製造現場でのトラブルが3割減ったことで残業を大幅削減。現場従業員から業務改善の声があがる会社にサムネイル画像

有限会社ヤスダヨーグルト

業種
食品製造
導入規模
〜300名
利用目的
製造業務の効率化、管理業務の負担軽減、従業員教育

製造現場でのトラブルが3割減ったことで残業を大幅削減。現場従業員から業務改善の声があがる会社に

カミナシを作業マニュアルとしても活用し、従業員の業務習熟スピードも向上

新潟県に本拠を置き、「生乳」にこだわった高品質のヨーグルトを製造・販売する有限会社ヤスダヨーグルトは、紙の帳票による製造管理体制を刷新するためカミナシを導入。従来からの課題であった機械の取り扱いにおけるヒューマンエラーやチェック作業の業務負担を軽減した。これにより、同社では製造現場でのトラブルが約3割削減されたほか、残業時間が大幅に縮減され、定時退社が日常的な風景になっている。さらに、カミナシを作業マニュアルとして活用したことで従業員の業務を習熟するスピードが向上。製造工程を一通り習熟するために必要だった期間が従来の半分程度まで短くなり、業務の早期習熟が可能になっている。

導入前の課題

  • 紙の帳票への記入漏れなど、ヒューマンエラーのリスクが発生
  • 管理職は紙の帳票のチェックに多大な労力を費やし、残業が常態化
  • 製造現場の従業員が業務を習熟するのに2年ほど要していた

導入後の効果

  • カミナシの導入により製造現場で起こるトラブルが約3割減
  • 紙の帳票のチェックが大幅に効率化され、定時退社できるように
  • カミナシを作業マニュアルとして活用することで、従来の半分程度の期間で製造業務が遂行できるように

 

酪農家の「生乳」へのこだわりが詰まった、新潟県産の生乳を使った
ヨーグルトを提供 

酪農家が毎朝搾る「生乳」にこだわった、新潟県産の生乳を使ったヨーグルトを製造・販売する有限会社ヤスダヨーグルト(以下、ヤスダヨーグルト)。新潟県阿賀野市に本社と製造工場を有し、新潟駅や長岡駅に直営店を展開するなど、生産から加工、販売までを自社で一貫して行う。生乳を取り扱いながらヨーグルト一筋で事業を展開、売上高は2023年に約30億円にのぼるなど、乳業メーカーのなかでも独自の立ち位置を確立している。

 

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ヤスダヨーグルトの原点にあるのは、地元の酪農家たちの熱い思いだ。「もっと、酪農家が苦労して育てた乳牛の命といえる生乳を活かせないだろうか」。1987年、乳価の低迷に悩む9名の酪農家たちは、廃棄せざるを得ない生乳を活用するためヨーグルトの製造を発案し、前身組織の「安田牛乳加工処理組合」を設立した。その後、1989年に社名をヤスダヨーグルトに変更。1993年に本社及び製造工場を現在の阿賀野市保田に移転し、現在に至る。モンドセレクション最高金賞や新潟県経済振興賞など、数多くの栄誉に輝くヤスダヨーグルトだが、その根底には今なおひたむきな酪農家の精神が息づいている。

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毎日1時間半程度の残業が発生。
紙の帳票による製造管理が業務効率低下の要因に

新潟県に留まらず日本全国にファンを持つ、こだわりのヨーグルト。そのおいしさと安全を支えているのが品質管理業務だ。ヤスダヨーグルトでは、原材料となる生乳や果物などの品質管理のため、各種検査や衛生管理を徹底している。製造装置の配管内部を洗浄するCIP(定置洗浄)は、1日に10カ所以上実施することもあるほどだ。しかし、そうした真摯な姿勢は、現場の従業員たちの負担にもなっていた。従来、ヤスダヨーグルトでは、衛生管理の実施状況や検査結果を紙の帳票で管理していた。こうした管理体制は従業員の業務効率を低下させる要因になっていたと製造部部長の鈴木芳則氏は話す。

