近年、人手不足や業務の属人化などの課題を解決するために、多能工化を推進する企業が増えています。多能工化とは、一人の従業員が複数の業務をこなせる状態やそれを目指すための教育、活動のことです。状況に応じてさまざまな業務を一人ひとりが柔軟に担当することで、業務の平準化や生産性の向上が期待できます。
しかし多能工化の進め方によっては、従業員のモチベーションが低下してしまうリスクもあるため、計画的に推進することが重要です。
そこで本記事では、多能工化の基本概念をはじめ、メリットデメリット、多能工化の具体的な進め方、成功事例、失敗する原因を解説します。貴社の多能工化の検討や推進の参考にしてください。
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目次- 多能工化とは
- 多能工化と単能工、ジョブローテーションの違い
- 多能工化のメリット
- 業務を平準化できるので、全体的に生産性が向上する
- 柔軟に人員を配置できる
- 組織のチームワークが向上する
- 従業員のスキルアップにつながる
- 多能工化のデメリット
- 教育コスト(時間・費用)がかかる
- 従業員の専門性が低下する
- 従業員のモチベーションが低下するリスクがある
- 多能工化を推進する7つのステップ
- 1.多能工化の目的を明確にする
- 2.業務を洗い出し、多能工化する対象を決定する
- 3.業務ごとに必要なスキルを可視化する(スキルマップを作成する)
- 4.育成計画を作成する
- 5.業務マニュアルや手順書を作成する
- 6.従業員への教育を行う
- 7.定期的に従業員にフィードバックする
- 多能工化の業種別・成功事例3選
- 製造業|えびの電子工業株式会社
- 建設業|大津建設株式会社
- サービス業|株式会社星野リゾート
- 多能工化で失敗する原因
- 教育体制を整えていない
- 従業員の適性を把握せずに人材配置をしている
- 人事評価を見直していない
- 長期的な計画を立てていない
- 多能工化の推進には教育体制の整備が必須
多能工化とは
多能工化とは、一人の従業員が2つ以上の業務を習得し、さまざまな作業を担当できる状態やそれを目指すための教育、活動を指します。多能工化を推進すると、状況に応じて柔軟に業務を変更し、対応できることから、業務の効率化や生産性の向上が期待できます。
多能工化は、トヨタ自動車株式会社の元副社長である大野 耐一(おおの たいいち)氏によって提唱されたと言われています。大野氏は、ムダを省き、低コストで良質な製品を生産するトヨタ生産方式を確立するうえで、多能工化の推進によって生産性を高めることを目指しました。
近年は市場や顧客のニーズの変化が激しく、企業の競争力を高めるには迅速かつ柔軟に対応することが重要になっています。そのため製造業に限らずさまざまな業界で、多能工化が推進されています。
多能工化と単能工、ジョブローテーションの違い
多能工化の反対語として、単能工があります。単能工とは、特定の業務や技能に特化し、高い専門性を持つ従業員のことを指します。以下に多能工と単能工それぞれの業務範囲やメリット、デメリットを記載します。
多能工 | 単能工 | |
|---|---|---|
業務範囲 | 幅広い | 単一 |
メリット | ・業務の属人化を防げる | ・専門性を深化でき、企業の競争力を向上できる |
デメリット | ・スキル習得に時間がかかる | ・業務が属人化しやすい |
多能工と単能工の違い
また、多能工化はジョブローテーションと混同されることがあります。目的や方法、効果には以下の違いがあるので、組織の状況や目指す成果によってどちらを実施するのか検討してください。
項目 | 多能工化 | ジョブローテーション |
|---|---|---|
目的 | 業務の柔軟性と生産効率性を高めるため | 従業員のキャリア形成や組織の人材育成のため |
実施方法 | 複数の技能を習得させる | 一定期間ごとに異なる部署や職種に異動させ、さまざまな経験を積ませる |
効果 | ・業務の属人化を防ぐ | ・従業員の視野を広げる |
多能工化とジョブローテーションの違い
多能工化のメリット
多能工化を推進すると、企業や従業員にとって主に4つのメリットがあります。以下のメリットを把握しておくことで、自社で多能工化を推進する際、意識すべき点やサポートすることなども一緒に考えられるようになります。
業務を平準化でき生産性が向上する
柔軟に人員を配置できる
組織のチームワークが向上する
