歩留まりが悪化し、不良や廃棄、再加工が増えているものの、「問題が起きている箇所を特定できない」「何から改善すべきか判断できない」と悩む現場も少なくありません。歩留まりの低下は、原材料ロスやコスト増、生産効率の低下、納期への影響につながります。
改善を進める際は、設備更新や作業者教育などの対策を先に考えるのではなく、まず現状を把握し、問題箇所を特定したうえで、取り組む順番を決めることが重要です。
歩留まりの定義や計算方法、主な低下原因については「製造現場の「歩留まり」とは?計算方法や悪い場合の原因と6つの改善策」で解説しています。本記事では、歩留まりが悪いときの最初の着手点と、改善を進めるための具体的な手順に絞って解説します。具体的には、現状把握、問題箇所の特定、原因分析、優先順位づけ、施策選定、短期と中長期での実行、KPI(重要業績評価指標)確認、継続管理の8つのステップに沿って紹介します。
目次- 歩留まりが悪いときは改善策より先に原因を見極める
- まず歩留まり・不良率などの推移から異常を確認する
- 工程・製品・設備別にデータを分解して問題箇所を絞り込む
- 歩留まり低下の原因を切り分けて改善対象を特定する
- 正常時と悪化時を比較して変化した条件を洗い出す
- 4M・5M+1Eで原因候補の抜け漏れを防ぐ
- 改善効果の大きい問題から優先順位を付ける
- パレート図で不良・ロスの大きい項目を可視化する
- 損失額・影響度・実行難易度から優先順位を決める
- 歩留まりを上げる改善策は原因に合わせて短期と中長期に分けて進める
- 短期では不良・ロスの拡大を止める
- 中長期では再発しにくい仕組みを作る
- 歩留まり改善・向上を定着させる目標設定とKPI管理
- 現状値をもとに達成可能な目標を設定する
- 実施した施策に対応するKPIを選ぶ
- 一定期間追跡して改善の定着を確認する
- 継続的な歩留まり改善には現場データを蓄積できる仕組みが必要
- 現場帳票を標準化して必要なデータを継続的に集める
- デジタル化で集計・分析しやすい状態を作る
- 原因を特定して優先順位を付けながら歩留まり改善を進めよう
歩留まりが悪いときは改善策より先に原因を見極める
歩留まりが悪化したからといって、すぐに設備更新や作業者教育、工程変更などを始めるのは効率的とはいえません。歩留まり低下の原因は、設備、材料、作業方法、製造条件などによって異なり、原因に合わない対策では十分な改善効果を得られないためです。
まずは、問題が起きている工程、ロスの種類、発生量をデータから確認し、問題箇所を絞り込むことが重要です。歩留まりや不良率の推移を確認したうえで、工程、製品、設備などの条件ごとに数値を分けて見ると、異常が集中している箇所を見つけやすくなります。
歩留まり改善の進め方を見直すサインとして、次のような状態が挙げられます。
工場全体やライン全体の歩留まりしか確認していない
施策を実施しても数値が戻らない、または一時的に改善して再び悪化する
原因が担当者の経験や勘で語られ、データで説明できない
不良の記録はあるが、工程やロットと紐づいていない
当てはまる項目がある場合は、歩留まりや不良率の推移を確認し、数値の変化が始まった時点や異常の大きさを把握することが改善の第一歩です。
まず歩留まり・不良率などの推移から異常を確認する
最初に確認すべきは、現在の数値だけでなく、歩留まりの変化です。日別、週別、月別など一定期間の推移を見ることで、悪化が始まった時期や、通常時と比べた変化の大きさを把握しやすくなります。
歩留まり率に加えて、不良率、手直し率、廃棄率、直行率も確認することが大切です。歩留まり率は最終的に良品として残った割合を示す結果の指標であり、手直しや廃棄、材料ロスといったロスの内訳までは表さないためです。例えば、歩留まり率は大きく変わっていなくても、手直し率の上昇は工程内で再加工が増えているサインの一つです。
