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鴻池運輸株式会社
多摩営業所

業種
運輸・物流
導入規模
約 24,000名
利用目的
ペーパーレス、業務の標準化、新人教育

物流の“2024年問題”の解消への足掛かりとして トラックの日常点検をカミナシでデジタル化

安全運行に欠かせない点検業務の効率化と属人化解消へ

総合物流企業である鴻池運輸は、2022年に『2030年ビジョン』を策定し、「技術で、人が、高みを目指す」をキーワードに配送業務や管理業務のDXを推進している。営業所ごとに現場の課題に合わせたデジタルツールを導入する同社では、多摩営業所においてカミナシを導入し、トラックの日常点検票をデジタル化している。毎月1,000枚ほどの紙帳票の削減や点検・管理者の承認業務の効率化を実現するほか、わかりやすい点検フローへと刷新したことで、ドライバー1人ひとりの日常点検への意識の変化や将来的な新人の業務習熟にも効果が見込まれる。

導入前の課題

  • 紙ベースで行っていた従来の日常点検では、日々同じ確認項目を〇×でチェックする方式であるため形骸化しやすかった
  • トラックドライバーが不足するなか、新人に点検のノウハウを正確かつ効率的に教育できる仕組みを構築したかった
  • 毎月1,000枚ほど必要となる日常点検票のチェックや管理者側の承認作業が業務の負担となっていた

導入後の効果

  • デジタル化に伴い日常点検業務の流れを見直したことで点検時間を削減。安全意識の醸成にも寄与
  • 画像やイラストをデジタル上の点検票に組み込むことで、新人ドライバーでも要点を押さえた点検がしやすい仕組みを構築
  • 日常点検のチェックや承認作業が迅速化。紙の保管も不要になり年間約12,000枚の紙の削減が可能に

ドライバー不足が課題となる中で
未経験人材の教育が課題 

1880年、大阪で創業された鴻池運輸は、国内外の物流サービス、製造業やサービス向けの請負サービスを展開する総合物流企業だ。同社を中核とするKONOIKEグループ全体としては国内約200・海外約30の拠点を持ち、約24,000名(連結)の従業員が働いている。ブランドプロミスに「期待を超えなければ、仕事ではない」を掲げる同社では2030年にありたい姿として「2030年ビジョン」を策定。「技術で、人が、高みを目指す」をキーワードに、組織全体で先端技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)にも注力している。

物流業界ではトラックドライバーの人手不足に加え、時間外労働の上限が年960時間までに制限される「2024年問題」が、直近の検討課題となっている。鴻池運輸 多摩営業所 所長の古川泰弘氏は「物流業界では慢性的な人材不足もあり、人材確保は優先事項です。業界全体でドライバーの採用ニーズが高まる一方で即戦力の採用は非常に厳しいため、当社ではトラックドライバー未経験者を採用し、免許取得からサポートする取り組みを進めています」と話す。

若い世代のクルマ離れも物流業界にとって大きなネックになっている。現在の免許制度についても、車両総重量ごとに「準中型免許」「中型免許」「大型免許」などさまざまであり、そうした複雑さも若い世代から敬遠される要因の1つになっているようだ。鴻池運輸でも、免許取得サポートと合わせて、知識や経験が少ない新人に対して分かりやすく効率的な指導を実施できる体制が現場で求められていた。

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属人化された紙ベースの点検業務の非効率さと形骸化が課題 

鴻池運輸では本社主導の取り組みに加えて、各営業所単位でDXに向けた取り組みを独自に進められていることも特徴的だ。そうしたなかで、トラックドライバー未経験の人材採用を積極的に行う多摩営業所が業務改善対象として着目したのが、紙ベースの帳票で行われていたトラックの日常点検業務である。チェック票そのものは簡単な○×形式であるものの、正常・異常を判断するには、経験が必要とされる。しかし、そのノウハウを新人がすぐに身につけられるように情報が体系化されていなかったのだ。紙の帳票時は全て○をつけるドライバーが多く、不備があったとしても、口頭で共有されていたため記録に残っていなかった。また、ドライバーが乗車するトラックは日々変わること、さらに24時間365日稼働しているトラックもあり、マーカーランプが切れていたり車体の擦り傷などの詳細な情報共有まではできていない状況になっていた。