従業員のスキルアップにつながる
業務を平準化できるので、全体的に生産性が向上する
多能工化を推進し、従業員が複数の業務を担当できる状態にすることで、業務を平準化できます。これにより組織の業務全体のバランスが取れ、生産性の向上が期待できます。
例えばコールセンターでは、受電対応(問い合わせ対応)と架電対応(営業やフォローアップ)の担当に分かれていることがほとんどです。従業員が受電と架電どちらも対応できるようになると、問い合わせが少ない時間帯に架電業務を任せたり、問い合わせが増える時間帯には受電業務へ人員を多く配置したりするなどと、柔軟に対応できます。このように状況に合わせて対応することで、どの時間帯も特定の従業員に業務が偏ることがなくなり、生産性が向上します。
柔軟に人員を配置できる
近年、企業の競争力を高めるためには、市場の変化や顧客ニーズの多様化に迅速に対応することが欠かせません。多能工化を推進すると、市場が変化した時や生産ラインの見直しが必要になった時にも、迅速に人員配置を変更し、組織を再編成できることがメリットです。
例えば自動車業界では、電動車(EV)市場の拡大に伴い、エンジン関連の製造工程が減少し、新たにバッテリー関連の生産工程が必要になるケースがあります。このとき多能工化が進んでいれば、従業員のスキルによって配置を考える必要がなくなるので、新しい生産体制もスムーズに整えられるでしょう。
このように多能工化を推進すると、市場や顧客ニーズの変化に対して柔軟に対応できるため、企業競争力を維持や強化することが可能です。
組織のチームワークが向上する
多能工化により、従業員が他の業務内容やプロセスを理解することで、組織のチームワークをより強固にすることが可能です。
例えば、小売業で多能工化を推進すると、品出し担当がレジ業務を学ぶ、レジ担当が総菜コーナーの業務を経験するなど、担当外のスキルを習得することになります。お互いの業務を経験することで、各業務の大変さや重要性を肌身で理解でき、自然と協力し合う文化が醸成されるでしょう。その結果、職場全体が働きやすい環境になることが期待できます。
従業員のスキルアップにつながる
多能工化を取り入れると、従業員は新たなスキルを習得し、キャリアアップや自己成長の機会を得ることが可能です。担当業務とは異なる業務について学ぶことで、視野が広がり、突発的な課題に遭遇しても柔軟に対応できる人材へと成長できるでしょう。
例えば、ホテル業界ではフロントスタッフがレストランの基本業務を習得すると、宿泊客からおすすめの料理を尋ねられた際に、すぐに的確な回答ができるようになります。このように一人ひとりの従業員がスキルアップした結果、顧客の要望に対して、誰もが高いレベルの対応ができるようになり、ホテル全体の顧客満足度の向上にも寄与します。
また、業務や知識の幅が広がると、従業員のモチベーションが向上し、自信を持って業務に取り組める点もメリットです。結果、組織全体の士気が高まり、職場の活気や生産性の向上にも貢献するでしょう。
多能工化のデメリット
企業が多能工化を推進するとさまざまなメリットがある一方で、デメリットもあります。以下3つのデメリットを把握することで、多能工化を進める際に事前に対策が打てます。
教育コスト(時間・費用)がかかる
従業員の専門性が低下する
従業員のモチベーションが低下するリスクがある
教育コスト(時間・費用)がかかる
多能工化を進めるには、従業員への教育に時間と費用がかかるため、企業にとって負担になる場合があります。特に、複雑な業務や専門性の高いスキルを習得するには、長期的な育成が必要です。また、従業員が新たな業務を習得するまでの間は、スキルが未熟なため一時的に生産性が低下するリスクもあります。
そのため以下のようにOJT(On the Job Training:実務を通じた指導)とOFF-JT(Off-the-Job Training:研修や座学)を組み合わせ、計画的に段階を踏んで育成を進めることが重要です。
研修 | 種類 | スケジュール | 詳細 |
|---|---|---|---|
基礎研修 | OFF-JT | 1〜3ヶ月目 | ・各業務の基礎知識を習得する |
現場実習 | OJT | 4〜6ヶ月目 | ・指導者のサポートのもと実務を経験する |
実務研修 | OFF-JT | 4〜6ヶ月目 | ・効率的な作業方法や、改善活動の基礎を学ぶ |
多能工化の育成計画の例
従業員の専門性が低下する
