圧倒的な「使いやすさ」が製造現場を変えた──多国籍・多年代の従業員が支える大手菓子メーカーのDX推進
2025.09.04
株式会社湖池屋 京都工場の課題
成果
ポテトチップスやスナック菓子で広く知られる株式会社湖池屋。その製造を担う京都工場では、従来、点検や記録業務に多数の紙帳票が使用されており、現場作業者と管理者の双方に大きな業務負荷がかかっていた。
このような紙文化からの脱却を図るべく、同工場では現場起点のペーパーレス化を推進している。特に注力したのは、『現場で本当に使われる』デジタル化の実現であった。多国籍かつ多年代の従業員が混在する環境下で、誰もが無理なく活用できるシステムの構築が不可欠だった。
その中で選ばれたのが、現場帳票を簡単にデジタル化できるツール『カミナシ』である。今回は、同ツールの導入を主導した副工場長の浅田氏、中部工場準備室 課長の平井氏、DX推進担当の箱﨑氏、そして実際に現場で運用を行うオペレーターの西田氏、小野寺氏に、導入の背景と効果、定着のプロセスについて話を伺った。

副工場長 浅田氏、中部工場準備室 課長 平井氏、DX推進担当 箱﨑氏

現場オペレーター 西田氏、小野寺氏
紙帳票の山が現場と管理双方の大きな負担となっていた
今年で創業39年を迎える株式会社湖池屋 京都工場(以下、京都工場)は、「ポリンキー」や「ドンタコス」といったロングセラー商品を手がける、歴史ある製造拠点である。生産体制は安定しているものの、現場の運用面ではいくつかの課題を抱えていた。たとえば日々の点検や記録業務においては、いまだに紙帳票が主流となっており、現場および管理部門の大きな負担となっていた。
副工場長の浅田氏は、当時の状況について次のように振り返る。
「毎朝出勤すると、デスクの上には紙の帳票が山積みになっています。多い日には500枚近くになることもあり、数日不在にすると、机の上が紙帳票で埋め尽くされるような状態でした。紙中心の運用が続く中で、業務負荷は非常に大きかったです」(浅田氏)

こうした紙の運用は、現場にもさまざまな課題をもたらしていた。帳票への記入ミスや記載漏れが頻発し、正確な記録を残すうえで支障となっていたのである。
さらに、京都工場では多国籍かつ幅広い年代の従業員が在籍しており、帳票を日常的に扱うのは主に40代から50代の作業者であった。そのため、帳票管理の運用は従業員個々の経験や慣れに強く依存しており、業務の標準化や効率化を進めるうえで大きな障壁となっていた。

京都工場ではポリンキー、ドンタコスの2製品も製造している。
多年代・多国籍な現場での使いやすさを最優先に選定
京都工場における帳票管理のデジタル化を牽引したのが、DX推進担当の箱﨑氏である。前任地である関東工場では、監査対応の一環として大量の紙帳票を扱っていた経験から、帳票管理業務の非効率さに課題意識を抱いていたという。そのような中で出会ったのが、現場起点で設計された現場帳票システム「カミナシ」だった。
ツールの導入に際して最も重視されたのは、「現場で実際に活用されるかどうか」という視点であった。帳票のデジタル化を実現するツールとしては、他にも類似サービスやスプレッドシートなど複数の選択肢が挙がっていたが、帳票を日常的に扱う現場従業員の使い勝手が最大の判断基準となった。
「どれだけ優れたツールであっても、実際に使う現場の方々の中で定着しなければ、その効果を十分に発揮できません。だからこそ、日々帳票を扱う従業員が“使いやすい”と感じられるツールであることを、選定の大きな判断軸としました」(箱﨑氏)
この現場主義の強い信念に基づき、箱﨑氏はカミナシの採用を決断した。比較検討の段階で、現場での操作性や導入後の運用負荷の軽さといった観点から、カミナシが最も現場に適していると判断されたのである。
「導入を決めた最大の理由は、やはり“使いやすさ”でした。現場の従業員に初めて触れてもらった際の反応が非常に良く、『これは現場で活きる』と直感しました」(浅田氏)
「これなら使えそう」という現場の反応が、自然な定着につながり、導入の成功を大きく後押しした。