 

「紙の帳票の問題点は、誤記や記入漏れ、誤廃棄など、ヒューマンエラーのリスクが拭えない点です。実際に、そうしたヒューマンエラーを防ぐための作業に膨大な時間が費やされていました。例えば、私は終業後に回収した紙の帳票に不備がないかチェックしていたのですが、その作業には1日につき60〜90分ほど要していました。もちろん、その作業を行うのは私だけではなく、その前には現場の管理者たちもチェックしているので、工場全体では数十時間が浪費されていたはずです。部下たちがチェックし終えた紙の帳票の束には、不備を指摘する膨大な付箋が貼られており、その光景を目にするたびに『またあの作業をするのか…』と憂鬱になっていました」(鈴木氏)

 

紙の帳票はその他の課題も抱えていた。従業員の衛生チェックや機器の洗浄、製造設備の点検など、製造の業務は所定の手順で実施する必要がある。しかし、紙の帳票では作業内容を詳細に指示するのが困難なため、品質管理も含めた製造業務を習熟するまでには一定の時間を要した。製造装置の操作方法なども含めれば、すべての業務に習熟するのに1〜2年ほど要するのも珍しくなかったという。こうした状況は工場の生産性向上を妨げていたほか、製造中の半製品の廃棄リスクもはらんでいた。「殺菌中にも関わらず、操作を間違えて冷却してしまった場合、タンク内のヨーグルトはすべて廃棄しなければいけません。その影響は1回の廃棄にあたり売価にして200万程度にもなる可能性があります」(鈴木氏)。ヒューマンエラーに伴う大量廃棄のリスクを下げるためにも、紙の帳票による品質管理からの脱却が求められていた。

「現場の課題をしっかり理解した上での提案」が導入の決め手。
現場を巻き込んだ導入がシステムの定着を促した

こうしたなかで、ヤスダヨーグルトはカミナシの導入を決める。きっかけは、同社の執行役員 兼 生産・業務管理サポートセンター長である雪孝光氏からの提案だった。雪氏はとある展示会で目にしたカミナシに可能性を感じ、経営陣や同僚らに導入を提案。これを受けて、ヤスダヨーグルトは導入効果の試算などシステム導入に向けた準備に取りかかる。雪氏はカミナシの導入を後押しした要因として「営業担当の方の提案に大きな影響を受けました」と話す。

 

「私自身はカミナシにかなり期待していたのですが、費用対効果などの点で経営陣が納得してくれるのかは疑問でした。しかし、カミナシの営業担当の方が、当社の現場の課題に対して『カミナシで一緒に解決していきましょう』と熱い思いを持って、業務がどう変わるのか、また費用対効果についても詳細に説明してくれたため、経営陣も導入後の状況をイメージしやすかったのだと思います。特に印象に残っているのは、提案のなかで紹介された他社の画像です。その会社では、カミナシ導入前には付箋を貼った紙の帳票が事務所内に積み重ねられており、まさに当社と瓜二つの状況。しかし、その企業はカミナシの導入後には紙の帳票が大幅に削減されて、事務所内もすっきりしている様子でした。当社の課題感や悩みをしっかりと理解した上で、こうした変化を実際の画像を交えながら説明してくれたのはインパクトが非常に大きくで、導入の決め手になりました」(雪氏)

 

こうして導入を決めたヤスダヨーグルトは、現場の従業員を巻き込みながらカミナシの設定や現場での活用に向けた取り組みを進めていく。導入担当者として製造部の複数の従業員が携わりカミナシの設定を実施。カミナシで記録するユーザーが管理者としてひな形を作成することで、タブレットの操作に慣れていない従業員でも利用しやすい状態を目指した。この狙いは功を奏し、カミナシの導入は円滑に進んでいく。導入開始から2ヶ月ほどで現場で活用を開始し、従業員の間にもシステムは浸透。さらに、ひな形に画像を挿入するなど、作業の方法や手順をビジュアルで説明する工夫も凝らすことでカミナシの定着を推進し、製造管理体制の刷新を進めていった。

