業務効率化賞:株式会社ジェイテクトエレクトロニクス

日本のものづくりの自動車業界において一定の知名度を誇る「ジェイテクトグループ」。
車載用の電子制御機器をはじめとした産業機器の開発・製造・販売を手掛けてきた「株式会社ジェイテクトエレクトロニクス(旧・光洋電子工業株式会社)」では、さまざまなDX推進に挑戦し取り組んできました。
手書きによるヒューマンエラーを防ぎ、業務を効率化させるといった目的から、同社の大泉工場ではDX推進による働き方改革を推進することに。
トップダウンではなく現場の声から生まれたペーパーレス化とは。専任担当者がいない中でのプロジェクトの円滑な進め方のコツとは。
プロジェクト推進を担当した山本様と谷脇様に、お話をうかがいました。
業務効率化や少人化を進めるため、
DXによる業務改革を推進。
─いつごろから社内で現場DXの流れがあったのでしょうか。
谷脇様:弊社は産業機器の製造を行っているメーカーのため、生産状況の見える化や設備の稼働状況データを取得するといったことは以前から行っていました。そのため特別なきっかけはなかったのですが、5年ほど前からDX推進の流れが顕著になってきたのではと思います。
山本様:あとはDXによってスマートに働ける環境を整えたいという現場の意見があったので、今回のカミナシ導入はそこも含めての取り組みでした。大前提として「紙をなくすことが目的ではない」と考えていたので、業務を効率化するためのDX推進という位置付けです。もっと具体的な目的は、大泉工場の全体最適や業務効率の向上でしたが、山梨県内は労働人口が年々減っているため、欲をいえば省人化もできればいいなと考えていました。

▲【DX推進担当者】生産部 副部長 山本様
─では、それらの課題を解決するために、山本様と谷脇様が担当に選ばれたと。
山本様:はじめは私が推進者として担当することにしました。大きな会社であれば情報システム部のような部署が導入を主導するかと思いますが、弊社はそこまで大規模ではないためDX担当者は兼務でやってもらうことになります。そのため、最初にプロジェクトの体制図を添付して上申したんです。「兼務にはなるものの、この体制で臨めば投資分は必ず取り戻せます」と経営層に対して説得しました。その後、生産記録表のデジタル化を進める段階で谷脇も推進メンバーに迎えました。
谷脇様:プロジェクトのSTEP1に山本が立ち上げた各種点検表のデジタル化があり、私は次のSTEP2の生産記録表のデジタル化に主に関わっていました。
リーダーが率先し考動していけば、自ずと周囲も動いていく。

▲【DX推進担当者】生産管理部 統括課 主担当 谷脇様
─DX推進にあたり、まずは何から始めましたか?
山本様:カミナシを導入するのに、カミナシの担当の方から「まずは帳票の棚卸を」とアドバイスをいただいたので、そこから着手しました。すべての棚卸はできなかったのですが、2ヶ月近くかけて棚卸した帳票を一覧化することで「現場にこれだけの紙の帳票がある」ということを可視化することができたんです。
弊社の場合は生産技術部門が点検票を発行し、生産部が点検・承認。その品質記録を品質管理部が保管していたのですが、保管までに14もの工程があったんです。しかも車載関係は品質記録を15年間保管しなければなりません。そして保管場所の確保が必要です。
対してカミナシを導入すれば6工程にまで削減できることが分かったため、その点を資料で視覚的に見せて「紙からデジタルに切り替えたら現場に変化はなく、保管する部署には大きなメリットです。だから、各部署から担当者とリーダーを選出してください」という風に周囲を巻き込んでいきました。そして、各部門の担当者とリーダーが集まったところで説明会を実施したという流れです。
─なぜ説明会を開催したのですか?メールなどで簡単に済ませることもできたかと思うのですが。
山本様:今回のプロジェクトは私が上申したうえで現場に実施してもらうことになるので、関連部門も担当者を動かさなければなりません。そのあたりが現在カミナシを導入している他社さんと大きく違うところかと思いますが、関連する組織を巻き込むためにも説明会というリアルな場を設定する必要があったんです。
谷脇様:このタイミングで「生産記録表をデジタル化したい」という話が私の方にも降りてきましたね。
─生産記録表のデジタル化にあたり、谷脇様は何から始めましたか?
谷脇様:「どうすればペーパーレスにした上で、今より効率的な作業ができるのか」という内容を現場の人たちと話し合いました。紙の生産記録表には、どのラインで誰がいつ何を作業したという記録が製品ごとに1枚ずつ記録されていたのですが、紙からデジタル化するにあたり、そっくりそのまま移すだけでは意味がありません。デジタル化によって作業効率を上げることが目的のため、まずは記録の際に必要な項目と不要な項目を切り分けるところから始めました。その後は「どうすれば作業者がわかりやすく使えるのか」といった点を詰めてデジタルの帳票が完成したところで、現場の人たちに1度使ってもらいました。
山本様:弊社ではさまざまな国籍の方が働いているため、紙の点検表や生産記録表はひらがな表記だったのですが、デジタル化した今では日本語と翻訳の文章を並べて表記しています。
谷脇様:現場との打ち合わせを何度も繰り返しながら、“作業者が使いやすいツール”とすることを何より意識して進めていきましたね。

