工程能力指数は、生産の安定化のために用いられる指標です。工程ごとの品質のばらつきを数値化でき、生産工程における課題の早期発見に活用できます。
ただし、工程能力指数は適切に計算しないと、現状より高い数値が算出されるおそれがあります。誤って算出した数値で生産工程を評価すると、トラブルを見逃すことがあるため注意が必要です。
本記事では、工程能力指数の概要や種類ごとの計算式、判断基準を紹介します。活用方法や算出するツールも紹介するので、自社の生産ラインを評価、改善したい方はぜひ参考にしてください。
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工程能力指数とは
工程能力指数(Cp/Cpk)とは、製造業の品質管理において、製品の規格幅に対して実際の測定値のばらつきを比較し、品質を定量的に評価するために用いられる値です。そもそも工程能力とは、決められて規格の中で、実際に製品を生産できる能力を意味します。
製造業では、生産工程を自動化しても、製品の品質に必ず多少のばらつきが生じます。安定して生産するには、製品の寸法や性能など品質のばらつきを抑え、工程能力を測定し、常に監視できる体制を整えておくことが大切です。
工程能力指数を用いることで、規格幅(規格の許容範囲の上限値と下限値の差)の中での測定値のばらつき具合を把握できます。工程能力指数の値が大きいほど、品質のばらつきが小さく、安定して生産できると判断できます。
工程能力指数と不良率との違い
工程能力指数と混合されやすい数値に不良率があります。不良率とは、実際の生産数に対する不良品の数の割合を表す数値です。
そのため、規格値とのずれを比較して工程のばらつきを評価する「工程能力指数」とは比較して、不良率は不良品数の割合を算出するため、求める値や目的(現状把握や改善効果の検証など)の違いがあります。
例えば、1,000台の家電製品を生産し、うち50台が不良品であれば、不良率は5%となります。数値が大きいと不良品の発生率が高く、コストの増加につながるため、設備の修理や材料の見直しなどが必要です。
一方で、工程能力指数は製品の品質のばらつきを数値化したものです。数値が大きいほど不良品が少ない傾向にあり、品質が安定していると判断できます。
品質不良における不良率の具体的な対策は以下の記事でまとめています。
▶ 【すぐに取り入れたい】製造業における5つの不良対策方法を紹介。原因や不良率の計算方法もあり
工程能力指数の判断基準
工程能力指数には、共通の判断基準が設けられています。具体的な数値と、その評価を表にまとめました。具体的な判断基準を知ることで、計算結果に合わせて対策を講じられるようになります。
工程能力指数(Cp、Cpk)の数値 | 工程能力の評価 |
|---|---|
1.67以上(Cp/Cpk ≧ 1.67) | 必要以上にある |
1.33以上1.67未満(1.67 > Cp/Cpk ≧ 1.33) | 十分ある |
1.00以上1.33未満(1.33 > Cp/Cpk ≧ 1.00) | 十分とはいえない |
0.67以上1.00未満(1.00 > Cp/Cpk ≧ 1.67) | 不良品が発生しやすい状態になっている |
0.67未満(0.67 > Cp/Cpk) | 品質が著しく低い状態になっている |
工程能力指数の判断基準
一般的にCp、Cpkが1.33以上あれば、工程能力に問題なく、安定した生産が可能だと判断できます。
もしCp、Cpkが1.67以上の場合は、顧客が求めている品質を超えている状態のため、生産コストが必要以上にかかっている可能性があります。コストをかけすぎている場合は、作業の効率化や簡素化に取り組み、生産コストを抑えましょう。
一方でCp、Cpkが1.33未満の場合は品質のばらつきが大きく、不良品が発生しやすい状態であると判断できます。品質のばらつきを抑えるためには、生産工程や材料などを見直し、生産の安定化を図ることが必要です。
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工程能力指数の種類と計算式
工程能力指数の種類には、CpとCpkの2つがあります。それぞれの概要と計算式を表にまとめました。安定した生産ができているか客観的に把握するために、計算してみましょう。
工程能力指数の種類 | 概要 | 計算式 |
|---|---|---|
Cp | ・上限と下限の幅に対するデータのばらつきを表す指標 | ・両側規格:Cp = (上限規格値 - 下限規格値)/ 6σ |
Cpk | ・Cpの偏りやずれを補正した指数 | Cpk = (上限規格値 - 平均値)/ 3σ または Cpk = (平均値 - 下限規格値)/ 3σ のいずれかうち、小さい値を採用 |
工程能力指数の種類とそれぞれの計算方法
Cpとは?
