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公開日 2026.06 .10

更新日 2026.06.10

【製造業】品質管理システム(QMS)を種類別に紹介。 機能や選ぶ際のポイント、メリット

【製造業】品質管理システム(QMS)を種類別に紹介。 機能や選ぶ際のポイント、メリット

製造業の現場では、人手不足やベテラン社員への業務集中、ISO 9001など認証取得・維持の負担増といった課題が年々深刻化しています。

紙やExcelでの品質管理を続けてきた現場ほど、記録の抜け漏れや転記ミスが頻発し、監査対応のたびに膨大な工数が掛かる実態に頭を抱えているのではないでしょうか。

本記事では、品質管理システムの定義と主な機能、4タイプ8サービスの比較、選び方の5ポイント、導入を成功させる5ステップ、運用効果を高めるコツまでを解説します。読了後は、自社の品質管理業務の棚卸しと、候補システムの絞り込みに動き出せる内容になるよう書いたので、是非最後までご覧ください。

目次

品質管理システムとは

品質管理システムとは、製造現場の検査記録や工程進捗、不適合品の管理、文書管理、トレーサビリティといった品質に関わる業務を一元的にデジタル化し、品質マネジメント全体の精度と効率を高めるための業務システム(≒ツール)です。

品質管理システムは、紙やExcelで分散していた情報をひとつに集約し、現場での記録から経営層への報告までを一気通貫でつなぐ役割を担います。

品質管理は製造業の根幹であり、製品の不良や認証取得の失敗は売上やブランド価値に直結します。それでも多くの現場では、検査記録は紙、文書管理はファイルサーバー、是正処置はメールと、業務ごとにツールがバラバラに使われている状態が残っています。品質管理システムを導入すると、これらの業務をひとつの仕組みに統合し、属人化や情報の分断を解消できます。

品質管理システムとISO 9001(QMS)の関係

品質管理システムは、ISO 9001をはじめとする品質マネジメントシステム(Quality Management System)の運用を効率化する基盤として位置づけられます。ISO 9001は、組織が品質マネジメントの仕組みを構築・運用するための国際規格であり、リーダーシップ、計画、サポート、運用、パフォーマンス評価、改善の6領域で要求事項が定められています。

ISO 9001の認証取得・維持には、文書化情報の管理、記録の保管、内部監査、是正処置、マネジメントレビューなど多岐にわたる作業が必要です。これらを紙やExcelだけでこなそうとすると、監査のたびに書類の収集と整理に追われ、現場の本来業務が圧迫されます。品質管理システムを導入すれば、要求事項に対応した文書管理・記録管理・是正処置の運用を仕組みで支えられ、認証取得・更新の負担を大幅に減らせます。

参考:日本産業標準調査会(JISC) | 経済産業省

品質管理システムの主な5つの機能

品質管理システムの機能は、現場の品質業務を構成する5つの領域に対応しています。導入を検討する際は、自社の課題がどの機能で解決できるかを整理しておくと、製品比較がスムーズになります。

機能

概要

工程・作業の進捗管理

各工程の作業手順や実績、進捗状況をリアルタイムに可視化し、不具合発生時の原因追跡を容易にする

検査・記録管理

受け入れ検査や工程検査、最終検査の記録を電子化し、入力ミスや抜け漏れを防ぐ

不適合品・是正処置の管理

不適合の発生記録から原因分析、是正処置、再発防止までの流れを一元管理する

文書・帳票管理

規程類やマニュアル、QC工程表などの版管理と承認フローをデジタル化する

トレーサビリティ

原材料の入荷から製造工程、出荷までを一気通貫で追跡し、問題発生時の回収範囲を最小化する

品質管理システムの主な5つの機能

工程・作業の進捗管理機能

工程・作業の進捗管理機能は、各工程の作業手順や作業実績、進捗状況をリアルタイムに可視化する役割を担います。作業者、設備、ロットごとの実績を紐づけて記録できるため、不具合が発生した際に、いつ、どこで、誰が、どの設備でどのロットを扱っていたかを素早く追跡できます。

