、思うように進まず、結局2021年は認証の取得が叶いませんでした」(亀谷泰一氏)

現場で従業員の記録の管理をしていた本社工場 工場長 市川氏も当時を振り返る。「他のツールを使用して記録を進めていましたが、権限等の問題で現場の作業者が記録フォーマットをカスタマイズできない、現場にスマートフォンを持ち込めなかったので、結局ノートに書いたものを転記する必要があるなど使いにくい部分もあり、定着しませんでした」(市川氏) 

「カミナシがあったから、ISO22000を取得できた」
認証取得は海外輸出を支える武器に

社内の紙の多さや記録作業の煩雑さ、帳票の書式が製造する製品ごとに異なることを課題と捉え、デジタル化を検討していたところ、カミナシに出会ったと亀谷泰一氏は話す。

「実はカミナシを導入する前に、別の電子帳票ツールを導入してISO認証取得プロジェクトを動かしていたのですが、取得ができませんでした。そんな最中にカミナシを知り、問い合わせました。カミナシの社長の実家が食品製造業を営んでおり、その原体験から『若い人は紙帳票での煩雑な管理をやりたがらない』と言っていることを聞いて、共感しました。紙の帳票の書式が統一されていないがために、従業員が迷ってしまうことや心理的な不安があることも課題と認識、解決したいと思っていましたが、導入の決め手は創業者の原体験に共感したことです」(亀谷泰一氏)

カミナシに移行した紙の帳票とカミナシで記録している様子

2023年にISO22000を取得し、順調に海外での売上も伸ばすカメヤ食品。認証取得後は『明らかに反応が変わった』と亀谷泰一氏が続ける。

「海外の展示会でISO22000を取得していると話すと、お客さんは安心してくれたのか、商品の紹介を求められる事が増えました。認証の取得がきっかけで安定的に海外の売上も伸びていて、海外輸出においてやっとスタートラインに立ったという感じです。実は海外進出を意識したのは、父である2代目社長の亀谷健がカナダにいた時、ロードサイド店でカメヤ食品のふりかけが売られているのを見たのがきっかけなんです。カナダに住む日本人向けだと思うのですが、海外でも需要があるのがわかっていたからこそISO22000は取得したかったですし、カミナシがあったから、取得できたと思っています」(亀谷泰一氏)

さらに平成台工場 社長付 亀谷亮平氏は、カメヤ食品が将来目指している姿について次のように話す。

「日本食や和食レストランブームもありわさびの認知度もあがっていますが、興味を持ってくれた人の中で弊社のわさびチューブを買って家で使ってくれている人は、まだ多くないと思います。将来的にカメヤの製品が色々な方の食卓に並んでいるような世界になれば嬉しいです」

ISO22000の取得のためにカメヤ食品が行った3つのこと

2021年にISO22000の取得を目指すも、体制面や別のツールでの運用、前提知識の不足などもあり、取得に至らなかったカメヤ食品。その後2023年に全社一丸となって認証取得に動いた。認証の取得や取得後の監査をスムーズに進めるために、カメヤ食品では3つの取組みを意識的に実施した。

1.従業員に対して勉強会の実施
2.対策用のマニュアルを工場内に掲示
3.逸脱時には管理者に通知を飛ばし、各作業の承認をデジタル化

ISO22000の取得に際し、現場で作業をする従業員への勉強会を実施し、全社員での品質をあげることを意識付けた。ISO22000認証の取得の前はもちろん、認証取得後も定期的に監査員が来るので、日々の業務がルールに沿って行われるかの確認も兼ねて勉強会を実施している。

「認証取得のために必要なことや、監査員からされそうな想定質問をスライドにまとめて勉強会を行っています。専任を置いているわけではなく、私自身がインターネットなどで調べて、まとめてから従業員の皆さんにお伝えしています」(亀谷 亮平氏)

 

2度目の監査では1度目に監査員から指摘を受けた箇所が重点的に確認されたが、問題なく審査を通過、従業員に対する丁寧な対応やカミナシを使った仕組み化が監査員から評価された、と市川氏が振り返る。

「ISO22000の取得対策も兼ねて、今まで整理できてなかったマニュアルを作成し、工場内に貼りました。普段の作業の近くで見られることはもちろんのこと、監査員が来たときにもそのマニュアルの前まで誘導して、作業の説明するようにとアナウンスしました。もしなにか聞かれた時に、自分が解釈した言葉で話したり、誤解があったりしたら『周知徹底できていない』という見られ方になる可能性があります。聞かれて困った際には『わからないことがあれば上司に聞いています』という受け答えをする、マニュアルの前に監査員を連れて行って説明する、といった工夫をすることで、監査員の方も安心して審査してくださるので、従業員には事前に対応方法について丁寧に説明しました」(市川氏)

 

さらにカミナシの承認や逸脱機能を使うことで監査員から良い評価を受けられた、と平成台工場 製造係長の守本氏は話す。

「監査員の方からは『記録後に行う管理者の承認作業と、逸脱時に管理者へ通知がされる機能が良いですね』と良い評価を受けました。監査では『逸脱した場合、誰かに連絡がいくようになっていますか』という質問項目があるのですが、カミナシでは、逸脱時にリアルタイムで管理者に通知が飛ぶように設定できるので、報告漏れが発生せずに、対応できるようにになっています。」(守本氏)

