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公開日 2025.03 .13

更新日 2025.12.18

予知保全(予兆保全)とは?予防方法との違いやAIやIoTを活用した導入ステップを紹介

予知保全(予兆保全)とは?予防方法との違いやAIやIoTを活用した導入ステップを紹介

突然の設備故障による生産ラインの停止により予定外のダウンタイムがもたらす損失は、製造業にとって大きな課題です。ベテラン保全担当者の方なら、設備の微妙な音の変化や振動のパターンから、何かおかしいと直感的に感じ取ることができるかもしれません。

しかし、その貴重なノウハウは定年退職とともに失われつつあります。また従来の壊れたら直す事後保全や定期的に部品交換する予防保全だけでは、複雑化する製造設備の状態を完全に把握することは難しくなっています。

そこで注目されているのが予知保全です。IoTセンサーやAI技術を活用して設備の状態を常時モニタリングし、故障の兆候を事前に検知することで最適なタイミングでの保全作業を実現する手法です。本記事では、予知保全の基本からメリット、導入方法まで、製造現場の生産性向上を目指す方々に向けて実践的な情報をまとめました。

目次

予知保全の基本的な考え方

予知保全とは、設備や機械の状態をリアルタイムで監視し、故障や不具合の兆候を検知して、必要なタイミングで適切なメンテナンスを行う保全手法です。この手法は、従来の事後保全や予防保全と異なり、IoTやAI技術を活用して効率的に設備の稼働率を向上させることを目的としています。

元来、機械や設備の保全方法として壊れてから修理するというアプローチである事後保全や一定期間ごとに部品交換するという予防保全が採用されています。これに対して予知保全は、設備の実際の状態に基づいて壊れる前に、必要な時だけ保全を行うため、無駄なダウンタイムや部品交換コストを削減できます。

予知保全の実現には、主に以下の技術が活用されています。

  • 振動、温度、音響、電流値など設備の状態を示す各種パラメータを計測するIoTセンサー

  • センサーから収集したデータをクラウドやエッジサーバーに送信するネットワーク技術

  • 機械学習やディープラーニングを用いて膨大なデータから異常パターンを検出するデータ分析技術

これらの技術を組み合わせることで、設備の状態変化や劣化傾向を捉え、故障確率が高まるタイミングを予測し、最適なメンテナンスのタイミングを決定することが可能になります。

予知保全と事後保全、予防保全の違い

製造現場における設備保全には主に3つのアプローチがあります。それぞれの特徴を理解することで、自社の設備管理戦略に適した方法を選択できます。

保全方式

タイミング

メリット

デメリット

事後保全

機械の故障発生後や不良品発生時

・初期投資が不要
・部品を使い切れる

・突発的な生産停止
・二次被害のリスク
・修理コストが高額化する可能性

予防保全

定期的
(時間基準)

・計画的なダウンタイム
・故障リスクの低減

・実際の設備状態に関わらず部品交換
・過剰保全によるコスト増
・設備停止時間の増加

予知保全

異常兆候検知時
(状態基準)

・最適なタイミングでの保全
・ダウンタイムの最小化
・部品の寿命最大化
・突発故障の削減

・初期投資(センサー、システム)が必要
・データ分析の専門知識が必要
・全ての故障モードに対応できない場合がある

予知保全と事後保全、予防保全の違いとメリット、デメリット

事後保全は壊れたら直すという最もシンプルな方法ですが、突発的な生産停止による機会損失が大きく、修理費用も高額になりがちです。予防保全は定期的なスケジュールに基づいてメンテナンスを行いますが、実際の設備状態に関わらず部品交換するため、まだ使える部品も交換することによるコスト増や必要以上の設備停止が生じます。

一方、予知保全は設備の実際の状態を常時監視し、故障の前兆を捉えて最適なタイミングでメンテナンスを実施します。そのため、突発的な故障を減らしながらも過剰な保全を避け、設備の稼働率を最大化しつつコストを最適化できます。

予知保全の最大の特徴は、データ駆動型である点です。人間の経験や勘に頼るのではなく、センサーデータとAI分析に基づいた客観的な判断が可能になり、熟練技術者の知見をデジタル化できる点も大きなメリットです。

予知保全による3つのメリット3

製造業において予知保全を導入することで得られる具体的なメリットは数多くありますが、ここでは特に重要な3つのメリットについて詳しく解説します。

  • 設備のダウンタイム削減

  • コスト効率の向上

  • 生産性と稼働率の改善

それぞれのメリットが現場にもたらす具体的な効果と具体的に得られる成果について紹介します。

設備のダウンタイム削減

予知保全では、センサーやデータ解析を活用して設備の不具合の兆候をリアルタイムで監視し、故障が発生する前に適切な対応を行います。この手法により、突発的な故障による設備停止(ダウンタイム)を大幅に削減できます。