MES(製造実行システム)の機能と重なる部分が多く、生産管理システムやMESと連携して運用するケースが一般的です。生産計画と現場実績のズレを早期に検知できるため、納期遅延や品質低下のリスクを抑える土台になります。

検査・記録管理機能

検査・記録管理機能は、受け入れ検査、工程検査、最終検査などの検査記録を電子化し、抜け漏れなく管理する機能です。タブレット端末やスマートフォンから現場で直接入力できるため、紙からExcelへの転記作業を不要にできます。

規定値からの逸脱や入力漏れがあった際にアラートを発する仕組みを備えるシステムも多く、判定ミスや見落としを構造的に防げます。検査記録の電子化は品質検査とは|検査の種類や手順、進め方を解説で詳しく説明しています。

筆者の食品工場でも、検査記録を紙で運用していた時期は1ラインあたり1日に約40枚の検査票が現場で回覧されていました。

月末のファイリングと転記作業に合計25時間以上を吸い取られ、転記ミスも月に5件以上発生していた経験があります。タブレット入力に切り替えてからは転記時間がほぼゼロになり、検査員の負担と品質データの信頼性が同時に改善しました。

不適合品・是正処置の管理機能

不適合品・是正処置の管理機能は、不適合が発生した際の発生記録、原因分析、是正処置、再発防止の一連の流れを管理する機能です。5W1Hで原因究明を行うフォーマットや、是正処置の進捗を関係部門で共有できる仕組みを備えるものが多く、現場と品質保証部門の連携を円滑にします。

ISO 9001の8.7(不適合のアウトプットの管理)や10.2(不適合および是正処置)の運用に直結する機能であり、認証取得・維持を意識する企業にとって特に重要です。不適合の早期発見と再発防止の体系的な進め方については、製造業の不良対策|原因分析と再発防止の進め方で詳しく解説しています。

文書・帳票管理機能

文書・帳票管理機能は、規程類やマニュアル、QC工程表、作業標準書などの版管理を行う機能です。現場でいつも古いマニュアルを見ていたという問題や、最新版がどれかわからないという混乱を解消する役割を担います。

閲覧履歴や承認フローをシステム上に残せるため、ISO 9001で求められる文書化情報の管理にも対応できます。文書改訂のたびに紙を差し替える作業が不要になり、品質保証部門の管理負荷が大きく減ります。

トレーサビリティ機能

トレーサビリティ機能は、原材料の入荷から製造工程、出荷までを一気通貫で追跡できる機能です。問題発生時に該当ロットを特定し、回収範囲を最小限に絞り込めます。

食品や医薬品、自動車部品など、規制が厳しい業界では必須機能になっており、JFS規格やHACCPなどの認証取得を目指す現場でも導入が進んでいます。
トレーサビリティの設計と参考:食品トレーサビリティ | 農林水産省

品質管理システムの主な種類

品質管理システムは、カバーする範囲によって大きく4つのタイプに分かれます。自社の課題が記録のデジタル化なのか、文書管理なのか、検査の自動化なのかによって選ぶべきタイプが変わるため、まずは4タイプの違いを押さえておくと候補を絞りやすくなります。

タイプ

主な機能

代表サービス

価格帯(参考)

得意な業種

統合型QMSパッケージ

文書管理、記録管理、不適合管理、是正処置、監査管理など、QMS全領域をカバー

Agatha QMS/mcframe

月額数十万円から数百万円

医薬品、自動車部品、IATF対応の中堅・大手

現場記録・帳票特化型

検査記録、点検記録、作業日報など現場で発生する記録のデジタル化

カミナシレポート/i-Reporter

月額数万円から十数万円

食品、化粧品、物流、中小から中堅の製造業

検査・画像判定特化型

カメラとAIによる外観検査、寸法検査、印字検査の自動化

キーエンス CV-X100/コグネックス VisionPro

装置1台あたり数百万円台

自動車部品、電子部品、外観検査が多い業種

文書管理・ISO対応特化型

規程・マニュアル・帳票の版管理、承認フロー、変更履歴

ASTRUX2.0/ISOナビ

月額数万円から十数万円

ISO 9001/14001など認証運用を最優先する企業

統合型QMSパッケージ

統合型QMSパッケージは、文書管理や記録管理、不適合管理、是正処置、監査管理など、QMSに必要な機能を一通り備えたパッケージ製品です。ISO 9001、IATF 16949、ISO 13485などの認証取得・運用を主目的に導入されるケースが多く、医薬品や自動車部品など規制対応が厳しい業界で採用が進んでいます。

