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公開日 2026.08 .31

更新日 2026.08.31

改良保全とは?事後保全・保全予防との違いや進め方を解説

改良保全とは?事後保全・保全予防との違いや進め方を解説

設備保全の用語を調べていると、事後保全、予防保全、保全予防と似た言葉が並び、改良保全が何を指すのかは意外とわかりにくいものです。同じ設備の故障が繰り返され、修理に追われる状況を変えたいと考えて調べている方もいます。

本記事では、改良保全の意味と設備保全における位置づけ、事後保全・保全予防との違い、進め方の4ステップ、メリットと注意点を解説します。

読み終えるころには、混同しやすい用語を使い分けられるようになり、自社で改良保全を始めるときの対象と手順をイメージできるようになれば幸いです。

目次

改良保全とは

改良保全とは、設備の故障や不具合が起きたときにその原因を分析し、設備そのものや保全のやり方を改善して、同じ故障を繰り返さないようにする保全活動のことです。

押さえておきたいのは、修理と改良の違いです。修理は壊れた設備を元の状態に戻す原状回復であり、改良は故障の原因を取り除いて再発を防ぐための改善です。改良保全は、直して終わりにせず「なぜ壊れたのか」まで踏み込む点に特徴があります。

修理が不要になるわけではありません。故障からの迅速な復旧は、生産を守る上で欠かせない対応です。ただ、復旧と再発防止では目的が異なるため、修理を繰り返すだけでは同じ故障がまた起こる可能性が残ります。そこを補うのが改良保全です。

設備保全における改良保全の位置づけ

設備保全の活動は、大きく4つに整理できます。故障が起きてから復旧する事後保全と、故障する前に点検や部品交換を行う予防保全は、いまある設備の機能を守る活動です。

これに、故障の原因を取り除いて設備を改善する改良保全と、保全で得た知見を新しい設備の計画・設計段階に反映する保全予防が加わります。

この4つは、それぞれが単独で完結する活動ではありません。事後保全で対応した故障の経験が改良保全のきっかけになり、改良保全で得た知見が保全予防に受け継がれていく、という一連の流れがあります。

改良保全は、この流れの中で、過去の故障を学びに変える役割を担います。用語の分類として覚えるだけではなく、自社の保全活動がこの流れでつながっているかという視点で捉えると、取り組む意味がはっきりします。

改良保全の対象になりやすい設備

すべての設備に改良保全を行うことは、費用と時間の面で現実的ではありません。効果を出しやすいのは、次の3つの条件に当てはまる設備です。

  • 同じ故障を繰り返している設備(原状回復を繰り返しても原因が残っている可能性が高く、原因を取り除く改善の余地を検討しやすいため)

  • 停止したときの影響が大きい設備(再発を減らせたときに取り戻せる生産上の損失が大きく、改善の効果が表れやすいため)

  • 修理費がかさんでいる設備(繰り返し発生する復旧費と改善にかける費用を比較でき、改良への投資が妥当かを判断しやすいため)

3つに共通するのは、故障の原因が残り続けることによる損失が大きいことです。単に重要な設備だからではなく、原因を取り除けば損失を断ち切れる見込みがあるからこそ、改良保全を優先する理由になります。

実際に対象を絞るときは、改善にかかる費用、停止の影響、安全や品質へのリスクを比較し、効果を見込める設備から着手します。

改良保全と事後保全・保全予防との違い

改良保全と混同しやすいのが、事後保全と保全予防です。名前は似ていても、活動の目的、対象、タイミングが異なります。この2つに、比較の基準として予防保全を加えた4方式の違いを、以下の表に整理しました。

保全方式

目的

対象

タイミング

改良保全

故障の原因を取り除き再発を防ぐ

既存設備

故障対応後・計画的

事後保全

故障した設備の機能回復

既存設備

故障発生後

保全予防

最初から故障しにくい設備にする

新規導入する設備

設計・選定段階

予防保全

故障する前に点検・交換する

既存設備

故障発生前(周期・状態基準)