ダウンタイム削減の効果は、主に2つの指標の改善として現れます。1つは平均故障間隔(MTBF:Mean Time Between Failures)の延長です。故障と故障の間の平均稼働時間が長くなることで、安定した生産計画の実現が可能になります。

もう1つは平均修理時間(MTTR:Mean Time To Repair)の短縮です。故障の予兆を事前に検知することで、必要な部品や技術者を準備した上で計画的な修理が行えるため、復旧までの時間が大幅に短縮されます。

具体的な例を考えてみると、ある食品製造ラインでモーターの振動パターンを常時監視するシステムを導入した結果、ベアリングの異常を早期に検出できるようになった事例があるとします。従来であれば突然の故障でラインが半日停止していたケースが、予知保全により計画的な2時間のメンテナンス時間内で対応できるようになり、年間のダウンタイムが72時間から12時間へと85%削減されます。

予知保全によるダウンタイム削減は、単に故障回数を減らすだけでなく、計画的な保全作業への転換により、生産計画の確実性を高め、顧客への納期遵守率向上にもつながります。

コスト効率の向上

予知保全は、部品の寿命を最大限に活用しながら適切なタイミングで交換するため、無駄な部品交換や過剰なメンテナンスを回避できます。そのため、保全コストを大幅に削減しながら設備の信頼性を維持することが可能になります。

従来の予防保全では、まだ使用可能な部品も定期的に交換していましたが、予知保全では部品の実際の状態に基づいて交換時期を決定するため、部品の使用寿命を最大限に延ばせます。

また緊急対応や突発的な修理作業が減少することで、残業代や休日出勤などの追加的な人件費を削減できます。さらに、計画的な保全は通常の勤務時間内に効率よく実施できるため、保全作業の工数も削減されます。

ほかにも小さな故障が大きな損傷に発展する前に対処できるため、高額な修理費用や設備の早期劣化を防止できます。たとえば、ベアリングの初期異常を早期に検知して交換することで、モーター全体の交換が必要になる事態を回避した事例もあります。

具体例として、ある半導体製造装置のメーカーで、真空ポンプの状態監視システムを導入したとします。真空度や振動、電流値などの複数パラメータを常時監視し、異常の予兆を検知するアルゴリズムを開発したところ、ポンプの故障予測精度が向上し、従来の定期交換方式と比較して年間のメンテナンスコストが約25%削減される結果になりました。

このように予知保全は、必要なときに必要な部分だけを保全するというコスト効率の高いアプローチを実現し、限られた保全予算の中で最大の効果を生み出すことができるのが強みです。

生産性と稼働率の改善

予知保全の最も重要なメリットの一つが、生産設備の総合的な稼働率と生産性の向上です。設備が常に最適な状態で稼働できるよう管理することで、生産性が向上します。また属人的な判断に頼らずデータ主導で保全を行うため、効率的かつ精度の高い運用が可能になります。

予知保全は設備総合効率(OEE)の向上に大きく貢献します。予知保全により、設備の可用性が高まり、性能効率と品質も安定化します。また設備の状態が最適に保たれることで、製品の品質にばらつきが生じにくくなり、不良率の低減や歩留まりの向上につながります。特に精密加工や化学プロセスなど、設備状態が製品品質に直結する工程では大きな効果が見られます。

さらに、センサーデータとAI分析により、熟練技術者の経験に頼らずとも高精度な状態診断が可能になります。これにより、技術者不足の課題がある現場でも、効率的な保全作業の実施が可能になります。

例えば、ある食品包装ラインで、シール部の温度変動を常時監視し、最適な温度範囲からの逸脱を早期に検知するシステムを導入したとします。これにより、不良品発生率が5%から2%に低減し、製品歩留まりが向上して、年間稼働率が92%から97%に向上した結果、生産能力が約5%増加することになります。

予知保全によって実現される安定した設備稼働は、単に故障を減らすだけでなく、製造工程全体の最適化、生産計画の確実な遂行、そして最終的には顧客満足度の向上につながっています。

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AIやIoTを活用した予知保全の導入方法4ステップ

予知保全を成功させるためには、単にセンサーやAIシステムを導入するだけでなく、計画的なアプローチが不可欠です。特に初めて予知保全を導入する工場では、段階的に進めることでリスクを抑えながら効果を最大化できます。ここでは、予知保全の導入を成功に導くための4つのステップを詳しく解説します。