価格帯とカスタマイズ範囲はともに大きく、導入には数か月単位のプロジェクトと、品質保証部門・IT部門・現場の3者連携が必要です。

自動車業界の品質マネジメント規格については、IATFとは|自動車業界の品質マネジメント規格を解説に詳細を載せています。あわせてご覧ください。

Agatha QMS

Agatha QMSは、アガサ株式会社が提供するクラウド型のQMSパッケージです。文書管理、教育記録、不適合・是正処置、変更管理、監査対応をひとつのプラットフォームでカバーし、医薬(GxP)領域での導入実績が豊富にあります。ISO 9001ベースでの運用にも対応し、製薬・医療機器・化粧品業界でよく採用されています。

クラウド型のためサーバー管理が不要で、複数拠点や子会社をまたぐ運用にも向きます。GxP対応の監査証跡が標準で残せる点が、規制対応を重視する企業から評価されています。

参考:Agatha QMS | アガサ株式会社

mcframe

mcframeは、ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)が提供する生産管理・原価管理・販売管理を統合した製造業向けパッケージです。品質管理機能も内蔵し、トレーサビリティを重視する中堅・大手製造業に向いています。

ERPとMESの中間を埋める製品として位置づけられており、生産から品質、原価までを一気通貫で管理したい企業に適しています。ロット管理や品目別の不適合管理など、製造業特有の要件を標準機能でカバーできる点が強みです。

参考:mcframe | ビジネスエンジニアリング株式会社

現場記録・帳票特化型

現場記録・帳票特化型は、検査記録、点検記録、作業日報など、現場で発生する記録のデジタル化に特化したシステムです。タブレット入力、オフライン対応、アラート機能など、現場の使いやすさを優先した設計になっており、中小から中堅の製造業や食品工場で導入が進んでいます。

短期間で導入でき、現場主導でテンプレートを作成・改善できる点が大きな魅力です。紙やExcelでの帳票運用から脱却したい現場と相性が良く、ペーパーレス化の第一歩として選ばれるケースも多くなっています。

カミナシ レポート

カミナシ レポートは、紙やExcelで運用していた現場帳票(点検記録、検査記録、衛生記録など)をタブレットでデジタル化するサービスです。食品、化粧品、物流、外食など、現場が分散する業種で導入実績が多く、ノーコードで現場ごとの帳票を作成できる点が支持されています。

写真添付や多言語対応、QRコードと紐づけた設備管理など、現場の運用に合わせて柔軟に設定できます。導入時のサポートが手厚く、中小規模の現場でも数か月で運用に乗せられる点が特徴です。

参考:カミナシ レポート | 株式会社カミナシ

i-Reporter

i-Reporterは、CIMTOPS社が提供する現場帳票電子化サービスです。既存のExcel帳票をそのままiPadやiPhoneで入力できる仕組みになっており、現場の慣れたフォーマットを大きく変えずにデジタル化できる点が強みです。

既存のExcel資産を活かしたい現場や、複数の帳票を段階的にデジタル化したい企業に向きます。

参考:i-Reporter | 株式会社シムトップス

検査・画像判定特化型

検査・画像判定特化型は、外観検査や寸法検査、個数カウントなどをAI画像認識で自動化するシステムです。人による目視検査のばらつきを減らし、検査品質の均質化と検査員の負担軽減につながります。