歩留まり率と直行率の差にも注目が必要です。歩留まり率が高くても直行率が低い工程では、一度不良になった製品に対して手直しを行い、最終的に良品としている可能性があります。
例えば、歩留まり率が97%、直行率が85%の工程では、差の12ポイント分を手直しによって良品にしていると考えられます。数値上は歩留まりに問題がないように見えても、手直しに人手や時間がかかり、見えにくいコストが発生している状態です。
手直し率の例のように、歩留まり率とほかの指標を組み合わせると読み取れる主な状態は、次のとおりです。主な組み合わせと、読み取れる状態は次のとおりです。表中の「前期比」は前月や前週など直前の期間と比べた変化を表し、「+」は上昇、「−」は低下、「±0」はほぼ変化がない状態を示しています。
比較する指標 | 数値の状態 | 読み取れる状態 | 発生しているコスト |
|---|---|---|---|
歩留まり率と直行率 | 歩留まり率−直行率の差が大きい | 不良になった製品を手直しし、最終的に良品にしている可能性がある | 手直しにかかる人手や作業時間 |
歩留まり率と手直し率 | 前期比で歩留まり率は±0、手直し率は+ | 不良の発生自体が増えており、手直しで歩留まり率を支えている可能性がある | 増えた手直しの人手や作業時間 |
歩留まり率と不良率 | 前期比で歩留まり率は−、不良率は±0 | 端材や切りくず、段取り替え時の試し加工など、不良品以外の材料ロスが増えている可能性がある | 不良として記録されない材料ロス |
歩留まり率と廃棄率 | 前期比で歩留まり率は−、廃棄率は+(手直し率は±0) | 手直しで良品に戻せない不良が増えている可能性がある | 廃棄品にかけた材料費・加工費、廃棄処理費 |
歩留まり率とその他指標との関係
歩留まり率の推移が同じでも、ほかの指標の動きによって、現場で起きている問題は異なります。表の「数値の状態」に当てはまる組み合わせが見つかった場合は、「発生しているコスト」の欄を参考に、手直し工数や廃棄量などの実際の損失もあわせて確認しておきましょう。
いずれの指標も、単月や単日の数値だけで判断せず、通常時の水準や直近の推移、各指標の関係を比較しながら異常の兆候を探すことが重要です。
工程・製品・設備別にデータを分解して問題箇所を絞り込む
工場全体やライン全体の数値は、各工程の結果が掛け合わさった値のため、全体の数値だけを見てもどの工程でロスが生じているかは分かりません。
複数の工程を順番に通り、手直しや再投入を考慮しない場合、全体の歩留まり(総合歩留まり)は各工程の歩留まりを掛け合わせて求められます。
例えば、3つの工程の歩留まりが次の状態だった場合は以下のようになります。
工程 | 歩留まり | 総合歩留まり |
|---|---|---|
工程A | 98% | 90% |
工程B | 97% | |
工程C | 95% |
工程ごとの歩留まりと総合歩留まり
各工程だけを見ると95%以上を維持していますが、全体では約90%となり、投入数のうち約1割が最終的な良品として残らない計算です。工程ごとの差を確認すれば、最も歩留まりが低い工程Cなど、重点的に原因を確認すべき箇所を見つけやすくなります。
工程だけでなく、製品や設備などの条件ごとにもデータを分けて比較し、数値が悪化している箇所を絞り込むことが原因特定の第一歩です。
工程別に比較して不良や廃棄が増えている工程を特定する
工程別に歩留まりや不良数を比較すると、不良や廃棄が増え始めた工程を絞り込みやすくなります。前工程と後工程の数値もあわせて確認し、変化が生じた地点を探すことが重要です。
例えば、前工程までは歩留まりが安定しているのに、組立工程以降で不良率が急に上がっている場合は、組立条件や作業方法に原因がないかを確認します。
ただし、「不良が見つかった工程」と「不良が発生した工程」は必ずしも一致しません。組立工程で見つかった寸法不良が、実際には前工程の部品加工で生じているケースもあります。