Cpは規格の上限と下限の幅に対するデータのばらつきを表す工程能力指数です。
Cpは、規格幅の平均値(データの合計値をデータの個数で割ったときに出る値)と、中央値(データを小さい順に並べたときに真ん中に位置する値)が同じときに利用します。
例えば寸法の規格が100±5mm(95mm~105mm)の製品を10個生産したときは、10個の製品の中央値が100mmの場合、平均値も100mmとなります。
Cpの計算式は、①上限値と下限値を設定している両側規格と、②上限か下限のいずれかを設定している片側規格で異なるため、2つに分けて紹介します。
①Cp(両側規格)の計算式
Cp(両側規格)を求めるには、以下3つの数値が必要です。
Cp(両側規格)を求めるのに必要な数値 | 詳細 |
|---|---|
上限規格値 | 製品の寸法や重量などが許容範囲となる最大の数値 |
下限規格値 | 製品の寸法や重量などが許容範囲となる最小の数値 |
標準偏差(σ:シグマ) | ・データの平均値からのばらつき具合を表す数値 |
Cp(両側規格)を求めるために必要な値
上限規格値と下限規格値は、製品によって定めている値を用いて、標準偏差は、製品ごとのデータ(寸法や重量など)から以下の手順で計算して求めます。
標準偏差を計算する手順 | 計算式 |
|---|---|
1.平均値を求める | 平均値 = 各データの合計 / データ数 |
2.偏差(各データの平均値との差)を求める | 偏差 = データ - 平均値 |
3.分散(各データの偏差を2乗したあとに合計値を求め、データ数で割った値)を求める | 分散=(偏差)2の合計 / データ数 |
4.標準偏差(分散の平方根を取った値)を求める | σ=√分散 |
標準偏差を求める手順と計算式
標準偏差を求めたら次にCpを計算します。Cpは規格幅に、標準偏差を6倍した値を割って求めます。
Cp = (上限規格値 - 下限規格値)/ 6σ
計算例として、ボルトの直径の規格が10.0±0.1mm(上限規格値10.1mm、下限規格値9.9mm)で、生産した11本の測定値が以下であった場合の工程能力指数(Cp)を求めます。以下は製造したボルトのデータになります。
製品番号 | ボルトの直径の測定値(mm) |
|---|---|
1 | 10.05 |
2 | 9.99 |
3 | 9.91 |
4 | 9.98 |
5 | 10.01 |
6 | 10.00 |
7 | 10.03 |
8 | 10.10 |
9 | 10.02 |
10 | 9.91 |
11 | 10.00 |
ボルトの直径の規格が10.0±0.1mmの製品を11個製造したときのデータ
はじめに、ボルトの直径の平均値を求めます。
平均値 =(10.05+9.99+9.91+…+9.91+10.00)/ 11 =10
次に製品ごとの偏差を求めます。以下に製品ごとの偏差を計算し、記載しています。
製品番号 | 偏差(mm) |
|---|---|
1 | 10.05 ‐ 10 = 0.05 |
2 | 9.99 - 10 = -0.01 |
3 | 9.91 - 10 = -0.09 |
4 | 9.98 - 10 = -0.02 |
5 | 10.01 - 10 = 0.01 |
6 | 10.00 - 10 = 0 |
7 | 10.03 - 10 = 0.03 |
8 | 10.10 - 10 = 0.1 |
9 | 10.02 - 10 = 0.02 |
10 | 9.91 - 10 = -0.09 |
11 | 10.00 - 10 = 0 |
製品ごとの偏差
続いて分散を求めます。

分散(0.00278)が求められたので、平方根を取って、標準偏差を算出します。

標準偏差(0.0527)を算出したら、工程能力指数を求めます。
Cp = (上限規格値 - 下限規格値)/ 6σ =(10.1 - 9.9) /(6 × 0.0527)= 0.632
上限規格値から下限規格値を引いた数から、6σ(標準偏差の6倍)を割った結果、Cpが求められ、0.632となりました。
工程能力指数が0.67より低い(0.67 > Cp/Cpk)ことがわかるため、品質のばらつきが大きく、早急に改善が必要だと判断できます。
②Cp(片側規格)の計算式
Cp(片側規格)を求める場合は、上限規格値または下限規格値と、平均値の差を標準偏差の3倍で割って計算します。
片側規格 | 計算式 |
|---|---|
上限規格値のみ決まっている場合 | Cp = (上限規格値 - 平均値)/ 3σ |
下限規格値のみ決まっている場合 | Cp = (平均値 - 下限規格値) / 3σ |
例えば、めっきの厚さの上限規格値が10μmで、製品10個の厚さを計測したときの平均値が7μm(マイクロメートル)、標準偏差が0.5μmであった場合Cpは次のように計算可能です。
Cp =(10 - 7) /(3 × 0.5)= 2.0
判断基準の表より、Cpは1.67以上(Cp ≧ 1.67)あるため、必要以上に工程能力があると判断できます。この場合は、過剰品質になっていないか確認し、必要に応じて生産工程の簡略化やコスト削減に向けて取り組みましょう。
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Cpkとは?
