リスクアセスメントは、現場に潜む危険性や有害性を取り除いて労働災害を未然に防ぎ、安全性の高い企業として顧客からの信頼性を高める上で重要な取り組みです。
労働安全衛生法においても、危険な作業を伴ったり特定の化学物質を扱ったりするなど、重大な事故につながるリスクを抱える企業に対してリスクアセスメントが努力義務化されています。
ただ、リスクアセスメントを組織的な取り組みとして実施しても、正しい記録方法がわからなければ適切な情報共有や低減措置を行えず、安全な職場づくりにつなげられません。
リスクアセスメントを通して従業員を労働災害から守り、良質な製品・サービスを安定的に提供するためには、記録表を正しく活用してリスクの内容や対応策などを確実に共有することが大切です。
本記事では、リスクアセスメントの概要や実施手順に基づく記録表の書き方、業種別の記入例を解説します。
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目次リスクアセスメントとは
リスクアセスメント(risk assessment)とは、労働災害の引き金となる現場の潜在的な危険性や有害性の特定や、リスクの評価、低減措置の検討・実施を通して事故の発生リスクを最小限に抑える一連の手法を指します。
労働災害の発生後に行う事後対策とは異なり、実際には起きていないものの、従業員や企業に大きな影響を与える可能性がある事故、健康問題を未然に防ぐ予防的手段として実行されます。
リスクアセスメントの目的は、労働災害につながるリスクをできるだけ取り除き、全従業員が安心・安全に働ける職場をつくることです。目的達成のためには、各部署の従業員だからこそ気付ける細かなリスクの共有や現場の声を反映させた低減措置の実行など、全員を巻き込んだ組織的な取り組みが欠かせません。
現場に潜むリスクを最小限に抑えて安全に働ける職場づくりができると、従業員が企業に定着しやすくなり、人手不足による生産性低下などの問題を解消できます。その結果、安定した生産活動によって良質な製品・サービスの提供が可能になり、顧客満足度や社会的信用の向上や売上アップにつながります。
リスクアセスメントの効果
リスクアセスメントは労働災害の未然防止だけでなく、合理的な方法で安全衛生対策を進められる、従業員の安全意識を高められる、安全な環境づくりによって生産性が向上するなど、さまざまな効果が期待されます。
たとえば、製造現場において通行車両との接触事故、機械の誤作動による巻き込まれ事故など、複数の危険性や有害性があったとします。
リスクアセスメントを実施すると、リスクごとの危険度を可視化できるため、優先的に対処すべき作業を特定しやすくなり、効率的に低減措置を実行できます。

