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公開日 2025.02 .17

更新日 2025.08.18

HACCPにおける危害要因(ハザード)とは?3つの分類と具体例、分析の進め方を紹介

HACCPにおける危害要因(ハザード)とは?3つの分類と具体例、分析の進め方を紹介

HACCPにおける危害要因分析は、食の安全性を確保するための重要なステップの一つです。HACCPに沿った衛生管理を運用する基盤となるだけでなく、ロス率の低下や従業員の衛生意識の向上などのメリットも期待できます。

本記事では、HACCPにおける危害要因の概要と分析の目的やメリットを確認し、危害要因分析の具体的な方法をステップに分けて解説します。HACCP導入のために危害要因分析に取り組んでいる方、自社の食品安全レベルを向上させたい方はぜひ参考にしてください。

目次

HACCPにおける危害要因とは

HACCP(Hazard Analysis Critical Control Point)における危害要因(Hazard:ハザード)とは、健康に悪影響をもたらす可能性のある食品中の物質、または食品の状態を指します。

危害要因は、生物的要因(食中毒を引き起こす病原性微生物やウイルス、寄生虫など)と、化学的要因(食品添加物や残留農薬、環境汚染物質など)、物理的要因(毛髪、昆虫、梱包物のプラスティック片やビニール、機械の金属片、ガラス片など)の3つに分類されます。

パンや肉加工品、弁当・惣菜の危害要因の例を表にまとめました。

危害要因

具体例

生物的要因

パン:調理パン加工時に混入する食中毒菌やノロウイルス
肉加工品:調理や包装工程で混入する食中毒菌やノロウイルス
弁当・惣菜:加熱不十分な食品に残存する食中毒菌やノロウイルス

化学的要因

パン:イーストフードや乳化剤など食品添加物の過剰使用
肉加工品:発色剤や保存料など添加物の過剰使用
弁当・惣菜:保存料やpH調整剤など食品添加物の過剰使用

物理的要因

パン:計量器具、焼き型、スケッパーなど調理器具の破片
肉加工品:発色剤や保存料など添加物の過剰使用
弁当・惣菜:野菜に付着した土や虫

パンや肉加工品、弁当の危害要因の例

HACCPでは製造工程におけるこれらの危害要因を分析し、特に重要度が高い管理点を決め、監視や記録などの管理を実行します。

危害要因分析(ハザード分析)の目的

危害要因分析(ハザード分析)の目的は、食品事故のリスクが高い製造工程を明らかにして重点的な衛生管理を行い、食の安全性を確保することです。食品衛生法の改正により2021年から「HACCPに沿った衛生管理」が義務化され、危害要因分析は食品を扱う事業者で必須の事項となりました。

ここからは、危害要因分析のメリットとHACCP7原則12手順における「危害要因分析」の位置づけを紹介します。

危害要因分析のメリット

危害要因分析には次のようなメリットがあります。

  • 効率的な管理により食品事故のリスクが低減する

  • 事故発生時も迅速に対応できる

  • ロス率が低下して生産性が向上する

  • 従業員の衛生意識が高まる

  • 衛生管理をアピールする際の根拠になる

効率的な管理により食品事故のリスクが低減する

危害要因分析では、食品事故につながる可能性のある要因を洗い出すだけでなく、危害の起こりやすさや危害が発生した場合の被害の程度なども明らかにします。この分析をもとに危害要因に優先順位を定め、重要度が高い製造工程から管理を行います。

コストや人員などのリソースには限りがあるため、製造工程で起こり得るすべての危害に対して対策を講じることはできません。そこで、リスクを効率的に管理して食品事故の発生を効果的に防ぐためには、危害要因分析が有効な手段となります。

事故発生時も迅速に対応できる

危害要因分析では、製造工程において起こりうる危害を予測し、危害に応じた管理方法や対策を定めます。そのため、万が一事故が発生しても、問題が生じた工程や関連する危害要因を迅速に特定できます。

