なぜなぜ分析は、根本的な原因から見直して、再発を防ぐ際に用いる手法です。
なぜなぜ分析は、発生した問題に対して「なぜ?」を繰り返し問いかけることで、表面的な要因ではなく、真の原因(真因)を明らかにするための分析方法です。製造業をはじめ、医療や物流、IT、サービス業など、さまざまな業界で活用されています。
本記事では、なぜなぜ分析の基本的なやり方5ステップやメリット、注意点、具体例、成功のポイントなどを詳しく解説します。
初めて導入する方にも、すでに取り組んでいる方にも役立つ内容を盛り込みました。継続的な業務改善や再発防止に向けて、なぜなぜ分析を活用してみましょう。
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目次- なぜなぜ分析とは
- なぜなぜ分析がうまくいかない原因4つ
- 問題の本質を捉えないまま分析を始めている
- 「なぜ」を繰り返すことだけが目的になっている
- 個人的な感情や主観で原因を決めつけている
- 問題が発生した現場の関係者が分析に関与していない
- なぜなぜ分析を行うメリット4つ
- その場しのぎの対処ではなく、根本的に問題解決できる
- 業務改善や品質向上につながる
- トラブル発生時の対応スピードがあがる
- 部署内で課題を共有し、現場の意見を反映した解決策が考えられる
- なぜなぜ分析を実施する際の注意点4つ
- 人の責任にせず、仕組みや環境に目を向ける
- 事実に基づいたプロセスを大切に、深く考察する
- なぜの回数よりも、質の高い問いを意識する
- 現場にいた関係者が意見を言いやすくする
- なぜなぜ分析のやり方5ステップ
- 1.問題を明確にする
- 2.なぜを繰り返して原因を探す
- 3.問題の真因を徹底的に調べる
- 4.二度と同じ問題が起きないように具体的な再発防止策を検討する
- 5.再発防止策を実行し、効果検証をする
- なぜなぜ分析の具体例
- 例:食品製造で異物混入が発生した場合
- 例:機械製造で生産遅延が起こった場合
- 例:物流業でトラックのスリップ事故が起こった場合
- なぜなぜ分析を成功に導くポイント4つ
- どの問題を分析するかを明確にしてから開始する
- 感覚ではなく、事実に基づいた記録やデータを利用する
- 当事者や関係者を巻き込み、多角的に分析する
- 分析結果を改善につなげる
- 再発防止と現場力強化に、なぜなぜ分析を活かそう
なぜなぜ分析とは
なぜなぜ分析とは、発生した問題に対して「なぜ?」を繰り返し問いかけることで、表面的な原因ではなく根本的な原因(真因)を突き止めるための問題解決手法です。
「なぜ」を5回繰り返すことから、5 Whys(ファイブ ワイズ)とも呼ばれ、国際的にも広く知られています。
この手法は、トヨタ自動車のトヨタ生産方式の中で体系化された考え方に基づいています。トヨタ生産方式では徹底的に無駄を省き、ジャスト・イン・タイムと自動化を2本柱とした経営思想で、この2つの考え方を元取締役副社長である大野耐一氏の指導のもと、自動車製造の現場に浸透させていきました。
現在、なぜなぜ分析は、製造業のみならず、医療、物流、サービス業、IT業界など、さまざまな分野で活用されています。特別なツールや技術を必要とせず、誰でも簡単に実施できるため、現場レベルの改善活動にも取り入れやすいのが特徴です。
なぜなぜ分析の目的は、問題が再発しないように仕組みやルールを見直し、業務全体の品質や安全性を高めることにあります。ただし、表面的な原因で分析を止めてしまうと、本当の改善にはつながりません。真因にたどり着くには、感覚や憶測ではなく、事実に基づいた問いを繰り返すことが求められます。
また、なぜなぜ分析は個人ではなくチームで行うことが望ましく、現場で実際に作業を行っているメンバーの意見を取り入れることが重要です。責任の追及ではなく、仕組みの改善を目的とした建設的な姿勢で取り組むことが、正しい分析と効果的な改善につながります。
業務改善や品質向上を目指す企業にとって、なぜなぜ分析は非常に有効なアプローチのひとつです。
