セブン-イレブン・ジャパンは、業界最大手のコンビニエンスストアチェーンとして、国内2万1,000店舗以上を展開している。同社の強みである圧倒的な商品開発力を支えるのが、業界の垣根を越え、さまざまな企業とチームを組んで商品開発をするチームマーチャンダイジングだ。「セブンプレミアム」「セブンカフェ」といった品質を重視したプライベートブランドや、安全・安心でおいしいオリジナルフレッシュフード(米飯、サンドイッチ、調理パン、サラダ、惣菜など)は、その代表と言えるだろう。
こうしたオリジナルフレッシュフードの幅広いラインアップを支えるのが、製造を担当するパートナー企業のデイリーメーカーであり、その数は全国で63社176工場(2023年2月時点)にも及ぶ。これらすべての工場は、セブン-イレブンに供給する商品の品質・衛生管理レベル向上を目的として結成された日本デリカフーズ協同組合(以下、NDF)に加盟している。
安全・安心なオリジナルフレッシュフードを届けるために、NDFのデイリーメーカーとともに、HACCP対応など食品衛生に対する取り組みを進めてきたのがセブン-イレブン・ジャパンのQC部だ。QC・物流管理本部 QC部 総括マネジャーである斉藤俊二氏は、「当社とそのパートナーであるNDFの各工場が連携し、商品の製造から提供まで一気通貫で行うことで、質の高い商品を店頭に届けることができています。すべてのお客様に安心して食べていただけるように、独自に設定した安全基準のもと品質管理を徹底して行っています」と話す。
一般的に鮮度が重要な商品ほど品質管理が重要となる。一方で、食品製造の現場で衛生管理のチェック項目を増やすことは業務負荷にもつながり、管理が形骸化してしまうリスクもある。NDFの工場すべての品質を一元的に管理することは難しく、万が一の事態を避けるためにも人に依存するのではなく、デジタルで管理できるシステムの導入が切望されていた。
「一昔前までは、ベテラン人材を中心に品質面の管理も現場任せで対応することができたでしょう。しかし、人材不足や人材の多様化、消費者からの品質に対する期待の高まりなど、食品製造業界を取り巻く環境が大きく変わる昨今、従来の人の手作業に依存した方法だけではもはや品質を維持することは困難だと考えました」(斉藤氏)
品質管理が重要な課題である中、QC部ではさまざまな工夫を重ねてきた。その1つが、2019年からQC部がNDFと共同で実施しており、品質保証への取り組みを表彰する「NDF品質保証アワード」だ。各工場の従業員が、自主的に独自の取り組みや活用しているツールを紹介し、投票によりグランプリが選ばれる。NDF品質保証アワードで共有される取り組み事例を通じて、工場における品質管理活動の活性化、品質管理担当者のモチベーションアップにつなげるのが狙いだ。
このNDF品質保証アワードにて第2回グランプリに輝いたのが、現場DXプラットフォーム「カミナシ」を活用した株式会社虎昭産業の取り組みである。これまで大量の紙で行われていた帳票管理をデジタル化したことで管理業務を効率化するほか、チェック業務がデジタル上にエビデンスとして残ることで、品質保証の精度向上にもつながっている。そうした製造現場でのカミナシ活用にメリットを感じた他の工場からも「導入したい」という声があがる結果となった。
こうした背景もあり、セブン-イレブン・ジャパンでは製造現場における品質管理のデジタル化を推し進める機運がさらに高まっていた。
「当時は他社にて食品への異物混入などがニュースになる中で、当社もお客様からの問い合わせが増えていました。そのため、各工場の品質管理における正しい情報把握とともに、危険予知などに使えるITソリューションの導入を検討していた時期でもあったのです」と斉藤氏は振り返る。
品質管理強化に向けたデジタルツールの情報収集をしていたセブン-イレブン・ジャパンは、大手ITベンダー数社の提案とプレゼンテーションを受けるほか、虎昭産業の工場で使われていたカミナシのプレゼンテーションを受けた。複数の製品を比較した上で、最終的に同社が決断したのは、NDF加盟のデイリーメーカー各社によるカミナシを活用したデジタル化を支援する指針である。
「帳簿のデジタル化や記録精度の向上という観点で、直面していた課題の解決につながると感じたことは大きかったです。各工場の環境に合わせて、ノーコードで簡単に設定できる点も、IT担当がいない現場で使いやすいと評価しました。また、クラウドサービスであったため、今後も現場が求める機能がアップデートされていくという期待感もありました」と、QC部 システム化推進担当の室谷岳氏はカミナシに注目した理由を語る。
「カミナシの代表取締役CEOである諸岡さんが食品製造現場での業務経験を持っているからこそ、現場で働く人の目線で使いやすいUI設計などができているのだと感じました。やはり、どれだけ便利なITソリューションでも、使いにくければ意味がないですから」(斉藤氏)
2023年2月現在、セブン-イレブン・ジャパンのオリジナルフレッシュフードを製造する176工場のうち139工場がカミナシを導入している。これまで紙で行っていた品質チェックがモバイルデバイスを用いたデジタルでの作業に置き換わることで、業務効率の向上につながるとともに、各工場における品質管理の精度向上を実現した。チェック項目の漏れをアラートする機能などを活用することで、万が一商品に問題が発生したとしても、店頭に並ぶことを防げる確率が飛躍的に高まったのは大きな成果だ。これに加えて得られたのが、社内文化にもたらした効果だ。
「品質管理業務は、決められたルールを守ればいいという、しばしば消極的な意識になりがちです。しかし、カミナシを導入したあるデイリーメーカーでは、若い従業員の皆さんがより効率的で働きやすいルールづくりを積極的に進めようとする文化が生まれたように感じています。当社とデイリー商品を製造する皆さんの“お客様に安全・安心でおいしい商品を届けたい”という共通の想いを実現し続けていくためにも、大きな変化だと感じています」(斉藤氏)
実際にデイリーメーカーの工場で働く従業員からも「広い工場の中を歩き回りながら紙で品質チェックをしていた頃に比べると、品質管理にかかる時間が格段に減った。カミナシ導入前には戻りたくない」、「紙のない業務フローへプロセスを刷新する際、業務を見直すことにもつながっている。カミナシ導入を担当した人は、目に見えて成長している」といった声が届いていることも印象的だ。
さらに近年では、工場で働く従業員の多国籍化が進み、言葉の壁で十分なコミュニケーションが取りにくくなっていることも品質管理面では課題となっている。そうした課題に対して、カミナシは英語、中国語(簡体字・繁体字)、ベトナム語、ネパール語、タイ語などを含む43言語に対応している。デイリーメーカーの工場で働く外国籍の従業員からも「カミナシが導入されて、母国語でマニュアルやチェック項目などを確認できるようになったことで、担当できる仕事が増えました」というポジティブな反響が届いている。
現場DXプラットフォームのカミナシを活用することで、セブン-イレブン・ジャパンのオリジナルデイリー商品の品質管理をさらに強化したQC部。一定の成果が出ている中で、斉藤氏は今後の取り組みについて以下のように語る。
「カミナシをはじめ、さまざまなITソリューションを積極的に活用していくことで、製造現場だけでなく、サプライチェーン全体のデジタル化を進めていきたいと思います。事故を未然に防止するとともに、問題が起きてしまった際にも、即座に発見して解決できる仕組みが不可欠です。そのためにも、引き続きパートナー企業の皆さんとともに、デジタル化を推進していきたいと思います」
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