多能工化の推進により、従業員が複数の業務を行えるようになる一方で、特定分野の専門性が低下する可能性があります。特に、高度な専門知識や技術が求められる業務では、従業員が十分な経験を積む時間が減少し、スキルの深掘りが難しくなることがあります。そのため専門性の高い業務については、多能工化の対象から外すというのも一つの手です。
また、業務の幅が広がることで、一つひとつの作業に対する熟練度が下がり、結果として業務の質が低下したり、専門的な問題解決が難しくなったりするケースもあります。そのため従業員のスキルを維持するために、研修や資格取得の支援をすると有効です。
さらにチーム内での勉強会やミーティングを定期的に実施し、知識やノウハウを共有すると、専門性の低下を抑えられるでしょう。
従業員のモチベーションが低下するリスクがある
多能工化を推進する過程で、従業員が業務量が増えたと感じると、その負担感からモチベーションが低下する可能性があります。特に、適切な評価や報酬が伴わない場合には、負担ばかりが増えていると感じ、離職につながることもあるため注意が必要です。
多能工化を推進する際は、従業員とのコミュニケーションを小まめにとり、多能工化の目的やメリットに納得や共感をしてもらうことが重要です。また、スキルの習得や業務範囲の拡大に応じた正当な評価を行い、場合によってはインセンティブを設けるなどして、従業員が意欲的に取り組める環境を整えるといいでしょう。
多能工化を推進する7つのステップ
多能工化をスムーズに推進するには、適切なステップを踏むことが重要です。以下の7つの手順をステップごとに解説します。
多能工化の目的を明確にする
業務を洗い出し、多能工化する対象を決定する
業務ごとに必要なスキルを可視化する(スキルマップを作成する)
育成計画を作成する
業務マニュアルや手順書を作成する
従業員への教育を行う
定期的に従業員にフィードバックする
1.多能工化の目的を明確にする
まず目的を明確にすることで、以下のように多能工化の方向性がはっきりします。
目的:人材不足の解消
実施内容:繁忙期や急な欠員に対応できる体制を整える
目的が可視化されることで、従業員に多能工化を推進する意図が伝わりやすくなり、納得感を得られるというメリットもあります。従業員が納得して新たな業務に取り組むことができれば、モチベーションがあがり、スキルが定着しやすくなるでしょう。
2.業務を洗い出し、多能工化する対象を決定する
目的が明確になったら、業務を洗い出して、多能工化の対象業務を決定します。このとき、すべての業務を多能工化の対象にするのではなく、必要性や緊急性の高い業務を中心に選定することがポイントです。
例えばスーパーマーケットの店舗で、惣菜担当の人手が不足し、生産が追いついていない場合には、優先的に多能工化の対象にします。多能工化に成功できれば、需要に応じた適切な量の惣菜を販売でき、機会損失を防げるでしょう。
このように経営のボトルネックとなっている業務を優先的に対象とすることで、早期に生産性向上の成果を出しやすくなります。
3.業務ごとに必要なスキルを可視化する(スキルマップを作成する)
多能工化する対象業務が決定したら、業務ごとに必要なスキルを洗い出し、誰がどの業務を担当できるのかを明確にします。その際に、従業員ごとに業務に関するスキルや習熟度を一覧にしたスキルマップを活用すると有効です。
スキルマップによって従業員のスキルを可視化することで、どの従業員にどの業務を担当させるべきかが明確になるだけでなく、一人ひとりのレベルに合わせた育成計画が立てやすくなります。
4.育成計画を作成する
スキルマップをもとに、従業員一人ひとりに適した育成計画を作成します。どの業務をどの順番で習得すべきかを明確にすることで、段階的にスキル向上を促せます。
スキルの習熟レベルに応じて育成を進めることで、従業員の負担を軽減しながら無理なくスキルアップできるでしょう。
5.業務マニュアルや手順書を作成する
育成計画が完成したら、従業員が利用する業務マニュアルや手順書を作成します。業務マニュアルや手順書は、誰でも一定の品質で業務を行えるように作成することが重要です。
例えば、飲食業界ではレジ対応の手順や清掃方法などを誰でも分かるようにマニュアル化すると、新人でも短期間で業務を習得しやすくなります。またマニュアルや手順書どおりに業務を遂行できれば、ベテラン従業員と同様の品質を担保できるでしょう。
6.従業員への教育を行う
作成した育成計画に基づき、従業員への教育を実施します。教育方法には主にOJT、OFF-JT、eラーニングの3つがあります。以下にそれぞれの特長やメリット、デメリットを記載しますので参考にしてください。