さらに、被害の拡大防止や再発防止策の実施にスムーズに対応できることも、危害要因分析を行うメリットです。

ロス率が低下して生産性が向上する

危害要因分析により、異物混入の防止や加熱時の温度や時間の管理、冷蔵庫や冷凍庫の温度管理などが徹底されるようになると、出荷基準を満たさず破棄しなければならない製品が減少し、ロス率低下につながります。

さらに、危害要因分析の際に製造工程を見直すことで、生産性の向上も期待できます。食品事故のリスクが低減するため、製造ラインの停止や製品の回収対応の頻度が減少することも、生産性が向上する要因の一つです。

従業員の衛生意識が高まる

通常、特定の製造工程に潜む危害要因を把握しているのは関係部署のみに限られます。しかし、危害要因分析により明らかになった製造工程全体のリスクを共有することで、従業員全体の衛生意識が向上し、食の安全性に対する一人ひとりの責任感がより高まることが期待できます。

衛生管理をアピールする際の根拠になる

危害要因分析を実施すると、取引先や消費者、監査機関などに対して、自社の衛生管理について具体的な根拠を示しながら自信を持ってアピールできるようになります。その結果、製品への信頼が高まり、企業やブランドの価値向上にもつながります。

HACCP7原則12手順における「危害要因分析」の位置づけ

HACCPに沿った衛生管理の実施において前提となるのが、コーデックス委員会(国際食品規格委員会)が作成したHACCP7原則12手順です。

これは、HACCPを導入・実施する際に利用する運営手順であり、HACCPチームの編成、製品説明書や製造工程一覧図の作成などの事前準備にあたる5つの手順と、重要管理点や管理基準の設定などHACCPの要となる7つの原則で構成されています。

手順・原則

おこなうこと

詳細

手順1

HACCPチームの編成

・各部門の実務に精通従業員を集め、チームを組む
・HACCPに詳しくない場合は外部の専門家に参加を依頼する

手順2

製品説明書の作成

・原材料や製品特性の関わる情報を洗い出し、製品の説明書を作成する

手順3

意図する用途と対象となる消費者の確認

・消費者の使い方やシーンの確認
・アレルゲンや成分、食べ方も確認し、取り扱い方(保存や調理方法)も明確にする

手順4

製造工程一覧図の作成

・原材料の受け入れから出荷までの流れを書き出す
・工場の図面や作業手順書、設備の配置、導線、空気の流れなども含め製造工程(環境)を把握して作成する

手順5

製造工程一覧図の現場確認

・手順4で作成した製造工程一覧図を現場で働く従業員と確認し、異なる点があれば追記や修正をおこなう

手順6・原則1

危害要因の分析

・製造工程一覧図をもとに、危害要因がどこあるかを生物的、化学的、物理的要因別に洗い出す
・危害要因から措置方法を明確にする

手順7・原則2

重要管理点の特定

・危害要因が排除/削減できる最後の砦がどこの工程に当たるのかの重要管理点を特定する

手順8・原則3

重要管理点の設定基準の確立

・手順7で決めた重要管理点の基準を決める

手順9・原則4

重要管理点のモニタリング

・手順8で決めた基準値であること/基準値を越えていないことを監視する

手順10・原則5

是正措置の実施

・基準を逸脱した場合、原因の調査をおこない、その製品の取り扱い方法も決める
・今後どのようにして対応するかも決める

手順11・原則6

検証と確認

・日々の取り組みがHACCP計画の通りになっているか確認
・有効に機能しているか確認し、必要であれば改善する

手順12・原則7

記録の保持

・記録の方法や保存期間を設定する

HACCPに沿った衛生管理をするための「7原則12手順」

中でも、手順6原則1にあたる危害要因分析は、製造工程においてリスクとなり得る要因を把握し、重点的に管理すべき工程を見つけ出すために重要なステップです。この後の手順で行われる管理活動の基盤になるステップともいえます。

「現場でのチェック作業が増えて負担が大きい」「記録するだけで改善につながらない」。
品質管理において、こうした悩みを抱える現場は少なくありません。背景にはHACCP義務化による業務の複雑化や、人手不足が深刻化する中での従来型運用の限界があります。