CpkはCpの偏りやずれを補正した指数です。製造工程において、中央値と平均値がずれることが多いため、CpkのほうがCpより実際の工程能力を把握できます。
計算式は以下の2つを計算し、いずれかの小さい値(規格に近い数値)をCpkとします。
Cpk = (上限規格値 - 平均値)/ 3σ
Cpk = (平均値 - 下限規格値)/ 3σ
計算例として、ボルトの直径の規格が10.0±0.1mm(上限規格値10.1mm、下限規格値9.9mm)で、製品10本の平均値が10.02mm、標準偏差が0.02であった場合のCpkを求めます。
上限規格値と下限規格値を用いて、以下のように計算しましょう。
上限規格値のCpk =(10.1 - 10.02)/(3 × 0.02) = 1.33
下限規格値のCpk =(10.02 - 9.9) / (3 × 0.02) = 2.0
上限規格値のほうが数値が小さいため、Cpkは1.33です。
1.33は1.67 > Cpk ≧ 1.33の範囲にあり、工程能力が十分あると判断できます。1.33であれば早急な対策は不要ですが、工程能力を維持できるように設備保全を積極的に行いましょう。
工程能力指数の活用方法
工程能力指数は、生産ラインの改善や顧客に向けた品質保証の提示など、さまざまな場面で活用できます。活用方法を把握することで、工程能力指数を品質改善や工程管理の最適化に役立てられます。主な活用方法の詳細を表にまとめました。
活用方法 | 詳細 |
|---|---|
生産ラインの改善 | ・工程能力指数が低い場合は、設備や部材の見直しなど品質を向上させるための改善を行うための指標として活用できる |
顧客に向けた品質保証の提示 | ・顧客に検査成績書を送る際に、CpやCpkを製品の評価データとして提示できる |
購入先の評価 | ・自社で部材の購入を検討している場合に購入先にCpやCpkの提示を求めることで、購入先の評価ができる |
工程能力指数の活用方法
工程能力指数は、客観的な品質評価に基づき、生産体制の安定化や信頼性の向上を後押しする指標として活用されます。
工程能力指数を算出できるツール
工程能力指数はExcelやデジタルツールで算出できます。ツールごとのメリットや活用方法を知ることで、自社の業務や規模に合った効率的な分析手法を選べるようになり、品質管理の精度向上にもつながります。導入コストや操作性なども比較しながら、自社に適した方法を検討してみましょう。
Excel(エクセル)
Excelを活用すれば、規格値と製品の計測データを入力するだけで工程能力指数を計算できるシートを作れます。作り方は以下の通りです。
各数値(上限規格値や下限規格値、寸法など)を記入するセルと、計算過程で求める必要のある数値(平均値や標準偏差など)を算出するセルを作成する。
平均値のセルに平均値の関数=AVERAGE(データ範囲)を記入する(今回の場合はセルE8に=AVERAGE(B8:B17)と記入)。

標準偏差のセルに標準偏差を算出できる関数=STDEV(データ範囲)を記入する(今回の場合はセルE9に=STDEV.P(B8:B17)と記入)。

Cpのセルに=(上限規格値-下限規格値)/(6標準偏差)と記入する(今回の場合はセルE16に=(B3-B4)/(6*E9)と記入)。

Cpkのセルに最小値の関数を用いて=MIN((上限規格値-平均値)/(3標準偏差),(平均値-下限規格値)/(3標準偏差))と記入する(今回の場合はセルE17に=MIN((B3-E8)/(3*E9),(E8-B4)/(3*E9))と記入)。

