保守点検は設備やシステムの安定稼働を支える業務であり、製造業やインフラ業界を含む多くの企業で日常的に行われています。機械や設備の故障を未然に防ぎ、安全性を確保するためには、日々の点検やメンテナンスが必要です。
近年では、デジタル技術の進化により、保守点検の方法も大きく変化しています。IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を活用した予知保全や遠隔監視により、従来よりも少ない負担で業務を効率化することが可能になりました。
本記事では、保守点検の定義や実施する目的、必要性について解説します。また、保守点検を行うメリットや、より効率的に実施する方法や代表的なシステムについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次保守点検とは
保守点検とは、設備や機械が安全かつ正常に動作し、期待する結果(生産や加工、異常検知など)になるかを確認する作業です。保守点検時に万が一、異常が見つかった場合は、必要に応じた処置(修理や部品交換など)が施されます。場合によっては、機械や設備が使用停止になることもあります。
一般的に保守点検は、通常業務の開始や終了後などに行う日常点検と、あらかじめ立てたスケジュールや一定の間隔で行う定期点検があります。
保守点検は、設備や機械を長期間正常に稼働させ、生産効率や製品品質を維持するために重要です。保守点検を怠ると、設備の突然の故障による生産ラインの停止や事故の発生などにつながります。特に、製造業やインフラ業界、医療分野では、設備の不具合が社会的な影響を及ぼすため、定期的な保守点検が不可欠です。
保守点検は日常点検と定期点検に分類される
保守点検は日常点検と定期点検の二種類に分類されます。
日常点検は、機器や設備を使用する社員が業務の前後や始終業前に実施する点検で、外観の確認や動作チェックが含まれます。一方、定期点検は、月に一回または三ヶ月に一回などの一定の間隔で実施し、必要に応じて劣化部品の交換や普段行えない部分の清掃などを行います。
機器の種類や使用環境によって点検項目が異なるため、各点検で確認すべき項目を関係者間で十分に検討することが重要です。
保守点検と設備保全、メンテナンス、修理との違い
保守点検と似た言葉に設備保全やメンテナンス、修理などがあります。それぞれ意味や目的が異なるので、以下の表にまとめました。
単語 | 実施すること | 目的 |
|---|---|---|
保守点検 | 設備や機械を定期的に点検し、異常を発見した際は、修理や部品交換を行う | ・故障の早期発見と迅速な対応 |
設備保全 | 設備や機械を正常な状態に維持するために、点検や修理、更新などの管理を計画的に行う | ・設備の安定稼働 |
メンテナンス | 設備保全とほぼ同じ意味で、設備や機械の正常稼働を維持するための作業 | ・機器や設備の機能維持 |
修理 | 故障や異常が発生した設備や機械を修復し、正常な状態に戻す | ・すでに発生した故障の解消 |
保守点検と設備保全、メンテナンス、修理との違い
設備や機械を長期間安定稼働させるためにも、それぞれの違いを理解し、状況に応じて最適な方法を実施することが重要です。
保守点検を行う3つの目的
保守点検を行う目的は3つあります。保守点検は業務の効率化や品質向上に大きく貢献するので、目的を十分に理解し、適切に実施しましょう。
設備や機械の故障を防ぐ
不良品の発生を防ぐ
作業者の安全を守る
設備や機械の故障を防ぐ
保守点検を行う目的の1つは、設備や機械の故障を防ぐことです。設備が故障すると業務の継続が困難になり、修繕費や残業代、追加の材料費といった余分なコストが発生します。さらに、故障の程度によっては大規模な修繕が必要となり、予想外の出費になるおそれもあります。
また、故障を防ぐことは設備や機械の停止時間を発生させないことにもつながります。一般的に数分から数十分程度の短時間の停止をチョコ停、チョコ停よりも長時間(約1時間以上)にわたる停止をドカ停と呼びます。いずれも生産ラインの稼働率を低下させ、業務に大きな影響を与えます。
生産停止によって納品遅れが発生すると、顧客からの信用を失い、売上の減少や取引の喪失といった経済的な損失につながるため注意が必要です。そのため、チョコ停やドカ停を防ぐためにも適切な保守点検が欠かせません。
日々の保守点検を適切に行えば、設備や機械の状態を正確に把握できます。万が一異常が発生しても早急に対応でき、業務への影響を最小限に抑えられます。
