製造の未来は「高い品質を証明すること」。DXで築く確かな品質と信頼
2025.03.19
トキハソース株式会社の課題
成果
デジタル化でインシデントリスクを低減。2拠点同時DXの取り組みとは
東京都北区を本拠にウスターソースなどを製造するトキハソース株式会社は、工場での衛生管理などに用いていた紙の帳票の削減を目的にカミナシを導入。社内の2つの工場が切磋琢磨しながらシステムや運用体制を構築し、3ヶ月で約100種類の紙の帳票を移行するなど、急速に導入を推進した。その結果、同社は導入から約1年間で7,000枚/年の紙の帳票を削減。製造現場での管理業務についてはほぼ100%ペーパーレス化し、正確な記録作業や処理業務の軽減を実現した。さらに、カミナシは管理業務のさらなる適正化を推進し、インシデントの低減にも貢献している。

「こだわりのソースづくり」の製法や品質管理を維持するため、紙からの脱却が急務に
1923(大正12)年の創業以来、100年以上に渡ってソースづくりを続けてきたトキハソース。毎朝、市場から仕入れた新鮮な野菜を使用するソースづくりは創業から今なお変わりなく、トキハソース独自の製法としてこだわりを持っている。1992(平成4)年に発売された主力商品「生ソース」には、そのこだわりが余すことなく詰め込まれている同社が自信を持って市場に送り出している製品である。熱を加えない非加熱製法により、野菜のエキスをソースに凝縮。フルーティな味わいは多くの顧客から支持を獲得し、その年の農林水産大臣賞を受賞している。現在では「生ソースが好きなときに買える」をコンセプトに、東京・埼玉にソースの自動販売機を設置するなど、新しい取り組みにも果敢にチャレンジしている。

長い歴史のなかで磨き上げてきた製法や原材料へのこだわりを強みに、高品質のソースを世に届け続けるトキハソース。もちろん、その過程では厳密な衛生管理や品質管理が求められる。しかし、同社は以前、これらの管理業務に課題を抱えていたという。その課題について専務取締役の田口氏は振り返る。
「以前、製造工程における作業記録や従業員の衛生管理、製品の品質管理など、工場で行われる管理業務のほとんどは紙の帳票で行われていました。この紙の帳票にまつわる課題が少なくありませんでした。その一つが、現場の従業員や管理者への業務負担でした。現場の従業員たちは熱や湿気が伴う製造現場のなかで紙とボールペンを用いた記録作業をしなければいけませんし、管理者はそうした環境下で記録された紙の帳票を回収し、目視でチェックして、保管作業をしなければいけません。これらの作業には多くの従業員たちが手を煩わせていました」(田口氏)
同社は衛生面の強化の取り組みの一環で2018年にISO22200を取得したが、取得以前から各種チェックシートの確認、承認の時間がかかることに頭を悩ませていた。
また、「タイムリーなフィードバックができない」という課題もあった。管理業務に用いた紙の帳票は毎日大量に発生するため、すべてを当日中に確認するのは困難である。そのため、管理者は週1回、まとまった時間を設けて1週間分の紙の帳票をチェックする流れで業務を行っていたが、作業の逸脱などを発見しても現場の従業員へのフィードバックが遅れてしまい、結果として従業員もなぜ自分がミスをしたのか忘れてしまう、といった課題があった。
また、紙の帳票による管理業務はインシデントの要因でもあった。例えば、従業員が原材料の投入量を誤った場合、そのミスに即座に気付いて是正しなければ、製品の大量廃棄にも繋がってしまう。現場の従業員の作業を適切に管理し、インシデントの可能性を低減するためにも紙の帳票からの脱却が求められていた。

管理者の定型業務を削減して余裕を生み出すカミナシの各種機能を評価し、導入を決定
こうした課題に直面するなかで、トキハソースはカミナシに出会った。カミナシの存在を知ったのは食品製造業務向けの展示会だった。カミナシの第一印象を志木工場の工場長である加藤氏は振り返る。
「もともとは、製造機器などを見るために展示会に参加していたのですが、カミナシのブースを目にして『これはいい!』と直感しました。私自身、以前から紙の帳票の処理業務にかなりの時間を費やしていましたし、その負担によって他の業務が圧迫されている実感もありました。工場長として、従業員が働きやすい環境づくりや人材育成にもっと時間を割きたいと思っていたので、定型作業の削減が期待できるカミナシには大きな魅力を感じました」(加藤氏)
加藤氏とともに展示会を訪れていた同社の代表もカミナシに興味を抱き、導入が決まった。導入検討時には「費用対効果の試算には労務負担も組み込んだ」と田口氏は話す。
「いざ導入しよう、となったときにはもちろん費用対効果を試算します。一番考慮したのは『いま効率的にできないことで、心の負担が掛かっているのではないか』といった、現場の従業員の労務負担でした。当社の製造で従業員の心の負担になるのは、例えば香辛料の棚卸しです。数が合わない場合にどうすればいいか、といった考えることが多くあることは、正直みんな担当したくありません。1つシステムや仕組みを入れたら解決できる心の負担がどれくらいあるか、を考えて導入を決めました」(田口氏)
本格的な導入のタイミングでは田口氏と加藤氏が旗振り役となり、品質管理部門の協力を仰ぎながら本社工場と志木工場の2拠点で同時に導入が進められた。
この体制は功を奏し、カミナシの導入を強力に後押しする。従来、トキハソースは製造現場や品質管理で大量の紙の帳票を利用していた。これらを一気にペーパーレス化し、カミナシに移行するのは極めて敷居が高い。しかし、社内の2つの工場で導入を同時に実施したことにより、両者が切磋琢磨しながらペーパーレス化を進める機運を醸成できた。本社工場の取り組みに牽引され、志木工場では導入開始から約3ヶ月間で100以上の紙の帳票をカミナシに移行している。他の工場と足並みを揃えようとするモチベーションや、カミナシのユースケースを相互に共有できる環境が、スピーディな導入を後押しした。

