株式会社ヤマイチ
- 業種
- 製造業(食品製造)
- 導入規模
- 51〜100名
- 利用目的
- HACCP, ペーパーレス, 品質管理
現場と品質管理の距離が近くなり、確認の手間もストレスも軽減
カミナシで現場業務を進化させた老舗しらす加工業ヤマイチ
創業107年、老舗小魚水産加工業者であるヤマイチは、2000年にしらす加工会社の生加工ラインからパック製品製造までの工程管理において国内で初めてHACCPを取得し、食の安心・安全の追求に取り組んでいる。また同社は組織や業務の改善・進化にも力を入れており、最新のITシステムを積極的に導入してイノベーションを進めてきた。そんなヤマイチは、2022年6月に2カ所の加工現場と品質管理部門でカミナシを導入。わずか2週間での導入完了後、実際に使いながら製品の使い勝手を高め、成果を上げている。「手間やストレスが軽減できた」「若手が活躍できる場が広がった」などの効果を実感している同社 製造部 部長 川﨑貴之氏、総務部 総務・企画課 課長 薄井眞一郎氏、品質管理部 品質管理課 陳九如氏に取り組みを伺った。
導入前の課題
- 品質管理部門が紙の記録をダブルチェックする作業に月間約10時間かかっていた。
- 業務が属人的で、休みを取りづらい状況や記録の不備やミスの確認を取る手間が発生していた。
- HACCPで求められる記録精度を維持することにプレッシャーやストレスを感じていた。
導入後の効果
- 管理者が確認する月間約50ページの紙を削減できた。
- 記録のダブルチェックで生じていた約10時間/月の作業が不要となり、現場への確認、指摘の手間とストレスが激減した。
- 商品の製造手順をカミナシでマニュアル化し、月に1度しか製造しない商品でも新人が間違わずに作れるようになった。
消費者が求める高い品質、事業継続性の追求
茨城県・ひたちなか市にしらすや小女子(こうなご)などの加工工場を持つ株式会社ヤマイチは、小魚水産加工分野でトップクラスの売上を誇る老舗企業だ。人気商品は新鮮な茨城県産のしらすを使ったしらす干しや小女子、野沢菜ちりめんなど。毎日の食卓にのぼる一般向け製品から業務用製品まで幅広く取り扱っており、しらす取扱高は年間約2,500tにも上る。
ヤマイチは商品のおいしさだけでなく、安心・安全な食品を食卓に届けるため、2000年にしらす加工会社として日本で初めてHACCP認証を取得した。株式会社ヤマイチ 製造部 部長の川﨑貴之氏は「今は食の安心・安全に対して消費者が敏感な時代です。そんな時代の消費者ニーズに合わせて、より安心で高品質の商品を届けるため、日々改善に取り組んでいます」と話す。
そしてもう1つ、同社が力を入れているのが業務のデジタル化と組織作りだ。12年前に基幹システムを刷新し、情報伝達用のチャットツールやデータ分析システム、特定の業務を自動化するRPA(Robotic Process Automation)も導入している。また外部コンサルタントから研修を受け、現場が自ら業務品質を改善できる組織作りを目指すなど、企業として進化を続けている。「勘や経験を頼りに進めていた業務、特定の人に依存していた業務を見える化して、担当が変わっても同じレベルで業務を進められるようにしなくてはなりません。それを実現できる便利なITシステムを活用し、次世代に向けて事業継続性を担保することは非常に大切なことだと考えています」と川﨑氏は話します。
紙帳票による作業チェックの工数、抜け漏れや不備を確認するストレスが課題
川﨑氏が情報収集のために訪れていた展示会でカミナシのことを知り、2022年4月に導入に向け本格的に動き出した。同社 総務部 総務・企画課 課長の薄井眞一郎氏は導入当時の状況について「加工工場の現場内にiPadやネットワークの導入が済んでいたので、現場改革に向けて良いタイミングでした」と振り返る。
当時、現場業務にはいくつか課題があった。工場内の業務チェックが紙ベースだったので、印刷や筆記具の準備に手間がかかるほか、HACCP計画が計画通りに行われているかの遵守検証(Verification)を行う担当者が、週に1度複数ある拠点を回って書類の確認とサインを行う必要があった。そこで不備やミスに気付くと記録した担当者に確認しなくてはならないが、記録者が不在もしくは帰宅していた場合、何度もやり取りが発生してしまう。業務が属人的になっていたことで、特定のタイミングで休暇を取りにくいという問題もあった。