不良品の発生を防ぐ
不良品の発生を防ぐことも、保守点検の目的の一つです。設備や機械が故障すると、製造工程に乱れが生じ、基準を満たさない不良品の発生につながります。このような状態を放置すると、不良品が大量に発生し、再生産や修復、廃棄することになります。
もし誤って、不良品が市場に流出すれば、製品の品質が保証されない企業と判断され、取引先との関係悪化や利益損失につながります。時間をかけて作り上げてきたブランド価値や企業イメージにも悪影響です。さらに廃棄コストの増加や生産ロスが発生すれば、経済的な損害も生じます。
これらのリスクを回避するためにも、定期的な保守点検を実施し、設備や機械を適切な状態に維持することが不可欠です。
作業者の安全を守る
保守点検には、作業者の安全を守るという目的もあります。設備や機械の故障を放置すると、機械の誤作動や予期せぬ動作が発生し、重大な事故につながるリスクがあります。特に作業者が機械の近くで業務を行う環境では、設備の異常がけがに直結するため非常に危険です。
万が一、作業者がけがを負ったり死亡したりする事態が発生した場合、労働災害として扱われます。事業主には安全衛生管理の責任があり、労災の防止は法律で定められた義務です。この義務を怠ると、企業としての信用を失うだけでなく、法的責任を問われる可能性もあります。
定期的な保守点検を徹底して設備の状態を把握し、異常を早期に発見することは可能です。これにより、労災を防止し、安全な職場環境を維持できます。保守点検は機器の性能を保持するだけでなく、作業者の安全を確保する上でも重要です。
安全衛生管理については、以下の記事でより詳しく紹介しているので、あわせてお読みください。
▶ 安全衛生管理とは?必要な役割と関連法律、具体的に行う7つのこと
保守点検のメリット4つ
目的をもとに保守点検を実施すると、さまざまなメリットが得られます。保守点検のメリットを知ることで、定期点検や日常点検の重要性が理解できます。現場で働く従業員の教育にもご活用ください。
顧客満足度が向上する
設備や機械にかかる費用を削減できる
トラブルにすぐに対応できる
設備や機械に関する知識が深まる
顧客満足度が向上する
保守点検を実施することで、製品の品質が安定し、結果として顧客満足度の向上につながります。定期的な点検により不良品の発生を防ぎ、高品質な製品を継続的に提供できるためです。
品質の高い製品を安定して供給できれば、顧客の信頼を得やすくなり、満足度の向上につながります。リピート率の向上や新規顧客の獲得も期待でき、企業の成長にも寄与します。
また、安定した品質を維持することは、クレームや返品リスクの低減にもつながります。顧客の期待に応え続けるためにも、保守点検の徹底は欠かせません。
設備や機械にかかる費用を削減できる
保守点検を実施すれば、設備や機械にかかる費用を削減できることもメリットの一つです。定期的な保守点検で設備の消耗や劣化を早期に発見できれば、最小限の修理や部品交換で対応できます。大規模な故障による修繕を行うよりも、修理費用を抑え、メンテナンスコストを削減することが可能です。
また、保守点検は設備や機械の寿命を延ばすこと(長寿命化)にもつながり、新たな設備投資の負担も減らせます。さらに、設備の状態を把握できるため、将来の機器導入計画も立てやすくなります。
保守点検を実施しない企業では、点検にかかる人的コストはかかりませんが、設備や機械が故障した場合、その損害は人的コストを大きく上回ることが多々あります。長期的に見ると、保守点検は設備の運用コストや損害を最小限に抑え、結果としてコスト削減につながります。
トラブルにすぐに対応できる
定期的に点検を行うことで、設備や機械の異常を早期に発見できるので、大きな故障が発生する前に問題を特定して迅速に対応できます。
修理や部品交換も比較的簡単に行え、修理費用やダウンタイムも抑えられます。また、点検によって異常の兆候を察知し、事前に予防策を講じれば、突発的な故障を未然に防ぐことも可能です。
保守点検を適切に行えば、万が一トラブルが発生しても迅速に対応でき、業務を滞りなく進められます。結果として設備を安定的に稼働させることができ、生産性や業務効率の向上につながります。
設備や機械に関する知識が深まる
繰り返し保守点検を行ううちに、設備や機械の動作原理や各部品の役割、故障の兆候などの具体的な知識が自然と身につきます。設備の特性や注意すべきポイントを理解していれば、万が一トラブルが発生した場合でも、早期に原因を特定して適切な対応が可能です。