なぜなぜ分析がうまくいかない原因4つ
なぜなぜ分析は、正しく実践していれば問題の真因にたどり着き、再発防止や業務の改善に大きく貢献します。しかし実際の現場では、分析しても改善につながらなかったり、結論に納得がいかなかったりすることも少なくありません。
それは、やり方そのものに問題があるというよりも、分析の進め方にいくつかの落とし穴があるからです。ここでは、なぜなぜ分析がうまくいかない主な4つの原因を取り上げ、それぞれの注意点や改善のポイントを紹介します。
問題の本質を捉えないまま分析を始めている
「なぜ」を繰り返すことだけが目的になっている
個人的な感情や主観で原因を決めつけている
問題が発生した現場の関係者が分析に関与していない
問題の本質を捉えないまま分析を始めている
なぜなぜ分析がうまくいかない原因の一つは、最初に問題の本質をしっかり整理せずに分析を始めてしまうことです。現象やトラブルの内容が曖昧なままでは、問いをいくら重ねても根本的な原因にはたどり着けません。
たとえば、作業効率が悪いことやトラブルが多い場合は、人材や設備、手順、指示系統などさまざまな要因が絡んでいる可能性があります。それにも関わらず、問題を十分に定義せずに分析をスタートすると、的外れな結論に至る危険があります。
なぜなぜ分析では、最初のステップとして、何がどのように問題なのかを具体的かつ客観的に洗い出すことが必要です。そのため初めに、誰が、いつ、どこで、何をした結果、どのような影響が出たのかを明確にします。現場で起こった事実(例:機械の停止や作業の遅れ)と、その結果として起きたこと(例:納期遅延やクレーム)を混同しないように注意しましょう。
分析の出発点として、まずは現場で実際に何が起こったのか(事実)を正しく捉えます。問題の本質を共有できていないまま分析を進めても、改善策が絞れず、結局再発を防ぐことができないという結果につながりかねません。
「なぜ」を繰り返すことだけが目的になっている
なぜなぜ分析が形だけになってしまう現場では、とにかく5回なぜを繰り返せば良いという誤解が広がっていることがあります。実際は、問いの回数にこだわる必要はありません。
重要なのは、問いを重ねるごとに考えが深まり、原因と結果が論理的につながっているかどうかです。ところが、形式的に「なぜ?」を繰り返すことが目的化してしまうと、分析の中身が空回りしてしまいます。
たとえば、因果関係が弱い問いを無理に並べたり、途中で方向性がぶれてしまったりすると、納得感のある結論には至りません。本来の目的は、問題の根本にある要因を明らかにし、再発を防ぐ仕組みを作ることにあります。
場合によっては3回の問いかけで十分な場合もあれば、7回以上深掘りが必要なケースもあります。回数にとらわれず、論理的に筋の通った問いかけを意識することが、なぜなぜ分析には欠かせません。
個人的な感情や主観で原因を決めつけている
なぜなぜ分析を実施する際には、事実に基づいた冷静な判断が求められます。しかし現場では「〇〇さんが注意不足だった」や「ミスをしたのは新人だった」といった特定の人に対する感情や思い込みが混ざることがあります。このような主観的な視点で分析を進めると、原因が個人に帰属してしまい、肝心の仕組みや体制への改善に結びつきません。
また、人に原因を押しつける姿勢は、分析の雰囲気を硬直させ、現場からの率直な意見や事実が集まりにくくなります。なぜなぜ分析で目指すべきは、誰かを責めることではなく、再発を防ぐための構造的な見直しです。
人の行動に注目する場合も、それを生んだ仕組みや環境に着目します。主観的な判断を避け、あくまでも事実をベースに分析を進めることで、納得度の高い改善策が見えてきます。
問題が発生した現場の関係者が分析に関与していない
なぜなぜ分析はチームで行うべきだとお伝えしましたが、ただ複数人で行えばいいというわけではありません。なぜなぜ分析を行ううえで、現場の関係者が参加していないというのは大きな問題です。
