東芝が実践する、紙とExcelから脱却する設備保全DX
2025.09.02
東芝 府中事業所 スイッチギヤ部の課題
成果
工場運営において大切な「設備の情報」を蓄積しTPMの実現へ
「一人ひとりの安心安全な暮らし」と「社会的・環境的な安定」の実現に向けて様々な事業に取り組む株式会社 東芝(以下東芝)。その中で、エネルギー、社会インフラ事業の開発、設計、製造を行う府中事業所 スイッチギヤ部では、製造や設備に関する記録の集約を目指して「カミナシ 設備保全」を導入。製造にまつわる設備を最も多く保有するスイッチギヤ部では約150台の設備の情報集約による生産性向上と設備停止リスクを全員で行うことを目指し、「カミナシ 設備保全」の浸透に向けて動いている。

日本を代表する総合電機メーカーのDX推進
からくり儀右衛門で知られる田中久重が設立した「芝浦製作所(旧・田中製造所)」と、世界初の二重コイル電球を開発した「東京電気(旧・白熱舎)」が合併し誕生した「東京芝浦電気」を前身とする東芝。日本初の電子レンジやカラーテレビを開発し、現在は、原子力や火力、再生可能エネルギーなどの発電システムや送配電システムなどのエネルギー領域、上下水道システムや放送システムなど公共性の高い重要インフラで安心安全な生活を支えるインフラ領域、半導体やハードディスクドライブなどの電子デバイス・ストレージ領域、AI・IoTやクラウド関連技術を軸とするデジタル領域など、日本のみならず世界中の人々の暮らしを支える技術の開発と提供を続けている。
そんな伝統ある企業が、従来からの文化を変えようと会社全体でデジタルトランスフォーメーション(以下DX)を推進し始めたのは2018年頃。DX戦略を掲げ、顧客及びパートナー向けのDX戦略としてエネルギーIoTサービスを活用したアプローチを開始。社内では、設計・製造のデジタル化の一体活動によるバリューチェーン全体の情報を統合し、経営判断の迅速化やデータ活用による業務効率化と生産性向上を目指している。

工場運営にとって人の次に大事な「設備」の情報を残すために
「カミナシ 設備保全」を導入
府中事業所の産業システム事業部 スイッチギヤ部に入社以来在籍している宮本 凌氏は、業務上の課題感があり、自部門で使えるDX推進ツールを探していた。
「スイッチギヤ部では様々な領域での研究開発や製造を行っていますが、それらが基本的に全て紙で記録されていました。データは大量にあるのですが、それらを残すためのパソコンやタブレットは限られた人が使えるツールとなっていました。」
自部門内でのカイゼン活動を進めることに興味が強かった宮本氏は、DX推進が加速した2018年から活用が始まったMicrosoftのPower Appsを用いて加工の依頼に対応するアプリを開発。自分でシステムを設計・開発するやりがいを感じる反面、その運用と継続的なメンテナンスにかかる多大な労力と時間の制約に直面した。この経験から、専門性の高い事業者に依頼する方が、運用面やメンテナンスコストの側面ではメリットがあると考え、他社のDXサービス事業者が提供するツールの導入の検討を始めた。
宮本氏が所属するスイッチギヤ部 真空バルブ・絶縁物製造課は、府中事業所の中でも最も多くの製造設備を保有している部門だが、過去の設備メンテナンス履歴が残っていないことが課題になっていた。社内異動で担当者が代わると以前のメンテナンス情報が引き継がれない、メンテナンス記録の中に「調査」の文言だけが残されてはいるが、詳細な情報がなく設備の正確な状態や対応方法を把握することが難しいといった状態に対して、宮本氏は「設備情報が適切に管理できるシステムが必要だ」という気持ちが高まっていた。
「工場運営において、人の次に大事なものが設備です。設備が止まってしまうとお客様に迷惑がかかってしまいます。特に私達が製造しているものは特定の設備でしか加工できないものもあるので、一回設備が止まってしまうと1ヶ月単位で製造が止まってしまうこともあります。動かすのに一工夫が必要な設備もあるのですが、これまでの履歴がないことですぐに直すことができず、結果的に生産高が落ちてしまい、売上にすると時には大きな影響が出ることもあります。」

