生産ラインの効率を向上させるには、稼働率を正確に把握し、具体的な改善策を実施する必要があります。設備のダウンタイムを短縮し、ITシステムを導入して業務を効率化するなど、複数の対策を組み合わせて改善しましょう。
ただし、稼働率と可動率を混同すると、誤った改善策を実施してしまうおそれがあるため、両者の違いを正しく理解することも重要です。
本記事では、稼働率と可動率の定義と計算方法を解説するとともに、稼働率と可動率を上げるための具体的な改善方法も紹介します。
目次稼働率と可動率の違い
生産効率を評価する際の重要な指標として、稼働率(かどうりつ)と可動率(かどうりつ/べきどうりつ)があります。稼働率と可動率の違いは、数値を算出する目的にあります。
稼働率の目的は、設備の生産性や運用効率を評価するものであるのに対し、可動率は設備の信頼性や安定性を評価する目的で算出されます。
どちらの指標も設備の運用状況を把握するために用いられますが、それぞれ定義や評価対象、計算方法が異なるため、正確に理解しましょう。
両者を混同すると、設備の稼働状況の実態を正しく把握できず、誤った生産性評価につながる可能性があります。これから、稼働率と可動率それぞれの定義と計算式、関連する用語も併せて解説します。
稼働率とは
稼働率とは、設備が運転可能な時間のうち、実際に動かしていた時間の割合、または理論上の最大生産能力に対する実際の生産量の割合を表す数値です。設備の生産性や運用効率を評価する際に用いられ、値が100%に近いほど、設備が効率的に稼働していることを意味します。
ただし、受注量の増加によって予定外の残業や追加シフトが発生し、本来の稼働時間を超えた場合、計算上の稼働率が100%を超えることもあります。これは、設備が想定を超えて稼働している状態を示すため、稼働率を読み解く際はこの点を考慮しましょう。
稼働率の計算方法
稼働率の計算方法には、稼働時間に基づく方法と生産量に基づく方法の2種類があります。
稼働時間を基準とした稼働率は、実際に機械が動いていた時間を、理論上稼働できる合計時間で割って算出します。
稼働率=実稼働時間(設備が実際に動いていた時間)÷総稼働可能時間(設備が本来稼働できる時間)
例えば、1日8時間稼働予定の設備が、作業遅延や資材不足で3時間停止し、実際に動いていた時間が5時間の場合、稼働率は以下のように計算できます。
稼働率=(5時間÷8時間)×100=62.5%
生産量を基準とした稼働率は、実際に製造した数量を、設備が理論上生産可能な最大数量で割って求めます。
稼働率=実際の生産量÷理論上の最大生産量
例えば、1日で500個の製品を生産できるラインが、作業ミスや機械の調整によって400個しか製造できなかった場合、稼働率は以下のように計算できます。
稼働率=(400個÷500個)×100=80%
可動率とは
可動率とは、設備が稼働できる時間のうち、故障や保守作業による停止を除いた上で、正常に運転していた時間の割合を表す数値です。主に設備の信頼性や安定性を評価する際に用いられ、設備が計画通りに稼働できているかを数値で把握できます。
可動率は市場の需要や受注数の変動には左右されず、稼働率のように計算上100%を超えることもありません。可動率は、あくまで設備がどれだけ安定して動いていたかを評価する指標であり、残業や追加シフトによる時間超過は関係しないためです。
可動率は稼働率と区別するために、べきどうりつと呼ぶこともあります。
可動率の計算方法
可動率は、設備が問題なく運転できた時間(故障や保守作業による停止を除く)を、理論上運転可能な時間で割って求める指標です。
可動率=総可動時間(設備が故障などで停止せず、使用できた時間)÷総稼働可能時間(設備が本来稼働できる時間)
例えば、1日8時間の運転が可能な生産ラインがある場合、1時間は機械トラブルで停止し、残り7時間は順調に稼働したとすると、可動率は次のように計算できます。
可動率=(7時間÷8時間)×100=87.5%
設備総合効率(OEE)、時間稼働率、性能稼働率、良品率とは
