「設備の保全活動はお金に変わる」カミナシ導入で描く”未来の保全”
2025.08.20
株式会社中部メタルの課題
成果
現場の声でツールを導入し、設備の突発停止率を3%以下へ
静岡県磐田市を拠点とし、金属スクラップ加工を行う野末商店のグループ会社である中部メタルは、3年前に保全の経験がある従業員が入社したことをきっかけに、製造部門全体で保全活動ができることを目指し「カミナシ」 シリーズを導入。オペレーターの頭の中にしか設備に関する情報がないことを脱却し、設備の突発停止率を3%以下にすることを目標に掲げてツールの活用を広げている。

非鉄金属や樹脂などの複合素材の再資源化を行うリサイクル企業
静岡県磐田市に拠点を構える株式会社中部メタル(以下中部メタル)。同じ磐田市に拠点を持つ野末商店のグループ企業であり、家電リサイクル法の施行以降、エアコン・洗濯機のモーターや熱交換器の破砕処理など、廃家電からの資源回収と素材加工に注力してきた。
中部メタルの強みは、高度な技術力と現場力だ。非鉄金属や樹脂などの複合素材を大型の機械を用いて、破砕・選別を通じて再資源化、製造した製品はグループ会社を通して銅板メーカーなどの原料メーカーに出荷をしており、その取扱量は月間600〜700トンにも及ぶ。

現場からの「声」と偶然の出会いで、昭和の現場からの脱却を目指す
代表の野末氏が入社したのは約20年前。当時は従業員も3名しかおらず、「できる日にできることをやる」が製造のスタンスであった。
「リサイクル業は、入ってくる物の違いや状態の違いがあること、また加工してどのような物を出荷するか、といった変数が非常に多いことが特徴です。そのため通常の製造業とは異なるのですが、できるだけ製造業に近づけていく必要があると感じていました」(野末氏)
安定的な製造基盤の構築を目指して2015年にはISO14001ならびにISO9001を取得し、製造品質を高めていっていたが、まだまだ現場をカイゼンする余地はあると感じていた、と製造マネージャーの鈴木氏は話す。
「私が入社した7年ほど前は、まだ昭和の現場のような状況でした。現場では『生産第一』が重要視されていましたが、保全という意識がなく、壊れた機械はその場でオペレーターが直して使う、属人的で場当たり的な対応が常態化していました」(鈴木氏)
そんな状況が変わったのは3年前。前職で25年間保全業務を担ってきた堀尾氏が中部メタルに入社し、Excelやスプレッドシートに設備にまつわるデータを毎日記録するところからスタートしたのだ。
「入社する前は保全担当がいなかったので、本当に何もない状態からのスタートでした。でも、だからこそのやりがいも感じていました」(堀尾氏)
DXツール導入のきっかけは、展示会での偶然の出会いだった。自社の出展の参考にしようと、とある展示会に野末氏と鈴木氏で参加。「設備保全」にまつわるツールを展示しているエリアに立ち寄り、設備保全システムを提供している企業の話を聞いたのである。
「堀尾さんが保全業務を当社で立ち上げてくれましたが、属人的になるのはよくないと感じていました。そんなときに、たまたま設備保全システムを提供している企業の話を聞いて、『皆が扱えるツールを導入することで、保全をしっかりやっていきたい』と考えたのです。いくつかの保全システムを展示会で見ましたが、カミナシが一番使いやすそうだと感じましたし、保全だけでなく色々な課題を解決できそうなイメージを持ちました」(野末氏)
展示会で聞いた話を野末氏と鈴木氏は自社に持ち帰り、堀尾氏を含めて検討。最終的には「画面の見やすさ」「オンプレのシステム等と比較して導入コストが低い」「動画や写真で記録ができる直感的な操作性」が決め手となり、「カミナシ レポート」「カミナシ 設備保全」のシリーズ製品の導入を決定する。

「保全はコストではなく、お金を生みだすしくみ」
意識の転換により、保全業務が浸透
カミナシの活用と定着には、現場のオペレーターも含めて検討を進めたが、少なからず抵抗があった、と鈴木氏は話す。
「新しいものを嫌がる人は一定数いるとは思いますが、当社でも最初は半分くらいが拒否反応を示していたように思います。まずはツールに慣れることを目標に、スマートフォンを用いて簡単に入力できるところからスタートしました。当社にはポルトガル語話者の従業員もおりますので、その社員向けにはポルトガル語のひな形を用意するなど、全員が記録できる体制を構築することを心がけました」(鈴木氏)
カミナシへの記録は写真や動画を用いることで、テキストだと伝わりにくい「度合い」を詳細に記録できる点が好評だと鈴木氏は話す。
「例えばオイル漏れの場合、ちょろちょろと少し漏れているのと、飛沫がとぶくらいに大量に漏れているのでは全く度合いが異なります。緊急度が人によらず伝えられるのが非常にいいと思っています。動画も撮影できるため、正常時の音を登録しておくことで本当の異音がわかるようになる。新しくローテーションに入る人にも判断を促すことができるので、現場の教育にもつながると考えています」(鈴木氏)