製造ライン上での外観検査や、寸法測定、OCR、有無検査の自動化に強みを持ち、電子部品業界や自動車部品業界で導入実績が豊富です。

キーエンス 画像処理システム CV-X100シリーズ

キーエンスのCV-X100シリーズは、製造ライン上での外観検査や寸法測定、OCR、有無検査などに対応する画像処理システムです。プログラミングなしで設定でき、現場で運用変更しやすい点が評価されています。

自動車部品や電子部品など、ライン速度が速く検査項目が多い現場で導入が進んでいます。導入支援とアフターサポートの体制も充実しており、初めて画像検査を導入する現場でも扱いやすい構成です。

参考:画像処理システム CV-X100シリーズ | 株式会社キーエンス

コグネックス VisionPro

VisionProは、ビジョンシステム業界の老舗であるコグネックスが提供する画像処理ソフトウェアです。ルールベースのツールに加え、AI機能(VisionPro Deep Learning/旧ViDi)を組み合わせることで、目視に近い柔軟な判定が可能です。

複雑な不良パターンを学習させたい現場や、従来の画像処理では判定が難しかった検査項目にも対応できます。グローバル展開している企業や、複数拠点で同じ検査基準を運用したい企業に向きます。

参考:VisionPro | コグネックス

文書管理・ISO対応特化型

文書管理・ISO対応特化型は、規程やマニュアル、帳票テンプレートの版管理、承認フロー、変更履歴に特化したシステムです。ISO 9001やFSSC22000の文書化要求事項への対応を効率化する用途に向いています。

すでに基幹系の品質管理は別システムでカバーしていて、文書管理だけが紙のままという企業にも適しています。比較的低コストで導入でき、品質保証部門のスモールスタートにつながります。

ASTRUX2.0

ASTRUX2.0は、株式会社デジタルマトリックスが提供する文書管理システムです。ISO 9001等の文書管理要求事項に準拠した版数管理、承認ワークフロー、変更履歴の自動記録に対応し、製造業の品質保証部門で導入されています。

オンプレミス版とクラウド版(ASTRUX SaaS)の両方が用意されており、自社のIT環境に合わせて選択できます。文書改訂のたびに発生していた紙の差し替え作業を、システムでの一括配信に切り替えられる点が大きなメリットです。

参考:ASTRUX2.0 | 株式会社デジタルマトリックス

ISOナビ

ISOナビは、株式会社フォーイーチが提供するISO文書管理クラウドです。ISO 9001、14001、27001など複数の規格に対応し、文書の更新通知、監査チェックリスト、是正処置記録までISO関連業務を一元化できます。

3か月の無料トライアルが用意されており、本格導入前に現場での運用感を確かめられる点も導入のハードルを下げています。中小企業や、ISO取得を初めて目指す企業からの評価が高いサービスです。

参考:ISOナビ | 株式会社フォーイーチ

品質管理システムを導入する3つのメリット

品質管理システムを導入すると、現場の負担軽減から経営指標の改善まで、幅広いメリットを得られます。導入の費用対効果を経営層に説明する場面では、特に次の3点を整理しておくと社内稟議が通りやすくなります。

記録の正確性向上と属人化の解消

紙の帳票では、記録漏れや転記ミス、読みづらい字などのトラブルが起こりやすく、データの信頼性が下がります。タブレット入力やプルダウン選択に切り替えると、誰が記録しても一定品質のデータを残せるようになります。

ベテランの暗黙知(勘・経験・度胸)に依存していた判断基準が、システム上のチェック項目として標準化されるため、退職や異動による品質低下のリスクも構造的に減らせます。

筆者の工場でも、品質判定の基準がベテラン検査員の経験に偏っていた時期は、検査員の退職や異動のたびに判定基準が揺れる課題を抱えていました。

月に2件から3件は判定のばらつきによる手直しが発生し、後工程での再検査に1件あたり約40分を費やしていた経験があります。判定基準をシステム上のチェック項目として標準化してからは、検査員の習熟度に依存しない品質を維持できるようになりました。