発見工程だけで集計すると、原因となっていない工程に対策を行うおそれがあるため、発生元まで遡って記録し、集計できる状態にすることが重要です。不良の発見場所だけで判断せず、前後の工程や発生経路まで確認することで、対策すべき工程をより正確に特定できます。
製品や設備、材料などの条件別に比較して異常が集中する条件を探す
工程別の比較に加えて、設備、材料、時間帯、作業者などの条件ごとにデータを分けると、異常が集中している条件を見つけやすくなります。比較する際は、良好な条件と悪化している条件の差に注目することが重要です。
比較項目 | 確認するポイント | 異常の例 |
|---|---|---|
製品・品種 | 特定の品種や新製品に不良が偏っていないか | 段取り替え後に生産する品種だけ不良率が高い |
設備・ライン | 同じ製品でも設備ごとに差がないか | 特定の号機だけ寸法不良が多い |
材料・ロット | ロット切り替え前後で数値に差がないか | 仕入先変更後から傷が増えた |
時間帯・シフト | 夜勤や立ち上げ直後などに偏りがないか | 始業直後の成形不良が多い |
作業者 | 手作業工程で担当者ごとの差がないか | 特定の担当者で手直しが多い |
製造条件 | 温度や速度、圧力などの設定差がないか | 特定の設定条件で不良率が上がる |
製品・設備・材料などの条件別比較
例えば、特定の設備や材料ロット、時間帯にだけ不良が集中していれば、原因を絞り込む有力な手掛かりになります。工場全体の平均値だけで判断せず、条件ごとの差を比較しながら、異常が発生しやすいパターンを探すことが重要です。
歩留まり低下の原因を切り分けて改善対象を特定する
歩留まりが低下している工程や製品、条件を特定できたら、次は正常時との違いから原因候補を絞り込みます。原因を思いつくまま挙げるのではなく、記録されたデータと現場の状況を照らし合わせながら、歩留まり低下と関係する変化を探ることが重要です。
歩留まり低下は結果であり、不良が発生した背景には設備設定や材料、作業条件など何らかの変化が隠れている場合があります。問題箇所を絞り込んだ段階で原因分析へ進み、検証すべき原因候補を整理します。
正常時と悪化時を比較して変化した条件を洗い出す
原因を絞り込む際は、歩留まりが良好だった期間と悪化した期間を並べ、条件の違いを確認します。全体平均だけを見るのではなく、設備、材料ロット、作業者、温度や湿度などの条件ごとに比較すると、歩留まり低下と重なる変化を見つけやすくなります。
例えば、歩留まりが良かった週と悪かった週を比較すると、次のような違いが見つかる場合があります。
比較項目 | 歩留まりが良かった週 | 歩留まりが悪かった週 |
|---|---|---|
設備設定 | 基準値のまま運転 | 加工速度を変更 |
材料ロット | ロットA | ロットBへ切り替え |
作業者 | 通常の担当者 | 応援者が一部を担当 |
温湿度 | 管理範囲内で安定 | 湿度が通常より高い |
歩留まりが良かった週と悪かった週の比較例
単一条件が異なるのであれば、歩留まり低下の原因がすぐに分かります。しかし複数の条件が同時に変わっている場合、表だけで原因を断定することはできません。
そのため、生産記録や検査記録、設備ログなどを確認し、現場で設備や材料、作業状況も確かめましょう。経験や勘だけに頼らず、変化した条件と歩留まり低下の時期が一致しているかを確認することで、検証すべき原因候補を絞り込みやすくなります。
4M・5M+1Eで原因候補の抜け漏れを防ぐ
変化した条件を確認した後は、4Mや5M+1Eを使うと原因候補を整理しやすくなります。4Mは、人(Man)、機械や設備(Machine)、原材料(Material)、方法(Method)の4つの観点で工程を捉える考え方です。