OJT | OFF-JT(集合研修・講義) | eラーニング | |
|---|---|---|---|
特長 | 実際の業務を通じて学ぶ | 指導者が講義を行い、知識を体系的に学ぶ | オンライン教材を利用して個人で学習する |
メリット | ・実践的なスキルが身につく | ・体系的に学べる | ・時間や場所を選ばず学べる |
デメリット | ・指導者のスキルに依存しやすい | ・コストが高い | ・学習進度の自己管理が必要 |
教育方法の例
また、教育効果を高めるために、習熟度をチェックする仕組みを取り入れるのがおすすめです。テストや実技試験を実施し習熟度を確認することで、苦手分野が明確になり効率的に育成できるでしょう。
7.定期的に従業員にフィードバックする
多能工化を効果的に進めるためには、従業員への定期的なフィードバックが不可欠です。例えば、月に一度の面談を実施し、業務状況や課題をヒアリングすることで、従業員の不安や疑問を解消しやすくなります。
また従業員一人ひとりの不安や課題に合わせて適宜サポートすることで、モチベーション向上やスキル定着を促せるでしょう。

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多能工化の業種別・成功事例3選
多能工化を進める場合、お手本になるような企業があると困ったときに参考にできます。業種別(製造業、建設業、サービス業)の成功事例を3つを紹介します。
製造業|えびの電子工業株式会社
えびの電子工業株式会社は、宮崎県と鹿児島県に拠点を構え、電子部品や自動車部品を製造する企業です。従業員650名のうち3分の2が女性であることから、急な欠員や家族の事情による休暇などに対応できる柔軟な働き方が求められていました。
そこで一人ひとりが複数業務を担当できる多能工化を推進しました。さらに6つの工場間で相互にフォローする仕組みを構築することで、急な欠員だけでなく、繁忙期にも柔軟に対応できる体制を整えました。
また評価制度を見直し、能力に応じて昇給する仕組みを整備したことで女性管理職が増加。子育て世代の従業員がより相談しやすい環境が整い、男女問わず仕事と家庭の両立を実現しやすい職場になっています。
参考:相互扶助の精神で好循環を生む!ピンチに強い職場づくり|厚生労働省
建設業|大津建設株式会社
大津建設株式会社は、道路工事や治水工事、河川工事など土木工事を中心に事業を展開する建設企業です。広島県三次市の山間部に拠点を置くことから、人材確保に苦難し、業務の属人化や限られた人材で業務を効率的に回さなければならないという課題がありました。そこで採用したのが、ICT建機と多能工化です。
ICT建機を導入することで作業の自動化や省力化が実現し、業務の属人化を解消することに成功しました。多能工化においては、従業員の適正はもちろん、本人の意向を踏まえてさまざまな業務を担当してもらうことで、一人ひとりの仕事の幅が広がっています。また技能講習や安全教育などの受講させて従業員のモチベーションを引き出し、人材配置に役立てています。
参考:「休日増加・ICT建機導入・多能工化」の三位一体改革で生産性向上|厚生労働省
サービス業|株式会社星野リゾート
株式会社星野リゾートは、長野県軽井沢町に拠点を置く宿泊施設などを運営する企業です。日本の宿泊施設では、従業員はフロントやレストランなど一つのセクションに配属され、専門性を高めることが一般的です。
しかし星野リゾートでは1990年代から、1つのセクションだけでなく、フロントサービスやレストランサービス、調理、客室清掃と一人で複数のタスクをこなせる多能工化(マルチタスク)を推進しています。
これにより柔軟にシフトを組むことができ、繁忙期の人手不足にも耐えられる組織を確立しています。また従業員がさまざまな業務を経験することで、顧客との接点が増え、施設全体としての業務改善や新しいサービスにつながっています。
参考:なぜ星野リゾートは「マルチタスク」に取り組むのか? 独自の働き方改革が生んだ意外な効果|IT Media
多能工化で失敗する原因
多能工化を推進したものの、従業員のスキルが定着しないことや、従業員のモチベーションが低下したことなど、期待する成果が出ず失敗してしまうことがあります。ここでは以下4つの失敗する原因を紹介します。
教育体制を整えていない
従業員の適性を把握せずに人材配置をしている
人事評価を見直していない
長期的な計画を立てていない
教育体制を整えていない
