井筒まい泉株式会社
- 業種
- 食品製造・飲食店運営
- 導入規模
- 1,001名以上
- 利用目的
- HACCP対応、業務効率化、従業員の負担軽減
製造に用いる紙帳票すべてを電子化、年間16万枚の紙削減を実現
外国人従業員の働きやすい環境づくりをツールで後押し
百貨店などを中心に全国約70店舗のとんかつ店を展開する井筒まい泉株式会社は、現場の従業員の業務負担を軽減するため、工場の管理業務に用いていた数百枚の紙の帳票の電子化を目指しカミナシを導入。使用する言語が異なる複数の国籍の技能実習生にも利用しやすいひな形を作成し、システムの定着に成功。この取り組みによって、同社が保有するある工場では1日につき150枚、年間約5万5千枚の紙の帳票が削減されたほか、工場長の業務時間が1日につき2時間削減されるなど多大な効果を得ている。
導入前の課題
- 1工場で150枚/日発生する紙の帳票が業務効率化を阻害
- 外国人従業員が多いため、言語の壁が業務改善のボトルネックに
- 紙の帳票では管理業務の実施漏れや遅れのリスクが拭えなかった
導入後の効果
- 年間約5万5千枚の紙帳票を削減。工場長の業務時間は月40時間削減され、他従業員の業務負担も軽減
- 紙帳票の棚卸しと見直しにより、外国人従業員の働きやすさが向上
- スケジュール機能(設定した時刻までに記録を促す機能)を活用し、実施漏れなどのリスクを大幅削減
高い品質管理によって生み出される上質なとんかつ。日本全国で高い知名度を誇る「まい泉」
百貨店や駅ナカ施設を中心に約70店舗を展開する「とんかつ まい泉」。その運営を手がける井筒まい泉株式会社(以下、まい泉)は、1965年に東京都千代田区のオフィスビル地下で開業した。創業時から変わらない「お客様第一のこころ」を大切に、真心をこめた商品を長年に渡って届けてきた。
2008年にはサントリーホールディングスに事業を引き継ぎ、2012年には同社初の海外店舗をタイに出店。その後、フィリピン、マレーシア、インドネシアと出店を続け、アジア一帯にグループの裾野を広げている。
国内に限らず、アジアの人々も魅了するまい泉の「箸で切れるやわらかなとんかつ」。その味と品質を支えているのが神奈川県は高津、都筑と大阪の3箇所に展開している製造工場だ。
1995年に最も早く設立された高津工場は、2008年に規模拡大に伴う全面改装を実施し、気圧管理や金属探知機などの各種機器を導入した。独自の製造工程を守るノウハウは高津工場をベースに、2013年に大阪工場、2016年に都筑工場を新設。さらに、2021年には3工場にHACCPに基づいた品質管理体制を導入し、まい泉のおいしさを支える品質管理の体制をより強固なものとしている。
高度な品質管理体制が管理業務を煩雑化。工場長は紙帳票の管理に1日2時間かかっていた
高度な品質管理の体制を築き、安心安全でおいしい商品を届け続けるまい泉。しかし、その真摯な姿勢が負担になることもある。その一つが管理業務の煩雑化だった。以前、まい泉の工場では衛生管理や設備管理に紙の帳票を用いており、それが従業員たちの少なくない負担になっていた。当時の状況について、生産本部 都筑工場 製造2課 課長代理の山内淳次氏は振り返る。
「以前は、1日につき150枚ほどの紙の帳票が発生していました。用途はHACCP対応のためやISO認証のためなど、さまざまです。品質管理や衛生管理のために詳細に記録を行うのは必要なことですが、その反面、紙の帳票に起因する負担も見過ごせない状況でした。具体的には、前日の夕方から翌日に利用する管理表やラベルの印刷を開始、終業までにすべてを用意、翌日は始業前に所定の位置に管理表などを配置し、記録後には回収して管理者の承認を得たあと、事務所でファイリングや保管作業を行っていました。こうした作業に要する時間は決して少なくなく、工場長にいたっては紙の帳票の確認や承認だけで1日につき2時間を費やしていました」
煩雑な管理業務に負担を感じていた山内氏は「どうにかして業務をラクにできないものか」と長らく改善策を模索していたという。しかし、紙の帳票の削減にあたっては壁もあった。その一つが日本語を母国語としない、技能実習生の存在だった。都筑工場にはフィリピンやベトナムから技能実習生として数多くの従業員が勤務しており、その全員が日本語に精通しているわけではないこともあり、管理体制の刷新は慎重に行う必要があった。外国人従業員も利用しやすく、かつ業務負担も軽減できる管理体制を求め、まい泉は業務改善の方法を検討しはじめる。
頓挫しかけたカミナシの導入。「やってみなはれ精神」が導入を後押し
こうした課題に直面するなかで、まい泉はカミナシと出会う。出会いのきっかけは、全国紙に取り上げられたカミナシの記事だった。「現場の業務を効率化する」というカミナシのコンセプトに、興味を持った社員の間で導入を期待する声が挙がりはじめた。さらに、とある展示会でカミナシに触れた社員も、その利便性に好印象を抱いていた。しかし、それでもなお、導入のハードルは高かったと生産本部 業務管理部 部長 兼 認定パン粉付けアドバイザーの加藤千暁氏は説明する。
「『従来の管理業務に慣れすぎていた』というのが大きかったです。数十年、紙の帳票とボールペンでの作業に慣れていたこともあり、カミナシの効果を示されても『具体的に業務がどう変わるのか』をイメージしにくかったのだと思います。実際に、私も初めてカミナシについて耳にしたとき、『便利そうだけど、本当にそんなに上手くいくのだろうか』と疑っていたのが正直なところでした」
