「攻めのDX」を推進する大手飲食チェーンのセントラルキッチンの取り組みとは
2025.02.13
株式会社すかいらーくホールディングスの課題
成果
成功事例を横展開し、DXを活用した「業務改善」を追求
「ガスト」「バーミヤン」など、日本の外食を支える店舗を運営する株式会社すかいらーくホールディングス。同社はITソリューションの積極的な活用を通じた、全社横断型のDXに取り組んでいる。こうしたなか、セントラルキッチンの一つである前橋工場は、カミナシを活用してライン作業などに用いられる紙帳票の削減を実施。現在は工場全体の約70%の紙帳票の削減が見込まれており、実現に向けてシステム展開が進んでいる。同工場はこの取り組みをモデルケースとして横展開し、DXを活用した「業務改善」を追求する。

日本を代表するすかいらーくグループを
群馬の地から支える前橋工場
数々の有名飲食チェーンを運営し、外食業界のリーディングカンパニーである株式会社すかいらーくホールディングス。1970年、東京都府中市におけるファミリーレストラン第1号店の出店を皮切りに店舗数を急速に増やし、現在は約3,000店舗を展開している。来店客数は年間約3.5億人にものぼる、日本を代表する飲食系企業だ。
同社の強みは、全国10ヶ所に展開するセントラルキッチン(自社工場)だ。食材の下処理などを集約して行うことで、品質の安定化や店舗の業務負担軽減が可能になる。お手頃な価格と安全・安心な料理の提供を実現するうえで、まさに要となる存在だ。そのセントラルキッチンの中で、店舗で提供するピザの製造や洋菓子等の製造を担っているのが前橋工場だ。1988年に開設された前橋工場には外国人従業員を含む約260名の従業員が勤務、月間で百万枚以上のピザを製造する。朝4時から稼働している同工場では、常時100人近い従業員が勤務するなど、群馬の地から全国の店舗を日夜支え続けている。

付加価値を生み出す『攻めのDX』を推進するため
紙の帳票の削減を決定
前橋工場は2024年からカミナシを導入し、ライン作業などに用いられていた紙の帳票の削減に取り組んでいる。同工場がカミナシを導入した経緯は何だったのか。生産本部生産開発グループディレクターを務める飯田中氏は「工場として『攻めのDX』に取り組みたかった」と話す。
「すかいらーくグループは、以前からグループを挙げてDXに取り組んでいます。2022年には『全社DX推進プロジェクト』を発足して全部署にDX専任担当者を配置するなど、店舗、本社、工場の垣根を越えた取り組みを進めています。コロナ禍には営業時間の時短要請などもあり、グループとして「守り」に徹する時期が続きました。しかし、コロナ禍が一応の落ち着きを見せた今、デジタル化を改めて推進し、収益を生み出す『攻めのDX』を実現したいと考えました」(飯田氏)
すかいらーくグループのDX戦略は、2030年を目標に4つのフェーズで構成されている。第1フェーズで店舗業務を中心にDXに取り組み、第2フェーズでその範囲をバリューチェーン全体に拡大、第3フェーズで基幹システムを再構築してグローバルIT基盤を確立し、第4フェーズでデジタル技術を活用した価値創出や社会課題解決を実現するという構成だ。
現在、すかいらーくグループはDX戦略における第1および第2フェーズにあり、前橋工場においても現場業務のデジタル化が喫緊の課題となっていた。このとき、焦点が当たったのが、製造ラインの作業で用いられている紙の帳票だった。紙の帳票は、始業・終業時の製造設備の点検、製造工程ごとの品質管理、従業員の体調チェックなど幅広い業務に用いられている。これらのアナログな作業は、今後サプライチェーン全体のDXを推進するうえで障壁になることが予想される。そのような中、飯田氏は『攻めのDX』として、品質管理・進捗管理・そして工場各所の点検結果を含めたトレース確保ができる状態にすることを掲げ、前橋工場は紙の帳票をデジタル化できるツールの導入を決めた。

