設備トラブルを防止するには、保全部門だけではなく現場で働く作業者(オペレーター)一人ひとりが自主保全に取り組むことが欠かせません。そのために必要な自主保全とは、オペレーターが設備の状態を確認し、生産ラインが停止しないようにする活動です。自主保全のような設備保全に関わる活動を現場に関わる全員が行うことで、生産性と安全性を維持できます。
本記事では、自主保全の概要や目的、7つのステップを紹介します。オペレーターに必要な4つの能力や自主保全を推進するためのポイント、効果的なツールも紹介しているので、自主保全ができる人材を育成したい方はぜひ参考にしてください。
目次自主保全とは
自主保全(autonomous maintenance)とは、現場で働く作業者(オペレーター)が設備の状態を確認し、未然に設備トラブルを防止する活動です。生産現場で働く全員が保全を実施する、TPM(Total Productive Maintenance:全員参加の生産保全)の活動の一つに含まれます。
自主保全は上司や保全の責任者から指示されるのではなく、オペレーターが自ら行動し、ルールを遵守することが特徴です。オペレーターが自ら行動することで保全を行う必要性が理解でき、リスクを意識して作業が進められるようになります。
自主保全の目的
自主保全の目的は、機械や設備トラブルをなくし、ダウンタイム(生産停止)の発生リスクを最小限することです。
設備トラブルが生じると生産ラインが停止し、生産計画に遅れが生じます。生産計画が遅れると納期に間に合わなくなり、取引先からの信用を失いかねません。
生産ラインの停止には、短い時間停止するチョコ停や、1時間以上停止するドカ停などがあります。チョコ停やドカ停が発生することで、不良品の発生率が高くなり、生産性が低下します。
ほかにも自主保全を怠ることで、設備トラブルによるオペレーターのストレス負担の増加や、現場で働く従業員がケガをするリスクも高くなる可能性があります。
そのため設備トラブルを抑えるためには、保全部門以外にも、オペレーターが日常的に使用している設備を確認し、生産性や安全性を維持することが大切です。
自主保全に必要な3つの段階と7つのステップ
自主保全は7つのステップに分かれており、それぞれ以下の3つの段階に分けられています。3つの段階と7つのステップを理解することで、適切な自主保全活動が可能になります。設備保全担当だけでなく、現場で働く従業員(オペレーター)も内容が把握できるように、社内で共有し、理解までつなげましょう。
自主保全の3つの段階 | 7つのステップ | 具体例 |
|---|---|---|
第1段階:劣化を防ぐ活動 | 1.初期清掃(清掃点検) | ・設備本体を清掃し、ごみや汚れを取り除く |
2.発生源・困難個所対策 | ・ごみや汚れの原因を見つけ防止策を講じる | |
3.自主保全仮基準の作成 | ・清掃や給油、増締めを必ず維持できるように、行動基準を作る | |
第2段階:劣化を測る活動 | 4.総点検 | ・点検マニュアルを用いた技能教育を行い、設備の小さな欠陥を見つけて元の状態に戻す |
5.自主点検 | ・効率的かつ確実な維持管理のため、自主点検用のチェックシートを作成し、定期的な点検を行う | |
第3段階:標準化と自主管理の活動 | 6.標準化 | ・各設備の管理項目をマニュアルに落とし込み、維持管理のシステム化を推進する |
7.自主管理の徹底 | ・会社の方針や目標に沿って改善活動を定常化し、設備管理を推進する |
自主保全に必要な3つの段階と7つのステップの詳細
上記のステップで自主保全を進めることが一般的です。それぞれの段階について詳しく解説するので、自主保全を行う際は参考にしてみてください。
第1段階:劣化を防ぐ活動
劣化を防ぐ活動では、初期清掃(清掃点検)と発生源・困難個所対策、自主保全仮基準の作成の3つのステップを行います。劣化を防ぐ活動を行うことで、機械や設備が安定的に稼働するための基盤ができます。
劣化を防ぐ活動 | 詳細 |
|---|---|
1.初期清掃(清掃点検) | ・設備本体を清掃し、ごみや汚れを取り除く |
2.発生源・困難個所対策 | ・ごみや汚れの原因を見つけ防止策を講じる |
3.自主保全仮基準の作成 | 清掃や給油、増締めを必ず維持できるように、行動基準を作る |
1つ目のステップでは、点検する上での清掃の重要性を学びます。初期清掃(清掃点検)の目的は、ごみや汚れを徹底的に排除し、油漏れやネジの緩みなどの不具合を発見し、復元して設備状態を維持させることです。
設備保全の基本条件である、以下3つに取り組むことが大きな特徴です。
設備保全の基本となる活動 | 詳細 |
|---|---|
清掃 | ごみや汚れなどの原因を把握し、防止策や簡単に清掃する方法を考える |
