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公開日 2026.09 .30

更新日 2026.10.01

緊急保全とは? 事後保全との違いや減らすための備え

緊急保全とは? 事後保全との違いや減らすための備え

緊急保全とは、故障が起きてから直す事後保全のうち、生産や安全への影響が大きく放置できない故障に対して、直ちに行う保全を指します。

突然の設備故障で生産が止まり、部品の手配や復旧作業に追われた経験を持つ保全担当者は少なくありません。その対応を指す言葉が緊急保全ですが、事後保全と同じ意味なのか、種類が違うのかが曖昧なまま使われている場面もあります。

本記事では、緊急保全の定義と対象になりやすい機能停止型故障、計画的な事後保全との違い、減らすための備えを解説します。

目次

緊急保全とは

緊急保全(Urgent Maintenance)とは、設備の故障の中でも、生産や安全への影響が大きく放置できないものに対して、直ちに実施する保全のことです。故障が起きてから修理する事後保全の一種であり、事後保全のうち特に急いで対応するものを指します。

設備保全の分類と緊急保全の関係

事後保全は、総合信頼性(ディペンダビリティ)の用語を定めたJIS Z 8115で定義されている用語です。2019年版では、フォールト(要求どおりに動かない状態)を検出した後に、対象の設備や部品を要求どおりの実行状態に修復させるために行う保全と定められています。緊急保全は、この事後保全のうち、直ちに対応しなければならないものを指す呼び方として使われています。

参考:JIS検索(JIS Z 8115)|日本産業標準調査会

なお、緊急保全は緊急事後保全と呼ばれることもありますが、呼び方が違うだけで、指している対応は同じです。

緊急保全の対象になりやすい機能停止型故障

事後保全が対応する故障は、機能停止型故障と機能低下型故障の2つに分けられます。機能停止型故障は、設備が完全に停止して本来の機能を失う故障です。機能低下型故障は、性能や品質は落ちるものの、設備は動き続けている状態を指します。

緊急保全が主に対応するのは前者の機能停止型故障です。設備が止まると、その設備が担う工程の生産が止まり、機会損失が発生し続けるため、代わりの設備で生産を続けられない限り、直ちに復旧させる必要があります。このため、機能停止型故障への対応は緊急保全(Urgent Maintenance)とも呼ばれ、事後保全の中でも特に迅速な復旧が求められます。

ただし、機能停止型故障といっても工場全体が止まるとは限らず、どの設備のどの機能が止まり、後工程や安全にどう影響するのかを最初に確認することが初動になります。

反対に、機能低下型故障だから急がなくてよいとも言い切れません。品質不良が出続けている場合や安全に関わる部分の不具合のように、動いていても放置できない故障があるためです。対応を遅らせられるかどうかは、安全や品質、生産への影響を確認した上で判断します。

緊急保全と計画的な事後保全との違い

事後保全は故障が起きてから直す保全の総称で、緊急保全はその一部です。分かれ目は、対応を遅らせられるかどうかです。影響が大きく直ちに直す故障への対応が緊急保全です。

修理の時期を計画的に決められる機能低下型故障への対応(計画事後保全)が、「緊急保全」と対比される計画的な事後保全です。

両者は、対応のタイミングと対象の故障が異なり、その結果として費用のかかり方も変わります。3つの観点で整理した違いを、以下の表に示します。

項目

緊急保全

計画的な事後保全(機能低下型故障への対応)

対応のタイミング

故障後、直ちに実施

故障後、計画を立てて実施

対象の故障

生産・安全への影響が大きい故障(主に機能停止型=設備の完全停止)

影響が小さく、修理の時期を計画的に決められる故障(性能は落ちるが稼働継続)

費用の傾向

緊急手配・残業で割高になりやすい

通常の作業計画内で対応しやすい

緊急保全と計画的な事後保全の違い

なお、「計画的な事後保全」は、代わりの設備をあらかじめ用意しておき、故障時に切り替えて生産の停止を防ぐ方式を指して使われることもあります。資料によって指す範囲が異なるため、社内で使う際は意味をそろえておくと混乱を防げます。

この表は、自社で起きた突発対応を2つの列に仕分けるために使います。すぐに直すべき対応と時期を選び対応するものに分けると、本当に緊急対応が必要な設備が見えてきます。

仕分けの基準は、設備が止まったかどうかだけではなく、安全や品質、生産への影響がどれだけ大きかったかです。動いていても影響が大きい故障は緊急保全の列に入り、止まっても代替設備で生産を続けられた故障は、計画的に対応できた可能性があります。

緊急保全を検討すべき設備の見分け方

緊急保全を減らすための備え

緊急保全は、いつ起きるかわからないため計画が立てられず、部品の緊急手配と夜間や休日の残業で費用も高くつきやすい対応です。復旧までの生産停止による損失も加わるため、緊急保全を減らすこと自体に価値があります。