必要に応じて計測(Measurement)を加えた5M、さらに環境(Environment)を加えた5M+1Eまで確認します。特に計測では、検査基準の変更や測定器のずれによって、不良品の判定数が変わる場合があります。製造状態そのものが変化していなくても、「見かけの歩留まり」が上下する可能性があるため注意が必要です。
ただし、4Mや5M+1Eは原因を確定する方法ではありません。原因候補を洗い出した後は、問題が起きた理由を繰り返し掘り下げる「なぜなぜ分析」や、結果と原因候補の関係を整理する「特性要因図」などを使い、真因の特定へ進みます。原因候補を挙げるだけで終わらず、データと現場確認によって検証することが歩留まり改善につながります。
改善効果の大きい問題から優先順位を付ける
原因候補が複数ある場合、すべてを同時に改善するのは現実的ではありません。人員や時間、予算が分散すると、対策が中途半端になり、改善効果も確認しにくくなります。
優先順位を決める際は、発生件数だけでなく、損失額や品質、納期への影響、対策に必要な人員や期間、費用まで確認することが重要です。まずパレート図で影響の大きい問題を可視化し、改善候補を絞ります。
パレート図で改善候補を絞った後、効果の大きさと着手しやすさを比較すると、限られた経営資源を優先度の高い問題へ配分しやすくなります。
パレート図で不良・ロスの大きい項目を可視化する
改善対象を絞る際は、パレート図を使って、不良やロスが集中している項目を確認することが重要です。限られた人員や時間で効果を出すには、不良やロスの大部分を占める少数の項目から取り組むほうが効率的であり、パレート図を使うと少数の項目への集中を一目で把握できるためです。
パレート図は、項目ごとの数値を大きい順に並べた棒グラフと、上位の項目から順に割合を足し合わせた累積比率の折れ線グラフを組み合わせた図です。棒グラフで各項目の大きさを、折れ線グラフで上位の項目が全体に占める割合を確認できます。
まずはパレート図を作るためのデータをまとめます。例えば、ある工程で200件の不良が発生した場合を考えます。
不良項目 | 発生件数 | 構成比 | 累積比率 |
|---|---|---|---|
寸法不良 | 120件 | 52% | 52% |
傷 | 80件 | 35% | 87% |
異物 | 30件 | 13% | 100% |
不良項目別の発生件数と累積比率の例
表からパレート図を作る手順は、次のとおりです。
不良項目を発生件数の多い順に並べる(「その他」は件数にかかわらず最後に置く)
各項目の発生件数を合計件数で割り、構成比を出す
上位の項目から構成比を順に足し合わせ、累積比率を出す
構成比を棒グラフ、累積比率を折れ線グラフで示す

パレート図の作成例
パレート図を見ると、寸法不良と傷の2項目で不良件数全体の87%を占めていることが分かります。3項目すべてに同時に対策するよりも、寸法不良と傷の原因を先に調べるほうが、少ない労力で不良件数を大きく減らせる見込みがあります。
累積比率が大きく伸びる上位の項目を優先候補とし、累積比率の伸びが緩やかになる下位の項目は後回しにするのが基本的な考え方です。
ただし、発生件数が多い項目ほど損失も大きいとは限りません。パレート図の集計軸は発生件数に限らず、廃棄数や損失額など、改善したい指標に合わせて変えられます。そのため、損失額で並べ替えた場合に優先順位が入れ替わる場合も加味して考えます。
損失額・影響度・実行難易度から優先順位を決める
優先順位は、発生件数だけでなく損失額もあわせて判断することが重要です。1件あたりの損失は不良の種類によって異なるためです。件数が少なくても、手直しができずに廃棄になる不良や、材料費・加工費が高い製品で発生する不良は、損失額で見ると順位が上がる場合があります。
例えば、パレート図の例で、上位3項目の損失額も集計すると次のようになります。

