現場主導で取り組む業務改善が“仕事を楽にする”ーー品質にこだわる信州の精肉卸が取り組む、デジタルを活用した紙の削減と社内文化の変革サムネイル画像

吉清グループ

業種
食品製造業
導入規模
51〜100名
利用目的
HACCP、品質管理

現場主導で取り組む業務改善が“仕事を楽にする”ーー品質にこだわる信州の精肉卸が取り組む、デジタルを活用した紙の削減と社内文化の変革

「信州プレミアム牛」をはじめとする銘柄肉を豊富に取り扱う精肉卸を軸に、食肉加工やECサイト事業も展開するのが、総合食肉卸の吉清グループ。肉の信頼性と品質管理にもこだわりを持つ同社では、2021年11月にDXを推進する取り組みの一環として現場DXプラットフォーム「カミナシ」を導入し、品質管理のための紙の削減と、管理業務の大幅な効率化を実現されました。導入から約1年経った現在、その効果と社内で起きた変化について、導入プロジェクトの責任者である牧野様、レポート作成や社内推進役を担った品質管理室の清水様、本社工場の小林様、営業の梶屋様にお話を伺いました。

導入背景

  • DXを推進していくために、まずは現場の紙を削減したい
  • 管理の手間と時間を削減して、業務を効率化したい

導入効果

  • 約1,500枚/月の紙帳票の削減と業務効率化を実現できた
  • 記録の抜け漏れをなくして品質管理を徹底できるように
  • 現場主導でDXに取り組む足がかりとなった

仕事の仕方を見直して工数を削減
さらに業務効率化のためにツール導入を決断 

事業内容を教えてください。

牧野様:当社は長野県飯田市にある肉の中卸・加工業者です。信州プレミアム牛や信州オレイン豚をはじめとする厳選した銘柄の牛豚の一頭買いから解体、加工、卸を一貫して行う有限会社 吉清と、調理品の製造を行う信州セキュアフーズ株式会社があります。自社ECサイト「お肉 の時間。」や「お肉の自販機」といったユニー クな販売にも注目いただいていますが、1987年の創業以来「安心・安全・美味しさ」にこだわった高品質な精肉を提供しており、南信州エリアでは先駆けて ISO/FSSC22000 を取得するなど、高い品質での安全管理を行うことに積極的に取り組んでいます。

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ご担当の業務を教えてください。

牧野様:吉清グループのバックオフィスを飯田(吉清本社および信州セキュアフーズ飯田支店)4名、松本(信州セキュアフーズ本社)2名の従業員と一緒に統括しています。バックオフィスの主な業務として、人事、 労務、経理、システムなど、売る・製造する以外のことは殆ど業務として行っています。今回のカミナシ導入にあたり推進責任者として、プロジェクト全体の統括管理と進捗管理を行いました。

小林様:私は本社工場の作業場は、カット室・パック室と分かれています。カット室(レトルトに加工する原料の加工を行う)には自分を含めて5名いて、私はそのリーダーをしています。工場長との連携、在庫の管理、そのほか作業の流れや人の配置を考えています。事務作業は、普段だと1日30分位、当日作業した製品を生産日報にまとめて、パソコンに入力しています。カミナシの導入にあたっては、入力するひな形(フォー ム)の作成や、社内での利用推進を担当しました。

梶屋様:営業部 飯田営業課において、担当する飯田地区のルート営業を行っています。得意先は、精肉店・加工工場・量販店・飲食店と多岐にわたり、それぞれの得意先へきめ細かい対応が出来るよう心掛けて営業を行っています。今回のカミナシ導入では、社用車の管理表を中心にひな形作成を行い営業部への導入を担当しました。

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(写真左から)有限会社吉清 総務部 部長 牧野様、本社工場 小林様、信州セキュアフーズ株式会社 営業 梶屋様

DXにどのように取り組まれていますか?

牧野様:“DX” という言葉は2021年3月頃から話が出てくるようになりましたが、社内のシステムにどうやって一貫性を持たせてデータの入力から出力までを繋げるか、バックオフィスと工場でそれぞれかかっている工数を減らしていけるか、という課題は以前からあがっていました。当社のように100人前後の会社の場合、バックオフィスの人員は10〜15人が必要だと言われているところ、約半分の7人で担当しているので 比較的業務工数はかかっていないと言えます。

 しかし、工数を削減することでバックオフィスの人材を他にも回せるようになりますし、まだ削減できる部分があると考えていまし た。と言うのは、これまでずっとバックオフィスの工数削減は単純に仕事の仕方を見直すことで業務を減らしてきていて、システムを活用した効率化にはあまり取り組んできていなかったからです。とはいえ、現場に工数を削減してくれと言っても、簡単に削減することは難しいものですから、まずは、呼びかける側から率先してやっていかなければならないと考えています。

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「課題を感じていないこと」が課題
現場から改善の声があがる、そんな社内文化にしたい

これまでの紙を使った業務に、どのような 課題がありましたか?