不具合の早期発見と是正の迅速化

品質管理システムを導入すると、規定値の逸脱や異常をシステムが自動検知し、リアルタイムでアラートを発信できるようになります。現場で異常が見つかったタイミングで品質保証部門に通知が飛ぶため、後工程まで不適合品が流れる前に対処できます。

不適合の発生から原因分析、是正処置までの履歴がシステムに蓄積されるため、再発防止活動にも活用できます。複数拠点・複数工程をまたぐ品質トレンドの可視化が可能になり、改善活動を回しやすい体制が整います。

ISO 9001など認証取得・維持の効率化

ISO 9001やFSSC22000、HACCP、IATF 16949などの認証取得・維持には、文書化・記録管理の徹底が欠かせません。品質管理システムを導入すると、これらの記録がデジタルで一元化され、認証取得・更新の準備工数が大幅に減ります。

監査時に求められる証跡(記録、承認履歴、是正処置の履歴など)をシステムからすぐに提示できるため、内部監査や外部監査の対応もスムーズです。更新監査やサーベイランス監査の準備工数が削減され、品質保証部門の本来業務に時間を回せるようになります。

品質管理システムを選ぶ5つのポイント

品質管理システムは、機能の豊富さよりも自社業務との適合度が重要です。導入後に「使われないシステム」にしないためには、選定段階で5つのポイントを押さえておく必要があります。

1.自社の業種・業務に必要な機能を備えているか

最初に確認すべきは、自社の業種で必須となる機能を備えているかという点です。食品製造、機械製造、医薬品など業種ごとに必要な機能(HACCP対応、ロット管理、温度記録、トレーサビリティなど)は異なります。

自社の品質管理業務を棚卸ししたうえで、必須機能とあれば良い機能を切り分けて評価すると、過剰スペックの製品を避けられます。

機能

必須/推奨/不要

補足

検査記録のデジタル化

必須

紙運用からの脱却が最大目的

ロット管理・トレーサビリティ

必須/推奨

業種により必須度が変動

文書管理・版管理

推奨

ISO認証取得・維持で重要度UP

不適合・是正処置管理

推奨

クレーム対応が多い現場では必須

画像認識・AI検査

不要/推奨

外観検査が多い業種で推奨

2.現場の従業員でも操作しやすいか

検査や記録は現場の従業員が日々入力するため、直感的な画面や少ないタップ数で記録が完了する設計が望ましいといえます。導入前のデモで、実際の現場担当者に触ってもらい、無理なく続けられそうかを確認すると失敗を避けられます。

タブレット端末やスマートフォン対応の有無、オフライン入力への対応も合わせて確認します。現場のネットワーク環境が安定しない場所では、オフライン入力の可否が運用継続のカギを握ります。

3.既存システムとの連携・データ移行はスムーズか

生産管理システム、ERP、CRMなど、既存システムとの連携可否は導入後の運用効率に直結します。既存の紙帳票やExcel台帳のデータを移行できるか、APIやCSVインポートに対応しているかをチェックします。

PoC(Proof of Concept)として、実際のデータを使った連携テストを行ってから本契約に進むと、想定外の連携トラブルを未然に防げます。DXの全体計画と連携性の考え方は、IPAの公開資料もあわせて参考になります。

参考:DX推進ポータル | 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

4.ベンダーのサポート体制は十分か

導入時のサポートだけでなく、運用フェーズでのバージョンアップや問い合わせ対応、トレーニング提供を確認します。サポート時間(平日のみか24時間対応か)、対応チャネル(電話、メール、チャット)、専任担当者の有無は実運用の安心感を左右します。

