美保テクノス株式会社
- 業種
- 土木建築業
- 導入規模
- 200名
- 利用目的
- DX推進、業務効率化、安全管理の強化
カミナシで 一人あたり月22時間の業務時間を削減し「建設業界の2024年問題」を乗り越える
デジタルツールに反発していた現場が態度を一変させた理由とは
鳥取県米子市に本社を置く総合建設会社の美保テクノス株式会社。同社でインフラ維持・舗装工事などを担うランドサポート事業部は、現場業務の負担軽減などを目的に、さまざまなDXの取り組みを推進している。その一環として導入されたのがカミナシだ。同事業部は、カミナシを活用し、車両点検などに用いられていた紙の帳票のデジタル化を推進。デジタルツールに抵抗感の強い従業員たちに粘り強く寄り添うことでカミナシの定着を図り、紙の帳票を大幅に削減した。導入効果として、労働時間は現場従業員は一人あたり月22時間、管理者は一人あたり月30時間の削減を実現、人件費に換算すると年間160万円以上の削減効果となっている。
導入前の課題
- 「建設業界の2024年問題」が迫るなか、業務時間の削減が喫緊の課題に
- 車両やリースする重機などの点検に用いていた紙の帳票が安全管理の課題になっていた
- ベテラン従業員を中心にデジタルツールへの抵抗感が強く、デジタル化の障壁に
導入後の効果
- カミナシの導入により現場従業員は一人あたり月22時間の業務時間を削減。人件費も年間160万円超の削減を実現
- 点検内容のリアルタイムでの確認が可能になり、安全管理が強化された
- デジタルツールへの苦手意識が払拭され、若手従業員の活性化も進んだ
高い技術力と先進性で全国から注目を集める、
山陰地方を代表する建設会社
鳥取県米子市に本社を置き、鳥取県及び島根県東部で総合建設事業を展開する美保テクノス株式会社(以下、美保テクノス)。1958年(昭和33)年に美保土木機械組合として創業し、以来60年以上に渡って山陰地方の発展に貢献してきた。現在展開する事業は、土木工事、建築工事、住宅工事、電気設備工事など幅広く、社内には設計部門やICT活用を担う情報システム部門も有する。売上高は100億円以上にのぼり、鳥取県内の建設業では最大規模。大手経済誌が発表した「勢いのある建設会社ランキング50」では全国主要50万社中44位にランクされた(「週刊ダイヤモンド」調べ 2016年12月3日号)。名実ともに山陰地方を代表する建設会社だ。
同社のBIM(Building Information Modeling)への取り組みには、その実力と先進性が現れている。BIMとは、3次元モデリングした建物のデータをもとに、設計から施工、維持管理までのプロセスを可視化し、工程管理やコスト管理などを行うソリューション。建設業界のDXを推進し、生産性向上に大きく寄与すると期待を集めている。美保テクノスは、建設業界でもいち早くBIMシステムを導入し、2023年に竣工した自社新社屋の設計や維持管理にはBIMを活用している。今後は継続的な検証などを通じて、BIMソリューションのパッケージ化を目指す方針だ。
「建設業界の2024年問題」を乗り越えるためDXに着手
業務負荷の要因である紙の帳票に焦点を当てた
BIMをはじめ、さまざまなDX施策に取り組む美保テクノス。その一環として、同社は2022年からカミナシを活用している。導入したのは、道路舗装などのインフラ維持管理や工事を担当するランドサポート事業部。なぜ、同事業部はカミナシの導入を決めたのか。ランドサポート事業部維持事業所次長・統括部長の松本年男氏は、カミナシ導入に至る経緯を話す。
「インフラ維持の業務は、道路の舗装から樹木剪定、冬季の除雪作業など多岐に渡り、人が行わざるを得ない作業が多いことから、デジタル化が遅れがちです。そうした状況を懸念して、ランドサポート事業部では10年ほど前からデジタル化を目指していたのですが、年齢層の高い従業員はデジタルツールを敬遠しがちなため、なかなか着手できずにいました。しかし、建設業の人手不足や高齢化が加速し、『建設業界の2024年問題』などが視界に入るなかで、DXによる業務効率化は不可避な取り組みです。そこで、数年前からさまざまなツールの導入にチャレンジするようになりました」
GPSで車両の位置を把握できる車両管理システムや現場作業中の従業員の心拍などを計測できる熱中症対策Tシャツなど、ランドサポート事業部は継続的かつ着実にデジタルツールを導入し、DXを推進していった。そうしたなかで、焦点が当たったのが紙の帳票だった。
従来、ランドサポート事業部では、車両や重機の作業前点検や従業員の健康チェックに紙のチェック表を用いており、それらに起因する課題が少なくなかった。例えば、安全面での課題。車両や重機の使用において、以前は作業開始前に点検を行い、終業後にチェック表を管理者に提出する形で安全管理を行なっていたが、この方法では管理者が点検結果を確認できるのは作業の終了後になってしまう。より安全性を確保するためには、安全管理の即時性を高める必要があった。
また、管理者は現場従業員の終業後にチェック表の確認を行うことになるため、残業などの業務負荷にも繋がっていた。「建設業界の2024年問題」を目前に、業務負荷軽減も求められていた。
粘り強い説得でカミナシの導入を推進
