株式会社VANSAN
- 業種
- 飲食・サービス業
- 導入規模
- 400名以上
- 利用目的
- 業務標準化、省人化、店舗管理
急拡大中のイタリアンレストランがカミナシを導入した理由とは
「バーチャルマネージャー」構想をカミナシで実現し、店長の業務負担を大幅削減。出店戦略の原動力に
「家族で気軽に行ける本格イタリアン」を掲げるイタリアンレストラン「Italian Kitchen VANSAN(バンサン)」。その店舗運営やフランチャイズ事業を担う株式会社VANSANは、現在1ヶ月に1店舗の新店をオープンするなど、積極的な出店戦略を展開中だ。しかし、店長やスーパーバイザー(以下、SV)の業務負担や、店舗ごとの業務のバラつきが組織の拡大を妨げる要因になっていた。そこで、同社は「バーチャルマネージャー(※)」を構想。店長やSVが実施する店舗管理業務の負担を低減するためのツール導入を検討し、カミナシの導入を決定した。この取り組みによって、同社は各店舗で利用している紙の帳票を2万枚/年削減したほか、管理業務の標準化を進め、出店戦略を加速させている。
(※)バーチャルマネージャー:株式会社VANSANが構想する、社員が負担する店舗の管理業務を軽減する仕組み。同社内では「Vマネ」と呼ばれている。
導入前の課題
- HACCPの義務化により、管理帳票が急増。店長の業務負担が増加
- 紙の記録に頼っていたために実態が把握しにくく、店舗ごとに業務や品質のバラつきが発生
- 店舗の状況をリアルタイムで把握しにくく、SVや本部が電話や臨店で状況を確認するなど業務負担になっていた
導入後の効果
- 店舗で記録・管理していた年間約2万枚の帳票を削減
- 写真機能やマニュアル機能の活用で、店長業務を標準化。スタッフが管理業務を遂行できるようになり、店長の業務負担とスタッフの教育コストの削減を実現
- スケジュール機能の活用や標準化により業務品質が改善し、外部機関による衛生検査の評価が向上
- 店舗の状況がリアルタイムで把握可能になり、SVや本部の管理負担が軽減
コロナ禍でも売上120%増
今、急速に知名度を高めているイタリアンレストラン
世界12カ国で飲食事業を展開するダイニングイノベーショングループに属する株式会社VANSAN(以下、VANSAN)。同社が運営するのが、「家族で気軽に行ける本格イタリアン」がコンセプトのイタリアンレストラン「Italian Kitchen VANSAN(バンサン)」。敷居の高いイタリアンのイメージを払拭する広々とした空間や、「のせ放題パスタ」などの楽しい仕掛けが、子育て世代を中心に高い支持を集めている。飲食店に逆風の吹いたコロナ禍においても人気は衰えず、2020年10月の売上は全店で昨年対比120%を達成。その後も継続的な成長を続け、全国的に知名度を高めている。
そうした勢いを受け、同社が力を注いでいるのが出店戦略だ。2021年には1ヶ月に2店舗という驚異的なスピードでブランドの裾野を広げ、現在もフランチャイズ店舗などの拡大を進めている。2023年末に総店舗数は80ヶ所にのぼる見込みだ。
また、出店エリアにも独自のこだわりがある。都市部ではなく、地方や郊外のロードサイドなど、比較的競合の少ないエリアを中心に店舗を展開。周辺のファミリー層や子供を持つ女性たちの需要を一挙に取り込むのが狙いだ。この戦略が功を奏し、数多くの繁盛店を地方から輩出。鳥取県や長野県の店舗が売上ランキングの上位に食い込むなど、地方優位の事業ポートフォリオを形成している。
「組織の拡大」と「温かみ」を両立するには?
