経験や勘に頼らない点検へ。キリングループロジスティクスが現場発のDXで紡ぐ「キリン品質」
2026.07.31
キリングループロジスティクス株式会社の課題
成果
「小さな日本一を、パートナーと共に、たくさん創る」をビジョンに掲げるキリングループロジスティクス株式会社。キリングループの物流を担う同社では、全国の物流センターや配送拠点において、安全・品質管理のための点検業務を長年紙の帳票で運用してきた。しかし、膨大な書類の管理や拠点ごとの運用のばらつきが課題となっていたという。こうした課題の解決に向けて導入したのが、現場データを可視化し、分析や改善につなげられる「カミナシ レポート」だ。
同社は本社と現場が連携しながら、キリングループで培ってきた高品質な物流サービス、いわゆる「キリン品質」の標準化を推進している。どのように紙中心の運用から脱却し、点検業務のデジタル化を進めたのか。
プロジェクトを推進した物流DX推進部、本社 物流管理部 安全・品質・環境室、そして現場を担う東日本支社 物流管理部 川崎支店の担当者に話を聞いた。

大量の紙帳票が物流現場の課題になっていた
キリングループロジスティクス株式会社は、全国に広がる物流ネットワークを担うメーカー物流の専門企業だ。キリンビールやキリンビバレッジをはじめとするグループ製品の鮮度と品質を維持しながら、確実に店頭へ届ける現場力を強みとしている。

キリングループロジスティクスの倉庫内
その現場力を支えているのが本社 物流管理部 安全・品質・環境室(通称、SQE室)だ。SQE室は労働災害の防止や配送事故の抑制、物流工程の品質管理を全社横断で担っている。
物流DX推進部 部長補佐の折笠貴之氏は、「当社はグループ外の企業様の荷物も取り扱う複合拠点を運営しており、拠点ごとに設備や運用方法が異なります。その中で、高い品質基準をどのように全拠点へ浸透させるかが長年の課題でした」と話す。

同社では安全・安心な物流を実現するため、現場巡回や設備点検を徹底してきた。しかし、その記録の多くは紙の帳票で管理されていた。
「現場では点検記録を紙で保管しており、過去の情報を確認する際にはファイルを一つひとつ確認しながら探す必要がありました。そのためデータの蓄積や分析が進まず、事故防止や改善活動に十分活用できていなかったのです」(物流DX推進部 物流DX推進担当 近藤綾美氏)

さらに別の課題もあった。文字だけのチェックリストでは点検担当者によって確認基準にばらつきが生じやすく、「どこを、どのように確認するのか」が十分に伝わらないこともある。その結果、形式的にチェックを付けるだけになってしまうリスクがあった。

紙の点検記録をファイルで管理。過去の情報を確認する際にはファイルを一つひとつ確認しながら探す必要があった。
拠点数の増加や人材の多様化が進む中、同社では個人の経験やスキルに依存せず、誰もが同じ基準で点検できる仕組みの必要性が高まっていた。
「これまでは、ベテラン社員の経験に支えられてきた部分がありました。一方で、拠点数の増加や人材の多様化が進む中、誰もが迷わず同じ基準で点検できる仕組みが必要だと感じていました。そのような中で、2025年に物流DX推進部を立ち上げた後、現場の声を集める目安箱を設置したところ、点検業務の電子化を求める声が寄せられたのです。」(折笠氏)
「カミナシ レポート」導入の決め手は、誰でも使える操作性
品質管理の強化に向けたツール選定で、同社が最も重視したのは現場への定着だった。過去にはExcelベースのシステム導入も検討したが、画面が複雑で使いづらく、現場に受け入れられなかった経緯がある。そこで注目したのが、現場データを可視化し、分析や改善に活用できる「カミナシ レポート」だった。
「『カミナシ レポート』は、スマートフォンやタブレットでフォームを入力する感覚で操作できます。大きなボタンやシンプルな画面設計で、直感的に使える点が魅力でした。作業現場でも、抵抗なく活用できると感じたのです。
また、当社が導入している動画マニュアルと連携できる点も大きな決め手でした。点検項目から直接マニュアルへアクセスでき、動画を見ながら正しい状態を確認できます。誰でも迷わず使える操作性こそ、全国展開を進めるうえで重要だと考えました」(本社 物流管理部 安全・品質・環境室 室長 遠藤敦史氏)