表の4方式は、別々の活動として並ぶだけではなく、実務では1つの流れでつながります。故障が起きたらまず事後保全で復旧し、繰り返す故障は改良保全で原因から断ちます。

そこで得た知見は、日々の予防保全の点検基準や周期の見直しに役立ち、次の設備選びへ反映すれば保全予防につながります。ここからは、特に混同しやすい事後保全と保全予防について、改良保全との違いを具体的に見ていきます。

事後保全との違い

事後保全は、故障した設備を修理し、機能を回復させることが目的の保全です。改良保全との違いは、復旧で終わるか、原因を取り除く改善まで行うかにあります。

例えば、搬送設備のベルトが切れたとします。新しいベルトに交換して生産を再開させるのが事後保全です。一方、なぜ切れたのかを調べ、原因分析の結果に応じて張力調整の仕組みを見直すなどの対策を講じ、同じ切断を防ぐのが改良保全です。

2つの活動は対立するものではなく、時間の順でつながります。ベルトの例でいえば、まず安全を確保し、交換して復旧させることが先決です。その上で、同じ切断が繰り返されている場合や、停止の影響が大きかった場合に、改良保全の検討へ進みます。

保全予防との違い

保全予防は、設備を新しく導入する計画、設計、選定の段階で、過去の保全で得た情報を反映し、最初から故障しにくく保全しやすい設備にする活動です。

改良保全との違いは対象にあります。改良保全が、いま使っている既存設備を改善する活動であるのに対し、保全予防は、これから導入する設備に向けた活動です。「既存設備の改善が改良保全、次の設備への反映が保全予防」と対象で区別すると、混同を避けやすくなります。

改良保全と保全予防は、知見の受け渡しでつながっています。どの部品がどのような原因で壊れ、どう改善したら再発しなくなったかという記録が蓄積されるほど、次の設備の仕様検討や機種選定で同じ弱点を避けられるようになります。改良保全の記録は、保全予防の材料になる資産です。

改良保全の進め方

改良保全は、対象設備の選定から標準化まで、4つのステップで進めます。一度で完璧を目指す直線的な工程ではなく、効果が足りなければ原因の仮説や対策に立ち返る、という繰り返しを前提にすると取り組みやすくなります。

1.対象設備を選ぶ

最初に、故障履歴から対象設備を絞り込みます。設備ごとの故障件数、停止時間、修理費を集計し、同じ故障の繰り返し、停止の影響、費用の大きさが目立つ設備を抽出します。

履歴が整理されていない場合は、直近1年程度の故障記録を集めることから始めます。データが不十分でも、現場が「またこの故障か」と感じている設備は有力な候補です。

2.故障の原因を分析する

対象を決めたら、故障がなぜ起きたのかを掘り下げます。代表的な手法がなぜなぜ分析です。「なぜ切れたのか」「なぜ劣化が早まったのか」と「なぜ」を繰り返し、表面的な現象から根本的な原因へ掘り下げていきます。

原因の候補が多いときや、データで裏付けたいときは、QC七つ道具などのQC手法を組み合わせる選択肢もあります。例えば、特性要因図は、結果とその原因として考えられる要素を図に整理し、原因候補を洗い出す場面で使えます。

パレート図は、故障を原因別・現象別に集計して、どの原因から手を付けるかを絞り込む場面に向いています。こうした要因解析の手法を使うと、思い込みに頼らずに原因を検討できます。

参考:QC七つ道具とは|株式会社日本科学技術研修所

分析で導いた原因は、この時点では仮説です。現場のデータや故障した部品の状態、再現確認で裏付けを取り、確からしいと判断できてから対策の検討へ進みます。

3.改善を実施する

裏付けの取れた原因に応じて、改善の方法を選びます。方向性としては、壊れにくい部品や材質への変更、構造や取り付け方法の改善、操作や保全手順の見直し、劣化を早めている使用条件の緩和などがあります。