そこで注目されているのが、品質管理業務をDXで効率化し、同時に精度を高めるというアプローチです。本資料では、現場起点の課題をどのように解消できるのか、具体的な改善事例と共に詳しく解説しています。

HACCPで行うべき具体的な危害要因分析の方法

危害要因分析は次の流れで行います。

  1. 危害要因の特定

  2. 危害要因の影響度の判定

  3. 危害要因の発生頻度の判定

  4. 危害要因を排除/低減するための方法の決定

それぞれの進め方について詳しく解説します。

1.危害要因の特定

まずは、製品に使用する原材料と製造工程の作業内容を洗い出し、起こり得る危害要因をすべて明らかにします。あらゆる作業内容と原材料を把握するためには、7原則12手順の中の手順2、4で作成する製品説明書と製造工程一覧図があると便利です。

製品説明書とは、製品の原材料、製品規格、使用用途、保存方法、包装形態、対象となる消費者などの製品情報をまとめたものです。製造工程一覧図とは、原材料の受け入れから下処理、加工、包装、出荷までの一連の流れを図にまとめたものを指します。

製品説明書と製造工程一覧図を参照し、原材料と作業内容をすべて並べ、その中から食品事故のリスクとなり得る要因をピックアップしましょう。例えば、サンドイッチに挟む生野菜は、適切な消毒がされていなければ食中毒が発生するリスクがあります。パン生地をこねるミキサーの部品が破損して、生地に混入するおそれもあります。

危害要因の特定は、生物的要因、化学的要因、物理的要因という3つの分類に沿って考えるのも方法の一つです。製品説明書や製造工程一覧図、危害要因の分類などを活用し、原材料や製造工程に潜むリスクを丁寧に挙げていきましょう。

2.危害要因の影響度の判定

危害要因を特定した後は、それぞれの危害要因が影響を及ぼす程度を調べます。

例えば、消毒が不十分な生野菜を挟んだサンドイッチは、サンドイッチを食べた方だけが被害を受けますが、ミキサーの破損部品が混入したパン生地を複数の製品に使い回していた場合は、より多くの人に被害が広がる可能性があります。

生野菜が原因となる食中毒では、下痢や嘔吐の症状が現れることが一般的です。しかし腸管出血性大腸菌に感染すると、最悪の場合、命に関わることもあります。また、ミキサーの破損部品が混入したパンを食べると、口内や歯を損傷するだけでなく、飲み込んだ場合は内臓にまでダメージが及ぶ可能性も考えられます。

以下の表では、食品別の危害要因とその影響の程度をまとめました。

食品

危害要因の例

影響の程度

パン

消毒が不十分な生野菜に付着した食中毒菌

下痢や嘔吐、最悪の場合は死亡

ミキサーの破損部品の混入

口内や歯、内臓の損傷

肉加工品

発色剤や保存料など添加物の過剰使用

発がん性

肉の骨

口内や歯、内臓の損傷

弁当・惣菜

加熱不十分な食品に残存する食中毒菌やノロウイルス

下痢や嘔吐、最悪の場合は死亡

野菜に付着した土や虫

心理的不快感、下痢や嘔吐(食中毒)

食品別の危害要因例と被害の程度

1つの製品に複数の危害要因が含まれており、それぞれが影響を与える範囲や健康被害の程度は異なります。影響度を正確に判断できていなければ、管理すべき工程の優先順位を誤ってしまう可能性があるため、各危害要因について慎重に検討することが重要です。

3.危害要因の発生頻度の判定

危害要因の影響度を判定したら、次にその発生頻度を検討します。

発生頻度に影響を与える要因は、原材料の品質基準や製造環境などさまざまです。例えば、食中毒は温度や湿度の影響を受けやすく、特に気温や湿度が高い夏季は発生頻度が高くなる傾向があります。一方で、食品添加物による危害は季節とは関係なく、主に添加物の使用頻度により左右されます。