  1. 現状分析と目標設定

  2. データ収集

  3. AIモデル構築と検証

  4. システム構築と実装

上記のステップに沿って検討を進めることが、自社の製造環境に最適な予知保全システムの構築につながります。

1.現状分析と目標設定

予知保全を効果的に導入するための第一歩は、現状の保全体制と設備状況を詳細に分析することです。これにより、最も大きな効果が期待できる領域を特定し、投資対効果を最大化できます。

まず、設備の故障頻度や修理コスト、生産停止による損失など、現状の課題を定量的に分析します。この段階では以下のデータを収集することが重要です。

  • 過去1~3年間の設備故障履歴と修理記録

  • 故障による生産停止時間とその経済的損失

  • 保全部品の年間使用量と調達コスト

  • 保全作業に費やされている工数と人件費

これらのデータをもとに、どの設備が最も故障頻度が高いか、どの故障モードが最も損失が大きいかなど、重点的に取り組むべき課題を明確にします。

分析結果に基づき、予知保全導入の具体的な目標を設定します。この目標はSMART(具体的、測定可能、達成可能、関連性がある、期限がある)の原則に従うことで、効果測定がしやすくなります。例えば、以下のような目標が挙げられます。

  • 特定設備の年間ダウンタイムを20%削減する

  • 緊急修理コストを30%削減する

  • 設備総合効率(OEE)を5%向上させる

  • 保全部品の年間消費量を15%削減する

最後に、どの機器や設備に予知保全を適用するかを決定します。すべての設備に一度に導入するのではなく、以下の基準で優先順位をつけることをおすすめします。

  • 生産への影響度(ボトルネック工程や代替設備がない機器を優先)

  • 故障頻度と修理コスト(高頻度・高コストの設備を優先)

  • センサー設置の容易さ(データ収集のしやすさ)

  • 故障メカニズムの理解度(予測モデル構築の容易さ)

この現状分析と目標設定のステップは、予知保全プロジェクトの方向性を決める重要なフェーズです。十分な時間をかけて実施することで、後続のプロセスがスムーズに進み、投資対効果の高い予知保全システムを構築できるでしょう。

2.データ収集

予知保全の核となるのはデータです。記録漏れを防止する仕組み作りやシステム、適切なセンサーの選定を設置し、必要なデータを正確に収集する体制を構築することが、予知保全成功の鍵を握ります。

まず、対象設備の故障メカニズムを理解した上で、どのような物理量を計測すべきかを決定します。一般的に監視対象となる主なパラメータは振動、温度、音、圧力などです。

設備状態を監視するためには、IoTセンサーを設置し、リアルタイムでデータを収集をするることの検討しましょう。例えば、回転機器では振動センサーが故障予兆を捉えるのに有効であり、電気系統では電流値や温度が重要な指標となります。センサーの選定では、計測範囲や精度、サンプリング周波数、耐環境性などを考慮する必要があります。

データ収集の頻度も重要な検討ポイントです。常時モニタリングが必要な設備もあれば、定期的なデータ収集で十分な場合もあります。通信方式(有線・無線)や保存場所(エッジ・クラウド)についても、設備の重要度や工場のIT環境に合わせて選択します。

収集したデータは、正常時と異常時のデータを区別し、AIモデルが学習可能な形で整理することが重要です。このために、過去の故障発生時のデータと正常運転時のデータを明確にラベル付けします。データクレンジングと前処理(ノイズ除去、欠損値処理、正規化など)も、モデルの精度向上のために欠かせないプロセスです。

またセンサーデータだけでなく、過去の故障履歴や稼働状況データも活用します。保全作業報告書、操業日報、品質検査データなどの既存情報と新たに収集するセンサーデータを組み合わせることで、より高精度な予測モデルを構築できます。

データ収集段階では、まず小規模なパイロットプロジェクトから始め、得られた知見をもとに徐々に対象設備を拡大していくアプローチが効果的です。またデータ収集プロセスに現場作業者を巻き込み、彼らの経験や知見も取り入れることで、より実効性の高いシステム構築が可能になります。

設備データを統合し、予知保全の精度を高める

予知保全では、故障履歴や点検記録、稼働データなどを正確に整理し、分析に活用できる形での一元管理が重要です。データが紙やExcelに散在していると、AIモデルの学習に必要な情報が不足し、

異常検知の精度低下や予兆の見逃しにつながり、予知保全の効果を十分に発揮できません。

カミナシ設備保全では、点検記録・停止時間・履歴を一つの画面に集約でき、全体像を短時間でつかめるようになります。保全データの扱い方を見直したい方におすすめの内容です。