実際に問題が発生した状況を最もよく知っているのは、その場にいた人たちです。にもかかわらず、管理部門や上層部だけで分析を進めてしまうと、現場の実態を正確に捉えられず、推測や思い込みに基づいた結論になってしまうことがあります。
さらに、現場の声が反映されていない改善策は、現実味がなく、実行されないまま終わってしまうことも少なくありません。なぜなぜ分析は、現場と改善をつなぐプロセスでもあるため、当事者の意見や実際の観察結果をしっかり取り入れることが不可欠です。
分析チームには、問題に関わったメンバーを含め、状況を客観的に確認できる体制を整えることが重要です。現場を無視した分析は、見せかけの対策に終わるリスクがあるため、必ず当事者との連携を図るようにしましょう。
なぜなぜ分析を行うメリット4つ
その場しのぎの対処ではなく、根本的に問題解決できる
業務改善や品質向上につながる
トラブル発生時の対応スピードがあがる
部署内で課題を共有し、現場の意見を反映した解決策が考えられる
その場しのぎの対処ではなく、根本的に問題解決できる
なぜなぜ分析を取り入れる大きなメリットは、目先の対応で終わらせず、問題の根本にある原因まで掘り下げて対策できる点にあります。
現場では、同じようなトラブルや不具合が繰り返されることがありますが、それらに対して一時的な対応だけでは改善効果が持続しません。
なぜなぜ分析は、表面的な現象の奥にある構造的な問題に着目し、再発防止を前提とした対処につなげるための有効な手法です。製造業や医療、ITなど、品質の安定性や安全性が重視される業界で特に効果を発揮します。
また、同じ問題を繰り返したくないと考える企業や、自主的に改善を進めたい現場担当者にも利用価値のある手法です。継続して取り組むことで、現場から経営層までが問題解決のプロセスを共有し、全体の改善意識が高まっていきます。本質に迫る姿勢を社内に定着させることで、組織の課題解決力が向上します。
業務改善や品質向上につながる
なぜなぜ分析は、単に問題を解決するだけでなく、業務そのものの質を見直すきっかけにもなります。日常の中で見過ごされがちな小さなトラブルや違和感を分析の対象とすることで、業務フローやルール、設備の運用方法など、さまざまな部分に改善の余地があることに気づけるようになります。これにより、結果として業務効率の向上、製品やサービスの品質安定へとつながっていきます。
このような視点は、製造業をはじめ、医療や小売、IT業界など、多くの現場で応用できます。品質やサービス水準を安定させたい企業、ミスを減らしたいチームなどに特に適しています。
改善のサイクルを回し続けることで、組織のノウハウが蓄積され、属人化の防止にもつながります。また、改善内容を仕組みやマニュアルに反映させることで、全社的な品質向上へとつなげられます。
属人化の解消方法をわかりやすくまとめた記事は以下からご覧いただけます。
▶ 属人化を解消する具体的な方法とは?原因やリスク、企業の事例を紹介
トラブル発生時の対応スピードがあがる
なぜなぜ分析を組織に定着させることで、トラブルが発生した際に、冷静かつスピーディーに状況を把握し、対応する力が高まります。日頃から問題の構造を言語化し、関係者で共有する習慣があると、原因の特定や優先順位付けが迅速に行えるようになります。
これは特に、短納期が求められる製造業や、患者対応のスピードが求められる医療現場などで大きな強みとなります。
なぜなぜ分析の訓練を重ねておくことで、各メンバーが問題の切り分け方を理解し、原因と結果を瞬時に判断できるため、対応が後手に回るリスクを減らせます。また、原因を短時間で整理できると、報告・共有も効率的になり、上司や他部署への説明もスムーズになります。
トラブル対応のスピードを維持するには、普段から小さな問題を逃さず、なぜなぜ分析を定期的に実施し、組織内で形式やツールを統一しておくことが重要です。緊急時にも迷わず対応できる体制が、企業の信頼性を高めます。
部署内で課題を共有し、現場の意見を反映した解決策が考えられる