また、点検を通じて得られる知識は、新しい設備の導入や既存機器の改善においても役立ちます。知識が深まるほど無駄な設備投資を避け、長期的な設備や機械の運用を実現することが可能です。
このように、保守点検を通じて得られる知識は、日々の業務におけるトラブル対応だけでなく、企業全体の設備運用や将来的な計画にも影響を与えます。
保守点検を効率的に行う2つの方法
保守点検を効率的に行うためには、記録や異常の検知をデジタル化する方法と自社管理ではなく、専門の企業へ外部委託する方法があります。
これらの方法の具体策を正確に理解して実行に移すことで、点検作業の負担を軽減しつつ、業務の生産性向上とコスト削減を実現できます。
記録や異常の検知をデジタル化
保守点検を効率的に行うためには、デジタル技術やITシステムを導入し、DX(デジタルトランスフォーメーション)化を進めることが有効です。DX化を進めていくと、人手不足の解消や、異常の予測および自動検出、業務の属人化の解消といったさまざまなメリットがあります。
例えば、点検記録を電子化すれば、従来手書きで行っていた記録をモバイル端末に直接入力可能です。これにより、入力ミスを防ぎ、転記作業をなくし、記録管理が簡単かつ正確になります。
また、IoTやAI、カメラでの監視などを活用することで、保守点検の記録や異常検知も自動化できるようになります。普段は無人で機械や設備を運用し、異常が発生した際はIoTやAI、監視カメラで検知し、担当者へ通知、必要な対応を実施する体制を構築すれば、大幅な効率化ができます。
デジタル技術やITシステムを活用することで、保守点検はより効率的に行えるようになり、業務全体の生産性向上やコスト削減を実現可能です。
外部へ委託する
保守点検を効率的に実施するためには、外部の専門企業に委託することも有効な方法です。特に人手不足などにより自社での対応が難しい場合は、保守点検の実施経験とノウハウが豊富な企業に委託するのがおすすめです。
専門企業に委託することで、自社だけでは取り組めなかった点検や、一から仕組みを作らないでデジタル化なども可能になります。デジタル技術の導入や管理の改善が期待でき、保守点検業務の効率化が図れます。
ただし、外部へ委託する際には慎重な判断が必要です。委託先に頼りすぎると、自社にノウハウが蓄積されず、緊急時に迅速に対応できないおそれがあります。また、委託先の担当者が現場に駆けつけるのが遅れることや、状況に対応できない可能性も考慮しましょう。外部委託を検討する際は、自社の状況を十分に考慮することが重要です。
保守点検を効率化する代表的な3つのITツール
保守点検の効率化には、ITツールの導入が効果的です。ここではおすすめのITツールを3つ紹介します。
システムの名称 | 特徴 |
|---|---|
カミナシ 設備保全 | ・QRコードを読み取るだけで報告フォーマットが立ち上がる |
i-Reporter | ・紙帳票をそのまま電子帳票に置き換えできる |
MENTENA | ・ダッシュボード機能で保守点検業務を一目で把握できる |
保守点検を効率化する代表的な3つのITツールと特徴
カミナシ 設備保全
カミナシ 設備保全は、現場での点検内容をスマートフォンやタブレット端末で直接記録し、そのデータを設備保全担当者とリアルタイムで共有できるシステムです。各設備に設置したQRコードを読み取ると報告入力フォーマットが表示され、その場で簡単に記録を行えます。

画像引用元:カミナシ設備保全|株式会社カミナシ
点検内容は自動的に管理画面で通知され、報告の手間も省けます。転記作業なども不要で、保守点検を現場で完結できるのが魅力です。また点検内容は写真付きで記録できるため、後から確認しても理解しやすいのも嬉しいポイントです。
さらに点検情報は一元管理され、故障診断やデータ分析に活用できます。作業時には直近の保全履歴を確認しながら進められるため、必要な情報を即座に把握でき、点検精度の向上や作業の効率化が可能です。また、導入時のサポート体制も評価が高く、紙からデジタル化への支援を徹底的にしてくれます。
i-Reporter
i-Reporterは、紙の帳票レイアウトをそのまま電子帳票に置き換えられるのが特長の現場帳票システムです。iPadやiPhone、Windows端末に対応しており、タブレットやスマートフォンを使って保守点検をスムーズに行えます。

