設備保全システムを導入し、9工場2000台の設備情報の管理と可視化に挑む
2025.02.03
株式会社オイシスの課題
成果
関西の食卓を支えるオイシスが「カミナシ 設備保全」を導入した理由とは
大手スーパーやコンビニエンスストア、阪神地区を中心とした30店舗以上の直営・フランチャイズのベーカリーショップを展開する総合デイリーフーズメーカー、株式会社オイシス。同社では、9工場に大小さまざまある設備の情報を集約すべく、5年前から設備担当者を設置しシステム導入を進めていたが、設備にまつわる業務のノウハウ蓄積や業務標準化が難しい状況であった。
そこで、設備情報を集約すると共に設備管理業務の標準化を目指し「カミナシ 設備保全」を導入。
導入プロジェクトを担当した生産本部 係長の仲 淳平氏、デリカ事業部 南大阪工場 工場長の加藤 順一氏、同じくデリカ事業部 南大阪工場 ライン長の御影 康介氏に話を聞いた。

関西一円の食卓を支える総合デイリーメーカー
9工場3,500名の従業員で日々の製造を支える
兵庫・大阪・滋賀に9工場を有し、1日に少ない日でも600種類以上、多い日は1000種類を超える商品の製造・販売を行っている総合デイリーフーズメーカーである株式会社オイシス。昭和23年に「近畿食品工業株式会社」として創業して以来、食の常識を変え、地域社会に新たな食の価値を提供する「ミールデザインカンパニー」を目指し、関西圏を中心として自社ブランド製品の製造・販売や各種小売店・コンビニエンスストアへの商品の供給を行っている。
オイシスが現場DXを意識し始めたのは3年前の2022年。毎年30名ほどの新卒社員を採用し、様々な雇用形態の従業員が現場を支えている同社では、誰でも早期に活躍できる環境にしたい、という思いから現場のDXに取り組み始めており、品質管理の業務標準化、生産性の向上、現場の働きやすさの追求を目的に現場帳票や労務管理のデジタル化、設備システムの導入を推進してきた。しかし、積極的なデジタル化を進める一方で、データがシステムごとに分かれることにより、業務の標準化や情報の一元化を妨げてしまうという側面も見え始めていた。特に関西圏のコンビニエンスストア向け惣菜・サラダ等の製造を担う重要拠点である南大阪工場では、24時間365日稼働していることもあり、現場で製造設備のトラブルがあった際にもすべて把握することに時間がかかる状態であった。

1工場で年間約4,000時間の設備停止が発生
24時間365日設備を稼働させる難しさに着目
オイシス 生産本部 係長の仲淳平氏は5年前よりオイシス全体の設備を統括する役割を担い始めたことをきっかけに、設備にまつわる業務の課題に注目していた。
「設備担当として、各工場で働く従業員が働きやすい環境を作ること、そして生産性の強化を目的に業務を行っています。各工場100以上の設備があるなかで、設備の情報を取得すること、設備メンテナンスの作業記録を収集することを目的に4年前に設備台帳システムを導入しましたが、使い方に苦労し、導入の目的を果たすことが難しい状況でした」(仲氏)
導入していた設備台帳システムは、PCでの情報入力を前提としていた。工場内ではPCの持ち込みや、特定のサーバーに接続するためのネットワーク環境の構築、電源確保などの条件をクリアするのは難しく、設備台帳システムを使える環境が限られている企業も多い。オイシスも同様にPCの接続の課題や、設備台帳システム自体が現場の製造社員が気軽に取り扱えるようなインターフェースになっておらず、設備やシステムに精通した特定の者しか使えない状態であったため、全ての情報を集約することが困難な状況であった。