なぜなぜ分析では、問題の原因を一部の担当者や管理者だけで考えるのではなく、現場の関係者全員が参加し、意見を出し合いながら進めることが基本です。
そのため、日常的になぜなぜ分析を業務に取り入れると、チーム内のコミュニケーションが活性化され、課題への共通認識が深まります。特に、複数の部署が関わる業務や工程の中で発生した問題については、関係者全員の視点を持ち寄ることが欠かせません。
この手法は、属人化が進みやすい業務や、複数工程が連携しているようなプロジェクトなどに適しています。医療・介護・サービス業のように、多職種で連携が必要な現場では特に効果的です。
現場の声が反映された解決策は実行性が高く、改善の浸透もスムーズに進みます。社員一人ひとりが現場課題を発見する力の必要性を実感できるようになり、現場主体の改善文化が育っていきます。
大切なのは、発言しやすい雰囲気づくりと、出た意見をきちんと改善につなげる仕組みの構築です。なぜなぜ分析は、組織における課題共有と信頼構築の土台となる手法といえます。
なぜなぜ分析を実施する際の注意点4つ
なぜなぜ分析は、単なる原因追及の手法ではなく、現場の改善力や組織全体の対応力を高めるための実践的な考え方です。問題の本質を掘り下げることで、一時的な対応ではなく、根本から見直せます。
また、関係者が対話を重ねながら進めるプロセスそのものが、業務の質やチームの連携力にも良い影響を与えます。ここでは、なぜなぜ分析を取り入れることで得られる4つの主なメリットを紹介します。
人の責任にせず、仕組みや環境に目を向ける
事実に基づいたプロセスを大切に、深く考察する
なぜの回数よりも、質の高い問いを意識する
現場にいた関係者が意見を言いやすくする
人の責任にせず、仕組みや環境に目を向ける
なぜなぜ分析では、問題の真因を誰のミスかと捉えるのではなく、その背景にある仕組みやルール、作業環境に注目することが重要です。
たとえば、作業者のミスが発生した場合でも、注意不足だったという一言で片付けてしまうと、再発防止につながりません。むしろ、作業手順が複雑だった、教育の機会が不足していたといった構造的な要因が隠れているかもしれません。
特に新人や非正規スタッフが多い職場では、人に頼った対応には限界があります。失敗を防ぐには、誰が作業しても安定した成果が出せるような仕組みや環境を整えるという視点を持って分析を進めることが大切です。
事実に基づいたプロセスを大切に、深く考察する
なぜなぜ分析を行う際は、実際に起きた事実をもとに検討を進めます。想像や憶測が入り込むと、真の原因から遠ざかってしまいます。たとえば、製品に不具合があったという現象に対して、機械の調子が悪かったという曖昧な判断で進めてしまうと、正確な分析ができません。
記録やログ、現場の写真など、客観的な証拠を活用しながら、実際に何が起きたのかを丁寧に整理することが重要です。
判断に迷った場合は、現場の再確認、関係者への聞き取りなど、より確実な情報を得るよう手を尽くします。失敗を避けるためには、分析の前に十分な事実確認が欠かせません。
なぜの回数よりも、質の高い問いを意識する
なぜなぜ分析というと、よく5回繰り返すことが目安とされていますが、それはあくまでもガイドラインで、3回でも7回でもかまいません。重要なのは問いかけの回数ではなく、その中身です。
たとえば、なぜ作業が遅れたのかと問いかけたときに、人手が足りなかったと答えが出たとします。その次に、なぜ人手が足りなかったのかと続き、論理的につながった形で深掘りができるかどうかがポイントになります。
一貫性のある問いと答えが積み重なってこそ、真の原因に近づけます。逆に、無理に5回繰り返そうとして問いの内容がずれてしまうと、かえって分析の精度が下がることもあります。
現場の状況によっては、2回や3回の問いで十分な場合もありますし、7回以上必要なケースもあります。問いの数にとらわれず、筋の通った対話を意識することが大切です。
現場にいた関係者が意見を言いやすくする