設備やラインの生産性を正確に評価するには、稼働率や可動率だけでは不十分な場合もよくあります。時間稼働率や性能稼働率、良品率の3つの指標から計算する設備総合効率(OEE:Overall Equipment Effectiveness)を算出すると、より精度の高い分析ができます。
設備総合効率(OEE)と時間稼働率、性能稼働率、良品率それぞれの意味と計算式を表にまとめました。
用語 | 意味 | 計算式 |
|---|---|---|
設備総合効率(OEE) | ・設備の運用効率を総合的に評価する数値 | 設備総合効率=時間稼働率×性能稼働率×良品率 |
時間稼働率 | ・設備が使用可能な時間のうち、実際に動いていた時間の割合を示す数値 | 時間稼働率=稼働時間÷負荷時間 |
性能稼働率 | ・設備が稼働している時間内で、計画された生産量をどれだけ達成できたかを示す数値 | 性能稼働率=基準サイクルタイム×生産量÷稼働時間 |
良品率 | ・生産された製品のうち、不良を除いた正常品の割合を示す数値 | 良品率=良品数÷総生産数 |
設備総合効率(OEE)と時間稼働率、性能稼働率、良品率の意味と計算式
これらを定期的に計測、分析し、課題に応じた具体的な改善施策を実施することで、生産性を最大化できます。
稼働率や可動率を低下させる7大設備ロスとは?
製造業において稼働率や可動率を低下させる要因として7大設備ロスが知られています。設備の稼働率を向上させるには、7大設備ロスを削減することが重要です。それぞれのロスの概要と主な対策方法を以下の表にまとめました。
ロスの種類 | 概要 | 主な対策方法 |
|---|---|---|
故障ロス | 突発的な設備の故障やトラブルによる生産停止から生じるロス | ・IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を活用した予知保全により故障前の異常を感知、予測する |
段取り調整ロス | 製品の入れ替えや原材料の補充、測定作業などによる生産停止から生じるロス | ・作業の標準化や手順見直しによる改善を行う |
刃具交換ロス | ドリルなどの工具の交換に伴う生産停止から生じるロス | ・IoTを用いて刃具の摩耗をリアルタイムで監視と、最適な交換タイミングで作業する |
立上りロス | 設備の起動や作業者の準備が遅れることで生じる生産ロス | ・設備ごとに適切な開始手順を設定し、試運転を行う |
チョコ停ロス | 短時間(数秒〜数分)の設備停止が頻繁に発生することで生じるロス | ・チョコ停の発生要因を詳細に記録し、頻発する要因を特定、解消する |
速度低下ロス | 設備の稼働速度が理論値よりも低く、計画通りに生産できないことで生じるロス | ・設備を点検し必要に応じたメンテナンスや修理を実施する |
不良手直しロス | 製品に不良が発生し、手直しが必要になることで生じるロス | ・設備の点検データを分析し、不良の根本原因の特定と対策をする |
7大設備ロスと詳細
7大設備ロスを正確に把握し対策することで、設備の稼働率と可動率を向上させ、生産ライン全体の効率を改善できます。
稼働率と可動率を向上させるための具体的な改善策
設備の稼働率と可動率を向上させることは、工場全体の生産性を高める上で欠かせない取り組みです。効果的に改善を進めるには、以下のような施策が有効です。
属人化の解消と作業標準化の推進
各設備の稼働率分析によるボトルネックの特定と解消
汎用性の高い生産ライン構築による受注への柔軟な対応
IoTやAIの活用による異常の発生要因特定と改善
これらの施策のなかから、自社の状況に適した取り組みを選定し、継続的に改善を進めましょう。現場の理解を得るためにも、施策の目的や手順を説明し、関係者の協力を得ることが成功の鍵です。
属人化の解消と作業標準化の推進
稼働率と可動率を向上させるためには、属人化を解消し、業務の標準化を進めることが重要です。属人化が進んでいると、業務の質や効率が特定の作業者に依存するため、担当者によって作業速度や精度にばらつきが生じ、設備の稼働率が安定しなくなります。