カミナシの利用について、入社2年目の田口氏は「情報が蓄積されることで、これから入社する人にはとても助かると思う」と話す。
「前職とは異なる業界から入社したこともあり、入社当初は、何をどうすれば良いのか全く分からず、記録も残っていないために手探りで進める業務も少なくありませんでした。現在はカミナシを利用して、機械の日常点検や設備の保全記録を入力しています。自分の経験が次の人に活きる、それがデジタルの良さだと感じています」(田口氏)
現場では通知設定や記録が終わったあとの「トロフィー画面」を活用し、日々の点検への動機づけを行っている。「ラジオ体操のスタンプカードのような感覚で『やってよかった』という気持ちを作ることが若手や外国籍スタッフの教育の観点でも重要」と田口氏は話す。
また設備カルテにファイル登録ができることから、修繕履歴と共に稟議書を載せておくことで、年月が経ったときに誰でも設備の修繕や入れ替えの背景がわかるような仕組みの構築も始めている。

社内でも設備保全業務に携わる従業員が増えたことで、設備保全に対する意識が変わり始めたという。例えば、リサイクル品から非鉄金属を取り出すための最初の工程である粉砕には粉砕機を利用するが、この機械の突発停止を減らすだけで数十万円単位のロスを減らすことが可能であると気付いた。過去にはリサイクル工程の最も上流にある粉砕機が焼き付いたことがあったが、メーカー側でオーバーホールする必要があったため、結果的には1ヶ月半のライン停止となった。替えが効かないラインであったことも影響が大きく『突発停止を防ぐことが重要』だと現場が認識したきっかけだったという。「毎日点検をしていたら予防ができていたかもしれない、と保全業務ができるようになった今になると思う」と鈴木氏は話す。
現在、カミナシでは設備の日常点検や設備カルテの構築を行っており、日々の点検業務と精度の高い異常報告により「保全はコストではなくお金を生む業務である」という意識が生まれ始めている。
「設備保全業務を始める前は、保全はお金にならないという考えでした。設備は壊れるまで回して、壊れたら交換する。生産計画はありましたが設備を計画に紐づけられておらず、設備は時限爆弾のようでした。設備が壊れてから取引先に納期が遅れる旨を伝えていたので、信頼面も低かったように思います。しかし私達は設備を回していないとお金にならない業態です。安全にかつ定常的に設備を動かして製造ができる状態になることで『保全はお金に変わる』と今では確信しています」(鈴木氏)
カミナシを活用した保全業務が確立されてきたことにより、保全によるコスト削減だけでなく業務効率向上による労務時間の削減も実現している。例えば、以前は1日3回程度の設備停止が発生すると、半日は設備トラブルの対応(現場確認、電話連絡、修繕対応、予備品の調査等)を行っており、それが製造の仕事の一つだと思っていたという。堀尾氏の入社、そしてカミナシ導入によって設備保全業務の仕組みが整ってきてからは、かかる時間が半分程度に低減しているという。

「設備の突発停止率を3%以下にする」保全が経営戦略の一角を担うように
「カミナシ レポート」と「カミナシ 設備保全」を用いた設備保全業務をスタートして約3ヶ月。生産計画の精度をあげることが経営目標であるが、その中で設備を計画的に動かせることが装置産業では最重要項目だ。
「計画的な設備停止は問題ではありません。停止が突発的なものなのか、計画的な停止なのかがわかり、突発的な停止をいかに少なくするか。また安全に稼働するために適正な停止時間がわかり、計画に組み込むことを実現したいと考えています」(野末氏)
元々導入時に費用対効果についても算出していたが、導入の真価は「数字に現れない部分にある」と鈴木氏は語る。
「設備停止がなければ1時間に6トンの生産ができます。これが我々の利益なのです。保全は稼働時間 = 売上を守るための最前線の業務です」(鈴木氏)
中部メタルに保全業務を定着させた堀尾氏は「今がスタートライン」と意気込む。
「まずは次の年度に突発停止率を3%以下にすることを目標にしています。新しい工場の立ち上げと同時に記録を始めたこともあり、これから停止のサイクルや消耗品のサイクルが見えてくる状況です。交換品の周期が見えてきたので、発注タイミングもこれから予測して、例えば年初にまとめて発注して余計なコストを削減するなど、予防保全の取り組みにつなげて、経営の質を高めていきたいです」(堀尾氏)
中部メタルのカミナシ導入は、単なるツール導入ではなく、属人化からの脱却・保全意識の向上・現場の教育体制の構築といった、全社的なDX推進の一歩目となっている。現場発の小さな変革が、着実に企業の未来を形作り始めているようだ。


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