教育体制が整備されないまま多能工化を推進すると、生産性が低下したり、ミスが発生したりする可能性があります。特に場当たり的な教育では、業務に必要なスキルを網羅的に習得できないだけでなく、従業員によって習得範囲にバラツキが出てしまうため注意が必要です。
そのため多能工化を推進する際には、従業員が一定のスキルや知識を習得することを目指し、研修プログラムを体系的に構築することが重要です。
またメンター制度を導入し、経験豊富な従業員が新人や習熟度の低い従業員をサポートする仕組みを整えることも有効です。メンターが継続的に指導やフォローアップをすることで、実践的な知識が定着しやすくなり、スムーズに業務を習得できるようになります。
さらに研修やOJTだけで終わらせず、定期的にフォローアップを行い、習得状況や課題を確認することもおすすめです。習得が不十分な場合には随時サポートすることで、より早期に一人ひとりのスキルを醸成できるでしょう。
従業員の適性を把握せずに人材配置をしている
従業員一人ひとりの適性や能力を無視し、一律に業務を割り当ててしまうと、かえって生産性の低下につながり、多能工化が失敗してしまう恐れがあります。自分の適性に合わない業務を担当させられると、従業員はストレスを感じやすくなり、仕事への意欲が低下やミスの増加につながるだけでなく、離職の原因にもなりかねません。
そのため、従業員のスキルや興味、性格を把握するために、適性検査や個別面談を実施し、一人ひとりに適した業務を割り当てることが大切です。また、一度決めた業務配置が最適とは限らないため、従業員の成長や希望、職場の状況に応じて柔軟に配置転換を検討するといいでしょう。
人事評価を見直していない
多能工化を推進する際に、従来の人事評価制度をそのまま適用してしまうと、従業員は正当に評価されていないと感じ、モチベーションが低下することがあります。特に、複数の業務をこなしているにもかかわらず評価が変わらない場合には不公平感が生じ、離職の原因になることも考えられます。
このような問題を防ぐには、多能工化に対応した評価項目を追加し、複数の業務を遂行する能力や成果を正当に評価する仕組みを整えることが重要です。そのため新たに習得したスキルや業務の幅の広がり、対応力の向上などを評価基準に組み込むことで、従業員が納得感を持って取り組みやすくなるでしょう。
また、多能工化による成果をインセンティブとして還元することも効果的です。例えば、スキルの習得レベルに応じた手当を支給したり、表彰制度を設けたりすることで、モチベーション向上につながります。
さらに、同僚や部下からの評価も取り入れ、多角的な視点で従業員の能力を評価する360°評価を導入するのもおすすめです。管理職だけでなく、実際に一緒に働くメンバーの視点も反映され、より公平で納得感のある評価が可能になるでしょう。
長期的な計画を立てていない
多能工化は短期間で成果が出るものではありません。短期間で成果を求めすぎると、従業員に過度な負担がかかり、モチベーションが低下するリスクが高まります。
そのため短期や中期、長期の計画を立て、各段階での具体的な取り組み目標や評価指標を設定し、無理なく推進しましょう。
例えば以下のように目標を設定し、無理なく従業員の成長を促すことで、組織全体の生産性向上を期待できるでしょう。
期間 | 取り組み目標 |
|---|---|
短期(1〜3ヶ月) | 基本的な業務を習得する |
中期(6ヶ月〜1年) | 業務の幅を広げ、複数の業務を組み合わせて遂行できるようになる |
長期(1年以上) | チーム全体で多能工化を定着させ、最適な業務分担を実現する |
取り組み目標の例
多能工化の推進には教育体制の整備が必須
多能工化を推進すると、業務の属人化を解消できる、急な欠員や需要の増減にも柔軟に対応できるなど、企業にとって多くのメリットがあります。しかし多能工化を成功させるためには、長期的な計画を立て、無理のない教育体制を整備することが重要です。
教育体制の整備をする際には、人員配置はもちろんマニュアルや手順書の作成、受講管理や成績管理などさまざまな準備が必要です。しかしコストを抑えつつ、早期に教育体制を整備したいと考える人も多いでしょう。そこでおすすめなのが、eラーニングやマニュアル作成の自動化といったDXの導入です。DXを導入することで、教育コストの削減だけでなく、業務が可視化されることで組織内の技術継承をしやすくするというメリットがあります。
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