既存ユーザーの導入事例をベンダーから提示してもらい、業界や規模感が近い企業の声を確認すると、自社での運用イメージを掴みやすくなります。

5.コストと得られる効果のバランスは取れているか

初期費用、月額費用、オプション費用、ユーザー追加費用などのトータルコストを把握したうえで、削減できるコスト・工数を試算してROIを評価します。

提供形態

主なメリット

主なデメリット

向いている企業

クラウド型

初期費用が安く、保守も不要

カスタマイズ範囲が限られる

中小から中堅の企業、スモールスタートしたい現場

オンプレミス型

自社環境に合わせた構築が可能

初期投資と保守費用が大きい

規制対応が厳しい大手、独自要件が多い企業

自社開発型

自社業務に完全に合わせられる

開発・運用工数を内製化する必要

内製IT部門が強い大手

記録時間削減や不適合発生率削減、監査対応工数削減など、定量的な指標で効果を試算しておくと社内稟議も通りやすくなります。

品質管理システムの導入を成功させる5ステップ

品質管理システムは、導入そのものよりも運用定着が難しい領域です。失敗を避けるためには、現場巻き込み型のスモールスタートを徹底することが重要です。次の5ステップで進めると、導入後の形骸化を防げます。

1.現状の業務と課題を可視化する

最初のステップは、現状の品質管理業務をフロー図に書き出し、ボトルネックを定量的に把握することです。記録、検査、不適合対応、文書管理、監査対応など、品質に関わる業務を洗い出します。

リーダー、作業者、管理者それぞれにヒアリングを行い、現場視点での課題を集めると、システム化すべき領域が見えてきます。「現場では問題と感じていないが、管理層では大きな課題」というギャップに気づける点もこの工程の価値です。

2.システム化の範囲と目的を明確化する

全業務を一気にシステム化しようとすると、現場が混乱しやすくなります。「まずは検査記録のデジタル化から」「文書管理だけ統合する」など、範囲と目的を絞った形でスタートを切るのが定石です。

KPI(記録時間○%削減、不良率○%低減など)を設定し、効果測定の指標を最初に決めておきます。導入後に「結局効果があったのかわからない」という事態を避けられます。

3.候補システムを比較・絞り込む

選定ポイント5つに沿って、候補システムを3社から5社に絞り込みます。資料請求、オンライン商談、無料トライアルなどを通じて、現場での使用感を確認するのがおすすめです。

製品名

主な機能

提供形態

費用(参考)

業界事例

カミナシ レポート

現場帳票デジタル化

クラウド

要問合せ

食品、化粧品、物流

i-Reporter

Excel帳票電子化

クラウド/オンプレ

クラウド:42,000円/月額
サブスクリプション版(オンプレ):37,500円/月額

製造業全般

Agatha QMS

QMS全領域

クラウド

要問合せ

医薬品、医療機器

ASTRUX2.0

文書管理

クラウド/オンプレ

初年度保守付き:622,500円(買い切り)
5年保守付き:1,120,500円(買い切り)

製造業、サービス業

キーエンス CV-X100

画像処理

装置

要問合せ

自動車部品、電子部品

業界事例や月額費用は時期や条件で変動するため、最新情報は各社へ問い合わせて確認すると安心です。

4.スモールスタートで試験運用する

特定の現場や特定のラインなど、限定された範囲で試験導入します。効果測定の指標と運用ルールをあらかじめ決め、現場担当者からのフィードバックを集めます。

試験運用期間中に課題が見つかれば、運用ルールやシステム設定を見直します。いきなり全社展開すると失敗時の影響が大きいため、3か月から6か月程度のパイロット運用を挟むのが安全策です。

5.全社展開と継続的な見直しを行う

試験運用で得た知見を反映したうえで、現場や他工程に順次展開していきます。3か月、半年、1年ごとに運用レビューを行い、設定の見直しや追加機能の検討を繰り返します。

現場からの改善提案を継続的に受け付ける仕組みを整えることで、システムが形骸化するのを防げます。導入はゴールではなく、改善活動のスタートラインだと捉えると運用が安定します。

品質管理システムの効果をさらに高める3つの運用ポイント

品質管理システムを導入しても、運用次第で効果は大きく変わります。次の3つの運用ポイントを押さえると、システムの価値を最大限引き出せます。

検査記録のデジタル化で抜け漏れを防ぐ

受け入れ検査や工程検査、最終検査の記録をタブレットで現場入力できるようにすると、紙運用に比べて記録の抜け漏れが大きく減ります。規定値からの逸脱や記録漏れを自動アラートで防ぐことで、品質トラブルを未然に抑えられます。