件数順と損失額順で順位が入れ替わる例
寸法不良と傷は手直しで良品に戻せるものが多く、損失は主に手直しにかかる人件費です。一方、異物は手直しができずに全数廃棄となるうえ、出荷されると顧客クレームにもつながるため、1件あたりの損失額が大きくなります。
損失額を大きい順に並べてパレート図を作ると、次のようになります。

損失額を大きい順に並べたパレート図
件数では3位だった異物が損失額では1位になり、異物だけで損失額全体の60%を占めています。件数順のパレート図だけで判断すると、寸法不良と傷への対策を優先し、損失額が最も大きい異物を後回しにするおそれがあります。件数順と損失額順の両方でパレート図を作り、比べたうえで優先順位を判断することが重要です。
自社で損失額を集計する際は、次の式で簡易的に見積もれます。
損失額 = 廃棄数 ×(1個あたりの材料費+加工費)+ 手直し数 × 1個あたりの手直し時間 × 時間単価
手直しで良品に戻した製品は材料が無駄になっていないため、材料費や加工費は廃棄した分だけを計上します。
ただし、優先順位は損失額だけで決まるものではありません。品質や顧客への影響が大きい不良は損失額が小さくても放置できず、対策に必要な人員や費用によっては、すぐに着手できない場合もあるためです。次の評価項目もあわせて確認します。
評価項目 | 確認すること |
|---|---|
損失額 | 廃棄する材料や製品の費用、再加工や追加検査にかかる人件費 |
品質・顧客への影響 | 不良流出、返品、クレーム、顧客からの信頼への影響 |
納期への影響 | 再生産や手直しによる生産計画、出荷への影響 |
必要な人員 | 現場だけで対応できるか、追加要員が必要か |
期間 | 短期間で改善できるか、長期的な対応が必要か |
費用 | 設備改修や材料変更などに投資が必要か |
他部署連携の要否 | 技術部門、調達部門、品質部門、取引先などとの調整が必要か |
歩留まり改善の優先順位を決める評価項目
評価後は、改善効果の大きさと着手しやすさの2軸で整理すると判断しやすくなります。
改善効果\着手しやすさ | 着手しやすい | 着手しにくい |
|---|---|---|
効果が大きい | 最優先で取り組む | 計画を立てて取り組む |
効果が小さい | 余力に応じて対応する | 監視しながら必要性を再評価する |
改善効果と着手しやすさによる優先順位の考え方
最優先となるのは、改善効果が大きく、現実的に着手しやすい問題です。効果が大きくても設備投資や他部署との調整が必要な問題は中長期の改善計画へ組み込み、影響が小さい問題とは対応時期を分けます。改善効果と着手しやすさを基準に優先順位を整理することで、担当者の感覚だけに頼らず、改善対象の着手順を決めやすくなります。
歩留まりを上げる改善策は原因に合わせて短期と中長期に分けて進める
改善対象を決めた後は、特定した原因に対応する施策を選びます。歩留まり改善でよく使われる対策を一律に実施しても、原因と合っていなければ十分な効果は期待できないためです。
原因ごとに短期対応と中長期対応を分けて計画することが重要です。作業標準化や設備保全の仕組みづくりなどの恒久的な対策は効果が出るまでに時間がかかり、対策が整うまでの間も不良やロスは発生し続けるためです。主な原因と対応の例は次のとおりです。
特定した原因 | 短期対応 | 中長期対応 |
|---|---|---|
作業方法のばらつき | 手順の再確認、ダブルチェック | 作業標準化、教育 |
設備条件の変動 | 設定値の確認、調整 | 予防保全、条件管理の仕組み化 |
材料ロットのばらつき | 問題ロットの隔離 | 受入検査基準の見直し |
検査条件のばらつき | 測定器や判定基準の確認 | 測定方法、検査基準の標準化 |
原因に応じた短期対応と中長期対応の例