─なぜ現場の皆さんは協力的だったのでしょうか?
山本様:谷脇さんの人徳じゃないでしょうか。
谷脇様:いやいや(笑)。最初の山本さんの握りがよかったのだと思います。ゴールに向かって真っ直ぐ進んでいく……みたいな。とはいえ一つ思い当たるのは、現場作業に携わっていない私が、デジタルの帳票フォーマットを作成したことは大きいかもしれません。カミナシの帳票は現場側で作成ができるため、本来であれば、現場目線で現場の人が直接作れてしまうんです。けれども、私があれこれ肩代わりをして進めてきたので「谷脇が協力してくれるなら現場も協力しなければ」という空気が生まれたのかもしれません。
そういえば、山本さんも自分が管轄している部署のデジタル帳票作成に真っ先に取り組んでいましたよね。リーダーが動くことで周囲が触発されれば、皆も熱心に取り組むようになるのではないでしょうか。
山本様:確かに周囲を引き上げるために、自分が主導的に動いてみせたというのはありますね。
導入に満足せず、周囲へのアプローチを継続。デジタル化の意義を見出すためにも、達成数を共有する。

─導入後はどんな成果がありましたか?
山本様:紙の削減でいうと、ある部署では月間500枚以上の紙帳票を削減できたという報告がありました。紙の帳票を探す時間も大幅な短縮になっていますし、保管スペースの削減、報告・引き継ぎが容易になったという効率化の部分も成果として挙げられます。
谷脇様:現場としてはタブレットのカメラでQRコードを読み込むと、目的の帳票に直接アクセスできるようになったので非常に助かっています。私がデジタル化に関わった生産記録表が他の点検表と大きく異なるのは、シリアルナンバーが異なる製品を、誰がどのラインでいつ生産したものかを正確に切り分けなければならないところです。デジタル化により間違った記録にアクセスすることがなくなったので、大変やりやすくなったと聞いています。
山本様:定性的な部分で言うと、「文字を書く」という作業がなくなったので仕事がしやすい環境になったと思います。特に外国人従業員の人にとっては大きな変化かなと。あとは、これまで紙帳票の確認など現場管理者の業務時間を削減できたことで、別の改善に集中できるという働き方改革につながっていると考えています。
─現場の皆さんは、すぐに使いこなせるようになったのですか?
山本様:幅広い年齢の方が働いているため「操作が不安」という意見もあったのですが、「事前に説明会を開いてフォローするので、安心してください」と伝えていました。実際のところ、タブレットでの操作は普段から使い慣れているスマートフォンの延長なので、導入後はゲーム感覚で操作ができていると思います。今もフォロー説明会を年に一回開催していますね。
谷脇様:全員一回以上は説明会に参加していたんじゃないですか?
山本様:チャットツールでチームを作って案内を投げて、さらにはリマインドもしました。説明会終了後には参加した人たちにアンケートを実施することで、参加の有無を管理していましたからね。
─そういう風に常にアプローチを続けていかないと、プロジェクトが止まってしまう可能性もありますよね。
山本様:ありますね。兼務しているからこそプロジェクトがどこかで止まってしまいかねないので、カミナシさんから貰ったデータを使いつつ、どこの部署はデジタル化が何%進んでいるのかというのを見せるようにしています。デジタル化の達成数を可視化することで、紙から変えたことによる費用対効果が目に見えてわかり、やっていることにより具体性を持たせられるんです。

─御社のように専任担当者が置けない企業も多いかと思います。そういった企業に向けてアドバイスをお願いします。
山本様:谷脇の話にもありましたが、結局のところDXというのは、単に紙をデジタルに置き換えるだけでは駄目なんです。これまでの工数を減らして効率化させることが目的なので、その前段階での現状把握と業務分析がマストだと思いますね。弊社でいえば「帳票の棚卸」だったのですが、導入に向けた良いきっかけになったと思います。
現場DXのサービスを提供する企業はたくさんあり、それらを導入することは簡単です。けれども、導入した費用の分だけ成果が出せるのかというのが企業としては重要になるため、社内の現状把握は必須です。弊社の代表からも、システム導入にあたっての前提条件は「全体最適と一気通貫」だと言われたのですが、今後はカミナシと他のシステムが連携できるようになればいいなと思っています。
谷脇様:モノと情報が相互に連携して繋がっていけばと思いますね。同じ情報を何度もインプットせずにすべての情報データをリンクさせることで、みんなの業務効率を上げていきたいと考えています。
株式会社ジェイテクトエレクトロニクス
業種:電子制御機器、映像情報機器、自動車機器及びFA制御システムの製造販売
従業員数:424名(派遣・パート含む) ※2024年1月現在





