牧野様:実を言うと、紙を使った業務に課題を感じていたと言うよりも、「課題を感じていないこと」に課題を感じていました。いま行っている業務に対して特に疑問を持たない、改善しなければならないとは考えない、そうした社内の文化や雰囲気を変えたいと考えていました。 そこで、現場から「こういうことをしたいんですけどー」という改善の声があがってくる社内文化に変えていくために、従業員が納得しやすい「紙をなくしましょう」という目標を掲げて取り組みをスタートすることにしました。

 紙をなくす、減らすことに主眼に置いて、では何をやっていきましょう、と考えていく過程で意識の改革が進んでいくことを期待していました。デジタル化の推進といっても色々な方法がありますが、いざ行動に移していく時に DX とかデジタル化の必要性だとか、実務から距離のある話をしても従業員は納得しづらいですよね。

カミナシの導入はどのように決めましたか?

牧野様:ノーコードツールでなければ、なかなか現場で使えないと考えていたところ、Google Forms が使えるかもしれないよ、と人から教えてもらったので、実際に入力フォームを作成して検討していました。その最中に、社長が「これよくない?」とカミナシの資料を持ってきたのをきっかけに、運良くカミナシに出会えたので現在の状況に至ります。

 それ以前に導入していた RPA(Robotic Process Automation)と比べると、カミナシの導入はかなり楽にできる印象を持ちました。機能については、こちらからこういうことできますか、と結構細かく聞きました。例えば、多言語化。今現在カミナシを導入している工場ではありませんが、他の工場に外国籍の方が就業しているので、多言語化できないと難しいと当時、考えていたからです。そこで多言語化できることをきちんと説明していただいて、だったら大丈夫かな、と思ったことを覚えています。

 当社の社長はすぐに「うん」と言うことがなかなかない人ですが、その時はすぐに「いいんじゃない」となりましたし、他のツールはいっさい探しませんでした。あの時、できることを的確に説明していただいたので、導入した後も滞りなく今があると考えています。Google Forms の場合、うまくいかなくても助けてもらえないですよね。でもカミナシは当面、助けていただけるってことだったので。

品質管理に利用していた50枚の帳票をカミナシ化
営業先でもスマホ1つで確認作業が完了

現在のカミナシの利用状況を教えてください

小林様:2つの工場では、製造設備の始終業点検、金属検査、貼付ラベル確認など、主に品質管理のために毎日50枚ほど発生していた紙の帳票をカミナシでタブレットに置き換えています。始終業点検は完全にカミナシに移行できていて、紙がなくなっている状況になります。最初の段階では、手作業でやっている時と、タブレットにした時と、どちらが楽なのか、と気にしてはいましたが、作業するにつれて記録もス ムーズにできるようになっています。これまでは毎日、記録したものを全部まとめて工場長や責任者に持っていく作業がありましたが、それがなくなりましたし、工場長が事務所にいる時でも確認や承認をするために席を立つ必要もなくなりました。また、時間にすれば数分のことですが、紙の回収を忘れて事務所に戻り、また工場内に取りに戻ることも今はありません。

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梶屋様:営業用の冷蔵車両が全部で10台ほどあり、朝の出発前、午後、と車両を動かす時に都度、スマートフォンでカミナシを立ち上げて温度を記録しています。温度の管理と、庫内を清潔に保てているかという衛生管理記録を行っています。営業車両の確認作業は、これまで月に1枚の紙に、記録をする時にはペンを出して記録していたので、わざわざペンを出したり、出す時に車内に落として拾うのも大変だったり、面倒だと感じることもありました。

 それがスマホになって楽になりました。また、以前はまとめて記録することもありましたが、今は毎日必ずやりますし、できているかどうかの確認も月末ではなく毎日できるようになっています。車内には冷蔵庫の電源があるのですが、もし何かの拍子にうっかり電源を切ってしまうことがあっても、カミナシで欠かさず確認を行っていれば、電源が切れていることに気づけるようになったところがいいと思います。

導入時に工夫されたこと、苦労されたことはありますか?