さらに、導入を後押ししたのが現場主導で運用できる仕組みだった。
「本社内でも実際にタブレットを操作している様子を動画で見せることで、『これなら現場主導で進められる』という納得感を得ることができました。加えて、ノーコードで帳票を作成・改善できるため、ITベンダーに依存せず現場で継続的にブラッシュアップできます。こうした仕組みは、自律的な改善活動を重視する当社の文化にも合っていました」 (遠藤氏)
写真と動画で点検を標準化 経験や勘に頼らない品質管理へ
同社は2025年、川崎支店を含む4拠点でPOC(テスト導入)を実施し、その後、本格導入へと踏み切った。「カミナシ レポート」の導入によって、現場の点検業務は大きく変化したという。
東日本支社 物流管理部 川崎支店の担当者は「カミナシの最大のメリットは、写真を証跡として残せることです」と話す。
「例えば、はしごの点検で汚れを見つけた場合、以前は紙に『汚損あり』と記載するだけでした。しかし今は、汚れている箇所と清掃後の状態を写真で記録できます。写真という客観的な証跡が残ることで、点検の質は大きく向上しました。
また、タイムスタンプによって点検日時も自動で記録されるため、いつ、誰が点検したのかがすぐに分かります。監査の際もデータを確認するだけで済むため、作業負荷は大幅に軽減されました。現場としては、もう紙の運用には戻れないというのが率直な感想です」(東日本支社 物流管理部 川崎支店の担当者)

カミナシ レポートを使用し、点検の記録を残す様子。写真での記録も活用。
本社 物流管理部 安全・品質・環境室 山崎憂理絵氏は、全社統一運用による効果を次のように語る。
「拠点ごとに設備や業務内容が異なるため、必要なチェック項目だけを表示するなどの工夫を行いました。全国で共通のフォーマットを使いながらも、日次点検と月次点検で項目を分けるなど、現場の負担を抑える改善を重ねています。
その結果、本社にいながら全国の拠点の状況を写真付きでリアルタイムに把握できるようになりました。不備や異常を早期に発見し、重大な事故につながる前に是正措置を講じられるようになったことは、大きな成果だと感じています」(山崎氏)

カミナシの導入によって、物流現場の安全・品質管理の可視化を実現した同社。その効果は業務効率化にとどまらず、現場スタッフのDXに対する意識向上にもつながっているという。
「今後はヒヤリハット報告のデジタル化もカミナシで進めていきたいと考えています。報告の心理的なハードルを下げ、データを蓄積・分析することで、事故が起きてから対応するのではなく、事故を未然に防ぐ予測型の安全管理を実現したいと考えています。
また、現場で発生する各種報告・管理業務など、物流現場ならではの課題にも活用範囲を広げていく予定です。将来的には、作業に携わる関係先とも連携しながら、物流現場を起点としたデジタル化を推進していきます。そして、いつの時代も安全・安心な商品を最良の状態でお客様にお届けし続けたいと考えています」(折笠氏)
現場の使いやすさにこだわった今回のDXは、業務効率化だけでなく、事故を未然に防ぐ「予測型」の安全管理体制へと同社を進化させている。
確かな「キリン品質」を未来へつなぐため、物流DX活用による同社の自律的な挑戦は、これからも続いていく。
※本内容は2026年5月現在のものになります。
※記載の会社名、各種名称等は、弊社および各社の商標または登録商標です。


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