「こうした課題もあり、ベテランドライバーが持つ点検ポイントなどの暗黙知を形式知化することで、新人ドライバーがすぐに業務を正しく習得し、常にトラックを安全運行できる環境をつくりたいと考えました。日常点検は、安全で安定した物流を維持するためには欠かせない特に重要なものです」と古川氏は語る。

そこで多摩営業所は当初、日常点検業務をマニュアル化した動画を作成したが、運用は難しかったという。動画の作成を担当した多摩営業所の宇都隆一郎氏は、「新人ドライバーが映像を見て学べるという点で一定の効果はあったのですが、実際の点検現場でその都度動画を見るわけではないですし見返すタイミングも難しく、より現場で活用しやすいツールがあればと感じました」と振り返る。

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点検票のデジタル化のほか画像を活用できる点に着目 

トラックの日常点検とその教育を効率化したいと考えていた古川氏、宇都氏は2022年に、トラック輸送に関するハード・ソフトウェアメーカーが出展するジャパントラックショーに参加。そこで出会ったのがカミナシだった。

「説明を聞くうちに、カミナシであれば暗黙知化していた点検業務を標準化できるのではと感じました。デモ画面を見た際、点検票に画像を挿入できる機能があり、正に探していたツールだと感じたのです」と古川氏は当時の印象を語る。さらに宇都氏も、「日常点検の帳票だけでも1日30枚超、1カ月で1,000枚ほどの紙を使用していましたので、その削減につながることにも魅力的でした」と続ける。

ジャパントラックショーでカミナシを知った後、担当者に相談しながら翌6月にカミナシ導入を決定し、7月から利用に向けた構築・設定作業をスタート。導入の体制としては、関係部署との調整などを古川氏が担当し、現場への導入は当時入社2年目であった宇都氏が担当した。

紙をデジタルの置き換えるだけでなく
業務効率化につながるフローに変更。新人教育にも寄与 

カミナシを用いた点検票デジタル化のプロセスとしては、まず宇都氏がExcelで作成した日常点検票をカミナシのカスタマーサクセス担当者からアドバイスをもらいながら推進。帳票をベースに、宇都氏がさらにカスタマイズしていくという方法を取った。

「私自身ITに強くはなく、PCスキルとしてはOfficeソフトの基本的な機能を触っているというレベルでしたので不安な面もありましたが、週1回、オンラインでカミナシのカスタマーサクセス担当者さんがサポートしてくださるのは非常に助かりました。また、オンラインミーティングごとに『ここまでの帳票のデジタル化を進めてくださいね』という宿題があったので、当初目標にしていた帳票作成が期日まで完成しました」(宇都氏)

宇都氏は、〇×でチェックしていた日常点検票をカミナシのアプリに落とし込み、現場リーダーに共有したが、「紙がタブレットに変わっただけでは」といったドライバー側からのフィードバックもあり、さらなる工夫を図った。

例えば、トラックのまわりを一周しチェックをすると日常点検が終わっている流れにできるよう、点検項目や順序を変更していった。これにより紙をデジタルに置き換えるだけでなく、点検業務のさらなる効率化にもつながるという成果が生まれることとなった。

また、新人教育の面では、日常点検票の中に写真やイラストを入れることで、チェックすべきポイントを一目で分かりやすくする工夫も加えられた。

「以前は、車が好きでトラックドライバーになるという人が大半でしたので、車自体に詳しい人が多い傾向がありました。しかし、近年の新人ドライバーの中には、テールランプが切れていても交換できない、タイヤチェーンがかけられないという方もおり、安全な配送業務のための整備として点検業務だけでは不足していることも課題感を感じていました。そのため、新人教育の観点でも視覚的に情報を伝えられる機能は非常に有用です」(古川氏)

