設備保全DX賞:加藤精油様
利用製品:カミナシ 設備保全/カミナシ レポート

岡山県に工場を持ち、食用油などの製造・販売を行う「加藤製油株式会社」。1941年4月に創業し、現在84年目を迎える老舗企業です。
2025年9月、実父でもある先代社長からバトンを引き継いだ加藤雅子社長。就任以前からDXに取り組み、『カミナシ 設備保全』はわずか4ヶ月で社内定着するなど、スピード感のあるDXを推進しています。
手書きの紙帳票が多く、アナログな業務のやり方が固定化していた現場。そんなDXには程遠い環境から、なぜ短期間で推進させることができたのか。また、どのように社内を巻き込み、DXを進めていったのか。代表取締役社長・加藤様と、同社のDX推進を語る上で欠かすことのできない工場長・雁木様にお話を伺いました。
DXとは程遠いアナログな現場で、
社長交代を見据えて取り組みを本格化
―最初にDXやデジタル化に向けた取り組みを始めたのはいつ頃ですか?
加藤様:私が入社したのは2009年なのですが、入社後もしばらくはアナログな環境で業務を行っていました。例えば、旧型のワープロソフトを使用していたり、個人のスケジュールがExcelで共有されていたり…といった状況です。少しでも改善したいと考え、何度かデジタルツールの導入を提案しましたが、新たなシステムへの移行に慎重な姿勢であったため、当時は具体的な導入には至りませんでした。その後、2019年にようやくグループウェアの導入が承認されましたが、それが当社にとってDXやデジタル化に向けた最初の取り組みになりますね。

▲【DX推進担当者】代表取締役社長 加藤様
―当時、社内のDXに対する意識はどうでしたか?
加藤様:2019年当時は、「デジタル化」という言葉が社内で聞こえ始めた頃で、そこまで意識は高くなかった印象です。また、一部の従業員の中には自分でExcelのマクロを活用する者もいましたが、多くの従業員は、もとからある環境を使い続けるのが当たり前になっていました。
実は私が入社する以前にも一度、グループウェアを導入したことがあったようですが、上手く活用できず浸透しなかった過去があります。そういった苦い経験もあり、熱はそこまで高くない状態だったのかもしれません。
―雁木さんは、工場長として課題に感じていたことはありましたか?
雁木様:数年前から気になっていたのは、紙ベースの帳票は保管してあるものの整理できておらず、これまで溜めてきた記録がすぐに使える状態にないことでした。自分で膨大な紙の資料の中から探さなければならず、どうしても手間がかかってしまうという状況だったんです。
また、設備面に関しても、設備関連の資料やデータがまとまっておらず、それらを管理したいという希望はありました。データをしっかりと蓄積・管理できれば、故障リスクの低減や故障時の初期対応の速度が上げられる、そう考えていました。

▲【DX推進担当者】工場長 雁木様
―なるほど。そこからDXに向けて動き始めたのには、何かきっかけがあったのでしょうか?
加藤様:「株式会社フジワラテクノアート」という岡山の企業が、2022年に「日本DX大賞 中小規模法人部門」で大賞を受賞されたんです。実は副社長が私の幼馴染でして、受賞後の講演を聞きに行った際、DXへの取り組みによって社内がどんどん良い方向に改善しているという話をされていました。もともと自社でもDXに取り組もうとは思ってはいたものの、人的余裕もないため、まだ先でも良いかな…と思っていたんです。しかし、その講演を聞いて頭をガツンと殴られたくらい衝撃を受け、「これは本格的に取り組まねば、周回遅れになる」と危機感を覚えました。
―他社の取り組みから刺激を受けたことで、火がついたんですね。
加藤様:はい、特に衝撃的だったのは、DX推進を外部の力を借りず社内リソースだけで進めていたことでした。理想は当社も同じように進めたかったのですが、人員を割く余裕がそこまでない。そこで、自身で複数のセミナーに参加しながら情報収集を始めました。その中で、『カミナシ レポート』に出会いました。
―業界動向を見た上での必要性と、同時に社内業務の改善という側面でもDXの必要があったのですね。
加藤様:はい。アナログな職場でしたので、紙による業務負荷というのは課題として浮き彫りになっていました。例えば、弊社ではISOを取得しているのですが、そのための書類作成やチェック業務が非常に多かったんです。審査の際には、「細かく管理できている」という評価はいただけているのですが、現場では管理のための管理というように、どんどん確認業務が細かくなってしまい、業務負荷が大きいという声が上がっていました。当然、点検項目が増えると漏れや形式的な確認になってしまうこともあり、業務負担を軽減し、点検の確実性をあげたかったというのもDXに期待する点でしたね。
社内の巻き込みや過去の失敗。
教訓を活かしスピード定着を実現。
―どのような体制で推進していったのでしょうか。
加藤様:2023年に『カミナシ レポート』を導入したのですが、そのときは私がプロジェクトリーダーとして、ひな形作成から現場運用まで進めていきました。まずはスモールスタートということで、充缶部門での導入を試みたのですが、実はうまくいかなったんです。
そもそも現場業務にあまり詳しくない私の視点では、ひな形作成をするにも、どこが重要な項目なのかが理解しきれなかったのです。なかなか帳票づくりがうまくいかず、また、私が先走って導入を進めたため現場からもなかなか協力を得られず、苦戦していました。
このときの気づきとして、単に紙の項目をそのままデジタル帳票に落とし込むだけでは不十分だと実感しました。記録が負担ではなく業務改善につながる仕組みとして根づかせるために、現場をよく知る人物がプロジェクトへ参加することが不可欠だなと。

