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中央技建工業株式会社

業種
機械製造業
導入規模
50〜100名
利用目的
全社DX推進、業務効率化

2030年を見据えたペーパーレス化と従業員の意識改革を推進

ツール導入でDX体制の構築と年間50日分の業務時間削減を実現

京都府亀岡市を拠点に、産業用乾燥機「コータードライヤー」などを設計・製造している中央技建工業株式会社は、企業競争力を高めるための手段の1つとして、比較的DXが進みにくいとされる製造業界において積極的にDXの取り組みを行うことで業務効率を向上させている。同社では、カミナシの導入により年間50日分の業務時間を削減したほか、業務標準化やトレーサビリティの確保などを実現。さらに、デジタル化に対する従業員の意識改革が促されたことにより、SDGsの目標として全社で掲げる「2030年までの完全ペーパーレス化」の達成に向けた体制構築も進んでいる。

導入前の課題

  • ペーパーレス化を目標に掲げるも、社内には紙の帳票が多数残存
  • 業務の属人化や検査のバラつきが発生
  • 従業員のデジタル化に対する反発が根強かった

導入後の効果

  • 30種類の紙帳票がデジタル化され、年間50日分の業務時間が削減
  • 業務標準化が進み、検査業務などの属人化が解消された
  • カミナシ導入をきっかけに従業員のデジタル化への意欲が向上、DXの取り組みが進みやすい環境に

産業機械の設計から製造まで一貫体制で提供。
企業の競争力向上とSDGsの実現を目指しペーパーレス化に挑戦

1978年、中央技建工業株式会社(以下、中央技建)は、一般空調のダクト事業を営む会社として大阪市摂津市で創業した。その後、京都府亀岡市に本拠を移し、2004年には現在の主力事業である産業機械事業を開始。産業用乾燥機「コータードライヤー」などの設計から製造までを一貫して手掛ける体制を構築。さらには2018年には食品機器や繊維機器などの梱包を手掛ける梱包事業をスタートし、次世代に向けた事業創出にも力を注いでいる。
 
さらに、近年注力しているのがSDGsの取り組みだ。同社は目標4「質の高い教育をみんなに」、目標8「働きがいも経済成長も」、目標12「つくる責任つかう責任」をスコープに定め、目標達成に向け活動を進めている。なかでも、目標12「つくる責任つかう責任」では、具体的な活動として「2030年までの社内完全ペーパーレス化」を掲げた。ストーンペーパーの活用などを通じて、紙の使用量を段階的に減らし、廃棄物の削減や発生防止に貢献していく方針だ。

紙の帳票に起因し、複数の課題が発生。
トレーサビリティの確保や業務標準化が急務に

社内完全ペーパーレス化を目標に掲げた中央技建だったが、その道のりは決して平坦ではなかった。工場などの現場をはじめ、社内には数多くの紙の帳票があり、アナログな業務体制が定着していた。当時の状況について、産業機械部 製造課長の上窪幸介氏は振り返る。
 
「以前は、製品の検査や設備点検など、さまざまな業務を紙の帳票で行っていました。それは業務効率化を妨げる要因であると同時に、品質面における課題も生んでいました。その一つが、検査基準のバラつきです。例えば、出荷前の製品の検査において、検査表のある項目について『◯』と記入するか、『×』と記入するかの基準が人によって異なるため、品質の均一化が難しい側面がありました。その課題を解消するため、一部の検査では写真を撮影しExcelの管理表に添付するなどしていたのですが、その作業にも時間が掛かるため、さらに業務負荷が掛かっていました」(上窪氏)
 
さらに、紙の帳票はトレーサビリティの点でも問題だった。毎日のように積み重なっていく紙の帳票は、保管や処理にも多大な手間がかかる上、紛失や誤廃棄などのリスクもある。クレーム発生時などには製造記録をたどり、速やかに原因を特定しなければいけないことから、中央技建には製造記録などを正確に保管・管理する仕組みが求められていた。

中央技建工業株式会社のメンバー

デジタルツールへの忌避感がある中、
操作性の高さがシステムの定着を後押し

課題が散在するなか、中央技建は2022年からデジタルツールの導入に着手。グループウェアやクラウドストレージ、車両管理アプリなど、さまざまなデジタルツールを導入し、ペーパーレス化を推進していった。この動きの一環でカミナシの導入が決まる。導入を提案したのは社長である野上慎次郎氏。オフィスワークだけでなく、工場などの現場のペーパーレス化を図れるツールとしてカミナシに関心を抱いたという。
 
その一方で、カミナシの効果について、現場の従業員の多くは懐疑的だった。次々とデジタルツールが導入されるなかで、中央技建ではさまざまな部門で業務の流れが変わりつつあった。慣れ親しんだ業務が変更されることに疲れを感じていた従業員たちは、カミナシにも疑いの目を向けていた。
 
しかし、その時期に前後して中央技建の現場では複数の不具合が発生。管理体制の強化が不可避となり、上窪氏ほか数名のメンバーを中心に、カミナシの導入を進めることになった。導入を担当した産業機械部 製造主任の石田勝彦氏は、カミナシの第一印象を「なんだか使いづらそうなシステムだなと思っていました」と振り返る。しかし、担当者としてシステムの構築を手がけるうちに、カミナシの価値に気付きはじめたと話す。
 
「最初のうちは、私がシステムの操作に慣れていないということもあって、なかなか思うようにひな形を作れない時期が続きました。ただ、業務の合間に半分遊ぶような感覚で画面をいじっているうちに操作に慣れてきて、『こんなこともできるんだ』『こんな機能もあったんだ』と気付きが増えていきました。結果的に、数ヶ月後には難なく操作できるようになっていましたね」(石田氏)
 