なぜなぜ分析を進めるときは、机上での推測だけでなく、現場で実際に何が起きていたのかを正しく把握します。そのためには、当事者や関係者が率直に意見を伝えられる環境の整備が欠かせません。
たとえば、報告すると怒られるや責任を問われそうなどの気持ちがあると、本来共有されるべき情報が出てこなくなり、分析の質が下がってしまいます。分析は個人を責める場ではなく、より良い仕組みを考える場であるという意識をチーム全体で持つことが大切です。
経験の浅いメンバーから出た小さな気づきが、重要なヒントになることもあります。分析の手法よりも、安心して意見を出せる雰囲気づくりを優先させるとより成果を出しやすくなります。
なぜなぜ分析のやり方5ステップ
なぜなぜ分析は、問題の真因を見つけ出し、再発防止に向けた具体的な対策を導き出すための実践的な手法です。しかし、正しく進めなければ、表面的な原因にとどまってしまい、本来の効果を発揮できません。
ここでは、なぜなぜ分析を現場で実践する際の5つの基本ステップを紹介します。
どこから始め、どの程度深堀すればいいのか。初心者が思う疑問点を解消しながら、具体的な手順や注意点をわかりやすく解説します。
この5ステップを押さえておけば、初めてでも確実に実践に移すことができます。
問題を明確にする
なぜを繰り返して原因を探す
問題の真因を徹底的に調べる
二度と同じ問題が起きないように具体的な再発防止策を検討する
再発防止策を実行し、効果検証をする
1.問題を明確にする
なぜなぜ分析を始める前に、まず取り組むべき問題を正確に定義することが必要です。このステップでは、分析対象となる出来事や不具合を、誰が見てもわかる形で言語化します。
たとえば、不良品が発生したり、納期が遅れたりするなどの表現だけでは不十分で、具体的な工程や製品名、不具合の詳細までを記録します。
必要に応じて、現場写真や作業記録、担当者へのヒアリングメモなどを活用し、発生した現象を客観的に把握します。ホワイトボードやフローチャートツールなどを使って、関係者と問題を共有しやすくする工夫も効果的です。
注意すべき点は、結果と現象を混同しないことです。たとえば、クレームの発生は結果であり、分析の対象とすべきは、その原因となった現場での出来事です。
この場合、製造が間に合わず、クライアントへの納品が一週間遅れたなどの事象が本来分析すべきことです。はじめに問題を正しく定義できるかどうかで、分析の精度が大きく変わります。
2.なぜを繰り返して原因を探す
問題が明確になったら、次に「なぜ」を繰り返して、原因を順を追って深掘りしていきます。基本的には、ひとつの問いに対して答えを出し、その答えに対してまた、なぜ?と問いを重ねていく形です。通常は5回程度を目安にしますが、無理に5回と決めず、納得できるところまで掘り下げることが大切です。
トヨタ生産方式を確立させた大野耐一氏は、書籍『トヨタ生産方式ー脱規模の経営をめざしてー』では、以下のような例を記しています。
(1)なぜ機械は止まったか
オーバーロードがかかって、ヒューズが切れたからだ
(2)なぜオーバーロードがかかったのか
軸受部の潤滑が十分でないからだ
(3)なぜ十分に潤滑していないのか
潤滑ポンプが十分くみ上げていないからだ
(4)なぜ十分くみ上げないのか
ポンプの軸が摩耗してガタガタになっているからだ
(5)なぜ摩耗したのか
ストレーナー(濾過器)がついていないので、切粉が入ったからだ
引用:書籍 トヨタ生産方式ー脱規模の経営をめざしてー|第二章 トヨタ生産方式の展開
この過程では、因果関係が論理的につながっているかを常に確認しながら進めます。分析メモやテンプレートシートなどを活用して、各「なぜ」とその答えを一つひとつ書き出していくと、整理がしやすくなります。複数の関係者と進める場合は、ホワイトボードを使って意見を見える化するのも有効です。以下のように、問題に対する理由を突き詰め、対策を考えていきましょう。
作業内容 | 問題 | なぜ? | なぜ?の理由 |
|---|---|---|---|
原材料の2つを30分混ぜる | 機械が止まった | なぜ機械が止まったか? | 機械のメンテナンスが不十分だった |
