組織改革賞:株式会社オイシス

兵庫県を中心に関西エリアに9工場を持つ、食品製造会社「株式会社オイシス」。
食の常識を変え、地域社会に新たな食の価値を提供するミールデザインカンパニーとして、大手コンビニエンスストアの惣菜、パン、スイーツなどの製造を行うほか、38店舗以上の直営・フランチャイズのベーカリーショップや洋菓子ブランドも展開しています。
同社では高まる食の品質安全性の観点から、神戸工場を皮切りに本格的な全社DX推進プロジェクトを始動。DX推進にあたり大きなテーマとなったのは、紙を削減することと業務効率化を目指すこと、そしてさらには会社の文化をアップデートしていくことでした。
DXの課題にどう向き合っていったのか。本プロジェクトの担当である荒尾様と、掛水様にこれまでの歩みについて伺いました。
現代のニーズに合わせて仕事の取り組み方を変化させる。
DX化にあたり向き合いたい課題をまずは定義する。
―DX化を意識したのはどういった背景からでしょうか。
荒尾様:コロナ禍に、リモートワークが一部導入されたりと社内で徐々にDXに向けた動きがありました。それと同じ頃、神戸工場で品質面の課題点が浮き彫りになり、その改善には現場のDXが急務であったためカミナシを先んじて導入。そこである程度の成果が得られたため、全社プロジェクトとして2023年に本腰を入れて取り組むことになったんです。
私は導入当時、神戸工場で勤務していたため、今回のプロジェクトの担当者に任命されました。
掛水様:私も同じく神戸工場の品質管理部門に数年前まで所属していました。品質管理者としてどういった仕組みがあれば全社で標準化できるのかという視点で、今回のプロジェクトに関わっています。

▲【DX推進担当者】生産本部 兼 デリカ事業部 統括ライン長 荒尾様
―DX推進前は、どのような課題を抱えていたのですか?
荒尾様: 表面的には「品質面での管理徹底」の課題が大きかったのですが、もっと本質的なところでは旧来的な考え方から、現代のニーズに合わせた仕事の取り組み方など、会社の文化そのものを変えていく必要があると思ったことです。
2000年以降、食品衛生の問題や品質管理に対する世間の目が厳しくなり、品質管理基準も上がっていく傾向にあります。社会から求められるレベルが上がる一方で、「作って納品する、以上。」という意識が社内の一部では見受けられました。
掛水様:現場視点で言うと、紙というアナログなもので管理をしていると、書類が揃っているかの確認だけでも大変ですし、ルールの逸脱を目視だけで確認することによる人的ミスもゼロにすることが難しく課題となっていました。
また、近年は外国人従業員の割合が急激に増えているため、紙の管理だけでは多言語に対応する手間が大きな負担になり、教育面でも管理側に負荷がかかっていました。
―現場DXによる業務効率化よりも、もっと本質的に「企業文化を変える」というのが真の狙いとなったわけですね?
荒尾様: はい、その通りです。社会で求められている基準やニーズに合わせていかなければ、企業としての成長はありません。その基準やニーズに合わせられるように、まずは「会社の文化をアップデートしなくては」、という結論に至りました。とはいえ、創業から75年以上も紙を使ってきた会社ですので、DXにはかなりの労力がかかるのでは…という心配はありました。
周到な根回しと地道な草の根活動。
課題解決は焦らずじっくり丁寧に行うがカギ。
―プロジェクトはどのような組織体制で進めていきましたか?
荒尾様:DX推進について全社アナウンスを行い、そこから各工場で適任者を選んでもらいました。組織体制構築にあたり意識したのは、ある程度、工場内で意見を発信できる方、物事を進めていける推進力のある方を起用すること。新しい取り組み時には、どうしても反対意見は出てきます。そうなったときには、推進力がものをいいますから。
また、さまざまな視点を取り入れることを目的に、各工場でリーダーに加えてサポート役の若手も加わり、プロジェクト全体の関係者は80名を超える規模になりました。
―若手の活躍というところもプロジェクトではかなり意識されていたようですが。
荒尾様:導入背景の一つでもあったのですが、今後、会社を引っ張っていく若手が活躍できるような環境づくりや、次世代リーダーの育成も前提としてありました。
掛水様:工場長など管理者の方々には若手が動きやすくなるように、今回は“見守っていただく”ことをお願いしました。影響力の強い立場の方が「こうしたほうがいい」と言ってしまうと、若手は発言しづらくなりますから。

▲【DX推進担当者】品質保証部 課長代理 掛水様
―周到な根回しもプロジェクトの成功要因といえますね。
荒尾様:僕は根回しが下手なほうなので、その辺りは掛水がサポートしてくれました。あとは弊社の社長からも「まずは周りを巻き込んできちんと説明して、納得してもらった上で進めていったほうが良い」とアドバイスももらっていました。
―どういったスケジュールで進めていったのでしょうか。
荒尾様:「会社の文化をアップデートする」という大きなテーマがあることから、3年計画としてDX推進を捉えています。1工場ずつ、まずはひな形を作ってテスト導入して、実装して、そして現場からフィードバックをもらいながら本番導入していく。ある程度定着したら、別の帳票に手をつけていく…という流れで、今1年半が経過しています。
掛水様:何月から何月までは、このひな形を中心にやりますよとあらかじめアナウンスしたり。
荒尾様:お金をかければもっと速いスピードでDXを進めていくことはできます。しかし、弊社は単純なDXでなく、そこに付随する工程や品質管理についての手順をもう一度学び直す良い機会だと捉えています。
たとえば、帳票のデジタル化にあたっては「なぜこの作業はこの手順なのか」、「これはやり方として最適ではないので」という疑問が出てきたりします。それらをブラッシュアップしていくということもあり、私としてはスピード感をあまり重視していませんでした。
―とはいえ大きな費用をかける中で、効果や成果といった部分につい目がいってしまうこともあると思うのですが。
荒尾様:もちろん経営層の方々にはその点を理解してもらうために説明や報告はしっかりと行なっています。会社としてビジョンがあり、それを達成していくためには工場の品質管理体制のレベルを上げていくべきということがしっかりと最初に握れていたので、「結果・成果」といったプレッシャーがなかったのだと思っています。

