東北電力グループの一角を担う株式会社ユアテック(以下、ユアテック)。1944年の設立以来、総合設備エンジニアリング企業として、オフィスビル、工場、病院などの各種設備を支えてきた。国内に81カ所の事業所を有し、従業員数は連結で約5,500人にのぼる。また、海外3カ国に事業所を展開しており、アフリカや東南アジアなどの30カ国で施工実績を有するなど、海外にも事業の裾野を広げている。
ユアテックの特徴は、東北電力グループに属しながら、グループ外の工事を数多く受注している点だ。2023年度3月期の個別売上高によれば、約2,100億円の全売上のうち57%にあたる 1,191億円を東北電力グループ以外の取引先から受注している。東北電力グループの安定した事業基盤を有しながら、ゼネコン、官公庁、一般企業、海外市場の需要を取り込み、さらなる事業拡大を図るのが狙いだ。
そうした目標に向け、同社は2021年に5ヶ年の中期経営方針を策定。「能動的な行動と変革への挑戦で新たな時代を築く」を掲げ、「関東圏での収益拡大」「海外事業の強化」などの各種施策を推進している。さらに、成長戦略に基づく投資枠は2024年度までに300億円を見込んでおり、DXやサステナビリティなどへの投資にも余念がない。
安定した事業基盤を持ちながらも、競争力強化や収益拡大に積極的に取り組むユアテック。そのなかで、近年、特に注力しているのがDXだ。2023年に同社が初めて発行した統合報告書では、DXが極めて重要な施策として位置付けられている。その狙いとは何なのか。経営企画部IT戦略システム企画グループリーダーの佐藤氏は「今後、当社が企業競争力を高めていくうえで、DXは欠かせない施策です。」と語る。
「業界を取り巻く環境は、2024年度からの時間外労働規制の建設業適用、担い手不足や少子化、材料費や人件費の高騰などにより厳しさを増しています。中期経営計画に掲げる成長戦略を実現していくためには、業務の効率化による生産性の向上、競争力の強化が欠かせません。しかしながら現場業務をはじめ建設業にはまだまだアナログな文化が根強く、なかなかデジタル化が進まないのが現状です。そこで、当社はDXを経営戦略における重要施策と位置付け、専門組織を設置するなど、全社を挙げてデジタル化に向けた取り組みを加速しています。」(佐藤氏)
2022年4月、ユアテックはDX推進の専門組織として「DX推進委員会」を設置。DXに係る10の施策を策定し、同委員会を中心に取り組みを進めている。そして、それらの施策の試金石となるのが「業務プロセスの最適化を前提としたペーパーレス化」だ。DXのボトルネックとなっている紙の帳票をデジタル化し、将来的には蓄積データをAIにより有効活用していくなどの高度な施策に繋げていく。なかでも、紙の帳票を数多く用いる現場業務は、DXの基点ともいえる領域だった。そのため、同社はまず現場業務にフォーカスを絞り、新たなシステムの導入に向けて動き出すこととなった。
しかし、ペーパーレス化は決して容易ではない。取り組みにあたって、DX推進委員会が社内の紙の帳票数を調査したところ、全体の約7割超が工事関係書類であることが判明。
その一方で、紙の帳票がユアテックの業務生産性を低下させているのも確かだった。各事業所には、紙の帳票が膨大に保管されており、ファイリングや保管、廃棄などに多くの手間が費やされていた。また、紙の申請書や稟議書は、オフィスでしか承認作業を行えないため、数日間事業所を外していた管理職のデスクには大量の文書が積みあがった。これは、管理職の業務負担に繋がっていたとともに、意思決定を遅滞させる要因でもあった。
こうしたなかで、ユアテックはカミナシと出会う。きっかけはSNS広告だった。DX推進委員会のメンバーであり、カミナシの導入に携わった経営企画部IT戦略システム企画グループの佐々木氏は、カミナシの導入に至る流れや第一印象を振り返る。
「当時の上司がSNS広告でカミナシを目にして、『便利そうなシステムがあるから調べてみてほしい』と伝えてきたのがきっかけでした。それで、カミナシについてリサーチしはじめたのですが、画面がとても見やすく、『このシステムならいけるのではないか』と感じたのが第一印象です。現場業務にシステムを導入するうえで、最大のネックは『現場からの抵抗』です。建設業界は他業界に比べて平均年齢が高く、現場ではPCやタブレットを利用する機会もほとんどありません。そのため、システム導入に多少の抵抗が予想されたのですが、カミナシのように画面がわかりやすく、操作しやすいシステムであれば、スムーズに導入できるのではないかと感じました。そこで、カミナシを候補としてピックアップし、他の製品と比較する形で選定作業を進めました。」(佐々木氏)