取り組む意義と導入者の思いを現場に丁寧に伝えることで、
デジタル化を浸透。現場の反対の声を前向きな力に
一方で、導入時にはシステムの定着にも丁寧に取り組んだ。トキハソースは比較的年齢の若い従業員が多く、システムやタブレットへの導入には前向きな環境だった。しかし、紙の帳票からタブレットへの移行は、作業手順の変更やそれに伴う混乱といった実務上の問題も生じさせる。実際に、導入当初には「紙に手書きするほうが早いのに、なぜタブレットを利用しなければならないのか」といった反発の声も上がった。こういった現場からの声に対して、加藤氏は以下のように話す。
「現場で製造に責任を持っている皆さんが『製造の優先度が一番だ』という考えは、自分も製造の担当者だったのでとてもよくわかります。ただ、これからの時代は製造と共に『証明すること』も大事だと伝えました。カミナシがなければ、自分たちが高い品質で製造をしたことも証明できないし、何かあったときに自分たちを守ることができなくなる。だからこそ優先度高く取り組んでほしい、日々の製造業務の中にデジタル帳票を組み込んでほしい、と伝えました」(加藤氏)
現場から上がってくる声を導入推進チームは大切にすることも、導入定着がしっかり進んだ要因だ。製造担当者が日常業務にカミナシを組み込むことをより促進させるため、システムをより利用しやすい形に改善することに工場長や品質管理担当者は時間と手間をしっかりかけていった。具体的には、入力画面の背景色を項目ごとに変更するなどレイアウトの調整を重ねたほか、イレギュラーが発生しやすい項目には自由入力の欄を設けるなどして、現場の従業員がより効率的に入力できるフォーマットづくりに取り組んだ。この際には、細かな改善を加えやすいカミナシの機能が非常に役立ったという。
こうした取り組みを通じて、トキハソースはカミナシの導入を推進。導入開始から約半年後には、既存業務のなかにシステムを落とし込み、安定した運用体制を築くことができた。
現場従業員、管理者ともに業務負担が大幅削減。逸脱への即座のフィードバックも可能に
現在、トキハソースは製造現場における管理業務をはじめ、製品の品質管理など、幅広い業務にカミナシを利用している。特に、製造現場で利用していた紙の帳票についてはほぼ100%ペーパーレス化しており、全社で7,000枚/年の紙が削減された。現場の従業員たちは紙とボールペンによる記録作業が不要になり、管理者も乱雑な手書き文字を目視でチェックして、記録内容を確認する必要もなくなった。
こうした変化を通じて、トキハソースでは現場従業員、管理者ともに業務効率化が進んでいる。その状況について総務部の大橋氏は説明する。
「カミナシの導入により、現場の従業員たちは紙とボールペンによる記録作業から解放され、心理的なものも含めた業務負担が軽減されています。また、管理者についても同様で、湿ったり破れたりしている紙の帳票を回収してチェックするといった非効率な作業が不要になりました。私自身、以前は品質管理部でこうした作業を担当していたのですが、少なくないストレスを感じていたのが正直なところです。しかし、現在ではタブレット上で正確な記録内容を確認できますし、紙の帳票の保管作業も削減されました。これにより、管理者の業務は2時間/週が効率化されており、その他の業務に割く時間の余裕も生まれています」(大橋氏)
また、大橋氏は「タイムリーなフィードバック」が可能になった点も導入の効果だと話す。従来は、紙の帳票が毎日大量に発生することが要因で、管理者は週1回しか作業記録を確認できなかった。しかし、現在ではカミナシでリアルタイムに作業記録を確認できることに加え、逸脱時には管理者などにアラートが通知されるため、即座に逸脱の状況や要因を把握できる。現場従業員へのフィードバックもタイムリーに行えるため、より精緻な品質管理も可能になる。
さらに、カミナシはインシデントの低減にも貢献している。その一つの例が「移送積込確認」の帳票だ。これは製造した製品を、工場内のどのタンクに、どれだけの量を移送したのかを記録するために用いられる。この帳票も以前は紙で運用されていたため、手書きにより移送先のタンクや製品の個数が記録されていた。それが現在ではタブレットでより正確に記録されるようになったため、出荷量の誤りなどの発生しうるインシデントのリスクが大幅に低減している。

正確な記録に監査員からの評判も上々。認証取得・更新にカミナシを活用し、より高度な品質管理体制を目指す
今後、トキハソースはカミナシの利用範囲をさらに拡大し、ISOなどの標準規格に関する業務にも活用する方針だ。その展望について田口氏は語った。
「当社はISO22000など複数の標準規格の認証を取得しています。そのため、定期的に認証を更新するための監査が行われるのですが、監査員の方にカミナシの作業記録を提示したところ『より正確な記録になり素晴らしいですね』と非常に好意的な評価を受けました。今後は、こうした機能を標準規格の認証取得などにも活用し、より高度な品質管理体制を築いていきたいです」(田口氏)
田口氏は、システムを改善しやすい点がカミナシの最大の魅力だと話した。カミナシの各種機能を活用すれば、自社に最適な管理業務の形をデザインすることができる。それは常に高度な品質管理が求められるトキハソースにとって、極めて心強い特徴なのだという。100年以上の歴史を有する老舗の味をカミナシの利便性の高い各種機能が支えていた。



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