―DX推進に取り組みはじめてからの気づきなどはありましたか?
掛水様:拠点ごとにバラバラだった帳票フォーマットを共通化したのですが、統一したことで逆にやりにくくなってしまうという事案も発生してしまいました。工場によってやりやすさは異なりますし、拠点ごとに進捗や問題点が違うため、その調整やひな形の修正というのは結構大変でしたね。
―そこはどう乗り越えていったのでしょうか。
掛水様:導入の意図や意義をしっかりと説明して、浸透させるということを地道にしていきました。弊社ですとJFS-B規格(*)など食品安全の認証を受ける上で必要な事項を加味してひな形を作っていく必要があるのですが、それによって、これまで以上に複雑なひな形になってしまったりと、現場の方に負担をかける部分もありました。「こっちの記録のほうがやりやすい」「いちいち写真を撮る必要はあるのか」といった声があがってきたり。
そこで、現場の方に理解してもらう前に、彼らに伝える工場のリーダーやプロジェクトメンバーにまずは理解してもらうというところから取り組みました。
*JFS-B規格:一般財団法人 食品安全マネジメント協会(JFSM)が運営する食品の安全管理の取り組みを認証する規格のこと。そのうち、JFS-B規格はHACCP制度化の「Codex HACCPに基づく衛生管理」に対応した規格を指す。
荒尾様:予想はしていたのですが結構な大仕事でしたよね。
掛水様:はい。疑問の声があがる拠点については実際に私たちも工場へ足を運んで、「こういうやり方がいいのでは」といった意見交換やコミュニケーションをとって、一つひとつ解消していきました。工場側でも実際にカミナシを使用する従業員の方とのコミュニケーションを密に取るなど、現場の整備を進めてくれましたね。
若手の活躍、現場意識の変化…。
100時間/月の削減以上に、目には見えない成果を大切に、さらなるDXに挑む。
―地道な努力の末、どんな成果や効果が得られましたか。
荒尾様:生産に直接的に関係しない間接時間では各拠点100時間/月の削減、紙に関しては28,000枚/月が削減できました。
帳票の作成、更新、配布という手間が省けたこと、その帳票の記録を確認、承認する管理側の負担が減ったことも大きな成果でした。また、工場間の記録内容が標準化されたことで、本部で管理することも楽になりました。
掛水様:外国人従業員への教育面でも、カミナシはワンタッチで多言語に翻訳ができるので、より正しく内容を理解してもらうことができるようになり、教育者の負担も減りました。
―定性的な変化はどうでしょうか。
荒尾様:若手の活躍は大きな変化です。今まであまり表に出てきていなかったメンバーがDX推進プロジェクトを通して活躍し、また別のプロジェクトでも起用されていく、といった事例も増えています。
掛水様:カミナシさんとのミーティングもたくさん活用させてもらいましたよね。
荒尾様:はい。定例ミーティングはカミナシさんがその場を回すのではなく、弊社内で話してまとめていくという少し変わったスタイルを取らせてもらっています。事前にカミナシの担当者の方と弊社のリーダーが打ち合わせをして、本番ミーティングではカミナシさんにはしゃべらずにいただくという(笑)。

―なぜ、そのような取り組みをしたのでしょうか。
荒尾様:あと5〜10年も経てば、若手の彼らがリーダーを担う立場になります。そうなったときに、場をまとめていく力、根回し、事前準備などのスキルを身につけていくことは必須になりますから、そういったことをトライできるチャンスを提供したいなと思いこのようなスタイルになりました。
掛水様:カミナシさんとは2年以上お付き合いをしてきてお願いしやすいと言いますか、若手がチャレンジするには程よい緊張感が生まれるとてもいい場だと思っています。
―大きなテーマとして掲げていた「企業文化のアップデート」についてはいかがですか。
荒尾様:変化は徐々にありますが、今まさに取り組んでいるところです。1年半かけて現場の方々とのコミュニケーションが取れるようになり、だいぶDXについて理解をいただけるようになりました。次はその理解を行動に移すのが大きな課題。まさに今が踏ん張り時なのだと思います。
掛水様:品質管理の視点から見ると、これまでは私たちの部署が一方的に発信するような形でしたが、リーダーの方々やプロジェクトメンバーの方が加わったことによって自ら発信してくれるようになったという点では、一段ステージが上がったと認識しています。
―これから現場DXの推進を検討されている方々へ、メッセージをお願いします。
荒尾様:これまで弊社では新たな取り組みやツール導入自体が目的化してしまっているところが多かったのですが、今回はカミナシさんといろいろお話をしながら進めていき、本質的な部分から改善していくことができました。
今後DXに取り組まれる他企業様に対しては、取り組む中で停滞する時期や新たなハードルが見えてくることもあると思いますが、考え方の根幹から変えていければ、きっとDXによる変化は最大化できるはずです。なので、一緒に頑張っていきましょう!ということを私たちの経験から伝えたいですね。

株式会社オイシス
業種:製造業(食品製造)
従業員数:3,500名(2024年10月現在)





