短期では不良やロスの拡大を抑え、中長期では再発しにくい仕組みを整えます。応急的な対策だけで終わらせず、恒久的な改善まで見据えて進めることが重要です。
短期では不良・ロスの拡大を止める
短期対応では、まず不良品の流出や損失の拡大を防ぐことを優先します。原因の特定や恒久対策の実施には時間がかかり、対策を待つ間にも不良品が生産され続けるためです。主な対応は、異常が疑われる設備や製造条件の確認、作業手順の再確認、問題ロットの切り分け、一時的な検査強化などです。
例えば、特定の設備で加工速度を変更した後から不良率が上昇している場合は、設定値や部品の状態を確認し、必要に応じて変更前の条件へ一時的に戻します。原因の特定に時間がかかる場合は、検査頻度を増やして、不良品を後工程や顧客に流さない対応も必要です。
現場では、不良品の流出や損失の拡大を防ぐための一時的な対応を「暫定対策」、根本原因を取り除く対応を「恒久対策」と呼びわけます。
暫定対策で不良率が下がっても、恒久対策まで進めなければ再発防止にはなりません。例えば、加工速度を元の設定に戻して不良率が改善しても、条件変更のルールがなければ、生産量を増やすために再び速度が変更されるおそれがあります。条件変更の基準や承認手順を標準化するなど、恒久対策までつなげることが重要です。
中長期では再発しにくい仕組みを作る
中長期の改善では、同じ不良を繰り返さない仕組みを整えることが重要です。暫定対策で数値が戻っても、不良を生んだ原因が残っていれば、条件の変化や担当者の交代をきっかけに再発するためです。主な取り組みは、作業標準化や教育、設備保全、製造条件の管理、品質管理体制の見直しなどです。
例えば、設備の劣化や摩耗が進むと、加工精度が低下し、不良率が上がる場合があります。故障する前に点検や部品交換を行う予防保全として、点検周期の見直しや消耗部品の計画交換を進めると、設備状態の変化による歩留まり悪化を防ぎやすくなります。
作業者によって手順に差がある場合は、標準作業を定め、教育内容や確認方法までそろえることが必要です。手順書を作るだけでは、理解度や習熟度の差によって作業のばらつきが残るためです。データ収集や記録方法の整備も再発防止には有効ですが、詳細は後述の「継続的な歩留まり改善には現場データを蓄積できる仕組みが必要」で解説します。
歩留まり改善・向上を定着させる目標設定とKPI管理
歩留まり改善は、施策を実施しただけでは成果とは判断できません。施策の直後に数値が上がっても、一時的な変化にとどまり、数週間後に元の水準へ戻る場合があるためです。歩留まり率が実際に向上し、改善後の水準を一定期間維持できているかまで数値で確認する必要があります。
効果を確認するためには、現状値をもとに具体的な目標を設定し、施策に対応するKPIを継続して追跡します。
現状値をもとに達成可能な目標を設定する
目標値は、業界平均だけを基準にするのではなく、自社の実績をもとに設定することが重要です。直近半年から1年程度の実績のうち、歩留まりが良かった月や上位の期間の数値は、現在の設備や人員でも実際に到達できた水準であり、現場が納得しやすいためです。
例えば、通常は歩留まり92%前後でも、過去に95%を維持できた期間がある場合、「A工程の歩留まりを3カ月で92%から95%へ引き上げる」といった目標を設定できます。一度は実現できた水準のため、現場にとっても現実的な目標になります。
目標は、歩留まり率だけでなく、金額に換算して示すことも重要です。改善によって削減できる金額が分かると、経営層に改善の必要性を説明しやすくなり、必要な人員や予算も確保しやすくなるためです。投入量が一定で、歩留まり率が1ポイント向上した分だけ材料費や加工費のロスを減らせる場合、概算には次の式を使えます。
削減額の目安=月間投入数量×1%×(1個あたりの材料費+加工費)
例えば、月間投入数量が10万個、1個あたりの材料費と加工費の合計が300円の場合、歩留まり率が1ポイント向上すると、月30万円、年間360万円のロス削減に相当します。