Excelでの工程能力算出シートは作成するのに手間がかかりますが、費用を抑えられることがメリットです。ただし、入力ミスによって数値に誤りが生じやすい点や、データを紛失しやすいデメリットがあります。
デジタルツール
工程能力の計測をデジタル化することで、リアルタイムで工程能力指数を把握できるようになります。
例えば、電子帳票システムやIoT(モノのインターネット)、スマートファクトリー化(データを活用して業務を管理する工場)することで、工程能力指数の自動計測をリアルタイムで行うことが可能です。あらかじめ設定した基準値を下回った場合には、即座に設備保全の担当者へ通知が届くといった仕組みも構築でき、品質の安定とトラブルの早期対応に大きく貢献します。
工程能力指数の管理がしやすくなることで、設備異常が深刻化する前に問題を発見でき、生産ラインの停止時間削減や不良率の低下につなげられます。
工程能力指数を用いて分析する手順
工程能力指数は算出すること自体が目的ではなく、算出後の結果をもとに品質のばらつきや工程の安定性を評価し、必要に応じて材料の見直しや設備の改善を行うことが目的です。
工程能力指数を用いた分析手順と詳細を表にまとめました。分析の手順を確認し、算出した工程能力指数から自社で取り組むべきことを判断できるようにしましょう。
手順 | 具体的な概要 |
|---|---|
1.データ収集と整理 | ・生産した製品や工程から得られる情報を収集する(寸法や重量、製品の強度など) |
2.工程能力指数の計算 | ・データの平均値や標準偏差などの数値を計算し、工程能力指数を求める |
3.改善点の特定 | 工程能力指数が1.33未満の場合や1.67以上の場合は原因を分析し、改善策を講じる |
工程能力指数を確認する際の注意点
CpやCpkを計算する前に、各データの分布をヒストグラム(データをいくつかのクラスに分け、棒グラフ形式で表したグラフ)を作成し、データが適切か確認しましょう。
例えば、横軸を寸法、縦軸を製品の個数にしてグラフを作成します。データの中央値や平均値になるほど個数が多くなる正規分布となっている場合、データは適切です。
正規分布でないと異常値が含まれている可能性があるため、注意が必要です。標準偏差が高くなり、工程能力が実際の数値より低く算出されるので、過剰な改善を行ってしまうおそれがあります。
CpやCpkが高すぎる場合は、データの数や数値の桁を見直し、必要に応じて修正しましょう。
工程能力指数を用いて品質の維持管理を最適化しよう
工程能力指数は生産工程における品質のばらつきを数値化する指標です。
CpとCpkの2種類があり、数値が1.33以上あれば工程能力は十分と判断できます。しかし、1.33未満であれば、品質のばらつきが大きく不良品が発生しやすい状態のため、設備や材料または生産工程などの見直しを検討しましょう。
工程能力指数はExcelで算出できます。ただし、Excelは入力ミスやデータ紛失のリスクを伴うことがあり、管理が困難になる可能性もあります。
適切に管理するにはデジタルツールを導入し、入力の自動化やアクセス権限の設定によるデータ管理を行える体制を整えましょう。現場の点検記録や改善策の進捗管理などの情報を一元管理できるカミナシ レポートでは、工程能力指数にもとになるデータの記録が抜け漏れなく取得できます。
従来のような紙の記録をパソコンに転記するといった作業をなくせます。その結果、ヒューマンエラーを防止でき、確実なデータを取ることが可能です。
現在カミナシでは工程能力指数をはじめとしたデータ活用を始める方に向けて、現場DXを成功させるためのステップや成功事例に関する資料をお渡ししています。
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