──株式会社オイシス(以下、オイシス)について教えてください。
植村様:当社は、食パンや調理パン、惣菜、麺類、焼き菓子など、1日に約1,000種類以上の食品を製造する総合食品メーカーです。従業員は約3,500名。兵庫県に本拠地を置き、神戸、伊丹、滋賀などに9つの工場を展開しています。商品はコンビニエンスストアや量販店に提供しているほか、阪神地区を中心に展開している直営・フランチャイズのベーカリーショップでも販売しています。また、家庭用食品(NB/PB)に加え、業務用商品(OEM)の開発も手がけており、外食や給食などの法人様ともお取引いただいています。
──カミナシ導入前の課題を教えてください。
植村様:日本の食品業界では2000年頃からHACCPが注目を集めるなど、品質管理の徹底が叫ばれるようになりました。その頃に、当社でも製造工程の記録作業を強化していましたが、その分、紙の帳票がかさみ、業務負担が増している状況でした。例えば、規模の大きな工場では、1日に200枚ほどの紙の帳票を記録。各工場には品質管理担当者が3名ほど配置され、紙の帳票の整合性チェックや逸脱の有無の確認にかなりの時間を費やしていました。
また、若手社員を採用していくうえでも、アナログな業務環境は改善する必要がありました。昨今の若年層はデジタルネイティブ世代と呼ばれているように、そうした彼らが活躍できる環境を築くためにも、デジタルの活用は欠かせませんでした。
──カミナシを導入された経緯をお聞かせください。
植村様:カミナシのことは、民放のテレビ番組で知りました。社長さん(カミナシ代表の諸岡)が出演されていて、「これがあれば品質管理が楽になるかも」というのが第一印象でした。ただ、それと同時に「そう上手くはいかないだろう」とも思っていました。特に、当社では20代や30代が比較的多い中で、パートやアルバイトの方は50代〜70代の方が活躍されています。タブレット操作に不慣れな方達に記録作業を定着させるのは難しいだろうと思っていたのです。
ちょうどその頃に、取引先のコンビニエンスストアの方から紙帳票の電子化を勧められたこともあって、いくつかの製品を比較して検討していたのです。当初はカミナシとは別の製品を試していましたが、帳票のフォーマットに置き換える際に一定のリテラシーが必要だということがわかりました。
その点カミナシは、帳票の作成が簡単で、詳しい説明を聞かなくても直感的に操作が可能でした。今回、カミナシの導入推進を担ってもらった荒尾からも「カミナシなら現場で使える」という言葉があり、「まずは神戸工場から導入してみよう」ということになり、カミナシの導入が決定しました。神戸工場は比較的、年齢層が若く、デジタルに強い社員も所属していたため、最初の導入先に適していたのです。
──カミナシ導入の体制や流れをお聞かせください。
荒尾様:私と3名の若手社員のプロジェクトチームを組成し、導入を進めました。若手社員をプロジェクトチームに迎えたのには、いくつか理由があります。例えば、システムを導入するにあたっては「既存業務に慣れすぎていないこと」が必要でした。システムを導入する際には、既存業務をシステムに適した形に変更しなければいけません。しかし、既存業務に慣れ親しんでいると、この工程が甘くなりがちです。そのため、若手社員を中心に導入を推進し、既存業務を柔軟に変更できるようにしました。
また、若手社員の人材育成も目的でした。導入プロジェクトを通じて、新たな知識を学び、物事を考え、人を動かすことを経験してもらうことで、次世代を担う人材として育成したいと考えました。
導入プロジェクトは約3ヶ月のスケジュールで計画しました。まずは、プロジェクトチームで帳票の作成方法を習得し、その後、利用頻度の多い帳票から電子化していく流れで進めています。
導入プロジェクトでは、カミナシ社の導入支援も受けましたが、ここまで丁寧にサポートしてくれるとは思いませんでしたね。当初は1,2回、WEBセミナーをしてくれる程度だと予想していたのですが、きめ細やかにミーティングを設けていただけましたし、問い合わせのメールへのリアクションも迅速でした。カミナシ社の担当者も導入チームの一員だと感じていますね。