カミナシの優れた操作性が従業員の反発を和らげ
デジタル化を後押しした
デジタルツールの導入にあたって、前橋工場は飯田氏を中心に複数の製品を比較検討。現場で運用ができることを目指した際に、カミナシの操作性を評価し、導入を決めた。カミナシはモバイル端末でチェックリストやマニュアルの画面を作成できるなど、ITの専門知識を有していなくても比較的容易にシステムを構築できる。比較検討した製品のなかには、Excelの帳票データを取り込んでシステム上で利用できる機能を持つものも存在したが、取込み後の操作や調整に手間を要し、専任の担当者を配備する必要があることが懸念された。その点カミナシは、専門知識や専任者を設けなくても、現場を知る従業員が容易に環境を作ることができることが評価された。
こうしてカミナシの導入を決めた前橋工場は本格的な導入作業に取りかかる。しかし、当初は現場の管理者を含めて紙の帳票の削減には不安を抱えていたという。導入作業を担当した生産本部 生産開発グループ 製品開発チームの田村義明氏と前橋工場で製造技術を担当する廣瀬暁氏は、当時の心境を振り返る。
「カミナシの導入について初めて話を聞いたときには、正直なところ消極的でした。工場はほぼ24時間稼働していて従業員は常に入れ替わりながら作業をしていますし、私自身も本来業務にかなりの時間を費やしています。そうしたなかで新たなデジタルツールを導入するのは現実的に難しいのではないかと考えていました。また、前橋工場には年配の従業員も多いため、タブレットの導入に対し抵抗感を持たれてしまう可能性も予想されました。しかし、実際のシステムを目にして当初の懸念がかなり解消されたのを覚えています。画面や機能が非常にシンプルで、かつ帳票ごとの標準テンプレートも数多く用意されているので、それほど手間なくシステムを構築できるのでは、と期待できました」(田村氏)
「現場ではこれまで膨大な量の書類を利用していたため、本当にそれらが置き換わるのか、現場がどう変わるのかのイメージがつきませんでした。しかし、確認する作業だけでもラクになるなら、早く導入したいと思っていました」(廣瀬氏)
そうした不安もありながら、しかしカミナシの導入は着実に進行していった。ボールペンで記号や数値を書き込む従来の紙の帳票からチェックリスト形式の画面に移行するため、画面のレイアウトや設問ごとに回答によって指示を分ける条件分岐の設定など、若干の試行錯誤が求められた。しかし、現場の従業員からフィードバックを受けながら微調整を重ねることで、タブレットに苦手意識のある従業員でも使いやすい画面を構築できた。さらに、当初は懸念されていた従業員からの反発についても、田村氏らから繰り返しかつ丁寧なレクチャーを続けるうちに、次第に定着が進んでいった。こうして前橋工場はカミナシを徐々に現場に浸透させていく。

カミナシの導入でデジタル化が急加速。年間3~4万枚の紙の帳票を約70%削減する見込み
現在、前橋工場は複数の紙の帳票をデジタル化し、カミナシに移行している。具体的には、従業員の身だしなみなどを定期的にチェックする「デイワーク」や、始業時と就業時の製造設備の点検記録である「始終業点検」、製造工程ごとの品質管理結果を記録する「品質保証カード」などだ。これらのデジタル化により前橋工場では業務効率化が進んでいると、前橋工場 加熱1ライン長の加賀谷正美氏と廣瀬氏は語る。
「私は食材を加熱する製造ラインのライン長をしているのですが、以前から紙の帳票には手を焼いていました。例えば、品質保証カードは1時間に1回定期的に記入するのですが、作業の合間に記号や数値を記入するので、従業員たちはしばしば文字が乱雑になりがちです。すると、終業後に記録をチェックする際に時間がかかり、管理者側の負担が増大します。もちろん、作業中にボールペンで紙の帳票に記入しなければならない従業員たちも少なくない手間を費やしていたはずです。しかし、現在ではそうした作業が不要になり、管理者・従業員ともに業務負担が削減されています」(加賀谷氏)
「前橋工場では外国籍の従業員の方にも活躍いただいていますが、若い世代の方が多いので、カミナシの導入に対しての心配はありませんでした。対して年代が上のベテランの方に浸透できるか心配していましたが、心配していたほどの変化はなかったように思います。今後利用する帳票が増えていった際にスムーズに使っていただけるよう、引き続き現場と連携しながら進めたいと思います」(廣瀬氏)
現在、前橋工場ではカミナシの導入から3ヶ月で月間200枚の紙の帳票が削減され、それに伴う印刷や保管などの付随業務も効率化されている。今後はカミナシの導入範囲をさらに広げ、残存している工場内の紙の帳票をさらに削減していく方針だ。その見通しについて、前橋工場 生産管理リーダーの中野広志氏は次のように話す。
「これまで前橋工場では年間3〜4万枚ほどの紙の帳票が発生していましたが、カミナシの展開が進めばそのうち70%ほどを削減できる見込みです。私自身、以前から大量の紙の帳票を保管し、保存期間が経過したら一斉に廃棄するという作業に徒労感を感じていたので、紙の削減には積極的に取り組んでいます。紙の帳票を削減できれば、工場内のスペースをすっきりさせられますし、快適な就業環境をつくるうえでもカミナシは貢献してくれると思います」(中野氏)

カミナシで「工場のデジタル化」の基礎ができた
グループのDXを先駆ける「リーディング工場」を目指す
カミナシの導入を推進する前橋工場が将来的に目指すのは、グループのDXを牽引する「リーディング工場」。自社拠点におけるカミナシ導入の成功事例を他の工場にも展開し、DX推進のモデルケースになるのが目標だ。その構想について工場長の田中健氏は語る。
「例えば、品質保証カードは全工場共通で利用されているため、前橋工場でデジタル化の成功事例を築けば、比較的容易に横展開することが可能です。品質保証カードは様式が複数あり、まだすべての様式をカミナシ上に移行できていないのですが、今後すべてをデジタル化して横展開を進められればと思っています。もちろん、工場ごとに製造する商品の種類や従業員の構成などが違うため簡単ではないと思いますが、これからも着実にデジタル化に取り組んでいく所存です。カミナシの取り組みを始めて、工場のデジタル化の基礎ができたと感じています。あとは進めていくだけだと思っています」(田中氏)
カミナシの導入を通じてアナログな業務を改善し、全体の約70%の紙の帳票の削減を見込んでいる前橋工場。しかし、同工場はその目標に満足することなく、グループのDX戦略を牽引する存在を目指し、貪欲にデジタル化に取り組んでいる。



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