リスクアセスメントの書き方例(低減措置の前後でリスクの見積もり数が下がっている)
リスクアセスメントの実施後、現場に潜むリスクの内容を共有すれば、細心の注意を払って作業するなど従業員の安全意識が高まるため、労災発生率の大幅な軽減も可能です。安全性の高さが顧客や取引先に伝わると、他社より信頼できる企業として競争力も強化できます。
また、リスクアセスメントは現場の業務を見直すきっかけにもなります。安全な作業環境を整える過程で幅広い業務が改善されると、業務効率化や標準化が進み、生産性向上を実現できます。その結果、良質な製品やサービスを提供できれば顧客満足度が高まり、企業イメージの向上や売上アップにもつなげられます。
このように、リスクアセスメントは現場の安全性だけでなく、顧客との関係性や製品・サービスの品質、企業全体の売上にもプラスの効果を与えます。
リスクアセスメントによって上記の効果を得るには正しい実施手順だけでなく、労働災害の発生要因となるリスクの程度や対応方法など、必要な情報を確実に残す書き方も理解した上で取り組みに反映させることが大切です。
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リスクアセスメントの実施時期
リスクアセスメントの実施時期について、労働安全衛生規則では以下のとおり規定されています。
対象物を原材料などとして新規に採用したり、変更したりするとき
対象物を製造し、または取り扱う業務の作業方法や作業手順を新規に採用したり変更したりするとき
上記のほか、対象物による危険性または有害性などについて変化が生じたり、生じるおそれがあったりするとき
参考:労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)第34条の2の7|e-Gov 法令検索
原材料や作業方法の新規採用・変更を行う場合は、現場で新たな化学物質の取扱いや作業を始める前にリスクアセスメントを実施し、その結果をもとに低減措置を検討しなければなりません。
厚生労働省の「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」では、以下の事象が発生した場合においてもリスクアセスメントを実施するよう示されています。
労働災害が発生した場合であって、過去の調査等の内容に問題がある場合
前回の調査等から一定の期間が経過し、機械設備等の経年による劣化、労働者の入れ替わり等に伴う労働者の安全衛生に係る知識経験の変化、新たな安全衛生に係る知見の集積等があった場合
参考:危険性又は有害性等の調査等に関する指針 同解説(p.8)|厚生労働省
つまり、リスクアセスメントは一度で終わらせず、定期的に行いながら改善を重ねることが、継続的な取り組みで現場の安全性を高めるには大切です。
初めてリスクアセスメントを導入する場合は、特に危険性が高いと思われる作業から取り組みを開始し、その後は新しい設備や原材料、作業方法などの追加や変更がある場合に改めて実施しましょう。
リスクアセスメントの記録表に記載すべき項目
リスクアセスメントを正しく実施して従業員の安全を確保するためには、以下の項目を記録表に書く必要があります。
記載項目 | 具体的な内容 |
|---|---|
基本情報 | リスクアセスメントの対象となる事業場、リスクアセスメントの実施年月日、実施管理者、実施者 |
作業名 | リスクアセスメントの対象となる作業 |
工具、機械設備名 | 対象作業で使用している工具、設備名 |
危険性・有害性により発生のおそれのある災害 | 労働災害の発生に至る原因と結果のプロセス |
既存の災害防止対策 | 対象作業について現在行っている災害防止対策 |
リスクの見積もり | 現在行っている対応策によって労働災害に至るリスクの程度 |
リスク低減措置案 | リスクの見積もり結果と優先度を踏まえた低減措置案 |
措置実施後の想定リスクの見積もり | 低減措置案を実行した場合に想定されるリスクの程度 |
備考 | 低減措置だけで対処しきれない残留リスクへの対応方法 |
リスクアセスメント記録表の記載項目
リスクアセスメントのエクセルテンプレートは以下のボタンより無料でダウンロード可能です。是非ご活用ください。
テンプレートを活用すると、担当者が一から作成しなくても効率的にリスクアセスメントの記録表を用意し、スムーズに導入を進められます。
リスクアセスメントの実施手順と書き方
リスクアセスメントを通して労働災害のリスクを最小限に抑えるには、正しい実施手順で取り組みを進めなければなりません。どのタイミングで何を記載すべきか理解するためにも、以下の実施手順に沿ってリスクアセスメントの書き方を紹介します。
従業員に目的と手順を説明し、推進メンバーを決める
労働災害を引き起こす危険性と有害性を特定する
現在行っている災害防止対策を整理し、リスクを見積もる
低減措置の検討と想定されるリスクの見積もりを行う
定期的な効果検証を通して改善を図る
単に記載項目を埋めるだけでなく、必要な情報を漏れなく伝える書き方のコツも押さえることが、効果の高いリスクアセスメントを実施する上で大切です。
1.従業員に目的と手順を説明し、推進メンバーを決める
リスクアセスメントを実施する際は、まず経営層から現場の従業員に向けて取り組みの目的と具体的な手順を説明しましょう。このステップにおける記録表への記載は不要です。
安全な職場づくりを一部の担当者に任せきりにせず、経営層から現場の従業員まで全員が参加する意識を持たせることで、些細な危険要因も見逃さない組織的なリスクアセスメントを実施できます。
リスクアセスメントについて説明するときは、労働災害を未然に防ぐという表面的な目的だけでなく、従業員が安全な環境で働ける、業務改善によって作業負担が減るなどのメリットも伝えると納得感を得やすくなります。
従業員向けの事前説明を行った後は、安全管理者や複数ラインをまとめる担当者、現場の従業員などを含めたリスクアセスメントの推進メンバーを決めましょう。
現場をよく知る従業員も推進メンバーに入れることで、経営層や管理者だけでは気付けない危険性や有害性を可視化しやすくなります。その結果、部署や部門を超えた幅広い工程でのリスクに対応でき、結果的に職場全体の安全性を高められます。
2.労働災害を引き起こす危険性と有害性を特定する
リスクアセスメントの推進メンバーを決定した後は、作業単位で労働災害を引き起こす危険性と有害性を特定します。このステップで記録表に記載するのは、作業名、工具・機械設備名、危険性・有害性により発生のおそれのある災害の3つです。