実施した施策に対応するKPIを選ぶ
改善効果を正しく確認するには、歩留まり率だけを見るのではなく、実施した施策の効果が直接表れるKPIを選ぶ必要があります。原因や対策によって、確認すべき数値が異なるためです。
例えば、主な施策とKPIは次のように対応させます。
実施した施策 | 追跡するKPIの例 |
|---|---|
作業標準化・教育 | 手直し率、作業者別不良率 |
設備条件の見直し・保全 | 設備別不良率、設備起因の不良件数 |
材料ロット管理・受入検査の見直し | 材料ロット別不良率 |
製造条件の見直し | 条件別不良率、廃棄率 |
不良削減施策全般 | 歩留まり率、ロス金額 |
施策と追跡するKPIの例
作業標準化を行ったにもかかわらず工場全体の歩留まり率だけを見ていると、施策の効果がほかの変動に埋もれる場合があります。例えば、歩留まり率が変わらなくても手直し率が低下していれば、再加工にかかる工数を減らせた可能性があります。
改善前後を比較する際は、対象となる製品や工程、集計期間などの条件をできるだけそろえることが重要です。条件が異なると、数値の差が施策の効果によるものなのか、製品構成や生産量の違いによるものなのかを判断できないためです。歩留まり率と施策に直接関係するKPIをあわせて確認することで、数値の変化だけでなく、現場でどの負担が減ったのかも判断しやすくなります。
一定期間追跡して改善の定着を確認する
KPIは改善直後だけでなく、一定期間継続して追跡する必要があります。対策直後に数値が改善しても、数週間後や数カ月後に再び悪化する場合があるためです。
歩留まり率や不良率を時系列でグラフ化すれば、改善後の水準を維持できているか確認しやすくなります。必要に応じて、工程の数値を時系列で確認する管理図を活用すると、通常のばらつきとは異なる変化を早めに捉える手掛かりにもなります。
管理図は、時系列の数値に、通常のばらつきの範囲を示す上限と下限の線(管理限界線)を引いたグラフです。数値が管理限界線を超えた場合や、同じ方向への変化が続く場合を、異常の兆候として判断できます。
KPIが目標に届かない場合や、一度改善した数値が再び悪化した場合は、原因分析や優先順位づけまで戻って対策を見直します。計画(Plan)、実行(Do)、検証(Check)、改善(Act)を繰り返すPDCAにつなげ、一時的な改善で終わらせないことが重要です。
継続的な歩留まり改善には現場データを蓄積できる仕組みが必要
原因分析や優先順位づけ、KPI管理を継続するには、必要な現場データを蓄積できる仕組みが欠かせません。データが不足していると、原因の切り分けや改善効果の検証、再悪化の早期発見が難しくなります。
紙帳票やExcel、担当者ごとのファイルに情報が分散している場合、集計や比較のたびに転記やデータ整理が必要です。記録する項目や形式まで担当者によって異なると、期間や工程をまたいだ比較も難しくなります。
継続的な改善には、現場で記録した情報を蓄積し、可視化や分析に使い、次の改善へつなげられる状態が必要です。記録、蓄積、可視化、分析、改善という流れを繰り返せる仕組みを整えることが、歩留まり改善の定着につながります。
現場帳票を標準化して必要なデータを継続的に集める
現場帳票は、後から原因分析やKPI確認に使えるよう、記録する項目や形式を統一することが重要です。必要な情報が抜けていると、不良が発生した条件まで遡れず、前半で紹介した比較分析やパレート分析にも活用できません。
歩留まり改善を目的とする場合は、例えば次の項目を記録し、項目ごとの変化や組み合わせから異常の傾向を確認します。
記録項目 | 分析時の確認ポイント | 読み取れること |
|---|---|---|
日時 | 特定の日や時間帯、シフトに不良やロスが集中していないか | 立ち上げ直後や夜勤帯など、不良が発生しやすい時間条件 |