3.問題の真因を徹底的に調べる
「なぜ」を繰り返す中で見えてきた一番深い原因、つまり真因が特定されたら、その内容が本当に事実に基づいているかを検証するステップが必要です。この段階では、仮説で終わらせず、データや記録、現場確認などを通して、原因の裏付けを取っていきます。
たとえば、機械のメンテナンスが不十分だったという真因が出てきた場合には、点検履歴や作業記録、担当者へのヒアリングを通じて事実を確認します。現場に足を運び、作業の実態を自分の目で確かめることも有効です。
問題 | なぜ1 | なぜ2 | なぜ3 | なぜ4 | なぜ5 | 真の原因 | 対策 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
機械が止まった | 機械のメンテナンスが不順分だった | 始業前点検は行っていたが不備が見つからなかった | 止まった原因となる部品の点検がされていなかった | 点検の対象となっていなかった | 点検項目に記載がなかった | 機械の動作に関連する部品ごとの点検をすることになっていなかった | 機械の動作に関連する箇所の点検を実施する(点検項目を拡充する) |
真因があいまいなままだと、対策を立てても効果が出にくくなります。また、複数の原因が絡み合っている場合は、主な要因と補助的な要因を分けて考えることも必要です。チェックリストやフローチャートを活用すると、要因の整理がしやすくなります。
このステップのポイントは、原因を、それらしく見えるもので済ませず、根拠を持って裏付けることです。ここでの精度が、その後の対策の成否を大きく左右します。
4.二度と同じ問題が起きないように具体的な再発防止策を検討する
真因が特定できたら、それに対して再発防止策を考えます。このステップの目的は、同じ問題を繰り返さないよう、仕組みそのものを見直すことにあります。対処療法ではなく、根本的な変化をもたらす具体策が求められます。
たとえば、作業マニュアルが曖昧だったという真因に対しては、マニュアルの見直しや現場への再教育、チェック体制の強化など、継続的に維持できる仕組みを検討します。人に依存しないルール作りが鍵になります。
検討する際には、関係者全員でアイデアを出し合い、現場の実情に合った実行可能な対策を選ぶことが大切です。そのために、再発防止策を検討する専用シートや議論用のフレームワークを活用すると、議論がスムーズに進みます。
注意することは、抽象的すぎる対策や、特定の人だけに依存する方法を選ばないことです。だれがやっても同じ結果が出るような再発防止策が理想です。
5.再発防止策を実行し、効果検証をする
再発防止策が決まったら、それを実際の業務に落とし込み、実行するフェーズに入ります。ここで重要なのは、実行して終わりではなく、その効果を継続的に検証する仕組みを作ることです。実施した対策に本当に効果があったかを測定し、必要に応じて見直す柔軟さが求められます。
具体的には、対策の実施後に同様の問題が再発していないかを一定期間は様子を見て、関係者からのフィードバックを集めることが有効です。また、日報やチェックリストなどの運用記録をもとに、現場で対策が定着しているかも確認します。
必要に応じて、改善の効果を数値やグラフで可視化すると、社内での共有や報告もスムーズになります。チェックシートや評価シートを用意しておくと、検証が効率的に進みます。
このステップでは、実行したことに満足してしまわないように気を付けます。対策は、実行と評価をセットにして初めて意味を持ちます。効果が出なければ原因に立ち返り、再度見直すという姿勢を持つことが、継続的な改善につながります。

作業ミスの再発防止に取り組んでも、原因が曖昧なまま対症療法になってしまう現場は少なくありません。背景には、ヒューマンエラーを「個人の不注意」と捉えてしまう構造的な課題があります。
本資料では、人間特有のミスの仕組みを理解し、防止策を現場に定着させる4つのステップを解説。属人的対策を脱し、再発防止を仕組みとして根付かせるヒントが得られます。