給油 | 油漏れや給油過剰がないかなど、設備に必要な潤滑油が適量か点検する |
増締め | ネジやボルトの緩みを点検し、再度締め付けや緩まないための対策をする |
設備保全の基本となる活動と詳細
2つ目の発生源・困難個所対策では、ごみ・汚れの原因を見つけ、清掃や点検を行い、改善をします。改善を繰り返すことで、オペレーターに改善の習慣が身につき、自ら問題点の発見、改善ができるようになります。
3つ目のステップでは、設備保全が確実に行われるように、自主保全仮基準を作ります。自主保全仮基準とは、1~2のステップで行った清掃や改善を維持するためにオペレーター自らが設定した基準を指します。自主保全基準を設定する前に、試作版として仮の基準を作ります。
設備保全に向けてオペレーターが取り組みやすい基準を作り、自ら設備の維持管理に取り組めるようにします。
劣化を防ぐ活動を行うには、以下の道具を用いるのが一般的です。それぞれ必要な道具を用意し、自主保全に取り組める環境を作りましょう。
劣化を防ぐ保全活動で必要になるもの | 必要な道具の具体例 |
|---|---|
設備の清掃道具 | ・エアーガン |
点検に必要な道具 | ・温度計 |
復元に必要な道具 | ・グリースガン |
記録や報告に必要な道具 | ・スプレッドシート |
自主保全を行う際に必要道具
第2段階:劣化を測る活動
劣化を測る活動では、総点検と自主点検の2つのステップを行います。設備の総点検技能の教育と実践を通じて、劣化の原因を把握し予防することが特徴です。第1段階の劣化を防ぐ活動では既存の不具合や異常が対応範囲ですが、第2段階では新しい問題に対しても対応できる知識やスキルが求められます。
劣化を測る活動 | 詳細 |
|---|---|
4.総点検 | 点検マニュアルを用いた技能教育をオペレーターに行い、設備の小さな欠陥を見つけて元の状態に戻す |
5.自主点検 | 効率的かつ確実な維持管理のため、自主点検用のチェックシートを作り、定期的な点検を実施する |
4つ目のステップは、点検マニュアルを用いてオペレーターの技能教育を行い、設備の構造や機能、原理などの理解を深めます。設備の電気系統や駆動系統などすべての設備を総点検し、問題点を細部まで確認して復元できるように育成するのが特徴です。
5つ目のステップでは、1~4のステップで学習した内容を基に、自主保全基準書を作ります。設備の維持管理のみならず、設備の信頼性や品質を高められ、自主的に基準の見直しや改善を行えるように育成するのが主な目的です。
4と5のステップを実行するには、1~3のステップの道具に加えて、設備の理解を深めるために、基準書や設計図などの以下を用意しましょう。
劣化を防ぐ保全活動で必要になるもの | 必要な道具の具体例 |
|---|---|
点検に必要な道具 | ・設備に取り付けるセンサー |
点検項目を確認するための道具 | ・基準書 |
自主保全を行う際に必要道具
以下の記事で具体的な保守や点検の方法を詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
▶︎ 保守点検とは?目的やメリット、効率的に行う方法も紹介
第3段階:標準化と自主管理の活動
標準化と自主管理の活動は、標準化と自主管理の徹底の2つのステップを行います。これまでの総仕上げの段階で、オペレーターが自主保全に必要な技能を身につけ、自律的に活動を展開します。第2段階の劣化を測る活動とは異なり、担当する設備や環境が変化しても自主保全を問題なく行えるようにすることが特徴です。
第3段階では、6および7のステップに取り組みます。
標準化と自主管理の活動 | 詳細 |
|---|---|
6.標準化 | 各設備の管理項目をマニュアルに落とし込み、維持管理のシステム化を推進する |
7.自主管理の徹底 | 会社の方針や目標に沿って改善活動を定常化し、設備管理を推進する |
6つ目のステップでは、設備管理に加えて以下のようなことに取り組み、標準化を促します。
予備品の在庫管理や使用履歴の管理
品質の確認項目の作成や基準値の設定
治工具の点検項目の作成
記録フォーマットの作成
安全を考慮した作業手順の作成や、設備で使用する保護具の設定
など
製造工程すべてを日常的に管理できる体制を整備し、維持管理をするのが主な取り組みです。
7つ目のステップでは、1~6のステップをすべてまとめ、会社の方針や目標に沿って改善活動に取り組みます。どの設備を担当してもオペレーターが積極的に保全活動をし、自主保全が推進される職場を実現します。
6と7のステップを実行するには、1~5のステップの道具に加えて以下も必要です。
劣化を防ぐ保全活動で必要になるもの | 必要な道具の具体例 |
|---|---|
標準化を実現するための道具 | ・手順書 |
マニュアル作成に必要な道具 | ・マニュアル作成ツール |