──カミナシ導入により、どのような効果が生まれていますか。
荒尾様:現在、神戸工場の3つのフロアで20以上の帳票を電子化しています。これらの紙の帳票がなくなったことによる業務効率化の効果が大きいですね。従業員の記録作業の手間が減ったのはもちろんですが、毎朝、紙を配布・差替えする手間や、終業後に管理者が確認する手間も削減されました。業務時間に換算すると、神戸工場全体で月間約100時間は削減されていると思います。
ただし、この成果は過程でしかありません。まだ電子化していない紙の帳票が20種類近くありますので、これらを電子化すれば150時間以上は削減できると期待しています。
現在、カミナシの管理担当者を育成しており、すでに6名の若手社員が帳票を作成できる体制です。そのため、今後、電子化はますます加速し、それに伴って導入効果もさらに高まっていくと見込んでいます。
──導入を担当された若手社員の皆さんは、カミナシのどのような点を便利だと感じていますか。
西田様:私はタブレットで写真を撮影できたり、帳票に画像を挿入できたりする機能が便利だと感じています。カミナシを活用すれば、従来は「○」「×」だけで報告されていた点検状況を、画像として確認できます。
また、帳票にマニュアルのPDFなどを挿入すれば、従業員は紙のマニュアルを探したり、めくったりせずに、所定の作業を行うことができます。現在、神戸工場では、壁に各種マニュアルを掲示しているのですが、今後は画像機能を活用し、これらのマニュアルを削減していきたいです。
山下様:私はアラート機能が便利だと思います。アラート機能を使えば、記録作業や点検作業に逸脱があった際に、従業員にアラートで注意を促せます。カミナシを導入する前は、逸脱が発生した際には、その従業員に直接、注意をして、改善を促さなければいけなかったのですが、これは業務負担であると同時に心理的な負担もありました。特に、私たちのような若手社員が年上の従業員に注意をするのは少し言いにくいな、と感じることがあります。
カミナシを利用することで作業時の逸脱や入力漏れをアラート機能によって解消することができるので仕事の手間が省けるだけでなくストレスを感じることも少なくなり、仕事がやりやすくなったと感じています。
──カミナシの導入について現場からの反応はいかがでしょうか。
磯田様:工場内には年齢層の高い従業員もいるので、当初は現場の戸惑いや抵抗を感じていました。しかし、「わからないことがあったら聞いてくださいね」と声をかけたところ、すぐに聞きに来てくれたんです。そして次の日には、難なくタブレットを使いこなしていました。「導入前の不安は一体何だったんだ…」と思いましたね(笑)
カミナシを利用して業務を良くしていこうとしてくれている意思を感じて、とても嬉しかったです。
──カミナシの活用について、今後の展望をお聞かせください。
植村様:神戸工場への導入でカミナシの効果を実感できたので、今後は他の8工場にも展開を進めます。それによって、全社的な品質管理体制の強化を実現したいです。
現状、品質管理に関する規則は全工場で統一されていますが、その運用方法がアナログだと、どうしても品質にバラつきが生まれてしまいます。規則は次々と変更されますし、従業員の入れ替わりもあるので、紙の帳票やマニュアルで品質管理を統一するのは難しいのだと思います。その点、カミナシであれば、一斉に帳票やマニュアルを更新でき、品質のバラつきを低減できます。
また、各工場に任されていた品質管理を本社で一括できるため、各工場の状況を分析して、それぞれの工場の課題を解決することもできるはずです。その意味でカミナシは、ペーパーレス化や業務効率化だけでなく、経営にも十分活用できるツールだと考えています。
──植村様、荒尾様、西田様、山下様、磯田様、本日はありがとうございました!