数ヶ月後にはカミナシが「なくてはならないツール」に
そこでランドサポート事業部は、紙の帳票のデジタル化を目指し、新たなツールの導入に向けて動き出した。デジタルツールを選定する際のポイントは「とにかく現場を楽に」。慣れ親しんだ既存の作業を変更するには、新たな作業が従来よりも「楽」になっている必要がある。選定を担当していた松本氏は、各地で開催されている展示会に積極的に参加して、「楽」を実現できるデジタルツールを探した。その末に、たどり着いたのがカミナシだった。
カミナシに惹かれた一番の理由は、カスタマイズ性の高さ。UI設計やチェック項目、条件分岐など、カミナシは業務内容に合わせて自由度高くフォーマットをカスタマイズできる。これらの機能を活用すれば、既存の作業の大幅な効率化が期待できた。
カミナシを選定したランドサポート事業部は、2022年末ころから導入を開始する。既存の紙の帳票を段階的に廃止し、タブレットでの記録に移行。車両などの安全管理には、点検箇所の画像を撮影して添付するフォーマットを活用。しかし、当初予想していた通り、現場の従業員からの反発は少なくなかった。ユーザーとしてカミナシを利用しているランドサポート事業部の内藤博樹氏は当時の状況を振り返る。
「正直なところ、当初は私もカミナシの導入に反対していました。これまでタブレットは利用していませんでしたし、何より紙の帳票での作業に慣れていたので、便利さよりも煩わしさのほうが勝っていました。これまでにも導入したものの結局定着しなかったデジタルツールがいくつかあるので、『今度もそのパターンかな…』と高をくくっていましたね」
従業員からの反発は根強く、導入から数ヶ月はカミナシの利用率も低迷していた。しかし、松本氏をはじめとする管理職たちの粘り強い働きかけにより状況は好転する。従業員一人ひとりに必ず楽になるというメリットを伝え続けるなかで、次第に「本当に仕事が楽になった」という声が現場から上がりはじめたのだ。なかでも、点検箇所の撮影は、点検作業を適切に行った証跡を残せるため、現場の従業員たちから高く評価された。
現場作業員は月22時間/人、
管理者は月30時間/人の労働時間が削減
導入効果は年間160万超に
実は、ランドサポート事業部では、導入したデジタルツールの浸透が難航した場合、1年間で利用を取りやめることとしている。しかし、カミナシは予想以上の定着ぶりを見せ、導入から半年後には現場の従業員たちから「カミナシは便利だから止めないでください」という声が上がるようになり、今やカミナシはなくてはならないツールとして定着している。
実際に、カミナシの利用によりランドサポート事業部の業務負荷は大幅に軽減している。紙の帳票は従来の3割以上削減され、紙の帳票の出力や提出、保管・管理、管理者による確認作業が省略された。これにより、現場の従業員は一人あたり月22時間、管理者は一人あたり月30時間の業務時間が削減されており、人件費に換算すれば160万円/年の導入効果が発生している。さらに、点検などの記録内容はリアルタイムで管理者が確認できるため、より確実な安全管理も可能になった。こうした導入効果に内藤氏は大きな手応えを感じているという。
「普段の業務が楽になったのはもちろん大きいですが、それ以上に業務時間の削減は人材確保の一助にもなっています。特に最近の若い世代は、残業代による給与の上乗せよりも、休暇取得のしやすさや残業時間の少なさを重視している人が多いです。『建設業界の2024年問題』を乗り越えるためには若手人材の採用が必要不可欠ですが、そうした側面でもカミナシは効果を発揮してくれています」
さらに、カミナシは思いもよらない効果をランドサポート事業部にもたらしている。それは、若手人材の活性化だ。カミナシの利用にあたって、若手従業員がベテラン従業員に操作方法などをレクチャーするシーンが増加。この変化が若手人材の主体性を育み、その他の場面でも業務を主導することが増えていった。現在では、新たなデジタルツールの導入プロジェクトを若手従業員が中心になって進めているという。
カミナシは「小さなひらめきで大きな効果を引き出せるツール」
今後はさらなるDXの加速に挑む
「カミナシの導入を通じて『自由度が高く、シンプルなツール』が当社にフィットしやすいことがわかりました。この仕事は現場あってこそのものです。いくら高度な技術を備えているツールでも、現場で便利に利用できなければ意味がありません。その点で、カミナシのカスタマイズしやすさや操作しやすさはメリットが大きかったです。さらに今回は、そうした自由度の高いツールを自社に落とし込む際のノウハウを学ぶこともできたので、その知見を他のプロジェクトにも活用して、よりDXを加速させていきたいと思っています」
松本氏はカミナシを「小さなひらめきで大きな効果を引き出せるツール」と評した。本事例では、ランドサポート事業部の地道な活動が、人手不足などの大きな課題を解決する糸口を見出した。その取り組みは「建設業界の2024年問題」に直面する企業に多くの示唆を与えるに違いない。
TEXT:島袋龍太
※本内容は2023年12月現在のものになります。
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