ユアテックはカミナシを含む2製品で比較検討を実施。実際に製品を利用した検証も実施し、機能、価格、費用対効果など、幅広い観点でシステムを比較した。その結果、選定されたのがカミナシだった。決め手になったのは、カミナシの操作性の高さ。検証では、佐々木氏らDX推進委員会のメンバーがひな形の作成を行ったが、画面の設定や条件分岐などの機能をスムーズに習熟できた。
また、比較検討にあたって算出した費用対効果も導入を後押しした。DX推進委員会は紙の帳票にまつわる印刷、記入、回付、保管などの業務プロセスを可視化し、それに要する時間を人件費換算して費用対効果を算出。その結果、試算された効果は、1帳票あたり約1,000万円/年だった。このインパクトは大きかった。
現在、ユアテックはカミナシの社内展開を進めている。安全・品質管理部や各施工部門、事務局(経営企画部)をメンバーとしてプロジェクトチームを組成。電気設備部門と空調管理設備部門を皮切りに、社内全体にシステムを展開していく予定だ。第一弾となる電気設備部門と空調管理設備部門には、約300アカウントを配布し、デジタル化を進めていく予定としている。2024年1月以降の本番運用を目標に、目下、導入や設定、現場の機能習熟を進めているところだ。プロジェクトチームにおいて実務担当を務めている経営企画部IT戦略・システム企画グループの中井氏は、導入の様子について説明する。
「カミナシの導入は、当社にとって大きな転機となる取り組みです。そのため、困難も少なくありませんが、サポートの手厚さもあって、プロジェクトは着実に進んでいます。比較検討の段階から印象的だったのですが、カミナシはサポートサイトが充実しているので、操作や設定に疑問があっても、ほとんどの場合、自己解決可能です。また、カスタマーサポートの皆さんのフットワークも軽く、問い合わせのメールにも素早く返答してくれます。先の長いプロジェクトには不安がつきものですが、サポートの手厚さがその不安を解消する心強い味方になっています。」(中井氏)
ユアテックのカミナシ導入プロジェクトは始まったばかり。現在、プロジェクトチームは導入に並行して、各部門への啓蒙に力を入れている。ペーパーレス化やデジタルの活用により、どのように業務が効率化され、どのような効果が生まれるのか。そうした説明を通じて、DXに前向きな社員を増やし、仲間を増やしながらプロジェクトを推進していきたいという。
今後の展望について尋ねると、佐藤氏は「今回のプロジェクトを基点に、DXの推進に弾みを付けたいです。」と話した。
「当社は今後、風力発電などの再生可能エネルギー市場やカーボンニュートラルを見据えた省エネ市場、関東圏や海外などポテンシャルの大きな市場を取り込みながら事業拡大を目指すこととしています。企業競争力の強化に向けては、DXの推進による生産性の向上はもちろんのこと、増加を見込む工事量に対応する人財の確保、育成強化が欠かせませんが、少子化に伴い採用競争が激化していること、また建設業の仕事は厳しいといったイメージもあり、施工要員の確保が難しくなってきています。特に若い世代の人財を確保するためには、現場は厳しい、古臭いといった負のイメージを払拭していく必要があります。現場業務は成果が形となって残ることで達成感を得られるなど、非常にやりがいのある仕事です。そのためにも最新のデジタルツール等を活用し、効率的かつ魅力ある現場業務の実現に向け、DXの存在が欠かせないと思っています。その第一歩として、カミナシによるペーパーレス化は、必ず成功させなければいけない施策だと思っています。」(佐藤氏)
佐藤氏は「カミナシは当社のDXにおけるメインツールです。」と力強く語った。今後、ユアテックはカミナシの全社展開を進め、2025年度中の社内文書の完全ペーパーレス化を目指す。そのなかで、カミナシがどのように活躍し、同社の事業を変えていくのか。今後のプロジェクトの動向からも目が離せない。
TEXT:島袋龍太
※本内容は2023年11月現在のものになります。
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