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株式会社太洋工作所

業種
機械製造業
導入規模
500名以上
利用目的
全社DX推進、品質管理

世界的自動車メーカー・テクノロジー企業に製品を供給する老舗めっき加工会社がカミナシを活用

紙の帳票をデジタル化し、高度な要求水準に応える品質管理の体制をさらに強化

大阪府大阪市を本拠に、めっき加工事業を展開する株式会社太洋工作所。1939年に創業し、長年の技術蓄積を通じて高度なめっき加工技術を築いてきた同社は、世界的な自動車メーカーやデジタルデバイスメーカー等様々な分野で製品を供給している。一方で、顧客や供給先からの高い品質要求に対して、帳票が全て紙であったので、非常に人手や時間のかかる要因になっていた。そこで、同社はカミナシを導入し、帳票のデジタル化を行うことで、顧客や供給先に対する品質管理対応の向上を実現した。カミナシ導入の経緯や過程、具体的な導入効果について、同社の4名のメンバーに話を伺った。

導入前の課題

  • 顧客や供給先からデータの提出を求められた際に対応に時間がかかる
  • 書類を保管するために外部倉庫を契約するなど、紙の帳票がコストの要因に
  • 紙の帳票がすべて手書きだったので、作成に時間を要していた
  • 設備の点検箇所や、状態の判別を理解するまでに、かなりの教育が必要

導入後の効果

  • 即座にデータの提出が可能になり、顧客や供給先の満足度が向上
  • 写真で視覚的に点検箇所や点検方法の指示が出来るようになったため、担当者や責任者以外でも帳票の記録が容易になった
  • 一部現場では4割程度の紙の帳票を削減でき、浮いた時間を別業務に充てることが可能に
  • 記録のデジタル化・クラウド化により、リアルタイムでの確認と対応が可能に

創業期から受け継がれる品質へのこだわり。
国内外の大手企業にめっき加工製品を供給

大阪府大阪市に本拠を置き、国内外に6つの工場を展開する太洋工作所。1939年(昭和14年)に松下電器(現パナソニック)の製品組立を担う工場として創業し、終戦後に現在の主力事業であるめっき加工をスタートした。以降、ラジオ、オーディオ、携帯電話と、時代の流れとともに生み出される新たな製品群を、高度なめっき技術で支えてきた。現在も自動車やスマートフォン、パソコン、エアコン、テレビなどに表面処理製品を提供。半世紀以上の技術蓄積を土台に顧客の多種多様なニーズに応えている。

同社の最大の強みは、その高度な品質にある。創業期から脈々と息づく「世界に通じる品質づくり・モノづくり」の精神に従い、品質管理の工程や技術を磨き上げてきた。その一端が表れているのが、全社QCサークル活動だ。全社QCサークル活動では、サークルごとにテーマを設定し、品質管理の課題解決に向けた改善活動を行う。40年以上にわたって半年ごとのペースで開催しており、2023年6月で第84回を数える同社の基本となる取り組みだ。こうした活動を通じて、同社は管理体制の改善を重ね、品質向上を常に目指してきた。事実、その品質は数多くの企業から高く評価されており、製品を供給している世界的な自動車メーカーやテクノロジー企業の要求事項もクリアしている。

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シンプルな操作性やUIに着目。
現場従業員の「これならできる」の声でカミナシの導入を決定

その一方で、太洋工作所はデジタル化にも積極的だ。2022年1月には、同社のデジタル化施策を担うISOデジタル推進部を発足。ISOやデジタル化を推進するISOデジタル部会を運営し、定期的なミーティングを行いながら、組織的かつ継続的に活動を推進している。その一環として、導入されたのがカミナシだった。ISOデジタル推進部 情報システム課 課長の辻 翔太 氏は、カミナシ導入以前の課題を振り返る。

