現場と人ロゴ画像

現場DX3点セット
資料ダウンロード

現場DXの
最新情報を受取る

公開日 2025.12 .04

更新日 2025.12.04

目指すはFSSC 22000認証取得。会社の命題を追い風に、現場主導でDXが動き出す。

目指すはFSSC 22000認証取得。会社の命題を追い風に、現場主導でDXが動き出す。

プロジェクト推進賞:越後製菓様

利用製品:カミナシ レポート

新潟県で、米菓を中心とした米の加工食品を製造する「越後製菓株式会社」。約300名が働く片貝工場では、米菓の仕込みから製造、包装、出荷までを一貫して行っています。売上規模は約60億円と、業界屈指の規模を誇る工場です。

同社では、10年以上前からタブレット導入を試みるも運用定着には至らず。しかし、現場からのDXへの要望が高まり、2024年から再始動しました。背景には食品安全システム認証の国際規格である「FSSC 22000」認証取得という会社全体の大きな目標があり、認証に必要な管理体制を整えるためにも、現場の業務を見直す絶好の機会となりました。現場が主体となって進めていった取り組みは、2025年8月の認証取得という成果へとつながっています。

現場ではどのような歩みがあったのでしょうか。プロジェクトオーナーの小林(康)工場長、プロジェクトリーダーの片桐副工場長、そしてメンバーの相村様、小林(恵)様、齋藤様に、DX推進の軌跡をお聞きしました。

個人の思いと、FSSC 22000認証取得。
二つの目標が重なりDXを決意。

─DXに取り組んだ背景をお聞かせいただけますか?

相村様:以前から、DXを推進したいと考えていました。紙書類の運用がメインの古い職場環境のままでは、若手のスタッフは「体制が古い」「情報共有が遅い」といった理由で辞めてしまうこともあり、人材を確保・定着させるためにも古い体制を改め、DXを進めるべきだと考えていました。

そんな時に、私は片貝工場に異動になりました。この異動を機に、新しいことに挑戦してみよう、と思ったんです。

【DX推進担当者】製造三課 課長 相村様

▲【DX推進担当者】製造三課 課長 相村様

─それ以前は、特にDXというのは意識されていなかったのでしょうか。

片桐様:情報共有としてチャットツールなどは入れていましたが、それ以外は特にありませんでした。実は10年ほど前から、工場のラインで作業している方から「タブレットを使ってみたい」という要望があったんです。その時にタブレットを試験的に導入してみたものの、なかなかうまくいかなくて…。紙に書くか、タブレットに同じことを書くか、ただそれだけの違いになってしまい、うまく使いこなせず結局、運用定着には至りませんでした。

─そこからなぜ再びDXへ向け動き出したのでしょうか?

片桐様:工場の基幹システムを新しく導入することになったため、基幹システムに効率よく製造実績を送ることを目的にデジタル帳票の導入をしたいと思ったことがきっかけです。ITの知見がある相村が片貝工場へ異動してきたというタイミングも重なり、今がいいタイミングだな、と。商品包装ラインでは、賞味期限の印字のミスや包材の種類間違い、内容量間違いなどのミスも発生していたので、それらも改善できるのではという期待もありました。

もう一つの背景としては、会社として米菓の海外輸出を強化していくという方針があり、FSSC 22000取得という命題があったんです。認証を受けるための要求事項を読み込んでいく中で、デジタル帳票で商品を管理すれば、品質管理の質が上がり、認証取得にも有利になると確信しました。

現場の「変えたい」という気持ちと、組織としての大きな使命が重なり合い、DXを本格的に進める決断に至ったのです。

【DX推進担当者】副工場長 片桐様

▲【DX推進担当者】副工場長 片桐様

得意分野を持つメンバーが集結。
“デジタルに慣れる期間”を経て、本格導入。

─プロジェクトの推進体制について教えていただけますか?

片桐様:小林(康)工場長がプロジェクトオーナーで、私はプロジェクトリーダーとして、経営層と現場の間に入って、全体の進捗管理や報告、メンバー間の調整を担当しました。

帳票の作成や現場への操作教育には、業務に精通し、現場からの信頼も厚いライン長の小林(恵)を、現場の方々へのアナウンスやサポートは相村が担当しました。品質管理係の齋藤には、FSSC 22000取得にあたって、品質管理の視点で見てもらうという役割でメンバーに入ってもらいました。

─役割や体制をしっかりと固めた上でのスタートですね。どのようにしてプロジェクトは進められたのでしょうか?