それは現場の従業員たちも同様だった。当初、カミナシに忌避感を抱いていた従業員たちだったが、紙の帳票の印刷・提出が不要になることや、検査結果を写真撮影して報告できることに利便性を感じ、システムの定着が加速。それに伴って、カミナシの活用範囲は着実に拡大していった。

安全点検後の確認署名をカミナシで行う様子

カミナシ導入により年間50日分の業務時間が削減され、
従業員の安全意識も向上

現在、中央技建では約30種類の紙の帳票がカミナシによってデジタル化されている。可搬ポンプや脚立、高所作業用工具などの月次点検に加え、製品の社内検収や日報、安全パトロールの記録など、適用範囲は実に幅広い。現場の従業員たちは検査を行ったことを「カミナシやっといたで」と話すほど、システムが業務の中に深く浸透している。これによる効果も表れており、検査表などの作成時間は1種類あたり平均20分削減され、年間では50日分の業務時間が削減された。

月100枚の検査書の作成時間が削減され、営業日換算で50日分(約400時間)の工数削減へ
 
導入効果はそれだけに留まらない。設備などの状況を撮影して記録できるようになったことで、製造工程におけるトレーサビリティが向上。製造記録などを正確に保管・管理する体制を確立できた。また、紙の帳票では避けがたかった検査のバラつきも、検査箇所を写真撮影することで次第に標準化され、業務の属人化は解消されていった。 
さらに、特筆すべきは安全意識の向上だ。産業機械部製造主任の奥村力矢氏は、カミナシが導入されたことで従業員の安全への姿勢に変化があったと話す。
 
「私たちの仕事において、安全は何よりも優先されるべきものです。そのためには、施設や設備などの定期的な点検が欠かせませんが、日々の仕事に忙殺されるなかで、どこかおざなりになりがちなところがありました。その点、カミナシはアラートを表示して点検漏れを防ぐことができますし、写真撮影を必須項目にすれば従業員は確実に点検箇所を確認し、異常の有無を見極めるようになります。実際に、カミナシを導入して以降、従業員の安全に対する意識は向上し、安全パトロールなどに前向きに取り組むようになりました」(奥村氏)

以前まで、工場内で帽子を着用することがルールだったが、安全性を加味して、ヘルメット着用にルールを変更。ところが、なかなかルールが定着せずに悩んでいた。しかし、カミナシの導入後、ヘルメットの着用率が急速に改善。30%前後だったヘルメット着用率は、現在、95%まで上昇し、従業員の意識が変わったことが感じられる。さらに、設備や機器の不具合の早期発見も増加しており、従来以上に安全な業務体制が実現している。

中央技建のヘルメット着用率の推移
 
事実、カミナシの導入後、中央技建ではヘルメットの着用率が急速に改善。さらに、設備や機器の不具合の早期発見も増加しており、従来以上に安全な業務体制が実現している。ヘルメットの着用率が急速に改善。30%前後だったヘルメット着用率は、現在、95%まで上昇し、従業員の意識が変わったことが感じられる。さらに、設備や機器の不具合の早期発見も増加しており、従来以上に安全な業務体制が実現している。

カミナシが現場のデジタルに対する苦手意識を払拭。
組織一体となったDX推進を目指す

カミナシの導入を通じて、業務効率化に留まらないさまざまな効果を生んでいる中央技建。今後は、より幅広い範囲へのカミナシの活用を目指す。その一つが海外での利用だ。同社は海外の顧客先に製品を納入した際には、現地での据付けや試運転も行っている。その試運転時の検査をカミナシで行うなどして、業務のデジタル化をさらに推進していく方針だ。
 
今回の導入を振り返って、産業機械部 統括部長兼技術部長の鳩貝隆氏は「従業員たちのなかに『デジタルを活用して業務の課題を解決していこう』という意識が生まれました」と話す。カミナシの導入が成功体験となり、従業員たちのデジタルツールへの苦手意識が解消されつつあるという。
 
「私たち管理者も、現場で働く従業員たちも、カミナシの導入を通じて『デジタルツールを活用すれば仕事がラクになり、課題も解決できる』ということを実感できました。今後も当社ではDXを推進していきますが、その障壁となるデジタルツールへの忌避感を、今回の導入を通じて軽減できたように思います。これは非常に大きな成果でした。この事例を足がかりに、当社ではDXをさらに前進させ、目標である2030年までの完全ペーパーレス化を実現したいと思っています」(鳩貝氏)
 
SDGs目標の達成期限である2030年まで6年足らず。目標達成に向けて、急ピッチで取り組みを進める企業が増えている。その一方で、取り組みに課題を抱える企業も少なくないはずだ。持続可能な社会に適した事業や組織はどのようにあるべきか。そのことを検討し、実践するうえで、中央技建の事例は重要な示唆を与えてくれるに違いない。

iPhoneでカミナシを開き、工程内検査を行っている様子

カミナシを現場で使っている様子

中央技建では、製品の検査や設備点検の業務効率化のために、カミナシを導入。
導入当初はアナログな業務体制が定着していたが、
上窪氏ほか数名のメンバーを中心に、カミナシの導入を推進。
他の従業員たちは、紙の帳票の印刷・提出が不要になることや、
検査結果を写真撮影して報告できることに利便性を感じ、システムの定着が加速していった。

TEXT:島袋龍太

 


※本内容は2024年3月現在のものになります。
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