なぜなぜ分析の具体例
現場で起こりうる場面と問題を想定して、実際になぜなぜ分析を行いました。今回は、食品製造、機械製造、物流の3つを取り上げましたが、自社に関連する問題に置き換えて、実際に行ってみると、なぜなぜ分析が自身にも役立つものであると理解できるはずです。
例:食品製造で異物混入が発生した場合
食品製造業で良く起こるトラブル、製造ラインで異物が混入した場合を想定して、なぜなぜ分析を行うと以下のようになります。
なぜ異物の混入が発覚したのか:製品にプラスチック片が入っていたため
なぜプラスチック片が入ったのか:包装機の部品が壊れていたため
なぜ部品が壊れたのか:部品の摩耗が進んでいたため
なぜ摩耗が進んだのか:定期的なメンテナンスが行われていなかったため
なぜ定期的なメンテナンスが行われなかったのか:メンテナンス計画に実施時期や方法が明記されていないうえ、人手不足による多忙により、担当者が数か月間メンテナンスを実施できていなかったため
なぜを5回繰り返すことで、異物混入の真因がメンテナンス計画の曖昧さによるものだとわかりました。なぜを繰り返さず、たとえば、2.の包装機の部品が壊れていたことを原因として、包装機の部品を取り換え、修理したとしても、深層にある真因の改善を行わなければ、また同じトラブルを何度も繰り返すことになります。
問題発生を改善のチャンスととらえ、不良ゼロを目指す仕組みを整えていくために、なぜなぜ分析は大いに役立ちます。
例:機械製造で生産遅延が起こった場合
次に機械製造の現場で、部品の欠損による生産遅延が起こった場合を想定して考えます。
なぜ生産が遅延したか:部品が欠損していたため
なぜ部品が欠損していたのか:部品の品質が悪かったため
なぜ品質が悪かったのか:部品の製造工程で不具合があったから
なぜ不具合があったのか:製造設備が老朽化していたため
なぜ製造設備が老朽化していたのか:定期的な設備投資が行われていなかったため
ここでは、部品を製造する機械への設備投資が行われていなかったことが生産遅延の真因であるとわかります。
例:物流業でトラックのスリップ事故が起こった場合
最後に、物流の現場でトラックがスリップ事故を起こした場合を想定します。
なぜ事故が起きたか:トラックが道路上でスリップしたため
なぜスリップしたのか:路面が濡れていたため
なぜ路面が濡れていたのか:みぞれが降っていたため
なぜみぞれが降っていたのか:午後から雪予報が出ていたため
なぜ天候予報を無視したのか:運転手が天気予報を確認しなかったうえ、会社が雪の予報を全社員に知らせる仕組みが整備されていなかったため
このケースでは、事故の真因は、天候の悪化が予想される際の連絡体制やルールが整備されていなかったことであるとわかりました。交通事故の発生を防止するためには、前日に雪予報や台風などで天候の悪化が予測される場合は、全社員に連絡し、チェーンを巻く、早めに出発するなど、指示する仕組みを導入したらいいのではないか、という改善への道筋が立てられます。
なぜなぜ分析を成功に導くポイント4つ
なぜなぜ分析は、問題の真因を見極めて改善策を導き出すための有効な手法ですが、正しく活用するためにはいくつかのポイントを押さえておく必要があります。
やり方そのものはシンプルでも、分析対象の選び方や関係者の巻き込み方、事実の捉え方などを誤ると、本来の効果を発揮できなくなってしまいます。
ここでは、なぜなぜ分析をより実践的かつ成果につなげるために重要な4つの視点を紹介します。現場改善に取り組むうえで、どのような点に気をつければよいのか、具体例を交えながら確認していきましょう。
どの問題を分析するかを明確にしてから開始する
なぜなぜ分析を成功させるには、まず分析すべき問題を明確に決めてから取りかかることが重要です。現場では日々多くの小さな問題が起こりますが、すべてを対象にしていては分析が形だけで終わってしまいます。