とはいえ、すべての緊急保全が悪いわけではなく、想定外の突発故障をゼロにすることもできません。ただし、同じ設備・同じ原因で繰り返し発生している緊急保全は、予防保全に切り替えることで減らせる可能性があります。減らせる可能性が高い緊急保全と、減らしにくい緊急保全の違いを、以下の表に整理しました。

項目

減らせる可能性が高い緊急保全

減らしにくい緊急保全

発生原因

同一設備・同一箇所で繰り返し発生

初めて起きた故障で、繰り返すかどうかまだわからないもの

原因の性質

摩耗・劣化など予兆が捉えられるもの

外部要因(異物混入、事故的な破損など)で予兆をつかみにくいもの

予備品・体制

予備品切れや手順未整備で、緊急手配や停止の長期化を招いていたもの

予備品や手順を整えても、突発的な発生と急ぎの復旧は残るもの

対応策

TBM(時間基準保全)やCBM(状態基準保全)への切り替えで予防できる可能性が高い

予防保全に切り替えても効果を見込みにくく、費用対効果が合わない場合は予備品と復旧手順で復旧を早める備えを優先する

減らせる可能性が高い緊急保全と減らしにくい緊急保全の違い

表の左の列に入る故障は、原因を分析して予防保全へ切り替える候補です。同じ設備の同じ箇所で繰り返し起き、摩耗や劣化のように進み方を把握できる故障が典型です。劣化の周期や兆候をつかめれば、周期で交換するTBMや状態を見て手を打つCBMに切り替えることで減らせる見込みがあります。

右の列に入る故障も、予防できないと決めつけるものではありません。初めての故障は今後繰り返すかどうかを記録で追い、外部要因による故障は混入経路や作業手順に対策の余地がないかを確かめます。繰り返しが見えてきた時点で、左の列に移して考え直します。

予備品・体制の行は、故障の発生件数ではなく、起きた後の対応に関わる項目です。予備品と復旧手順を整えても故障そのものは減りませんが、緊急手配や停止の長期化を避けられ、1件あたりの負担は小さくできます。

予防保全へ切り替えるかどうかは、技術的に予防できるかと費用対効果が見合うかを分けて考え、安全に関わる故障は採算だけで対策を省かず優先して手を打ちます。

緊急保全を減らす備えは、次の3つに整理できます。

  1. 緊急保全の記録を残し、繰り返し起きている故障を特定する

  2. 停止の影響が大きい設備から、予防保全へ切り替える

  3. 予備品と復旧手順を整えて、復旧にかかる時間を短くする

緊急保全では、まず生産を再開させるための応急処置を優先します。ただし、応急処置のまま終わらせると同じ故障が繰り返されやすくなります。復旧後に原因を確かめ、恒久的な対策が必要かどうかを判断するところまでを、緊急保全の一連の対応と考えておきます。

その判断の土台になるのが記録です。そこで、3つの備えのうち最初に手を付けるのは、1つ目の記録です。直近の突発対応について、いつ、どの設備のどこが、どのような原因で止まり、復旧に何時間かかったかを一覧にすると、上の表の左の列に入る故障が見えてきます。

予防保全への切り替えは、その一覧で繰り返しが多く、停止の影響が大きい設備から検討します。詳しい進め方は、事後保全とは?予防保全との違いやメリット・デメリット、改善活動の具体例を紹介で解説しています。

最後に、安全の観点です。緊急保全では、一刻も早く復旧させたい気持ちから停止時の確認手順を省きたくなりがちですが、手順を飛ばすと復旧中の事故につながるおそれがあります。

たとえば、電源を遮断して操作盤に施錠・表示する(ロックアウト・タグアウト)、空圧や油圧の残圧を抜く、可動部が完全に止まったことを確認する、といった手順です。

突発対応記録シートのイメージ

設備ごとに定めた停止と安全確認の手順を緊急時でも省かないことを、備えの1つとして決めておきます。手順が決まっていない設備があれば、復旧作業の前提として整えることから始めます。

緊急保全を減らし、計画的な保全に近づけよう

緊急保全は、生産や安全への影響が大きく放置できない故障に直ちに対応する、事後保全の一種です。主な対象は機能停止型故障で、修理の時期を選べる機能低下型故障への対応とは、タイミングと費用のかかり方が異なります。

突発故障をなくすことはできませんが、同じ設備で同じ原因によって繰り返す緊急保全は、原因を突き止めて予防保全へ切り替えることで減らせる可能性があります。予備品と復旧手順を整えれば、避けられない緊急保全でも復旧時間を短くできます。

まずは、直近1年の突発対応を、本当に緊急だったか、時期を遅らせられたかで仕分けることから始めましょう。その仕分けが、計画的な保全に近づくための出発点になります。

執筆者:鎌田 大輝

食品や飲料、機械製造業に関するテーマの記事執筆・編集を多く担当。公式情報に基づいた、誰でもわかりやすい表現での情報発信を心がける。

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