さらに、南大阪工場では設備情報を集約することの構造的な難しさがあった。南大阪工場では、1日4万食、繁忙期には5.5万食の製造を、1日24時間・5便体制で、150名の従業員と125の設備を用いながら稼働している。出荷時間にも社員が対応できるよう、23名いる社員で順番に出勤する体制にしているが、すべての現場でおこるトラブルを把握するのは非常に難しい。南大阪工場 工場長の加藤 順一氏は次のように話す。
「自身が南大阪工場へ出勤しているときは現場の従業員や社員に聞いて把握できますが、外出しているときは電話で知ることになり、急いで戻ることもあります。しかし、すぐに戻れない場合は状況がよくわからない、といったことも課題に感じていました。またメンテナンスに関する情報は、メーカーが対応したときは報告書があるのでファイリングして機械ごとに遡れるようにしていましたが、自分たちが対応したときは記録が残っていないこともあったので、どう直したかが対応した本人しかわからないことがあります。以前出た不具合と同じ不具合が発生したときに、対応した人以外がわからないといったことも課題に感じていました」(加藤氏)
その上、広い工場内のさまざまな設備に対応するため現場を行き来する必要があり、そもそもPCを持って作業をすることが難しいといった業務の課題、設備担当を専任でおける企業・現場が限られているといった組織構造上の課題も存在する。南大阪工場 ライン長の御影康介氏は、担当の業務について次のように話す。
「南大阪工場ではライン長として、工場管理、現場管理、設備管理を担当しています。工場管理は売上管理や製造予測がメイン業務で、現場管理は稼働中の現場に入り、製造現場が円滑に回るように従業員の方に指示を出す等が仕事です。これらの仕事をしながら、設備管理としてラインで稼働している設備のメンテナンスや記録をとる仕事があります」(御影氏)
製造現場は衛生管理を厳格に行う必要があるため、工場内で設備の修繕を実施した後にPCがある事務所に行って作業記録を設備台帳に記載し、再び工場に入場するために手洗いや衣服のチェック等、入場のための衛生管理を実施する。この往復だけで再度現場に戻るまでに30分程度かかってしまう。これらを24時間稼働する現場内で製造中に行うことは実務上難しいため、実際に設備台帳に当日の設備業務のことを記載するのは担当する時間帯の製造が終わったあとの夕方になる。実際に事務所に戻ると他の業務もあることから、いざ設備台帳を開いてその日全ての業務記録を事細かに思い出すことは難しい。
また常に設備担当が現場にいるわけではないため、現場の製造社員が設備トラブルを発見、設備担当を呼び出して連携し、対応を依頼することもある。設備担当がすぐに現場に来ることが難しい場合は、製造社員ができる範囲で設備トラブルを解消するケースもあり、そういった場合には、口頭で対応内容を伝える、事務所に急いで戻ってメモ書きを設備担当の机に置くといった情報連携を実施しているが、限られた時間の中ですべての対応内容の詳細を伝えることは非常に難しい。結果的に全ての設備にまつわる情報が集まらない、といった悪循環に陥っていた。

ちょっとした設備停止でも、積み重なることで結果的に大きな設備停止につながることもある。そういった設備停止の影響について、仲氏は「仮に半日でも操業が止まれば経営的に非常に大きなインパクトになる」と語る。
「年に1回ほど、大きなダウンタイムが発生していました。私達はデイリーメーカーなので、日々製造して1日5回に分けて出荷をしていきます。大きなダウンタイムが発生すると、すなわちそれは商品がお店の棚に並ばないことを意味します。できるだけ設備停止時間を発生させないことが非常に重要ですが、工場で保有している全設備の細かな停止時間を含めると1工場あたり年間計3,000〜4,000時間のダウンタイムが発生してしまっている状況でした」(仲氏)
設備ごとに稼働しているタイミング、時間帯、稼働時間数も異なるが、ライン全体を支える設備やインフラが長時間停止する可能性もある。そういった生産性や働きやすさの根底を支える設備情報をどうにか一元化できないか、設備に紐づいて情報が可視化したいと考えていたときに「カミナシ 設備保全」の話を聞いた三氏は、導入に向けてプロジェクトを推進していく。
3工場500台の設備情報を「カミナシ 設備保全」に集約
従来の4倍のペースで作業記録が蓄積、チョコ停を減らす取り組みを促進
オイシスが抱える9工場全体の設備情報の一元化を目指し、まずは3工場の導入からスタートした同社。すでに製造現場のデジタル化に着手していた滋賀工場、神戸工場、南大阪工場の設備担当者がちょうど「カミナシ レポート」の導入リーダーであったことから、仲氏を中心に「カミナシ 設備保全」の導入推進チームを3工場と組成した。
「設備のこともわかるしシステムのこともわかる人がいるので、現場の意見の吸い上げと実装が早く、3ヶ月ほどで導入ができました。非常に早かったです」(仲氏)
南大阪工場への導入について、工場長の加藤氏は「現場が利用するのに難しくないだろうと思った」と、「カミナシ 設備保全」を初めて見たときの印象を語る。
「ライン長の御影さんから『カミナシで設備情報の蓄積ができるかテストしようと思っている』という相談を受け、スマートフォンで『カミナシ 設備保全』の画面を見てみましたが、QRコードを読み込めば現場で設備情報を簡単に入力ができるので、誰でも扱えるだろうと感じました。情報をためていけば、チョコ停(設備が短時間停止すること)がなくなりそうだと期待できました。1〜2年後には予防保全に繋げられ、工場運営に使えそうなイメージを持ちました」(加藤氏)