現場DXを推進している企業では現場帳票のデジタル化サービスも活用しており、点検記録や検査記録、衛生記録などを業種ごとのテンプレートで運用できるのが魅力です。中小から中堅の製造業や食品工場でも少しずつ導入が進んでいます。

動画マニュアル化で作業の属人化を解消する

品質管理の品質は、現場作業者の知識やスキルに大きく依存します。紙のマニュアルではベテランの暗黙知(勘や経験)が伝わりにくく、属人化が解消されません。

動画マニュアルを活用すると、作業手順を視覚的に共有できるため、新人教育や多能工化の時間を短縮できます。スマートフォンで撮影した動画を編集して手順書化できるツールも増えており、文字や写真の手順書では伝わりにくい動きやコツを残せる点が強みです。動画マニュアル化の進め方や効果は製造業の動画マニュアル|活用法と作り方もあわせて参考になります。

筆者の現場でも、新人教育の負担は毎年深刻なテーマでした。4月の入社シーズンには教育担当1名で3名から4名の新入社員を同時指導するため、1日8時間のうち約5時間を教育に費やす状態が約2か月続きます。動画マニュアル化を進めてからは、新入社員が自分のペースで繰り返し確認できる環境が整い、教育担当の残業も月20時間ほど削減できました。

画像認識・AI検査で外観検査の精度と効率を高める

外観検査の品質と効率を底上げするには、AI画像認識による検査自動化が有効です。検査員ごとのばらつきをなくし、判定基準を統一できる点が最大のメリットになります。24時間稼働でき、検査記録も自動保存できるため、目視疲労による見落としを防ぎ、出荷品質を底上げできます。

外観検査のAI化は、対象製品の特性と現場の運用方針によって選ぶべきサービスが変わります。プログラミング不要で導入したい現場、ディープラーニングで複雑な不良パターンを学習させたい現場、既存の現場帳票と統合した運用を狙う現場で、それぞれ向くサービスが異なります。代表的な3サービスを比較すると、自社の検査要件にどのアプローチが合うかが見えてきます。

サービス

提供形態

特徴

向いている現場

キーエンス AI搭載画像処理 IV3シリーズ

専用装置(カメラ+コントローラ)

プログラミング不要、サンプル画像をAIに学習させるだけで判定基準を作れる

画像検査が初めてで、短期間で立ち上げたい現場

コグネックス In-Sight 2800

一体型スマートカメラ

ディープラーニング機能を搭載、複雑な不良パターンも学習可能

従来の画像処理では判定が難しかった項目に挑戦したい現場

カミナシ レポート(ラベル検査機能)

現場帳票プラットフォーム内オプション

検査記録もそのまま帳票化

ラベル検査と帳票記録を同じ仕組みで管理したい現場

導入時は、自社の不良サンプルを使ったPoC(事前検証)を必ず実施し、検出率と誤検出率の両方を確認すると判断を誤りにくくなります。

参考:AI搭載 画像処理システム IV3シリーズ | 株式会社キーエンス
参考:In-Sight 2800 | コグネックス
参考:カミナシのラベル検査機能 | 株式会社カミナシ

品質管理システムを活用して、自社の品質と生産性を高めよう

品質管理システムは、紙やExcelでの管理から脱却し、品質・生産性・認証対応のすべてを底上げする土台になります。検査記録のデジタル化から始めるか、文書管理を統合するか、外観検査の自動化を狙うかによって、選ぶべきタイプとサービスは大きく変わります。

自社の業務と課題に合うシステムを選び、スモールスタートで運用しながら、現場と一緒に育てていく姿勢が成功のカギを握ります。まずは現状の品質管理業務を棚卸しし、どこからシステム化すべきかを整理してみるところから始めると、自社にとって最適な一歩が見えてきます。

執筆者:むつごろー

自動車メーカーの製造に勤務し、一次情報を基にした記事執筆をおこなう。機械製造以外にも食品製造への知見もあり、現場改善や品質管理における記事の執筆も担当している。

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