―とても大きな気づきですね。そこで白羽の矢が立ったのが雁木様だったと?
加藤様:指名というより、雁木自らひな形作成を名乗り出てくれたんです。
雁木様:私もDXの必要性を感じていました。充缶部門では思うように定着しなかったのですが、一方で、別の部門ではタブレットを使ってみたいと考えている人がいることを知っていました。そこで、取り組みが浸透しやすい部門から始めてみはどうかと社長に声を掛けさせてもらい、そちらの部門でDXを推進する提案をしました。

―雁木様は、もともとIT・デジタルに詳しかったのでしょうか。
雁木様:いいえ、まったく知識はありませんでした。もともと大学では化学系の勉強をしていたため、入社後は品質管理や分析まわりを担当していました。その後は製造部や生産管理部門に異動し、工場全体のマネジメントや、生産計画の立案、設備更新や改善、エネルギー関連など幅広く業務を担当させてもらっていました。
IT関連で言うと、工場の改善をしていく中でプログラミングを独学で勉強していた時期はありますが、その都度必要性を感じてやっていたため、誰でも使えるものを作り上げたり、運用していたわけではなかったですね。
―独学で学ばれていたというのは、素晴らしいですね。雁木様が関わり始めてからの変化はいかがでしたか?
加藤様:雁木が救世主として動いてくれたことで、一気にDX推進の雰囲気も社内に広がっていきました。実際に雁木自身も毎日驚くほどの速さでひな形を作成してくれて、みるみるうちに、工場全体へと運用が広がりました。

雁木様:ひな形の作成自体はそれほど難しい作業ではありませんでした。問題はいかに現場へ定着させるかでしたね。工場での導入には、使う側にとってメリットがあることを全面的に押し出して広めていきました。たとえば、工場の人たちに「これを使ってみてください。記入作業が楽になると思います」と、作ったばかりのデジタル帳票をその場で試してもらいます。一度使ってみると、だんだん慣れていきます。そこから徐々に、タブレットの台数を増やして、運用のサイクルにはめていくようにしました。
加藤様:私は引き続きプロジェクトリーダーとして動いていたのですが、現場と近い雁木がみんなの声を吸い上げてくれることで運用定着についても大きな問題もなく進んだと思っています。
―2025年6月には新たに『カミナシ 設備保全』を導入されていますね。DXの次ステップとしてなぜ「設備保全」だったのでしょうか。
雁木様:設備点検に関しては、過去の記録が効率よく活用できるよう改善していきたいという希望がもともと私の中にありました。毎年夏には工場内設備の重点メンテナンスの期間を設けてはいるのですが、担当オペレーターに頼っていた部分が大きく、その従業員の勘と経験による「ここは壊れやすい」「問題が起きやすい」という知識をもとに、故障頻度が高い箇所の補強への投資をその都度行っていく形でした。