危険性や有害性を特定する際は、労働災害のリスクがあるすべての作業を同時に調査するのではなく、特に危ないと思われる工程に範囲を絞った上でリスクの内容を検討しましょう。
対象となる作業が決まったらマニュアルや作業手順書を用意し、工程を細分化した上で現場を観察すると、従業員のスキルや作業環境など多角的な視点から、細かなリスクを洗い出しやすくなります。
特定された危険性や有害性について記録を残すときは、以下の3点を「〜なので、〜して、〜になる」という形式(理由と実施内容、起こり得る結果がわかる形式)で文章にまとめましょう。
〜なので:現場に潜む危険性や有害性の内容
〜して:危険性や有害性に従業員が接触することで起こる事象
〜になる:その結果起こり得る従業員への影響
上記を踏まえた業種別の記載例は、以下のとおりです。労働災害を引き起こす工具や機械設備、怪我の内容について具体的な名称を用いると、想定される事故の発生状況がわかりやすく伝わります。
業種 | 記載例 |
|---|---|
製造業 | 梱包機のセンサーが故障しているので、作業中誤って手を入れたとき機械に巻き込まれて、手指を骨折するおそれがある |
建設業 | 足場の手すりが設置されていないので、作業中にバランスを崩して、地上に転落して重篤な怪我をするおそれがある |
運送業 | トラックの荷物が不安定に積まれているので、運転中に荷崩れが起きて、事故につながる危険性がある |
また、メンバー間で書き方を統一すればリスクの見積もりを行う際に認識のズレが生じにくくなり、客観的かつ公平な評価を行えます。
製品の仕様書や機械・設備に関するレイアウト、重大な事故につながる一歩手前の出来事であるヒヤリハットなども活用すると、労働災害が発生する原因を特定しやすくなり、効率的にリスクアセスメントを進められます。
なお、以下の記事ではヒヤリハットの意味や報告書の書き方について詳しく解説しています。
▶ ヒヤリハットとは?業界別事例や報告書の書き方、事故を防ぐための取り組みを紹介
3.現在行っている災害防止対策を整理し、リスクを見積もる
労働災害につながるリスクを特定できたら、現在行っている災害防止対策を整理し、危険性や有害性に従業員が近づく頻度や、事故が発生する可能性、想定される怪我や疾病の重篤度を見積もります。記録表には、既存の災害防止対策、リスクの見積もりにそれぞれ結果を記載しましょう。

リスクを見積もる方法には、マトリクス法と加算法の2種類があります。マトリクス法とは労働災害が発生した場合の怪我・疾病の重篤度と、事故が起こる可能性の組み合わせからリスクを見積もる方法です。

画像引用元:リスクアセスメント 実施事例集(p.10)|厚生労働省
加算法ではリスクの重篤度や発生頻度、労働災害につながる可能性を一定の基準で数値化し、それらを合計した点数でリスクを見積もります。

画像引用元:産業廃棄物処理業におけるリスクアセスメントのすすめ方|職場のあんぜんサイト
重篤度や発生頻度、可能性の3項目は会社独自の基準でも数値化できますが、客観的な評価で確実な低減措置を検討するためには、それぞれの数値が何を表しているのかメンバー間で共通認識を持っておくことが大切です。
初めてリスクアセスメントを実施する企業は、厚生労働省が公開している記録表のテンプレートに記載されている数値の目安を参考にしましょう。各メンバーが客観的にリスクを見積もり、多数決や平均点に頼らず全員が合意の上でリスクレベルを決定できると、現場の実態に合った確実な対応策で労働災害を徹底的に防げます。
4.低減措置の検討と想定されるリスクの見積もりを行う
見積もりが終わったら、リスクレベルの高いものから優先的に低減措置を検討しましょう。このステップで記載する項目は、リスク低減措置案、措置実施後の想定リスクの見積もりの2つです。