工程 | 工程ごとに歩留まり低下や不良、廃棄が増え方に差がないか | 原因確認を優先すべき工程 |
発生工程 | 不良が見つかった工程と、発生した工程が異なっていないか | 対策すべき本来の工程 |
設備・号機 | 同じ製品でも特定の設備や号機だけ数値が悪化していないか | 設備固有の設定ずれや劣化などの可能性 |
製品・品種 | 特定の製品や品種に不良が偏っていないか | 製品固有の材料や加工条件との関係 |
ロット番号 | 材料や製造ロットの切り替えと不良増加の時期が重なっていないか | 特定の材料ロットや製造ロットとの関連 |
作業者 | 手作業工程などで、担当者ごとに不良率や手直し数の差がないか | 作業手順や習熟度によるばらつき |
投入数 | 良品数や不良数などと組み合わせて確認する | 歩留まり率や不良率を算出するための基礎データ |
良品数 | 投入数に対して良品がどの程度残ったか | 歩留まりの変化 |
手直し数 | 再加工がどの程度発生しているか | 表面上の歩留まりでは見えにくい再加工負担 |
不良数 | 不良発生量や推移を確認する | 不良率の悪化や改善効果 |
不良区分 | 不良内容ごとに件数や損失を集計する | パレート分析で優先的に改善すべき不良項目 |
歩留まり改善に必要な主な記録項目
特に手直し数と不良区分は、記録から抜けやすい項目です。手直し数がなければ直行率を算出できず、不良区分がなければパレート図で改善対象を絞り込めません。
記録したデータは、単独で見るだけでなく、複数の項目を組み合わせて分析することが重要です。投入数や良品数、手直し数、不良数を同じ単位で継続して記録すれば、歩留まり率や直行率、不良率などを比較し、表面上の数値だけでは見えにくい再加工負担も把握できます。
また、日時や設備、ロット番号、不良区分などを紐づけて記録しておけば、不良が発生した日時、設備、ロット、不良の種類まで遡って確認できます。帳票を埋めること自体を目的にせず、後から比較や分析に使える形でデータを残すことが大切です。
デジタル化で集計・分析しやすい状態を作る
現場帳票をデジタル化すると、紙からExcelへの転記や手作業での集計を減らし、蓄積したデータを分析に活用しやすくなります。入力した情報を同じ形式で蓄積しておけば、工程や設備、製品、期間など、条件を変えながら比較できるようになります。
例えば、特定の号機で不良率が上昇した場合、設備番号だけでなく、製品や材料ロット、日時などの記録もあわせて確認します。複数の情報が一元化されていれば、紙帳票から必要な情報を集め直す手間がなく、数値の変化と発生条件の照合も容易です。
デジタル化の目的は、集計時間の短縮だけではありません。記録したデータを継続的に比較できる状態は、異常や再悪化の兆候を捉え、原因候補の絞り込みや改善効果の確認につなげるための基盤となります。
原因を特定して優先順位を付けながら歩留まり改善を進めよう
歩留まりを改善するには、最初から設備更新や作業標準化などの施策に取り組むのではなく、現状を把握して問題箇所を特定することが重要です。問題箇所を絞り込んだ後に原因を分析し、改善効果と実行可能性を踏まえて優先順位を付けることで、限られた人員や時間、予算を有効に使えます。
改善は、現状把握、問題箇所の特定、原因分析、優先順位づけ、施策選定、短期と中長期での実行、KPI確認、継続管理の順序で進めます。設備や材料、作業方法など、歩留まり低下につながる原因の全体像は、「製造現場の『歩留まり』とは?計算方法や悪い場合の原因と6つの改善策」で詳しく解説しています。
改善後も数値を継続して追い、効果が維持されているか確認することが欠かせません。現場データを記録、蓄積し、比較や分析に活用できる状態を整えることで、一時的な対策ではなく継続的な歩留まり向上につなげられます。