牧野様:導入に関しては「どれだけ楽にできるか」を特に重視しました。ノーコードを選んだ背景として、作る時にどれだけ楽ができるかという点が重要でしたし、カミナシのサポート担当の方にも「現場の方が楽にできること」を主眼にしてひな形を設計していただきました。現場の人間にも、どうやったら楽になれるか、楽ができるか、ということを考えて作って欲しいと伝えていました。体制面の工夫としては、今回カミナシの導入にあたってチームを組む時、役職者をいっさい入れないということを念頭におきました。トップダウンで各課の課長から落としていくのが一番楽ですが、実際に現場を知っている人達にやってもらって意見を聞きたかったので、今回の導入担当チームは全員が役職を持っていない従業員です。

 毎日別の場所で働いている従業員同士、部門をまたいだ取り組みは今回が初めてで、従業員同士で話をすることで横の繋がりを生んだと思います。導入準備の途中から月に1度、カミナシの導入準備のために半日ほど集まる時間を設けていて、その時に黙々と作業する時間もありましたが、どうすればいいか一緒に考える時間もありました。部門が異なるとお互いにわからないところが出てきますので、その辺はきちんとコミュニケーションをとって準備を進めている様子でした。

小林様:ひな形の作成を始める時、どの情報が必要で何が記録されていないといけないか工場長に確認に行ったり、ひな形が何を指しているものか見出しを付けたり、必要な情報を判断していらないものを削除したりと手間はありましたが、ひな形の作成自体はすぐに慣れました。自分はパソコンを普段使ってないため、ひな形作成に30分程度かかりますが、パソコンに慣れている人なら5〜10分でできると思います。

 ひな形を作る時には、記録する人達が感覚的にわかりやすい、見やすいように工夫しています。作成した後は、朝礼の時にみんなの前で自分が操作しているところを見てもらいながら「こういう場合にはこう操作してー」と教えました。不安そうな方には慣れるまで一緒に記録しました。利用開始当初は「これどうすればいいの?」と頻繁に不明点を聞きに足を運んでくれた人もいました。よく聞かれた質問は、入力したい帳票に辿り着くまでにどこを押せばいいのか、記録を忘れて時間が過ぎた後でどう記録したらいいの か、といった操作のことでした。

カミナシを導入して、現場から改善アイデアが出てくるように

カミナシを導入して社内に変化はありましたか?

牧野様:現場から改善案があがってくることに期待を持っていましたし、カミナシを入れることでその期待に対してなんらかの効果があって欲しいという想いで導入を行ってきました。 実際にカミナシを使うようになってから、小林からは違うソフトを使って紙をなくすという改善案も出てきましたので、カミナシを導入したことで一定の成果が出ていると考えています。

どのような改善提案をされたのでしょうか?

小林様:納入管理表や原料調達の際の記録のような日々変動していく帳票は、今はまだ簡単にカミナシに移行できないので、iPad に元々入っている Apple 純正アプリの Numbers を使う方法を提案しました。知人が会社での品番の管理に Numbers を利用しているという話を聞いて、何かしらできるのではないかと。

牧野様:カミナシでできないなら Numbers でやりませんか、と自ら提案してくれたんです。作ったものの出来が良かったので、すぐに採用してそのまま導入しました。今、iPad を使ってデータを入力する時は、カミナシか Numbers か、どちらかを立ち上げて行っています。Numbers で入力したデータに関してはすでに RPA(Robotic Process Automation)で 基幹システムに繋げることができたので、工場が入力した製造した各品目の製造量を RPA が拾ってきて基幹システムに連携させ、伝票発行まで人の手を介さずにできるようになっています。

今後の活用予定について教えてください。

牧野様:ゆくゆくは現場の記録や確認作業の紙については全てカミナシに移行して、100%ペーパーレスにする目標に向けて導入をしていくだけだと思っています。カミナシでできるようになることは基本カミナシで、と。理由は作りやすさです。いくつもツールを見ましたが、カミナシがいちばん作りやすいと思います。現場もカミナシなら使いやすいでしょうし。まだ紙のままで運用している帳票や承認業務がありますが、今後のバージョンアップで機能が増えてくれば帳票の記録は全部カミナシでデジタル化を実現したいです。

また、カミナシを導入したことで、レポートを作成する全従業員がiPadを使えるようになったので、デジタル活用の土壌ができたといえます。これをきっかけに他のアプリを使った業務の改善にも取り組みやすくなりました。 これから現場主導でどうやったら楽になれるかを考えられる会社の文化になっていけばいいと思います。

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牧野様の考える「現場DX」

“仕事に余裕が持てるようになり 他者に対して優しくなれる環境ができること”

 自分たちがどうやったら楽に仕事ができるか「考える」という姿勢が定着するといいですね。 それには教育が大切になってきますが、現場の仕事が最優先で、教育のための取り組みはどうしても後回しになる、というのがこれまでの状況です。 教育を受ける、勉強する、ということも仕事の一環と考えられるようになると嬉しいかな。

 どうしても工場でモノを作るのが仕事、だから給料もらっているのはその部分でもらっていて、下手をするとそれらが終わってからでないと勉強をしてはいけないという環境は望ましくありません。DX の効果として一番望んでいることは、仕事に余裕を持てるようになり、他者に対して優しくなれる環境ができること。現場のモノを作る以外の仕事をしていても、それも仕事の一部だよね、といった他者への配慮にも繋がってくると思います。

 
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