また、品質管理現場の担当者も紙ベースの管理・検証業務に課題を感じていた。同社 品質管理部 品質管理課の陳九如氏は次のように語る。「現場から月初めに書類が全部上がってくるので、品質管理部で再度1ページずつ記録の漏れや不適切な訂正がないかチェックします。ダブルチェックで毎月約10時間かかっていました。そしてもし不備があった場合は現場に戻して訂正してもらうのですが、現場の方に訂正の連絡を入れることが大きなストレスになっていたんです。また外部監査が入った時、不備があって指摘されたらHACCPのレベルが降格になるかもしれませんし、『指摘された時にすぐ書類を見つけられなかったらどうしよう』という不安もありました」陳氏は、カミナシの導入により業務ストレスから解放されると期待し「導入は大賛成でした」と話す。
ひな形を活用し2週間で導入完了、使いながら改善を推進
同社では、主にHACCP対象外となっている生産現場と品質管理部でカミナシの活用を推進してきたが、終業時チェックなどカミナシを活用しやすい業務から徐々にHACCP対象の生産現場への展開も始めている。現場でのカミナシ活用がスタートするまでにかかった準備期間は約2週間。薄井氏が「まずはHACCP対象外の現場でスピーディーに導入し、使ってもらって改善していく流れで導入を進めました」と語るとおり、カミナシ側にあらかじめ用意されているひな形を使って終業時のチェックシートや業務プロセスを設定していった。タブレットを使って作業チェックを行ううちに、現場から品質管理の陳氏の元へ「こうして欲しい」「ここを直して欲しい」といった依頼が来始めた。こうした意見が現場から出てくるようになったおかげで、陳氏も「現場のことがより理解できますし、カミナシで作成したチェックシートの内容を変える時にとても楽になりました」と話す。
単に使うだけでなく、カミナシによる現場改善にも力を入れています。今後は、業務をカミナシに置き換える件数をポイントに加算し、人事評価に取り入れるとのこと。「自分ができなくても、課全体の取り組みとして評価するので、できる人や若手の人にカミナシ化(紙帳票をカミナシに切り替えること)を依頼してペーパーレスや業務改善につなげていくことを期待しています」と川﨑氏は説明します。
現場との意見交換も活性化、今後はHACCP対象業務にもカミナシを展開予定
カミナシを導入して、品質管理部の陳氏の仕事上のストレスは解消されつつある。「確認する書類は月間で50ページほど削減できました。カミナシだと不備や漏れがあれば入力時にわかるので、こちら側で遵守検証・指摘する手間がなくなります。これにより、現場に書類を戻すストレスがなくなりました」と陳氏は笑顔を見せる。
また現場からも「以前は紙の印刷やファイリングの手間もあり、記入漏れも発生していました。カミナシだと今日記録するべきすべてのチェックシートがカミナシ上にあり、カミナシに記入すれば必要な書類が全部完成できるのでとても楽になりました」との声が陳氏に届いたという。「紙ベースだった時に比べ、現場とのコミュニケーションが活発になりました」と陳氏は話す。薄井氏も「カミナシの導入で、若手が活躍・提案できる余地が大きくなりました」と組織の変化を喜んでいる。また川﨑氏も「まだ紙業務が残っている分野はありますが、カミナシ化する業務分野をどんどん増やしたいです」と期待を寄せている。
最近では、月に1度ほど作成する調味液の作業手順もカミナシを活用してマニュアル化した。頻度の少ない業務手順をカミナシで設定しておけば、新人でも間違わずに調味液を作ることができ、研修にも役立つ。ヤマイチのHACCP対象現場は現在紙ベースで業務を行なっているが、昨年末のHACCPの監査時に電子帳票の利用が認められたため、今後HACCP対象の現場についてもカミナシの導入を進めていく方針だという。「HACCP関連では水質に関する作業や防虫・防鼠などいろいろな作業があるので、今月はこの帳票、来月はこの帳票、と大体の計画を立てています。それをカミナシに取り込んで、毎月必ず忘れずに全部の帳票が作成できている仕組みを目指し進めていくほか、普段の業務手順もカミナシに取り込んで漏れなく品質の高い作業を実現していきます」(陳氏)
「実はカミナシの導入を決めた時、すでにカミナシを導入している取引先企業から『ぜひ導入を進めて、万が一のクレーム時にしっかり対応できるようにしてください』とアドバイスを受けました。これを機に、より高品質な作業、商品が実現できると思います」と川﨑氏は力強く言う。今後カミナシの活用範囲が拡大することで、製造現場と品質管理の交流がさらに活発になり、高品質な製造ノウハウが継承されていくはずだ。
現場のこだわりポイント
加工品・仕入品全ロットの細菌検査体制
ヤマイチは、原料および製品の微生物検査、成分検査等を行う「品質管理室」を設置している。専任の検査員が仕入品・加工品の全ロット、パック製品についても定期的に細菌検査、塩分濃度、水分率、日持ち検査等を実施。製品の安全確保、品質のさらなる向上に取り組んでいる。
※本内容は2023年1月現在のものになります。
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