画像引用元:i-Reporter|株式会社シムトップス
さらに、入力支援機能として30以上のデジタルインプットが用意されており、専門知識がなくても画面操作だけで簡単に設定できます。また、ソフトウェアやハードウェアともに外部システムとの連携が充実しており、現在使用しているシステムを生かしながら導入できる点も魅力です。
また日本語や英語、中国語(簡体字と繁体字)に対応しているため、対応した外国人従業員がいる企業でも安心して導入できます。企業規模や業種を問わず、多くの現場で役立つシステムといえます。
MENTENA
MENTENAは、設備や機械の稼働状況がダッシュボードで確認できたり、保全計画の進捗がガントチャート形式で見られたりする、設備情報や部品・在庫情報を一元的に管理できる管理台帳機能を搭載した総合的な設備保全システムです。保守点検に関わる情報を一元管理でき、必要なデータをすぐに確認でき、業務の抜け漏れを防ぎます。

画像引用元::MENTENA| 八千代ソリューションズ株式会社
ダッシュボード機能を活用することで、設備の状況や点検の進捗を一目で把握可能です。また、チェック項目やチェックシート機能により、日常点検や定期的なメンテナンスを標準化でき、作業の精度を向上させながら負担を軽減できます。さらに、作業計画や履歴機能を利用すれば、過去の作業履歴をもとに計画的な点検スケジュールを立てられます。
シンプルかつ直感的に操作できるシステムのため、わずか一日の講習で利用を開始することが可能です。導入コストの面でも、初期費用なしで月額固定料金と明確な価格設定がされており、コストを抑えながら導入しやすい点も魅力です。さらに、サポートチームが導入から運用まで手厚くサポートしてくれるため、ITツールに不慣れな企業でも安心して利用できます。
導入事例:業務時間を月20時間削減した株式会社オイシス
阪神地区を中心に事業を展開する総合デイリーフーズメーカー、株式会社オイシスでは、工場全体での設備情報の一元化ができておらず、設備の状態がブラックボックス化していました。細かな停止時間を含めると、一工場で年間約4,000時間もの設備停止が発生しており、効率的な運用が課題となっていました。
そこで、工場全体の設備情報を統合的に管理するため、カミナシ 設備保全を導入しました。導入後、設備担当者だけでなく、製造ラインの作業者もその場で不具合箇所を撮影し、報告書に直接取り込めるようになりました。さらに、設備担当者が事務所にいる場合でも、リアルタイムで情報を共有できるようになり、対応の迅速化も実現しました。
カミナシ 設備保全の導入により、情報の集約が進み、設備保全担当者の業務時間を月20時間削減することに成功しています。現在もさらなる効率化を目指し、ノウハウを蓄積しながら運用を進めています。
株式会社オイシスの導入事例については、以下の記事でより詳しく紹介しているので、あわせてお読みください。
▶ 設備保全システムを導入し、9工場2000台の設備情報の管理と可視化に挑む
システムを活用して保守点検を効率的に行おう
保守点検は、設備や機械の安定稼働を維持し、故障や事故を未然に防ぐために欠かせない業務です。設備の停止や不良品の発生を防ぐことは、生産効率の向上やコスト削減につながります。また、作業者の安全を確保し、安全衛生管理の責任を果たす上でも、保守点検は重要な業務です。
近年では、IoTやAIを活用した予知保全やリモート監視など、保守点検のDX化が進んでいます。デジタル技術やITシステムを活用して点検を実施すれば、作業の属人化を防ぎ、ミスの削減や迅速な異常対応が可能です。
設備や機械を正常に稼働させ、生産性を向上させるためには、適切な保守点検の実施が欠かせません。自社にとって最適な点検を継続的に行い、業務を安全かつ効率的に進めましょう。
保守点検の効率化には、カミナシ 設備保全の導入がおすすめです。現場の作業者がスマートフォンやタブレットを用いて設備の異常を迅速に報告し、保全担当者が適切な保守対応を行えます。
また、点検記録の管理には現場帳票システムカミナシ レポートを活用することで、日常点検や定期点検の記録をデジタル化し、クラウド上で一元管理することが可能です。さらに、カミナシ 設備保全と連携することで、点検結果をそのまま保全計画や異常対応に反映でき、より計画的な設備運用が可能になります。

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