例えば、クレームが多いと感じたときでも、納期遅延によるクレームが今月は3件発生していると具体的に期間と内容を明確にすることで、掘り下げるべきテーマが見えてきます。
現場レベルでは、特定の工程で頻発しているトラブルや、対策を講じたにもかかわらず再発したミスを対象にするのが効果的です。一方、管理職レベルでは、業務全体の詰まりや遅れの原因となっている部分を俯瞰的に選ぶのも有効です。
注意点としては、漠然とした不満や感覚に基づいて分析対象を選ばないことや、できるだけ具体的なデータや出来事から出発することが、深い分析への第一歩です。
感覚ではなく、事実に基づいた記録やデータを利用する
なぜなぜ分析では、感覚的な判断に頼らず、事実をもとに分析を進める姿勢が求められます。
例えば、製造ラインでの不具合を分析する場合、記録された検査データや稼働履歴、作業日報などを確認しながら原因を探ると、思い込みに流されにくくなります。
現場レベルでは、日々の業務記録やチェックリストの活用が有効です。管理職やマネジメント層であれば、KPIの推移やヒヤリハット報告などを使うことで、より広い視点から分析ができます。
記録が曖昧だったり、共有されていなかったりすると、正確な分析が難しくなるので注意が必要です。日ごろからデータを蓄積しておく習慣を持つことが、分析精度を高めるうえで大切です。
当事者や関係者を巻き込み、多角的に分析する
なぜなぜ分析を一部の担当者だけで行ってしまうと、見える範囲や視点が限られてしまい、原因を見落とすリスクが高まります。特に現場で起きた問題については、その場にいた当事者や周囲の関係者を巻き込み、複数の視点から分析を進めることが大切です。
たとえば物流で誤配送が発生した場合、ドライバーだけでなく、受注処理や倉庫作業に関わったスタッフからも意見を聞くと、全体の流れの中でどこに課題があったのかを把握しやすくなります。
部門横断で問題が起きたときほど、多角的な検討が有効です。現場レベルでは気づきにくい構造的な要因が、他部署の視点から明らかになることもあります。注意点は、上下関係や雰囲気によって意見が言いづらくならないよう配慮することです。参加しやすい環境づくりが、正確な分析を支えます。
分析結果を改善につなげる
なぜなぜ分析は、原因を追求すること自体が目的ではなく、最終的に改善策を実行に移すことで価値が生まれます。分析の内容がどれだけ的確でも、実行されなければ現場の変化にはつながりません。
例えば、出荷ミスの原因を突き止めたのに、確認手順の見直しや担当者教育が行われなければ、同じミスが繰り返される可能性があります。
分析の結果は、具体的な対策に落とし込みやすいように整理することが重要です。現場では改善内容を見える化して共有したり、手順書を更新したりすると実行に結びつきやすくなります。管理職は、対策の進捗管理やフォローアップを行うことで、実行の定着を後押しできます。
注意点は、対策があいまいだったり、責任の所在が不明確なまま進めてしまうことです。実行可能なレベルまで具体化することが成功のカギとなります。
再発防止と現場力強化に、なぜなぜ分析を活かそう
問題が起きたとき、その場しのぎの対処で終わらせず、根本から見直す姿勢を持つことが、組織全体の成長につながります。なぜなぜ分析は、単なる原因追及の手法ではなく、現場の声を拾い上げ、仕組みを見直し、再発を防ぐための土台となる考え方です。
分析の過程を通じて、関係者同士の対話が生まれ、現場の理解が深まり、チームの課題解決力も高まっていきます。改善の積み重ねが現場力を育て、ひいては品質や生産性の向上、顧客満足の強化にもつながります。
一つひとつの問題を、次の成長の機会として捉えるために、なぜなぜ分析を、日々の業務改善の習慣として取り入れてみてはいかがでしょうか。

なぜなぜ分析以外にも現場での業務を改善する手段は、企業によってさまざまあります。実際の改善事例やDX化・デジタル化による業務効率化の進め方は「現場DX3点セット」でまとめています。以下のボタンから無料でダウンロードできるので、ぜひご覧ください。






