「当社の製品の供給先は、国内外の大手自動車メーカーや世界でも有数のテクノロジー企業であるため、品質管理には非常に高度なレベルが求められます。例えば、海外の某大手自動車メーカーからは、製造工程に手作業のラインが含まれる場合には、生産工程のトレーサビリティの収集が求められています。また、その他の供給先もほぼ同程度の要求水準であり、某世界的テクノロジー企業の監査では、非常に多くのデータの提出が求められます。しかし、以前、当社では温度記録や設備点検など、数多くの場面で紙の帳票を用いていたため、提出を求められても時間がかかることがありました。実際に、監査の直前には、工場の担当者が倉庫に保管された帳票群から必要な記録を探し出すなど、多大な労力を費やしていました。」

また、膨大に保管された紙の帳票はコストの増大にも繋がっていた。太洋工作所は、記録済みの紙の帳票を保管するため外部倉庫を契約しており、毎月のように新たな段ボールが積み重なっていく状況だった。

これらの課題を解消するため、同社は紙の帳票のデジタル化を決意。ITツールの導入による、品質管理のペーパーレス化を目指した。しかし、製品選定は難航。複数のITツールをトライアル導入するも、操作方法や設定方法が複雑なため導入後のシステムの定着が望めず、本格導入には至らなかった。

そのころに出会ったのがカミナシだった。カミナシは操作方法やUIがシンプルなため、スムーズなシステムの定着が期待できた。すでに複数のITツールを検討していたISOデジタル部会にカミナシを持ち込んだところ、多くの委員がポジティブな反応を示したため、太洋工作所はカミナシの導入を決定し、本格導入に向けて動きはじめる。

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一つのラインでの成功事例をきっかけに状況が一変。
システム展開が急加速

しかし、カミナシの導入を決めた後もそう簡単にはいかなかった。ISOデジタル部会では好感触を得たものの、実際にシステムを利用する製造現場には数多く紙の帳票が残存しているため、「どこから手をつけてよいのかわからない」というのが、管理職や従業員たちの本音だった。

そうしたなかで、電子機器に用いられるプリント基板を製造する森小路工場の管理職がカミナシの導入に賛同。プリント基板のラインへの導入を進める。従来、この管理職はプリント基板のラインの品質保証を担当していたが、煩雑な業務に手を煩わせることが少なくなかった。カミナシを導入すれば、以前は従業員の手書きで記入されていた各種記録が、正確かつ確実に作成され、品質管理の異常や逸脱も発見しやすくなる。そうした変化に期待を寄せての導入だった。

プリント基板のラインへの導入にあたって、太洋工作所は「カミナシを管理できる人員を増やすこと」を重視した。システムを定着させるためには、現場の従業員が利用しやすい環境を作るとともに、現場レベルで柔軟に帳票を作成できる体制も必要になる。そこで、太洋工作所はシステムの導入に並行する形で、ライン長や品質保証の担当者などに帳票の作成方法をレクチャー。カミナシを管理できる人員を増やしながら、システムが定着しやすい環境を築いていった。森小路事業部 森小路工場 プリント課 リーダーの新枦 知樹 氏は、カミナシの操作性について語る。

「私の工場では、多くのメンバーがすんなりカミナシの操作に慣れ、帳票作成だけでなくデータのExcelへの変換や通知の設定など、幅広い機能を使いこなしています。私も簡単なレクチャーを受けただけで、ある程度の操作ができるようになりましたし、システムの操作性はとても優れていると思います」

約3ヶ月の導入期間を経て、太洋工作所はプリント基板のラインへのカミナシの導入を完了。継続的な運用を通じて、123枚/月の紙の帳票をデジタル化した。この成功を起点に状況は一変。ISOデジタル部会で、プリント基板のラインでの事例を積極的に紹介することで、他のラインや工場にもカミナシの有効性が伝わり、システム展開が加速度的に進んでいった。