管理業務のデジタル化を目指し、ITツール導入を決定
しかし、VANSANにとって重要なのは店舗数だけではない。ブランド構築にあたっては、「温かみのあるサービス」を重視している。ホスピタリティの溢れる接客や店舗での体験も重要な提供価値だ。しかし、積極的な出店戦略に取り組むなかで「組織の拡大」と「温かみ」の両立に難しさを感じることもあったという。カミナシ導入前の課題について、マーケティング部 部長の金澤鉄哉氏は振り返る。
「そもそも、フランチャイズ店舗の拡大と温かみのあるサービスは相反する部分があります。フランチャイズ店舗の理想は、あらゆる業務が標準化され、どのエリアのどの店舗でも同じ品質の商品やサービスが提供されることです。それに対して、温かみのあるサービスを提供するには、お客様お一人おひとりへのホスピタリティが求められます。この二つは相容れない部分もあるのですが、当社では両立の道を模索していました。そこで、たどり着いたのが『管理業務のデジタル化』でした。従来、店舗の管理業務は、店長や SVなどが紙の帳票を用いて行っていたのですが、管理項目が多岐に渡ることもあり、多大な業務負担を生んでいました。こうした業務負担は店長の時間を奪い、サービス提供に向けるべきリソースを圧迫します。煩雑な管理業務をデジタル化・標準化することで、店長がサービス提供や従業員教育に集中できる環境を築きたいと考えました。」
フランチャイズ店舗の正社員は平均2名程度。スタッフのほとんどはパート従業員だ。そのため、店長の業務負担を軽減するには、管理業務などをパートの従業員にも委譲できるよう標準化する必要がある。さらに、2021年6月からのHACCP完全義務化により、衛生管理に関する管理業務が増大。店舗で用いられる紙の帳票は倍以上に増えており、店舗管理業務のデジタル化は不可避な状況だった。
こうしたなかで、VANSANは各種管理業務をデジタル上で実施できる「バーチャルマネージャー」を構想する。バーチャルマネージャーで店長やSVの業務負担を削減するとともに、管理業務を標準化して店舗展開に要する手間を削減することも狙った。その実現に向け、同社はバーチャルマネージャーを構築できるITツールの導入を決める。
約1ヶ月で全国の店舗にカミナシを展開
写真機能などを活用しながら、業務の標準化を推進
HACCPの完全義務化と時期が重なっていたこともあり、当時、VANSANにはさまざまなITツールの導入提案が寄せられていたが、同社が構想していた「バーチャルマネージャー」を実現する上で最も有用と判断し、カミナシを選定。導入の決め手は、カミナシのカスタマイズ性の高さだった。当初からVANSANは紙の帳票のデジタル化に留まらず、それによる業務の標準化や業務負担の削減を目標としていた。そのため、柔軟なカスタマイズが可能で、自社が望むシステムを構築しやすいカミナシを最も高く評価した。
導入を決めたVANSANは、バーチャルマネージャーの構築に着手。カミナシ上のアプリケーション上でHACCPに基づいた衛生管理や、SVの臨店チェックなど、用いられる紙の帳票をデジタル化しながら、システムの構築を進めていった。その結果、1ヶ月ほどでシステムの構築は完了。バーチャルマネージャーの店舗への導入も実現した。当初、新しい仕組みの導入に現場の負担が増えないか懸念されたが、カミナシの直感的なUIや操作性の高さなどがシステムの定着を後押しし、事前の予想以上にスムーズにカミナシの導入が推進、店舗内では「Vマネ」と名称で定着が進んだ。
また、導入後には運用の改善にも力を注いだ。その過程について、経営企画室の大山純矢氏は説明する。
「例えば、日次清掃表のひな形には、当初は写真の添付は求めていませんでした。しかし、Vマネ(カミナシ)の導入後もいくつかの箇所で清掃のバラつきが見られたため、その項目については清掃後の写真を添付する設定に変更しています。また、当社では毎月、外部委託の衛生検査を実施しているのですが、その結果が芳しくなかった項目については重点的に作業を実施できるよう、新たなひな形を追加しています。こうした改善を積み重ねながら、当社にとって最適なシステムを築いていきました。」
こうしてVANSANは紙の帳票を削減し、店舗ごとの管理業務を可視化。効率的な形に業務を改善しながら、カミナシの活用を推進していった。
約20種類の紙の帳票をデジタル化し、店長の業務負担を削減
全社的な衛生管理の強化を実現