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月1,000枚の日常点検票を削減
「紙の時代に戻れない」という声も 

現場リーダーと「日常点検表をどのようにカミナシに落とし込めばドライバーが使いやすいか」を調整しながら、カミナシで帳票をカスタマイズしていき、導入検討から約1カ月というスピードで現場での利用が開始した。タブレットになじみのないドライバーを考慮して、導入から数週間は紙と併用する運用を行った。

「50~60代のベテランドライバーも多いので、タブレットは使いにくいという声が上がるかと危惧していましたが、事前にアナウンスしていたことや現場リーダーの協力を得てメンバーにレクチャーしながら進めたこともあり、想定よりもスムーズに導入することができました。」と宇都氏は振り返る。前述のように、デジタル化とともに日常点検の流れを一新し、作業が効率化されたことはドライバーからも好評だという。

一方、管理面では30台を超える各トラックの日常点検票をチェックし、ファイリングして、複数の承認担当者が回覧するという作業がデジタル化されたことで、業務効率化につながっている。事務担当スタッフからも、「紙で日常点検を行っていた頃に比べると、各段に作業が減りました。もう紙の時代には戻りたくない」という声が挙がっているという。月1,000枚ほど出力していた紙の日常点検票がデータ化されることで全て不要になり、年間換算で12,000枚ほどの用紙削減と保管の手間が削減される見込みだ。加えて、効果を感じているのが意識の変化だ。

「日常点検がデジタル化されたことで、ドライバー1人ひとりの日常点検への意識が変わったように感じています。不備が見つかった際には、写真をデータとして記録できますし、あとから期日をさかのぼることもできます。点検の中でふと気づいたことを記録しやすい仕組みは、安全を高めるという観点で大きな成果です」(古川氏)

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デジタルの力を使いながら、安全運転に関する知識・技術を若い世代につないでいきたい 

KONOIKEグループでは、トラックドライバーの安全の意識・知識・技術を高め、事故撲滅を図ることを目的に開催する「トラックドライバーコンテスト」を開催しており、その10t車部門で2連覇という実績を持っているのが多摩営業所だ。審査基準である学科・点検に関しては、カミナシによる日常点検のデジタル化も貢献していると古川氏は話す。

「現場リーダーを中心に、安全運転に関する深い知識と高度な運転技術を持つ社員が多いことは、多摩営業所の誇りでもあります。新しくトラックドライバーとなる皆さんにも、そうした安全知識を引き継いでいくために、カミナシを活用していきたいですね」(古川氏)

なお、当時入社2年目でカミナシ導入を指揮した宇都氏だが、その取り組みが評価され、2023年春に開催された社内の安全品質活動発表会では、役員の前でスピーチも行っている。

「発表者の多くが私よりひと回り以上年上のリーダークラスのなか、20代でスピーチするのは私だけで、導入のプロセスも含めて貴重な経験をさせていただきました。安全品質活動発表を受けた影響もあってか、他の営業所からもカミナシを導入したいという声が届いています」(宇都氏)

日常点検の見直し、日常点検表の管理業務の効率化、ペーパーレス化などの成果を踏まえて、古川氏は今後の展望を次のように語る。

「日常点検以外にも、各種のチェック表や記録帳、倉庫であれば温度管理や清掃記録など、紙で運用している業務は数多くありますので、順次デジタル化していきたいです。」

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現場のこだわりポイント

半年ごとに運転者適正診断を実施

鴻池運輸 多摩営業所では輸送の安全を徹底するため、ドライバーの運転のクセを科学的に測定し、安全運転につなげていく「運転者適性診断」を自社で実施している。一般的には3年に1回の頻度で行われる診断を半年に1回の頻度で行うことで、適性に合わせたアドバイスとともに、安全運転への意識を高めている。

適性診断機(鴻池多摩)

※本内容は2023年7月現在のものになります。
※各サービスの仕様・デザイン等は改良のため予告なく一部変更することがあります。
※記載の会社名、各種名称等は、弊社および各社の商標または登録商標です。

 
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