また、製造プロセスが複雑で、食材の複数回の移動や多段階の加工が必要な製品は、異物混入などの危害が発生する可能性が高くなります。このように、さまざまな視点から危害要因の発生頻度を検討することが大切です。

危害要因の評価

危害要因の発生頻度は「頻発する・時々発生する・他社で事例がある・他社でも事例がない・考えられない」の5つに分けると比較しやすくなります。

さらに、先ほどの「2.危害要因の影響度の判定」のステップにおける結果も「致死的・重症・リコール・苦情・ない」の5つに分け、次のマトリックス表に当てはめて危害要因の重要度を判定する方法もあります。

発生頻度\影響度

致死的

重症

リコール

苦情

ない

頻発する

25

24

22

19

15

時々発生する

23

21

18

14

10

他社で事例がある

20

17

13

9

6

他社でも事例がない

16

12

8

5

3

考えられない

11

7

4

2

1

上記の数値の読み取り方は、以下を参照してください。

  • 11以下:現場の管理手法で問題ない

  • 12〜19:重要な危害要因の可能性は低いが、現場の管理手法では不十分であるため、一般衛生管理の強化が必要

  • 20〜25:重要な危害要因の可能性が高い

起こり得る危害要因が複数存在し、優先順位を付けて管理すべき場合は、上記のマトリックス表を利用して重要度を判断してもよいでしょう。

4.危害要因を排除/低減するための方法の決定

危害要因の影響度と発生頻度が明確になったら、最後に危害を排除または低減するための方法を決定します。この際、生物的要因・化学的要因・物理的要因に分けて対策を整理するとスムーズです。

例えば、肉加工品の製造における危害要因は次のような対策が考えられます。

危害要因

危害要因の例

対策

生物的要因

調理や包装工程で混入する食中毒菌やノロウイルス

加熱時の温度と時間の管理
調理器具の洗浄と消毒
従業員の手洗いの徹底

化学的要因

発色剤や保存料などの添加物の過剰使用

添加物の計量と配合手順の明確化
従業員への教育

物理的要因

肉の骨

加工前の原材料の確認
X線検査の徹底

危害要因を排除/低減するための対策

ここまで紹介したステップで危害要因分析を進めた後は、HACCPの手順7原則2に移り、特に監視・記録が必要な重要管理点(CCP:Critical Control Point)を決定します。

適切な危害要因分析が行えていたとしても、重要管理点の監視や記録の管理が実施されていなければ、HACCPに沿った衛生管理は実行できていないことになります。

食の安全性を確保するというHACCP本来の目的を達成するためには、HACCP7原則12手順を最後までやり遂げ、PDCAサイクルを回して改善を続けることが重要です。

▶ CCPの詳細と具体例は以下の記事で解説しています。
  CCPとは?HACCPとの関係性や意味を「分かりやすく」解説

HACCPに沿った衛生管理のために、危害要因(ハザード)を正しく理解・分析しよう

製造工程における食品事故のリスクを正確に把握し、適切な対策を決定する危害要因分析は、HACCPに沿った衛生管理の第一歩です。危害要因分析を行うと、健康被害のリスクを効率的に低減できるだけでなく、ロス率の低下や従業員の衛生意識の向上などのメリットも得られます。

危害要因分析には、製造工程におけるリスクを洗い出し、それぞれの影響度や発生頻度を考慮して優先的に管理すべき工程を見極め、リスクを排除または低減するための対策を決定するというプロセスが必要です。簡単な取り組みではありませんが、HACCPに沿った衛生管理を実施する上で危害要因分析は重要なプロセスです。

危害要因を正しく理解し、適切に分析を進め、安全な製品を提供するための衛生管理の基盤を確立しましょう。

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執筆者:いしもと めぐみ

病院や保育園での栄養士経験と食品メーカーで品質管理担当として勤務した経験を活かした食品製造に関する記事を執筆。現在はフリーランス管理栄養士として、食品製造や食・健康に関するライティングをおこなう。

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