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カミナシで製造工程のトラブルは3割減。
従業員の業務習熟を促すツールとしても活用

現在、ヤスダヨーグルトではカミナシを用いた製造管理体制が確立されている。従来、各種検査や衛生管理に用いていた紙の帳票の多くがデジタル化され、タブレットへの入力に移行された。これによる変化は目覚ましいと製造部の日根崇文氏は説明する。

 

「現場のあちこちで利用されていた紙の帳票がめっきり減って、誤記などのヒューマンエラーも大幅に削減されています。カミナシは誤記や記入漏れにアラートを表示して注意を促せるのがよいですね。こうした機能のおかげで製造現場でのトラブルは、前年同月比で約3割も削減されています。また、終業後のチェック作業が不要になったのは大きな変化です。以前は、製造部長をはじめとした管理者たちは、終業後に紙の帳票をチェックする必要があったため、残業を前提に勤務していました。しかし、現在では一括承認の機能を活用することで速やかにチェック作業を終えられますし、そもそも不備が減っているので承認作業に手間取ることもありません。カミナシ導入前に管理者たちを悩ませていた付箋の作業からも解放されています。その結果、私を含め多くの管理者たちは日常的に定時退社できるようになりました」(日根氏)

 

さらに、カミナシの導入が業務の習熟速度を加速させていると日根氏は話す。ひな形に画像を挿入し、作業手順などの説明を盛り込んだことで、カミナシを確認すれば誰でも製造工程をスムーズに実施できるようになった。さらに、作業の逸脱が発生した際には、管理者はカミナシの記録画面に表示されている画像を示しながら作業の是正を行える。こうした変化は、従業員の業務の習熟を後押しし、従来は1〜2年ほど要していた習得の期間を半分程度に短縮することができている。

 

加えて、カミナシを活用するようになってから現場従業員の意識や行動にも変化が見られるようになったという。「『これもカミナシを使って確認すればミスを防げるのではないか』といった声が現場従業員から上がるようになりました。カミナシ導入前にはあまりそういったことはなかったので、業務に対する積極性が上がったことを実感しています。製品や工場運営の質の向上にもつながるので、とても良い変化だと思っています」(日根氏)

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「そのままデジタル化しない」紙の帳票の精査・合理化がポイント

カミナシの導入プロジェクトを振り返って、導入担当者の一人である製造部の服部太郎氏は「カミナシの導入にあたっては、事前の準備や問題点の整理が重要だと思います」と説明する。ヤスダヨーグルトで、カミナシの導入が円滑に進んだ背景には「紙の帳票をそのままデジタル化しない」という方針があった。

 

「もともとの紙の帳票の構成や項目をそのままカミナシに移行するだけでは、システムの導入効果はそれほど期待できません。そのため、導入にあたっては、紙の帳票の内容を精査し『この管理項目は不要ではないか』『この作業は、次の作業と一連で実施したほうがよいのではないか』などの合理化を進めました。こうした作業が今回の成果に繋がったのだと感じています。業務のデジタル化とは、単にシステム上に作業を移行するだけではなく、デジタル化を通じてより効率的な形に業務を変えていくことなのだと実感しました」(服部氏)

 

厳密な品質管理が欠かせない乳製品製造。一つの作業のミスや実施漏れが大量廃棄に繋がるなど、その製造現場は常に大きなリスクに晒されている。品質管理のリスク低減に日夜取り組んでいる企業も多いはずだ。ヤスダヨーグルトが取り組んだ帳票のデジタル化は、品質管理が事業上重要な食品製造業や帳票の運用で悩む企業の方々の参考になる事例となるに違いない。

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TEXT : 島袋龍太

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