カミナシの導入で画像の活用により、作業漏れも大幅削減
顧客の評価も上々

現在、太洋工作所の管理部門も含む28ラインでカミナシが利用されている他、生産管理やデジタル本部での活用が進んでいる。1日に作成される帳票は約140枚。従来、紙の帳票で行われていた品質管理の作業はタブレットに移行された。現場の従業員は紙の帳票やペンを利用する必要がなくなり、スムーズに記録作業を実施している。これにより、同社では数々の導入効果が生まれた。その効果について、森小路事業部 森小路工場 プリント課 主任の竹中 陽太郎 氏は説明する。

「カミナシの導入により、顧客や供給先からの信頼の高まりを感じています。以前は監査の際などに実績の開示を求められると対応に手間取ることがありましたが、現在はタブレット上で検索して提示すれば済みます。こうした変化は当社の品質管理体制への信頼に繋がると思いますし、実際に毎月打ち合わせをしている顧客にカミナシの活用について紹介すると『これは素晴らしい』と肯定的な評価をいただきました」

また、リアルタイムで記録内容を確認できるようになったことで、品質管理の異常や逸脱を発見しやすくなった。例えば、温度管理の場面。紙の帳票の管理では、記録されている値が実際の異常値だったのか記入間違いなのかわかりにくい部分があり、のちに管理職が記録内容を確認して異常と判断することがあった。しかし、現在では、従業員が異常値を入力するとアラートが表示され、管理職にも通知が送られるため、異常や逸脱をリアルタイムで把握できるようになった。

そのほか、帳票やマニュアルに画像を組み込む機能も効果を発揮している。紙の帳票では、指示内容を文字で説明しなければならないため、従業員ごとに作業にバラつきが生まれてしまう。その点、画像を活用すれば、確認事項や着目点を詳細に伝えることができ、作業の標準化が可能だ。実際に、カミナシの導入以降、同社ではバルブの締め忘れなど、作業の実施漏れが削減されている。

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点から線への品質管理を目指し、カミナシによるデータ活用の体制を
構築中

今後、太洋工作所はカミナシの導入範囲を拡大し、全工場の紙の帳票のデジタル化を目指す。辻氏は「正確な費用対効果は測定が難しい」と話すが、定性的な効果を含めると導入に要した費用を大きく上回っており、今後もライセンスを追加していく方針だ。さらに、同社は紙の帳票のデジタル化にとどまらず、蓄積したデータの二次活用も検討中。カミナシをデータプラットフォームとして活用し、DXを加速していきたいという。

その先に見据えるのは、さらなる品質管理の高度化だ。常務取締役の喜多村 康一氏は、今後のデータ活用や品質管理のあり方について語った。

「究極の品質管理とは『品質管理をしないこと』だと思っています。確認や記録をしなくても、自然と高品質な製品が生産される体制が、最も理想的な工場のあり方です。もちろん、すべての確認や記録を取りやめることは現実的に不可能ですが、デジタル活用を通じて、確認や記録の作業を減らすことはできます。今後、さらにカミナシにデータが蓄積していけば、どの作業や確認が不要なのかを分析できると思うので、理想の品質管理を実現するためにも導入範囲をさらに広げていきたいです」

ものづくりの根幹を支える品質管理。その理想的な姿を実現する重要なアイテムとして、カミナシに大きな期待が寄せられている。

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TEXT:島袋龍太

 

現場のこだわりポイント

創業期から息づく「品質への高いこだわり」

社訓

様々な製品を世界的メーカーへ供給する太洋工作所では、製品製造の
高い技術力と、その製品を高い品質で供給するための品質管理の工程
と技術を磨き上げてきた。2023年度には全社のスローガンに「5Sを
基盤に 世界に通じる 品質づくり モノづくり の構築」を掲げ、全社一
丸となって基本の5Sとデジタルを活用した取り組みを通じて品質のさ
らなる向上に取り組んでいる。

 


※本内容は2023年9月現在のものになります。
※各サービスの仕様・デザイン等は改良のため予告なく一部変更することがあります。
※記載の会社名、各種名称等は、弊社および各社の商標または登録商標です。

 
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