誰でも同じように業務ができるようにするには、各作業のマニュアル作成が効果的です。マニュアルは紙媒体に限らず、電子媒体や動画形式など、現場に適した形で活用しましょう。例えば、複雑な機械操作が必要な工程では、動画マニュアルを使用することで作業者が直感的に理解しやすくなります。
作業の標準化を進めることは、設備の稼働率や可動率を安定させるだけでなく、技術の継承や人材育成の効率化にもつながります。作業の属人化から脱却し、長期的に安定した生産体制の確立を目指しましょう。
各設備の稼働率分析によるボトルネックの特定と解消
稼働率や可動率を向上させるためには、生産ライン内で最も稼働率が低い工程(ボトルネック)を特定し、解消することが重要です。生産性が著しく低い設備や工程を発見し、その原因を追究しましょう。
もし設備の能力不足が原因の場合は、設備の更新や追加設備の導入によって生産能力を向上させます。一方で、作業者のスキル差が原因の場合は、作業手順をマニュアル化して作業を標準化したり、勉強会や研修を実施したりして、作業者のスキルを均一化しましょう。
ボトルネックの特定と改善を継続的に行うことで、設備の稼働率と可動率を引き上げ、生産ラインの安定稼働につながります。
汎用性の高い生産ライン構築による受注への柔軟な対応
稼働率や可動率を向上させるには、受注の変動に対応できる柔軟な生産ラインを構築することが重要です。受注数は市場の状況や顧客のニーズにより変化するため、単一製品専用の生産ラインでは対応が難しくなります。受注が減少すると設備の稼働時間が減り、稼働率の低下にも直結するからです。
この課題を解決するためには、複数の製品を生産できるラインの構築が効果的です。例えば、多関節ロボットや画像処理装置を導入することで、製品ごとの生産工程を迅速に切り替えられます。受注の増減に応じた生産調整が可能になり、計画外の設備停止を防げます。さらに、互換性のある機械や治具を活用し、簡単に工程を切り替えられる設計にすれば、段取り時間も短縮可能です。
こうした取り組みは、予測が難しい需要変動にも迅速に対応できるメリットがあります。設備の稼働率を安定して維持するだけでなく、将来的な市場の変化にも対応できる柔軟な生産体制を構築できます。
IoTやAIの活用による異常の発生要因特定と改善
稼働率を向上させるためには、設備の異常を早期に発見し、突発的なダウンタイム(予期せぬ設備や生産ラインの停止)を防ぐことが重要です。
従来の異常検知は、作業者の経験や目視点検に頼ることが多く、異常を見逃したり対応が遅れたりする課題を抱えています。この課題を解決するには、IoTやAIを活用して設備データを収集し分析し、異常の原因を特定する方法が有効です。
例えば、IoTセンサーで設備のデータをリアルタイムで収集し、AIで解析すれば、異常の兆候やパターンをある程度検出できます。さらに、異常を検出した際に担当者へ即座にアラートを送信する仕組みを導入すれば、迅速な対応も可能です。
IoTとAIによる予知保全を強化することで、計画外のダウンタイムを減らし、稼働率と可動率を向上できます。
ただし、費用や運用の負担から、IoTやAIの導入が難しいと感じる企業も少なくありません。まずは重要度の高い部署、作業から段階的にセンサー技術を取り入れることを検討してみましょう。
稼働率と可動率を正しく理解し、工場の生産性を最大化しよう
工場の生産性を向上させるためには、稼働率と可動率を正確に把握し、具体的な改善策を実施することが重要です。稼働率は、設備の運転可能な時間に対する実稼働時間や、最大生産能力に対する実生産量の割合を示します。可動率は、稼働可能時間のうち故障やメンテナンスを除いて正常に稼働した時間の割合を示します。
稼働率や可動率を向上させるには、日常点検や定期点検での記録を確実に取り、作業や機械ごとに定量的なデータを分析する必要があります。そのため、まずは記録の抜け漏れが発生しない仕組みづくりから始めると良いでしょう。紙での管理が煩雑な場合は、記録の自動化やデータ分析ができるシステムの導入を検討することも有効です。
実際に設備保全業務のデジタル化に成功した企業の事例や、活用できるシステムをまとめた資料は以下からダウンロードできます。