カミナシの活用を現場で推進している御影氏は、導入の方法について次のように話す。
「製造現場内にある全ての機器にQRコードを貼り、スマートフォンでQRコードを読み取ると、設備の不具合報告や作業記録を記入できる画面が立ち上がります。南大阪では125ある機械の全てにQRコードを貼り、どの機械でも、製造現場の人は誰でも記録できる環境を作っています。以前の台帳システムの利用時は、デジタルカメラやスマートフォンで撮影して、後で事務所に戻ってからデータを取り込む必要がありましたが、『カミナシ 設備保全』を利用するとその場で設備の状況を撮影できて、なにか修理作業をしたらその場で記録を記載できるので、業務が非常に楽になっています。月20時間くらいの無駄がなくなっているように感じます」(御影氏)
「カミナシ 設備保全」の利用を開始して3ヶ月。すでに記録の蓄積が進む効果が出ており、以前利用していた設備台帳システムに記録されていた過去の平均記録の約4倍量の記録が蓄積され始めている。また、設備ごとの故障・メンテナンス件数が可視化されることも相まり、「カミナシ 設備保全」へのデータ蓄積は加速していく予定だ。

9工場の設備マスタを構築し、会社全体の設備稼働効率向上を目指す
現在、南大阪工場と同時に、神戸工場と滋賀工場で「カミナシ 設備保全」の導入を進めている。これに合わせて他工場の設備台帳の整備も進めており、2025年4月までにオイシスが保有する9工場全てへの「カミナシ 設備保全」の導入と設備のデータベース化を進める方針だ。方針の背景について、仲氏は次のように話す。
「設備保全業務は技術職であるため、様々な現場で後継者不足だと感じています。さらに製造設備は設備カテゴリーごとに全く異なり、ある設備を取り扱えるようになっても異なる設備は取り扱えるようにならないため、それぞれの設備に対する経験が必要になります。『カミナシ 設備保全』を活用することで、設備担当だけでなく製造ラインの方からの報告も含めて情報が集まってくると、ノウハウが蓄積されていきます。次の設備担当の方が高い技術や豊富な経験を最初に持っていなかったとしても『カミナシ 設備保全』を見れば対応ができる。自分たちで保全できる形に持っていくのがベストだと考えています」(仲氏)

御影氏は「カミナシ 設備保全」をきっかけに「工場同士の橋渡し役になっていきたい」と話す。
「現在は機械の修理記録のデータベースとして活用を始めており、機械の大きな不具合の予兆を検知することを目指しています。さらには今後開発される部品の在庫管理までできるようになると、予防保全業務全体もできるようになる見込みです。他工場も含めて設備の情報がすべて登録されると、『こういう機械を使いたい』と思ったときに他工場の遊休設備も使えるようになるので、より効率的な工場運営につながると考えています」(御影氏)
一つの製品の製造には、機械が何台も関わっていることはもちろんだが、製造ラインに入っている従業員も20名以上になることもあるため、機械の停止、メンテナンスに10分でもかかると、全体で2〜3時間分のロスにつながる。時間のロスはつまり製造を行って出荷するまでの時間が伸びることを意味するため、人件費が増えてしまい、結果的に生産性が下がることにつながる。「機械を止めない」「チョコ停を減らす」ことは工場運営にとって重大なテーマであり、オイシスはこの課題の解決に全工場を上げて取り組んでいく。


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