対応すべきリスクの決定後は、以下の優先順位に沿って実現可能な低減措置の候補を挙げていくと、短期間での高い効果が見込める安全衛生対策を実施できます。
低減措置の種類 | 内容 | 記載例 |
|---|---|---|
本質的対策 | 危険な作業の見直しや撤廃など | 溶接作業をロボットに置き換えて自動化する |
工学的対策 | 機械や設備の導入など | 作業台に振動センサーを設置し、異常時に機械を自動停止させる |
管理的対策 | マニュアル整備や立入り禁止措置、従業員教育など | 危険区域をカラーコーンや掲示物で明示し、入退場管理を徹底する |
個人用保護具の使用 | 保護具の装着など個人単位で行える対策 | 保護手袋や安全靴の着用を義務付ける |
リスク低減措置の優先順位
低減措置を講じるために使用する機械・設備や道具については、具体的な名称を記載すると従業員も何を改善するのかスムーズに理解でき、現場での定着を図りやすくなります。
なお、個人用保護具の使用は、本質的対策・工学的対策・管理的対策の3つで十分に対処できないリスクに対して実施するものです。リスクアセスメントで高い成果を出すためには、個人用保護具の使用を最終手段として残し、基本的には3つの低減措置で労働災害のリスクを除去・低減するのが理想的だといえます。
現場の意見も取り入れつつ低減措置の内容を決定したら、再度リスクの見積もりを行い、事故を未然に防ぐ効果を高められるか確認しましょう。メンバー全員が納得できるまで低減措置の検討とリスクの見積もりを行うことが、全従業員にとって働きやすい職場づくりを実現させるためには大切です。
5.定期的な効果検証を通して改善を図る
低減措置の実行後は、定期的な効果検証を通してリスクアセスメントの取り組みが適切だったか、想定どおりの効果が得られたかを推進メンバーで検討しましょう。具体的には、ヒヤリハットや災害件数の推移をチェックする、危険性や有害性に従業員が近づく頻度は減っているかを数値化して確かめるなどの方法で効果検証します。
新しい取り組みで業務に支障が出ていないか、安全に作業できていると感じるかなど、定量的に評価するのが難しい内容については、現場の従業員向けにアンケートやヒアリングを実施すると、多角的な視点からリスクアセスメントの効果を測定できます。
効果検証の結果、事前の想定に比べて労働災害の発生するリスクが高かったり、低減措置によって新たなリスクが生じていたりする場合は、危険性・有害性の特定やリスクの見積もりを再度行い、新たな対策を考えましょう。
なお、技術や機械・設備の制約で低減措置を実行しても危険性をなくすのが難しい残留リスクについては、記録表の備考欄にリスクの概要や現場で守るべきルールを記載しておくと、次年度以降の取り組みに引き継げます。

対処しきれないからといって放置せず、今できる最大限の対策をしながら長期的に解決を図ることが、継続的な取り組みで現場の安全性を高めたり顧客からの信頼を獲得したりする上で大切です。
【業種別】リスクアセスメントの記入例
リスクアセスメントの基本的な流れはどの業種も同じですが、より自社に近い状況をイメージしたい方も多いと思われます。そこで、リスクアセスメントの記入例を業種別に紹介します。
食料品製造業
金属製品製造業
設備工事業
道路貨物運送業
倉庫業
小売業
各事例の企業が抱えるリスクや低減措置の内容についても紹介しているため、合わせてチェックしましょう。自社の業種に当てはまる企業の記入例を参考に、リスクアセスメントの記録をわかりやすく残すことで、確実な安全衛生対策の実行につなげられます。
食料品製造業
食品製造業は、包丁やスライサーによる切傷、加熱機器による火傷といった労働災害の発生リスクを抱えています。

上記の事例では、原料の積み込みを行う際、従業員が全室冷凍庫前の扉に挟まれることで打撲や骨折などの怪我を引き起こす危険性がありました。既存の災害防止対策は口頭による注意のみで、労働災害を防ぐには十分な対策ができていない状況でした。
そこで、可動部に安全カバーを取り付ける、挟まれ注意の表示を扉に掲示する、安全を確保するための手順をマニュアルに明記するなどの対策を実行したところ、リスクレベルがⅡからⅠまで下がりました。
事例のように、低減措置案は複数検討した上で本質的対策から実行するとリスクの低減を図りやすくなり、従業員が安全に働ける職場づくりにつなげられます。
金属製品製造業
金属製品製造業は、切断・研磨作業中の切傷や挟まれ事故、溶接時の火傷や目の損傷など、さまざまな労働災害の発生リスクがあります。

上記の事例は、製品の移動作業時に劣化したワイヤーロープが切れることで吊り荷が落下し、落下物による打撲や骨折、最悪の場合は死亡事故に発展するリスクがある状態でした。
既存の労働災害防止策を整理した結果、現在行っているのは作業前の目視による点検のみであり、ワイヤーロープの状態について十分に確認できる体制が整えられていないことが判明しました。
そこで低減措置としてワイヤーロープを定期的に点検する、点検済みのマークを付けるなどの対応策を実行したところ、事故の発生可能性が減少し、リスクレベルも下がりました。
点検方法の教育の徹底や廃棄基準の明確化など、今後やるべき課題を明示しておくと継続的な取り組みで安全レベルが向上し、労働災害の発生リスクを最小限に抑えられます。
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設備工事業
設備工事業は高所作業中の転落や電気工事に伴う感電、運搬・移動時の転倒による怪我などのリスクが懸念されます。