記事で紹介している7つのステップにおける実施事項は、あくまで一例なので、自社にあった自主保全の方法を見つけましょう。

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自主保全に必要な4つの能力
自主保全の実現には、オペレーターを設備に詳しい人材へと育成することが大切です。オペレーターが簡単な修理や改善などを実施できるようにするには、4つ(異常発見能力や処置回復能力、条件設定能力、維持管理能力)の能力を養成する必要があります。必要な能力について把握することでオペレーターの育成方針を立てやすくなるため、ぜひ参考にしてください。
自主保全に必要な4つの能力 | 詳細 | 活用シーン |
|---|---|---|
異常発見能力 | オペレーターが異常を異常だと認識できる能力 | ・普段と異なる振動の察知 |
処置回復能力 | 異常が発生した際に早急に対応し、設備を元の状態に戻す能力 | ・自分で対応できる範囲か専門家に依頼すべきかの意思決定 |
条件設定能力 | 正常と異常の判断を定量的に測れる能力 | ・設備の異常音の設定 |
維持管理能力 | 設定した条件やルールを守り、適切に維持管理できているか監視する能力 | ・定期点検の項目や頻度の設定 |
自主保全に必要な4つの能力と詳細
現場の従業員を巻き込み自主保全を推進する5つのポイント
自主保全を推進するポイントは、主に5つあり、これらを押さえることで自主保全の基本的な体制が作れます。オペレーター全員が自主保全できる環境を整えるためにも、ぜひ参考にしてください。
自主保全3種の神器の活用
不具合につける絵札「エフ」の活用
ECRS(イクルス)を用いた改善
自主保全士の資格習得を促す
設備保全システムの活用
1.自主保全3種の神器の活用
自主保全を定着させるための道具として、3種の神器と呼ばれるものがあります。それぞれの使い方やメリットなどを詳しく紹介します。
活動板
ミーティング
ワンポイントレッスン
【自主保全3種の神器】活動板
活動板は、自主保全の内容を可視化する掲示板を指します。自主保全の活動内容や活動方針、進捗状況などを活動板に掲載し、周りの作業員と情報共有するために用います。
活動内容は日常的に更新し、新しい情報を手に入れられるようにすることが大切です。活動板に掲載する情報は、全員が活動内容を理解できるように、わかりやすく書きましょう。内容がわかりにくいと理解が不足したまま作業をすることになり、自主保全を促せません。
できるだけ内容が伝わりやすくするために、活動内容と結果、問題点、改善案などの構成で紹介し、画像やグラフを用いて見やすい活動板を作りましょう。
【自主保全3種の神器】ミーティング
自主保全の方針をまとめるためにも、ミーティングを実施しましょう。自主保全は設備に対し一人ひとりが自主的に取り組むものですが、全員で共通認識をもっていないと方向性がばらばらになりかねません。方向性が定まらないと、オペレーターごとに点検の基準が異なり、設備の維持管理が適切にできないおそれがあります。
定期的にミーティングを実施することで、自主保全の活動内容を共有でき、オペレーター自身がすべき行動が明確になります。ミーティングは、最新情報を共有するために週1程度の短い間隔で開催しましょう。
また、ミーティングに活動板を用いることで、普段活動板を見ないオペレーターにも最新情報を共有でき、保全活動の方向性を統一化できます。
【自主保全3種の神器】ワンポイントレッスン
ワンポイントレッスンは短い時間で実施する教育方法です。自主保全の知識や作業のポイント、改善事例などを教材にして、オペレーターを教育します。
現場での教育はまとまった時間を取りにくく、反復学習が必要といった特徴があるため、5分程度の短い時間で行うことが大切です。朝礼時や終了時などの時間で少しずつ覚えていくことで、オペレーターの記憶に定着しやすくなります。
ワンポイントレッスンで使用した教材は、マニュアル化し、繰り返しいつでも見れる環境を作ることも大切です。教材をいつでも閲覧できる体制を整えることで、オペレーターが自ら学習し、自主保全が実践されやすくなります。
2.不具合につける絵札「エフ」の活用
エフとは、設備の問題箇所に貼りつける絵札のことを指します。設備の不具合や5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の不備などを可視化する「エフ」を活用をすることで、誰が見ても不具合の有無がわかるようになります。
不具合のある設備と必要な処置の明確化や、不具合の処置漏れ防止のために、エフは取り付けられます。エフに記載する内容は、設備異常を発見したオペレーターの名前や日付、不具合の内容などで、設備の不具合があった箇所に取りつけるのが一般的です。