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カミナシの導入をきっかけに
管理職の残業時間が三分の一以下に

カミナシの導入はISO22000の認証取得やペーパーレス化のみならず、管理職の働き方にも影響を与えた。カミナシの導入を機に帳票の整理や業務の見直しが進み、紙の帳票の準備や記録の抽出などで1日に3時間ほど掛かっていた業務が1時間へ減ったという。

「カミナシを導入する前は、A4のノートに始終業点検や金属探知機などの記録を残していたので、水を使う現場や温度、湿度が高いところだと不便に感じていました。読みにくい文字や、帳票が汚れやすいこともなども課題に感じていました」(守本氏)

「カミナシの導入により、記録時の記録漏れがなくなる、記録作業が効率化されるといった記録の効果の他に、業務の見直しをした結果、1日2時間ほど発生していた残業がなくなりました。余裕ができた分、さらなる効率化を目指してカミナシで帳票のひな形を作るなど、他のことに時間を使うことができるようになっています」(市川氏)

明確な役割分担と現場に寄り添った対応でスムーズに導入が進む

カミナシの導入を進める中で、それぞれの立場から不安や課題も少なからずあった。紙の帳票からの移行でどんな不安があったのかについて、3人は以下のように話す。

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「正直なところちゃんとiPadで記録を取ってくれるのか不安な気持ちはありましたが、実際に運用してみると皆さん協力的で、徐々に現場の業務に浸透していきました。ひな形の設定と現場の従業員への周知を2人で分担して進めてくれたため、スムーズに定着したと思っています。率先して進めてくれた2人に感謝しています」(亀谷泰一氏)

「社長に任されて設定を担当しましたが、私自身新しいことにチャレンジするのは好きなので、どんどん触って覚えていきました。一方で、現場で働く従業員の方は60歳〜70歳の方も多くいるので、iPadで記録を付けるのはちょっとハードルが高いのではないかと不安に感じていました。ところが実際運用が始まってみると、年齢層が高い従業員の方でも難なく記録が進み、安心しました」(守本氏)

カミナシの導入が思った以上にスムーズにいったと話す守本氏だったが、現場の従業員が苦手意識を持たずに記録してもらえるように工夫したことがいくつかあった。

「なるべく入力項目を簡素化しようと考えて、ひな形の作成を行いました。例えば、記録者の名前や商品名を記載する欄は、キーボードで入力してもらうのではなく、間違えず迷いなく記録できるよう、選択肢を用意しました。細かい話ではありますが、iPadの文字サイズを大きく太字にする、ログイン情報を自動保存して毎回入力する手間を省くことで、入力するハードルを下げるなどの工夫をしました」(守本氏)

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「製造現場で使用してもらうときに入力しやすいよう、選択肢の表記や作業の流れを加味したものを考えました。実際にカミナシの運用が開始した時に、現場の従業員の方に操作方法を直接教えて、やりにくい部分を聞きだし改善案を守本さんに連携することで、徐々に現場に浸透するよう動きました」(市川氏)

導入前は不安があったものの、役割が明確に分けられ、現場の従業員の方の声にも耳を傾けて改善していった結果、順調な導入につながった。

 ▶ カメヤ食品で帳票のデジタル化が成功した理由

 ・デジタルデバイスや新しい取り組みに興味関心が強いメンバーに導入推進を任せる
 ・ひな形の設定担当と運用定着担当を分ける
 ・ひな形は、入力しやすい選択肢で構成
 ・製造工程を把握しているメンバーにひな形の確認を行ってもらう
 ・実際に現場で働く従業員からのフィードバックを反映させる

今後は複数工場で生産状況を見える化し、
最適な人員配置と廃棄率の管理を行いたい

本社工場で人員の管理など生産効率を考える同社では、カミナシを使ってできる限りのことをやっていきたいと意気込む。

「今ある紙の帳票をなるべくカミナシに置き換えたいと思っています。もし全てカミナシ化できれば、帳票を印刷する手間も資源の無駄もなくなります。工場全体の効率化につなげられるようにしていきたいですね」(市川氏)

「世の中ではAIの活用が進んでいるので、弊社でも使う場面が出てきたときに必要となるデジタルデータをカミナシで記録しておきたいと考えています。活用の幅は徐々に広げていきたいので、まずは今カミナシの導入で成果が出ている平成台工場の事例を、本社工場や第二工場にも広げていきたいと考えています。今後は製造量や廃棄率の管理もカミナシを使って管理することで、繁忙期など生産体制を変更する必要がある際にも、全体最適を進め、適切な人員配置を行える状態にしていきたいと考えています」(亀谷亮平氏)

毎月20日前後には、カメヤ食品本社で「漬物の日」と称し同社製品が購入できるイベントを行っている。こだわりの野菜「箱根西麓三島野菜」を使った漬物や、世界一を目指すわさび製品が気軽に買えるのは、地元にとっても嬉しいことだ。


地域に根づいた企業となったカメヤ食品、情報のデジタル化と熟練した技術でさらなる飛躍が期待される。

 

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