上記の事例ではダンプ上で資材の積み込みを行う際、足元の溝に足を踏み落とすリスクがあり、従業員が骨折する危険性があるという重篤度の高さから早急に対処する必要がありました。
荷積み作業を行うときは側溝のある場所を通る必要があったため、工学的対策として側溝に蓋を設置したところ、作業内容を変更しなくても従業員の安全性を確保することに成功しました。
労働災害が発生することで起こり得る怪我の種類も明記しておくと、関係者が記録を見たときにリスクの重篤度を理解しやすくなり、他の業務で同様の事故が発生しないよう先回りの対処ができます。
道路貨物運送業
道路貨物運送業では、交通事故や荷物の積み下ろし作業時における事故、トラックの荷台からの落下などの労働災害が発生するリスクを抱えています。

上記の事例では、ダンプ上での荷積み作業時に従業員がダンプ台から転落し、打撲や骨折、頭部外傷などの怪我に発展するリスクがありました。既存の災害防止対策であるミーティング時の注意だけでは不十分だったため、低減措置として荷台上の前部から後部にワイヤーを通す、安全帯を装着するなどが立案されました。
その結果、リスクレベルはⅢからⅡに減少すると想定され、残留リスクについても全員が確実に安全帯を装着するよう教育する旨が記載されています。
作業そのものを取り除くのは難しくても、本事例のように新しい設備の導入や徹底した従業員教育を検討すれば、災害リスクの大幅な軽減が可能です。
倉庫業
倉庫業はフォークリフト等との接触事故や物品落下による負傷、荷物の上げ下ろし作業中の転倒事故などが発生するリスクがあります。

上記の事例では、倉庫の出入り口付近にある歩行者通路で従業員がトラックなどと接触する危険性がありました。災害防止対策として路面に白線が引いてあったものの、労働災害を確実に防ぐ上で十分ではなく、見積もりの結果もリスクレベルがⅡと危険度は高めでした。
そこで低減措置として、白線を引くだけでなくポールとチェーンも設置し、歩行通路と道路を明確に区別する方法を実行しました。その結果、歩行通路にいる従業員と車両との距離を取りやすくなり、想定されるリスクの見積もりを行ったところ、リスクレベルも下がることがわかりました。
業務以外の場面においても従業員の安全を確保するためには、本事例のように作業場の周辺に潜む細かなリスクも洗い出し、徹底した低減措置を講じることが大切です。
小売業
小売業は大型の機械や車両を使用するケースが少ないため、重大な事故にはつながりにくいものの、商品の落下による怪我や運搬作業時における転倒のリスクを抱えている場合があります。

上記の事例は理化学機器を販売する小売店で、薬品置場の棚に置いてある劇毒物・危険物等が落下することで従業員が中毒を起こしたり火災・爆発事故につながったりする危険性がありました。
リスクアセスメントにより、何の対策もなくそのまま置かれていることが判明したため、低減措置として対象物を試薬用プラスチックケースに入れる方法を実行したところ、落下の可能性が減りリスクレベルも下がりました。
労働災害は作業中だけでなく、使用している機械・設備、道具の誤った管理方法で引き起こされる場合もあります。リスクアセスメントを実施する際は、作業内容や作業環境など多角的な視点からリスクを特定し、一つずつ確実に対処していくことが労働災害のリスクをゼロに近づけるためには大切です。
リスクアセスメントの記録を正確に残し、労働災害を未然に防ぐ職場環境を整えよう
リスクアセスメントの内容をスムーズに共有して確実な安全衛生対策につなげるには、実施手順に沿ってわかりやすい記録を残さなければなりません。単に記載項目を埋めるだけでなく、必要な情報を漏れなく伝える書き方のコツも押さえることで、効果の高いリスクアセスメントを実施できます。
長期的な視点で現場の安全性を高めるには、リスクアセスメントを一度で終わらせず、定期的に行いながら改善を重ねることが大切です。残されたリスクについても記録を残し、次年度以降に引き継ぐことで、現場に潜む小さなリスクも徹底的に排除し、企業全体の安全衛生管理レベルを高められます。
本記事をもとにリスクアセスメントの記録を正確に残し、労働災害を未然に防ぐ職場環境を整えましょう。
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