設備の改造をともなう改善では、実施前に安全と品質への影響を確認します。変更によって新たな危険が生じないか、製品の品質に影響しないか、メーカーの保証条件から外れないかを確かめ、必要に応じてメーカーにも相談した上で進めます。

4.効果を確認して標準化する

改善を実施したら、効果を確認します。改善の前後で故障件数、停止時間、修理費を比較し、狙いどおり再発が止まっているかを数字で確かめます。効果が足りなければ、原因の仮説に立ち返って分析をやり直します。

効果を確認できたら、変更内容を点検基準や作業手順書に反映し、同じ構造を持つほかの設備にも展開します。ここまでやり切ることで、改善が担当者個人の対応で終わらず、組織の標準として定着します。

効果確認と標準化に使えるように、改良保全の記録は次の項目で残しておくと、後から活用しやすくなります。

  • 対象設備と故障の現象

  • 原因の仮説と、確認した証拠

  • 実施した変更の内容と承認者

  • 変更前後の故障件数、停止時間、修理費

  • 点検基準、手順書、同型設備へ反映した内容

安全、品質、メーカー保証に関わる確認を行った場合は、その結果も記録に残しておきます。この記録が1件たまるごとに、効果を数字で説明できる改善事例が増え、同じ弱点を持つ設備への展開や、次の設備選定の判断材料になります。

改良保全のメリットと注意点

最後に、改良保全に取り組む効果と、進めるときに気を付けたい点を整理します。

改良保全のメリット

最大のメリットは、同じ故障の再発を減らせることです。原因ごと取り除ければ、突発停止への対応や同じ修理の繰り返しが減り、保全工数や修理費の削減も期待できます。

分析と改善の過程が記録として残ることもメリットです。なぜ壊れ、どう直したら再発しなくなったかが記録に残るため、担当者個人の経験が組織のノウハウになり、若手の教育や技能の引き継ぎにも活かせます。

改良保全を進めるときの注意点

最も基本的な注意点は、対象を絞ることです。改良保全は1件ごとに分析と改善の手間がかかるため、手を広げすぎるとどれも中途半端になります。影響の小さい故障は事後保全で対応すると割り切り、効果を見込める設備に集中します。

設備を改造する場合は、安全への影響確認が欠かせません。労働安全衛生法では、製造業などの事業者に対し、設備などによる危険性や有害性の調査(リスクアセスメント)と、その結果にもとづく必要な措置に努めることを求めています。

改造した後の設備で、作業のしかたや周囲の環境に危険が持ち込まれていないかを確かめてから、本格的な運用に移します。

参考:労働安全衛生法|e-Gov法令検索

改善の実施で満足せず、効果検証と標準化まで完了させることも重要です。効果を確認しないままでは、改善が有効だったのかを判断できず、同じ議論を繰り返すことになります。1件を最後までやり切って成功の型を作ることが、2件目以降を進めやすくします。

改良保全で同じ故障の繰り返しをなくそう

改良保全とは、故障の原因を分析し、設備や保全のやり方を改善して再発を防ぐ保全活動です。故障した設備を元に戻す事後保全と役割を分け合いながら、改良保全で得た知見は、新しい設備を最初から故障しにくくする保全予防へつながっていきます。

進め方は、対象設備の選定、原因の分析、改善の実施、効果確認と標準化の4ステップです。対象を絞り、安全への影響を確認しながら、1件ずつ最後までやり切ることが定着の近道です。

まずは故障履歴から、繰り返し起きている故障を洗い出しましょう。「またこの故障か」と感じる設備が、改良保全を始める最初の対象になります。

執筆者:鎌田 大輝

食品や飲料、機械製造業に関するテーマの記事執筆・編集を多く担当。公式情報に基づいた、誰でもわかりやすい表現での情報発信を心がける。

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