DE/DX推進を強化する為、自部門内に業務変革チーム組成
カミナシとの出会いは、帳票電子化ツール「カミナシ レポート」であった。カミナシのサービスに興味を持っていた宮本氏は「カミナシ 設備保全」のβ版提供開始のタイミングで好印象を持ち「すぐにトライアルさせてほしい」と問い合わせ、導入を決めた。
「スイッチギヤ部門は府中事業所の中で最も多い150台の大型製造設備を保有しています。カミナシは設備マスタの登録から始まり、すべての設備にQRコードを貼り付けて、設備のある場所ですぐに記録ができる環境を作りました。」
導入から半年が経過し、現在は部門内7名でカミナシを利用している。現場メンバーに使ってもらう際には苦労した部分もあったと宮本氏は話す。
「現場で設備の記録をするためにiPadを準備し、Teamsでツールの使い方を送るなど、使い始めの一歩目に苦労しました。サービスのコンセプトが『作業者が記録を行い、設備担当が確認する』流れだったため、作業者に記録をしてもらうことが大事です。最初に使っていただいたのは現場で『意見を言う人』でした。意見を言う人は変化を求めている人です。iPadを渡して私が困っているということを熱意を持って伝えると、しっかりとツールを使って業務を進めてくれるようになりました。」
製造作業がメインの仕事である新人などはパソコンを所有していないこともあり、「カミナシ 設備保全」を利用することでタブレットを活用した業務が浸透。設備に関する確実な記録を効率的に行えるようになり、徐々に紙文化からの脱却が進みつつある。
さらに、2025年度から部門内の変革を目的に「業務変革チーム」が設置された。製造と兼務で業務変革チームを担当することになった宮本氏は「業務のデジタル化や自動化をもっと進めていきたい」と意気込む。

「自然とアップデートされていく」ツールの利用が促進
活用を進めて故障から復旧までの時間を最小限にし、TPMを実現へ
利用を開始した2024年9月のタイミングでは設備登録、設備の異常報告といった機能からの利用だったが「利用開始当初から様々な機能の要望を出し、次々に対応してもらっており、自然にアップデートされている印象がある」と話す。
「大量の設備があるがゆえの『フィルター機能』や『設備の分類』などの要望も出させてもらいましたが、すぐに対応していただけました。今後実装予定の『予備品管理』機能にも期待をしています(*1)。」
すべての設備のデータを取り始めてからまだ時間が経過していないが、今後は故障してから復旧までのダウンタイムを最小限にできる見込みがある、と宮本氏は語る。
「スイッチギヤ部が保有する設備には、世界に数台しかないものや部品を海外から調達しないといけないものもあり、過去には故障発生後に半年から1年ほど停止した設備もあります。設備が停止するとお客様に迷惑がかかりますし、部門の生産性全体に影響があります。こういったことに対応するために、これまでTPM(*2)をExcelで実施してきましたが、Excelのデータがどのフォルダの中にあるかわからない、一括でデータを見られないことであまり意味のある活動になかったように思います。従来は『具体的にどのくらい影響があるのか』というデータを出すことが難しかったのですが、『カミナシ 設備保全』を用いて意識してデータを残すことで、これからは定量的な成果を見られるようになると考えています。」
日本のインフラを守るための人と、製造を守るための設備との取り組みはまだ始まったばかりだ。しかし、業務変革への取り組みやそれを支える考え方は、様々な企業の取り組みの参考になるに違いない。

(*1) 予備品管理機能は2025年6月に提供開始:https://corp.kaminashi.jp/news/pr_20250625
(*2) TPM:Total Productive Maintenance(総合的生産保全や全員参加での生産保全を目的としたマネジメントシステム)
※本内容は2025年5月現在のものです。
※記載の会社名、各種名称等は、弊社および各社の商標または登録商標です。


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