小林(恵)様:そもそもタブレットに抵抗がある方も多いなかでのスタートでした。片貝工場で働くスタッフの平均年齢は50代前後で、新しいデジタル機器への抵抗があったのかなと思います。

そんな状態だったので、まずは仕事感を出さずに自然にデジタル機器を触ってもらう期間を設けました。2週間程度、共有のタブレットを置いて、自由に触れるようにしたんです。帳票を1枚作って入れておいたのですが、誰かが触ると、他の人も興味を持ち始めて画面を覗いたり…と、嬉しい変化が生まれはじめました。それ以外にもタブレットで写真を撮ってみたり、落書きできるようにしてみたりと、徐々にタブレットへの抵抗感はなくなったように思います。

【DX推進担当者】製造三課 主任 小林(恵)様

▲【DX推進担当者】製造三課 主任 小林(恵)様

相村様:それと時を同じくして、私の方ではFSSC 22000取得に向けて「記入漏れがあると承認が通らないこともある。デジタル機器を使って精度を上げていく必要がある」と、現場の方々へ説明していきました。

片桐様:相村からの説明のあと、現場への操作教育を小林(恵)が担当してくれました。動画を用いて分かりやすい資料を作ってくれたんです。実は、このプロジェクトを通して、小林(恵)のポテンシャルに驚かされました。私が期待していた以上に熱心に取り組んでくれて、自ら学びつつも現場にもしっかりと定着するよう誘導してくれました。最終的にはシステムの不具合にも気づくほど使い込んでいましたから(笑)。

小林(恵)様:あれは偶然です(笑)。でも、実際に使ってもらう現場の方々への説明は丁寧に進めていきたいと思っていました。操作説明会の実施後も、いきなり本番運用にはせず、「この日から本導入」という日にちを決めて、その前にもう一度タブレットを自由に触ってもらう期間を2週間設けました。2回目のこの期間では本番用のデジタル帳票を用意して、試しに入力してもらうというステップに。この2段階の「デジタルに慣れる期間」を経た上で、本格導入に移行しました。

片桐様:当初、思い描いていたプロジェクトスケジュールからは遅れをとっていたので、個人的には焦りもありました。何度かチームで進め方について議論をしましたが、最終的には核となってくれている小林(恵)の意見を尊重し、全体の計画を遅らせても現場の理解と協力を得ながら丁寧に進めることを優先しました。

今振り返っても、その判断は間違っていなかったと思います。しっかりと土壌ができた上でのスタートだったので、現場の意識がDXに向き、スムーズに運用することができています。

DXの取り組みによって包装ミスゼロを達成。
工場全体のコミュニケーションも活性化。

─準備期間を経て『カミナシ レポート』を導入されたとのことですが、現場ではどのような運用をされていますか?

小林(恵)様:包装工程の2ラインで運用しています。包装が完了した正しい写真をタブレットに表示して、必ずその画像とライン上の商品を見比べるような形で運用してもらっています。以前は「指示書を開いてチェックしてください」と伝えても、いつの間にか慣れが出てきてしまっていました。ですが今は、必ずタブレットによる確認動作をしていただく運用にしたので、ヒューマンエラーは減少しています。

─現場でもスムーズに受け入れられたのでしょうか?

小林(恵)様:いえ、準備はしていたものの、最初からスムーズには進みませんでした。そんな中で、私と年齢が近いメンバーを中心としたグループが現場への定着に協力してくれました。私が作ったテスト帳票を見せて意見を仰ぐと、「こういう形にできない?」「こっちの方が見やすいよ」と忌憚ない意見をくれたので、その意見をもとに帳票を磨き上げていきました。また、本運用の前にも、意見をくれたメンバーに実際にラインで使ってもらったりと、周囲の方々にも本当に助けられました。

─プロジェクトを進める中で困難だったことはなんでしょうか。

片桐様:一番のハードルは、経営層への説明とシステム管理者からの合意を得ることでした。当時は、導入する条件として「基幹システムとの連携」を求められていたんです。しかし、検討を進めていく中で、基幹システムとの連携を前提とすると、現場で容易に修正ができないシステムになり、逆に現場の負担が増えてしまうかもしれないという懸念が膨らんでいきました。

─会社にとっての“使いやすい”が、必ずしも現場の“使いやすい”と一致しないということですね。どう乗り越えていったのでしょうか。

片桐様:組織教育と品質管理、両方の観点から説得を重ねたことが大きいです。まず、「現場が中心となって仕組みを作っていくことは、組織を育てる教育にもなる」という点を丁寧に説明しました。そして品質管理の観点から、FSSC 22000の要求事項を読み込みながら、紙では証明しづらい部分をどう担保するかを何度も経営側に説明しました。「ここは紙だと、後から書き換えたと思われても反証できない」「この工程はデジタルでの自動記録のほうが審査が通りやすい」など、具体的なリスクを伝えていきました。