現在、 VANSANは約20種類の紙の帳票をデジタル化し、SV、店長、パート従業員のそれぞれがスマートフォンでカミナシを利用して、各種管理業務を行っている。各業務の実施方法はシステム上で確認できるため、従来は属人化していた作業が標準化され、スタッフの誰でも実施可能になった。これにより、同社では年間約2万枚の紙の帳票が削減され、多くの店舗で店長の業務負担が削減されている。その効果について、西葛西店 店長の石崎氏は語る。
「物理的にも、心理的にも、業務負担は大きく減ったと感じています。例えば、衛生管理です。以前は主に私が衛生管理を行っていたため、休日で店舗を空ける日には、適切に清掃が行われているのか心配になることが多かったです。そのため、休日にも関わらず店舗に電話して、清掃状況などを確認することもしばしばありました。しかし、カミナシを確認すれば、衛生管理の状況がすぐに把握できるので、心理的な負担はかなり削減されています。また、パート従業員が衛生管理を手がける機会が増えたことで、『店舗を清潔に保とう』という意識が全体的に高まったと感じています。衛生管理は飲食店の土台を支える重要業務。その仕事を従業員全体で取り組めるようになった効果は大きいですね。」
石崎氏が語るように、VANSANではバーチャルマネージャー(Vマネ)としてカミナシを導入以後、衛生管理の体制が強化されている。事実、毎月の衛生検査の結果は全社的に向上し、不備の指摘を受ける店舗は大幅に減少した。また、各種管理業務がカミナシで可視化されているため、管理業務を従業員にレクチャーする手間も省かれている。業務標準化だけでなく、教育コストの削減という観点でも、店長の業務負担削減が進んだ。
そのほか、カミナシは、SVの臨店業務も効率化している。従来、SVが臨店業務を実施する際には、担当エリア内のすべての店舗を訪問し、管理項目の一つひとつを自らの目で確認しなければいけなかった。しかし、現在は、カミナシで店舗の状況をリアルタイムで把握できるため、訪問に要する時間や手間は大幅に削減された。さらに、ひな形の修正や追加も容易なため、業務の改善も手間なく行うことができる。
データ出力機能をさらに活用しながら、
より良いブランドを確立したい
「組織の拡大」と「温かみ」の両立を目指してカミナシを導入し、バーチャルマネージャーを構築したVANSAN。現在、同社では数多くの管理業務が標準化され、良質なサービス提供と積極的な出店戦略を同時に実現している。カミナシには、店舗運営に必要な管理業務が一覧化されているため、新規出店の際のチェックリストとしても活用できる。新規出店時には、これまで新規出店経験のある社員が派遣され、出店業務を行っていたが、カミナシを利用することで、出店業務の経験がない社員に対する教育と業務遂行をサポートできるようになった。また、オープン初日に行われる店内設備の最終チェックにカミナシが利用されており、「組織の拡大」の観点でも効果を発揮している。
今後、VANSANはカミナシのデータ出力機能などを利用しながら、さらにカミナシの活用範囲を広げていく方針だ。金澤氏は今後の展望を次のように話す。
「VANSANのブランドを向上させていくためには、全国各地の店舗が今、どんな状況にあるかが一眼で把握でき、リアルタイムで改善できるような体制が必要です。現状、週次清掃のレポートをバーチャルマネージャー(Vマネ)上で確認し、未実施の店舗に対して実施を促すなどの取り組みは行なっていますが、こうした仕組みをさまざまな業務で確立したいです。そのためにも、カミナシの活用範囲をさらに広げて、各種データをレポート化できるデータ出力機能をさらに活用していきたいです」
急速な成長を遂げる企業の裏側には、その成長を支える仕組みが必ず存在する。VANSANでは、その一端を担うのがカミナシだ。これから同社はカミナシをどのように活用し、さらなる成長を遂げていくのか。今後の動向にも注目だ。
TEXT:島袋龍太
現場のこだわりポイント
本部と店舗の皆でつくりあげる「こだわりの店舗体験」
VANSANでは「家族で気軽に行ける本格イタリアン」と「一人ひとりのお客様に温かみのあるサービス」を実現させるために、店舗内での体験に重きを置いている。特に商品開発にこだわっており、毎月のように新商品を開発している。調理方法や盛り付け方など、細部のこだわりをどの店舗でも再現できるよう、カミナシ内に写真付きのマニュアルを用意し、活用している。
※本内容は2023年10月現在のものになります。
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