▼こんな方におすすめ

  • 保全データが散在しており、探すだけで時間がかかる

  • 設備ごとに履歴を整理し、共有の基盤を整えたい

  • トラブルの傾向を把握し、再発防止に活かしたい

3.AIモデル構築と検証

収集したデータを基に、設備の状態を監視し異常を予測するAIモデルを構築します。このフェーズでは、データサイエンティストと設備保全の専門家が協力して進めることが重要です。

AIモデル構築の一般的なアプローチとしては、異常検知と故障予測の二つの視点があります。異常検知では、機器の正常なデータパターンを学習させ、そこから逸脱した動作を検出します。一方、故障予測では過去の故障事例からパターンを学習し、将来の故障発生確率を予測します。対象設備の特性や収集データの内容に応じて、適切な手法を選択しましょう。

小規模な検証プロジェクトを実施し、AIモデルが設備の異常兆候を正確に検知できるか確認します。検証段階では、実際の製造環境でテストし、誤検知や見逃しの発生頻度を評価します。現場作業者へのヒアリングも交えながら、モデルの実用性を確認することが大切です。

AIモデルの検証ができたら、機械学習アルゴリズムを用いて故障予測モデルを構築し、精度向上のためにパラメータ調整を行います。

モデルの選択肢としては、シンプルな統計的手法からディープラーニングまで様々なアプローチがありますが、まずは解釈可能性の高いモデルから始めるのが望ましいでしょう。例えば、回帰分析やランダムフォレスト、サポートベクターマシンなどは、比較的少ないデータ量でも有効なモデルを構築できます。

モデルの評価にあたっては、技術的な精度指標だけでなく、ビジネス価値の観点からも検証することが重要です。誤検知による過剰なメンテナンス増加と故障の見逃しによる損失のバランスを考慮し、最適な閾値設定を行いましょう。

4.システム構築と実装

検証フェーズで効果が確認できたら、いよいよ予知保全システムを本格的に構築し、実際の生産現場に導入します。このフェーズでは、技術面だけでなく運用面も考慮した実装が重要です。

AIモデルの検証で得た結果を基に、予知保全システムを現場環境に適応させます。小規模検証で得られた知見をもとに、システムの安定性や拡張性を高めるための調整を行います。現場の作業者がシステムを使いこなせるよう、直感的なインターフェースの設計も重要なポイントです。

クラウドやエッジコンピューティング技術も活用されることがあります。エッジコンピューティングは現場近くでデータを処理するため、リアルタイム性が高く通信コストも削減できますが、計算資源に制約があります。

一方、クラウドは豊富な計算資源を活用できますが、ネットワーク依存度が高まります。多くの企業では、エッジでの一次処理とクラウドでの高度分析を組み合わせたハイブリッド構成を採用しています。

センサーから得たデータを中央システムに送信し、リアルタイムで分析可能な環境を整備します。状態監視画面やアラート機能、レポート機能なども実装し、保全担当者が効率的に業務を行える環境を構築します。既存の生産管理システムや設備管理システムとの連携も考慮しましょう。

システム実装と並行して、運用体制の整備も進めます。異常検知時の対応フローや担当者の役割分担、判断基準などを明確にし、マニュアル化します。またシステム運用担当者や保全作業者への教育・トレーニングも実施し、新しい予知保全の仕組みが現場に定着するよう支援しましょう。

自社の設備保全データを見直し、予知保全の導入を検討しよう

本記事では、製造業における予知保全の基本概念からメリット、具体的な導入方法について解説してきました。IoTセンサーとAI技術を活用した予知保全は、従来の事後保全や予防保全とは異なり、設備の実際の状態に基づいて必要なときに、必要な部分だけ保全を行うという新しいアプローチです。

この予知保全によって得られる主なメリットは、設備のダウンタイム削減、コスト効率の向上、そして生産性と稼働率の改善です。突発的な設備故障による予期せぬライン停止を防ぎ、部品の寿命を最大限に活用することで保全コストを削減し、安定した設備稼働により生産性を向上できます。

予知保全の導入は一朝一夕に実現するものではありませんが、現状分析と目標設定、データ収集、AIモデル構築と検証、そしてシステム構築と実装という4つのステップに沿って計画的に進めることで、自社の製造環境に最適な予知保全システムを構築できます。

まずは自社の設備保全データを見直し、どの設備が最も故障頻度が高いか、どの故障が最も損失が大きいかを分析してみましょう。小規模なパイロットプロジェクトから始め、得られた知見を徐々に広げていくアプローチが、リスクを抑えながら予知保全の効果を最大化する近道です。

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執筆者:現場と人 編集部

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