しかし、ある幹部が経営陣にカミナシの導入を上申したことで状況は大きく変わる。社長をはじめとした経営陣は上申を快諾し、カミナシの導入が決まった。まい泉の親会社であるサントリーホールディングスに根付く「やってみなはれ精神」が導入を後押しすることとなった。
こうしてカミナシの導入に取りかかったまい泉。その過程では外国籍の従業員が利用しやすい電子帳票づくりを意識した。特に重視したのが、ひな形のテキスト表示だ。
例えば、山内氏や加藤氏が所属する都筑工場では、カミナシの導入に前後してベトナム人従業員が増えつつあったため、複数の言語に配慮した帳票のひな形づくりが必要だった。従来、多く勤務していたフィリピン人従業員の母語は英語やフィリピン語。対して、ベトナム人従業員の母語はベトナム語であり、両者が使う言語は異なる。そのため、導入担当者たちは、記載しやすさとともに記載内容を認識しやすいよう、テキスト表示の調整を重ねた。
英語、日本語のひらがな、カタカナ、漢字、さらに絵文字などを組み合わせ、管理者を含め誰もが利用しやすいひな形を模索。その結果、2ヶ月ほどでフィリピン人従業員、ベトナム人従業員ともに利用しやすいひな形を作成することができた。そうした試行錯誤のなかで現場におけるカミナシの定着も進み、業務改善の取り組みは着実に成果を残していった。
3工場で年間16万枚の紙帳票を削減。工場長は月間40時間以上の業務が削減された
現在、まい泉では管理業務の幅広い領域でカミナシが利用されている。3工場で40台のタブレットを導入し、既存の8割以上の紙の帳票を電子化。なかでも、都筑工場では外部業者が記入する一部の帳票を除いてほぼ100%、紙の帳票を電子化することができた。
これによる効果は計り知れない。例えば、都筑工場では1日につき約150枚の紙の帳票が削減され、年間での削減枚数は約5万5千枚にのぼる。さらに、紙の帳票に付随する確認や処理などの作業も不要になり、幅広い範囲で業務の負担が軽減されている。その手応えを、生産本部 都筑工場 製造1課課長代理 兼 認定肉マイスターの鳥海博之氏は力強く語る。
「印刷から配布、記録、確認、保管といった、一連の業務が不要になったことの効果は想像以上でした。例えば、私の場合は記録内容の確認に毎日30分ほどの時間を要していましたが、その作業は不要になりました。
そのほか、工場長は毎朝2時間ほどかかっていた紙の帳票の確認作業がほぼゼロになっており、職位や配置場所に関わらず、工場内の多くの従業員の業務が効率化されています。
また、以前は、ISOの更新や納品先からの監査対応時には、担当者が求める記録を保管庫から探して提示する必要がありましたが、今ではタブレットで該当記録を検索して提示すれば済みます。毎月ファイリングした紙帳票を段ボールに入れて保管庫に運んでいた作業もなくなりましたし、保管のコストも必要なくなりました。カミナシの導入により、管理業務のあり方が激変したといっても過言ではありません」
また、カミナシのスケジュール機能が管理業務の精度も高めたと鳥海氏は話す。まい泉の工場では毛髪混入などを防止するためのローラー掛けを1日に複数回実施しており、従業員は所定の時間に必ずローラー掛けを実施しなければいけないが、スケジュール機能でタブレットにアラートが表示されることで、従業員たちは作業の漏れや遅れを防止できるようになった。
さらに、管理者はすぐに実施漏れを把握できるため、従業員への的確な指導も可能になった。以前、管理者が外国籍の従業員に指導を行う際には、言語の壁が立ちはだかり、真意を伝えるのに苦労することも少なくなかった。しかし、現在ではタブレットを従業員に示しながら説明できるため、指導の意図が伝わりやすくなり、それに伴って管理業務の精度も向上しているという。
カミナシは「100点満点中110点」。外国人従業員の働きやすい環境づくりにも大きな成果が
カミナシによる業務改善の取り組みを振り返って、生産本部 都筑工場 工場長の宮崎満氏は「非常に満足しています。100点満点で110点の出来です」と話す。
「カミナシの導入により、事前に想定した以上の成果を得ることができましたし、現場からの要望を吸い上げて機能が強化されることで、より高い成果を得られると感じています。実際に当社が導入して以降も、品質監査業務を効率化する『カイゼン機能』がアップデートされるなど機能強化が続いています。
当初の課題を解決するだけではなく、使えば使うほど利便性が向上していく仕組みには非常に感心しています。そのため、今回の導入を評価するとすれば、100点満点中110点です」
さらに、宮崎氏は「カミナシは従業員の立場に立って改善を施せる製品でもあります」と語った。工場長である宮崎氏が、外国籍の従業員と接する際に心がけているのは「相手の立場に立つこと」。祖国から遠く離れた地で働くことに不安を覚える外国籍の従業員は多い。そうした従業員たちの不安を和らげ、居心地良く勤務してもらうためには、相手の立場を気遣う姿勢が欠かせない。
そして、それは業務においても同様だ。どんな従業員たちが勤務しやすいのは、どのような環境なのか。それを追求するうえで、カミナシの各種機能やサポートは大きな武器になるという。さまざまなバックグラウンドを持つ人々が共生する現場を支えるキーツールとして、カミナシは重要な役割を果たしている。
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