─粘り強いアプローチが最後には効いたのですね。実際に目標としていたFSSC 22000の認証取得では役立ちましたか。

齋藤様:はい。大いに役立ちました。FSSC 22000の認証では、資料の信頼性がものを言います。特に時間を記録する工程では厳しい審査があります。紙の帳票だと後で記入することもできるので、審査員の方からは信頼性が低いとみなされがちです。デジタルで時間が自動記録される仕組みになったことで、証拠としての信頼性が担保され、審査時も「これなら問題ありませんね」と評価いただき、2025年8月に無事認証を取得することができました。

【DX推進担当者】管理課 品質管理係 齋藤様

▲【DX推進担当者】管理課 品質管理係 齋藤様

ゴールは誰もが同じレベルで働けること。
国籍や経験の壁を超え、安定した製造を目指す。

―プロジェクトを通して、社内で変化などはありましたか?

小林(恵)様:タブレットを導入したラインでは約半年間、ミスが発生していません。

─素晴らしいですね!現場の方々は問題なくツールの操作を行えていますか?

小林(恵)様:問題はまったくゼロではないですが、操作がわからない人は、周りの理解している人に聞くなど、現場同士で助け合う動きが生まれています。新たにラインに入った方も、操作に慣れている方に聞いて確認できる状態なので、うまく現場で回っているという印象です。

小林(康)工場長:私の気づきとしては、DXに取り組み始めてから現場の内外でコミュニケーションが増えたように思います。DXツールがあると、コミュニケーションはあまりしなくていいように思われますが、逆にツールがあるからこそ、それを起点にコミュニケーションが生まれる、むしろ積極的にしていかなきゃいけないと感じましたね。

【DX推進担当者】工場長 小林(康)様

▲【DX推進担当者】工場長 小林(康)様

─理想とするDXに対して、今後どのようなゴールを描いていますか?

片桐様:目指しているのは、国籍や経験を問わず、誰もが同じレベルで商品を作れる状態です。スタッフの多国籍化が進み、言語や経験の壁があっても、皆が同じレベルで安定した商品を作れることが目標です。

ただそれに対する進捗はまだまだで、少し厳しめですが…5%くらいかなと思います。3年後には目標を達成していたいですが、現場の皆さんの慣れや会社の状況からすると、もう少し長い目でこの目標を目指したいですね。

─人員不足についても課題を感じていらっしゃるそうですね。

小林(康)工場長様:はい。人員不足は本当に深刻です。当社に限ったことではないのですが、10年後はどうなるんだろうという危機感を持っています。だからこそ、さまざまな国の方と一緒に働けるようにしていくべきだし、年齢も関係なく活躍していただく必要もある。そういう状況の中でも安定した商品、間違いのない商品を作るにはDXが絶対に必要だと考えます。

─最後に、これから現場DXの推進を検討されている方々へ、メッセージをお願いします。

小林(康)工場長様:実は私も15年ほど前に、タブレットを使った在庫管理に取り組んだものの、うまくいかずに諦めた経緯があります。そのときのことを振り返ると、トップダウンではなく現場主導で進める、というのが重要なんだと思います。

そして管理者は、その現場の行動を全力で支援していく。このスタイルで進めていくのが一番良いと思います。そうすることでDXに限らず、最近では「こういう資格を取りたい」という話も上がってきて、従業員のモチベーションにつながっていると感じます。現場の声を生かして、今後も人が生き生きと働ける職場を目指していきたいですね。


越後製菓株式会社 片貝工場
業種:製造業(米菓製造)
従業員数:約300名(片貝工場)(2025年11月現在)


執筆者:現場と人 編集部

現場と人では、現場仕事に特化して、 発見や気づき、助けとなるような情報をお届けします。最新の現場DX手法や事例、現場で働く方々の業務改善の取り組み ・書籍やセミナーだけでは、わかりにくい専門分野の情報 ・従業員教育に役立つ基礎基本となる情報をお求めの方は、ぜひ「現場と人」を参考にしてください。

おすすめコンテンツ

現場DXを支えるカミナシサービス一覧

TOP 

> 現場DXアワード

> 目指すはFSSC 22000認証取得。会社の命題を追い風に、現場主導でDXが動き出す。