加藤様:過去には、台風の影響で大規模な製造停止が起こったことがあったのですが、それ以外の日々のちょっとした停止についても、早いうちに取り組んでいきたいと考えていました。というのも、当社は貯蔵用タンクのサイズがあまり大きくなく、油をたくさん作ってもそのまま何日も溜めておくことができません。製造した分はすぐに出荷するという工程で進めているため、出荷予定のものをその日に出せない事態が起こってしまうことは致命的なんです。
―「予防」をさらに強化していく意味合いが大きかったということですね。導入からわずか4ヶ月でほぼ移行完了とのことですが、要因は何でしょう?
雁木様:すでに『カミナシ レポート』が社内で定着していたので、現場の人たちからしたら同じシリーズの製品は受け入れやすいだろうなと思います。もちろん、まったく同じ操作というわけではないのですが、同じロゴマークが入っていたり、UIも近かったのでハードルは低かったと思います。
目指すのは、誰でも管理できる仕組みづくり。
現場と足並みを揃え、DXを進めていく。
―現時点での成果や効果の実感はありますか?
雁木様:過去の設備点検資料の整理が少しずつ進んできている手応えがあります。まだすべてできているわけではないのですが、設備のリストだけを一通り先に作成しておいて、そのファイルの中に過去のデータをアップロードして保管していくやり方で進めています。そうすれば、後で見た人も見やすい状態に整理ができるのではないかと思っています。
加藤様:これまで起票もされなかった些細な修理や作業についてもデータとして記録されるようになったことです。『カミナシ 設備保全』の導入から半年で、これまでに約300件の修理や作業履歴が記録できています。今後、予防保全などの分析やAIによるアシスト機能が提供された場合でも、このデータが大きな意味を持ってくれるのではないかと期待しています。
―現場の仕事が楽になったと感じる部分はありますか?
雁木様:数値的な業務効率化の成果はこれからになりますが、設備保全の故障情報の入力の際の情報検索が楽になるのではないかと思います。機械番号検索や部分検索もできるので、どこでどういう部品を使っているかが簡単に探せるようになる。そういった機能を活用して、今後は時間の節約ができるだろうなと期待しています。

―そのほか、DXに取り組むことによって得られた変化はありますか?
加藤様:一つは、現場従業員のデジタルに対するハードルが下がったことですね。タブレットに慣れたことで、次なるDXへ向けて土壌が整い確実に進めやすくなりました。バックオフィス関連になりますが、会計や従業員の給与・勤怠関連でのデジタル化はほぼ対応ができている状況ですので、今後は人事管理についてのデジタル化に対応して、DXを進めていこうと考えています。
―今後の展望についても教えてください。
加藤様:油って、製造工程自体はとてもシンプルなんです。使う原料は少ないですし、製品も種類も限られています。少品種多ロットで済んでいた分、今まではExcel管理で対応できていた。でもそれは、優秀なベテランの従業員が管理してくれていたからこそです。今後、世代交代が進み、新しい方が加わったとしても、これまでのクオリティを担保できるかは分かりません。誰でも使えるような仕組みづくりやDXへ取り組むことによって、人手不足の問題にも対応していけると期待しています。
―最後に、これから現場DXを推進していきたいと考えている企業様へメッセージをお願いします。
雁木様:何か新しい方法を導入する時は、どうしても抵抗感を感じてしまう人もいると思います。まずは速やかに移行できるところから取り組み、定着させることを優先に考える。そして、定着させるためになるべくハードルを低くすることがおすすめです。たとえば、実際にタブレットでサンプル画面を見せたり、ちょっと使ってみてもらいつつ、「これなら作業が減って、楽になりますよね!」ということを伝え、それを実感してもらうといった手順です。実際に我々も、説明して納得してもらったら、そこからだいたい1週間も経たないうちに移行させることができるケースが多かったです。私たちも、まだ手探り状態です。引き続き、一つひとつ課題をクリアしながらDXを進められるよう頑張っていきます。
加藤様:DXという言葉を聞くと、どうしても「難しそう」「自分たちには早い」と感じてしまうかもしれません。けれど、実際に始めてみると、小さな一歩の積み重ねで確実に変化が起きていくものだと感じています。DXは「完璧にやること」ではなく、「まず動いてみること」から始まります。最初の一歩が踏み出せれば、現場も必ずついてきます。迷っている企業の方がいれば、どうか臆せずに、できるところから取り組んでみてください。きっとその挑戦が、次の可能性を広げてくれるはずです。

加藤製油株式会社様
業種:製造業(食用油製造)
従業員数:55名(2025年10月時点)




