エフが取りつけられた設備は、自社の社員が確認および処置を行い、問題が解決したらエフを取り外します。改善完了後のエフ取りの際には、改善前後の写真と実施した対策を記録として残します。
エフで設備を管理することで、異常があった際の処置漏れを防止でき、設備をトラブルなく稼働させ続けることが可能です。
ECRS(イクルス)を用いた改善
自主保全で改善点を見つける際は、ECRS(イクルス)を用いましょう。ECRSは、排除と結合、入れ替え・交換、簡素化の4つの観点で課題を発見し、改善する手法です。
ECRS | 詳細 |
|---|---|
Eliminate:排除 | 目的が明確でない作業や、ムダな作業を排除する |
Combine:結合 | 関連性のある業務や類似した業務を一つにまとめる |
Rearrange:入れ替え/代替 | 業務プロセスの順序を入れ替える |
Simplify:簡素化 | 自動化やパターン化などによって、複雑な業務を誰でも簡単にできるようにする |
ECRS(イクルス)の詳細
ECRSによって自主保全の業務改善をスムーズに行えるようになり、設備トラブルを未然に防げる体制を整えられます。
自主保全士の資格習得を促す
オペレーターに対し、自主保全に関する資格の取得を促し、知識やスキルを身につけさせることも大切です。
自主保全に関する資格として、公益社団法人日本プラントメンテナンス協会が主催する「自主保全士」があります。自主保全士は、製造部門が行うべき保全に必要な管理技術や設備の評価能力などを認定する、オペレーター向けの資格です。
資格取得によって、製造部門の一員として設備の自主保全が実践できる知識やスキルがあると評価されます。
自主保全は、オペレーターを巻き込んで推進することが大切です。全員に自主保全に必要な知識やスキルが定着することで、保全活動を適切に行い、設備トラブルを最小限に抑えられるようになります。
保全活動を適切に実施できるオペレーターを増やすためにも、製造部門全体で資格取得をサポートしましょう。
設備保全システムの活用
自主保全を効率的に行うには、設備保全システムの導入も検討しましょう。設備保全システムは、各設備の台帳管理や保全計画の管理、点検管理、修理管理などさまざまな機能が搭載されています。
自主保全では日常的に清掃や点検ができることが大切で、オペレーターが簡単に記録できる仕組みづくりが欠かせません。
設備保全システムを導入することで、オペレーターが点検内容の記録をスマートフォンやタブレット端末で手軽に記録でき、日々の設備管理が行いやすくなります。紙やExcelでの管理よりもデータの紛失のリスクが低く、データ管理も適正化されるのがメリットです。
システムによっては活動板の機能もあり、過去の保全活動を簡単に閲覧できます。活動板を新人オペレーター向けの教材として活用でき、人材育成にも有効です。操作性や費用対効果、セキュリティなどの観点から、自社に合う設備保全管理システムを導入しましょう。
以下の記事で設備保全システムの特徴や選び方についてより詳しく紹介しているので、合わせてお読みください。
▶︎ 設備保全システム10個を比較。特徴や失敗しない選び方を紹介
点検内容や気づきを正確に記録し、自主保全の定着を進める

自主保全に必要な能力を身につけるためには、日々の点検で得られた気づきや、設備の状態変化を正確に記録し、全員で共有できる仕組みが欠かせません。紙の点検表や個人管理では情報が残りにくく、学んだ内容や異常の傾向が活かされず、現場全体で能力を高める取り組みが進みにくくなります。
カミナシ設備保全では、現場からスマホで素早く記録し、そのままチーム全体に共有できます。紙やExcelに頼らず、“記録した瞬間から動ける”状態をつくりたい方におすすめです。
▼こんな方におすすめ
報告の抜け漏れや記入ミスを減らしたい
QRコードで設備ごとの記録をすぐ呼び出したい
現場と管理部門のやり取りをスムーズにしたい
自主保全で設備トラブルを減らそう
自主保全とは、オペレーターが自主的に設備の状態を確認し、トラブルを未然に防ぐ活動です。7つのステップと3つの段階で構成されており、各ステップを通してオペレーターを育成していくことが求められます。
自主保全を推進するには、3種の神器やエフ、ECRSなどを活用しましょう。設備保全全体の業務を効率化させたい場合は、システムを導入するのも効果的です。
カミナシ 設備保全は、自主保全を含めた設備情報を一元管理できるシステムです。スマートフォンやタブレット端末で利用でき、オペレーターがすぐに点検内容の入力や不具合の報告を行えます。
専門チームによる充実したサポート体制を整えており、現場での運用が定着するまで伴走します。
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