ポテトラインの製造工程。衛生管理の点検作業をカミナシで行っている様子。
使いやすさの秘訣は、「人に寄り添う設計」にあり
現場から好反応が生まれた背景には、カミナシの優れたUI/UX設計がある。特に、デジタルツールに不慣れな従業員も多い現場において、誰もが直感的に操作できるデザインは大きな強みとなった。
DX推進担当の箱﨑氏は、初めてカミナシの画面設計に触れた際の印象を次のように語る。
「UIが非常にシンプルで、利用者の視点に立脚した構成であると感じました。視線誘導が自然にできる設計であり、動線が明確に整理されています。『ここにこれがあり、次にこれを選ぶ』というように、業務の流れに沿った操作が可能で、結果として“次に何をすべきか”に迷うことがない構成になっています」(箱﨑氏)
こうした、業務プロセスと直結するシンプルかつ直感的なインターフェースにより、タブレット操作に不慣れな従業員であっても、戸惑うことなく活用することができた。現場に即したプロダクト設計が、導入初期の心理的なハードルを下げる大きな要因となったのである。
加えて、同氏はカミナシの設計思想そのものにも高い評価を寄せている。
「“人に寄り添う設計”という言葉がふさわしいプロダクトだと感じました。人は誰しもミスをするという前提に立ち、それをどう防ぐか、どう気づかせるかという視点で作り込まれていることが伝わってきます」(箱﨑氏)
実際、カミナシには誤入力を未然に防ぐ仕組みや、入力内容を即時にチェックする機能が標準で搭載されている。「人はミスをする」という現実を前提とした設計思想が、記録ミスや入力漏れの削減に明確な効果をもたらしていると言える。
「これはいける!」現場の目を輝かせた全員参加型の導入
カミナシの導入が正式に決定した後、DX推進担当の箱﨑氏が最初に取り組んだのは、現場の中核を担う班長クラスの従業員を巻き込むことであった。加えて、実際にツールを運用する現場従業員に対しても操作体験の機会を提供し、段階的に導入体制を整えていった。
「新しいツールを導入する際には、現場の方々にその目的や使い方をしっかり理解してもらうことが欠かせません。いきなり『来週からタブレットで記録します』と伝えるだけでは、戸惑いが生じるのは当然です。だからこそ、まずは実際に操作に触れてもらい、不安なく導入できるよう段階的に環境を整えることを意識しました」(箱﨑氏)
この体験会には、およそ50名の現場従業員が参加し、実際にカミナシの操作感を確かめた。現場からの反応は、箱﨑氏にとって極めて手応えのあるものだった。
「初めて操作してもらった際、非常に好意的な反応が得られました。『こんなツールがあるのか』『これは便利になりそうだ』と、目を輝かせながら話す姿が印象的でした」(平井氏)
「ベテラン社員からは『こういう仕組みを入れないと、もうやっていけない時代だよね』という前向きな意見も出ました。また若手社員に至っては、ほとんど説明をしなくても直感的に操作を進めており、“もう使いこなせている”と感じるほど自然な対応でした。こうした反応から、現場に『使いやすさ』が確かに伝わったことを実感し、最終的に導入へ踏み切る大きな後押しとなった形です」(箱﨑氏)

このように、現場との丁寧な対話と実体験の機会を通じて、導入に対する心理的な抵抗は着実に軽減され、プロジェクトは前向きなムードの中で円滑に始動することができた。
導入初期には、判断基準が明確な点検票からデジタル化を開始。従来、紙に「○」「×」で記入していた項目を、タブレット上でタップして選択する形式へと移行した。このアプローチにより、「思っていたよりも簡単だ」「これならすぐに使えそうだ」という声が現場従業員の間に広がり、次第に「これなら本当に使える」という確信へと変わっていった。
現場の記入ミス削減と、承認作業負担の大幅軽減へ
カミナシの導入は、現場と管理部門の双方において、具体的かつ実感を伴う業務改善をもたらしている。
現場オペレーターを務める西田氏は、導入後の変化について次のように語る。
「カミナシ導入後の大きな成果は、ミスが大幅に減少した点です。以前は帳票を月に1回まとめて提出していましたが、現在では毎日提出する運用に変更されました。その際、入力ミスや空欄があれば即座に指摘を受け、その場で修正できるため、精度の高い記録が残せるようになりました」(西田氏)
カミナシに搭載された入力チェック機能により、記入漏れや誤記をその場で検知可能となり、現場の記録品質が格段に向上した。
さらに同じく現場オペレーターの小野寺氏は、運用上の利便性の向上について次のように述べている。
「現在カミナシを活用している点検業務では、チェック項目が非常に多いのですが、タブレット上での表示は視認性に優れており、点検作業がしやすくなりました。また、上長による確認時にも情報が整理されて表示されるため、判断がしやすい環境が整っています」(小野寺氏)
一方、管理部門における効果も顕著である。これまで膨大な紙帳票の確認・承認作業に多大な時間を要していたが、その業務負荷は明らかに軽減されていると、浅田副工場長は語る。
「導入以前と比べると、承認作業にかかる時間は大幅に短縮されました。業務効率の面で確かな改善を実感しています」(浅田氏)
このように、カミナシの導入は、現場の記録精度向上と管理業務の効率化という二軸において効果を発揮しており、工場全体の業務品質向上に寄与する重要な施策となっている。

現場との対話を重ね現場が楽になるDXを目指す
カミナシ導入プロジェクトを通じて、箱﨑氏は、改めて「現場との対話」の重要性を実感したという。自身も製造ラインでの実務経験を持つことから、現場の声や実情を肌で理解できるという強みがある。
「半年程度で身につく知識には限界がありますし、自分自身が現場にいた当時には意識が及ばなかった部分が、今になってようやく見えるようになってきました。また、京都工場には独自の運用が多く、新たな気づきや学びの連続です。長年現場に従事されてきた先輩方の言葉には重みがあり、私自身、日々多くのことを学ばせてもらっています」(箱﨑氏)
こうした現場からのフィードバックを起点に、帳票内容や運用方法を柔軟に改善していくプロセスそのものが、現場との信頼関係を育み、組織内に改善の文化を定着させる契機となっている。
また、取り組みの根底には、現場で働く従業員が安心して業務に向き合える環境づくりがある。現場オペレーターの西田氏は、京都工場の魅力について次のように語る。
「私が入社して最初に感じたのは、職場の雰囲気の良さです。和やかで風通しがよく、人間関係も非常に良好です。これは自信を持って伝えられる職場の魅力だと思います」(西田氏)
同じく現場オペレーターの小野寺氏は、業績好調による多忙さを認めたうえで、その働きに対して適切な評価がなされている点や、班単位での密な連携により良好な人間関係が構築されている点を、働く上での魅力として挙げる。

カミナシの導入により帳票管理が効率化され、従業員の働きやすさにも一定の効果が見られている。現場の作業負担が軽減されたことで、管理部門における確認・承認作業の効率化にもつながっているという。
京都工場では今後も、現場で無理なく使え、業務を円滑に進められる仕組みを軸に据えながら、紙帳票からの脱却と工場全体のDX推進を着実に進めていく方針だ。


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