重大な事故や災害の予兆であるヒヤリハットに対策することは、職場に潜む危険性を取り除き、従業員が安心して働ける環境を整える上で重要な取り組みです。
ヒヤリハットの情報を職場全体で共有し、組織的な再発防止策を講じることで安全性が高まり、業務効率化や生産性向上も進んで良質な製品・サービスを顧客に提供できます。
しかし、ヒヤリハットへの正しい対処法がわからなければ根本的な原因を特定できず、従業員の怪我や情報漏洩などさまざまな問題の発生リスクが高まります。
現場で働く従業員の安全を守り、信頼できる企業として顧客から高い評価を得るためには、ヒヤリハットが発生したとき迅速に情報共有し、徹底的に再発を防ぐ仕組みづくりが欠かせません。
本記事では、ヒヤリハットの概要や主な原因、業種別の対策事例やヒヤリハット対策に有効な報告書の書き方、現場に定着させるコツを解説します。
ヒヤリハットが発生した後の対応次第で、大規模な事故を未然に防げます。関係者での話し合いや報告書の作成、対策の実施、標準化のための研修など行うことは多くありますが、各従業員に対策を落とし込むにはマニュアルの整備や研修が欠かせません。マニュアル作成のコツやカンタンに動画マニュアルが作れるツールなどの情報をまとめた「動画マニュアルマニュアルDX3点セット」は以下のボタンから無料でダウンロード可能です。是非ご覧ください。

目次- ヒヤリハットとは
- インシデントやアクシデントとの違い
- ヒヤリハットとハインリッヒの法則の関係
- ヒヤリハットが起こる主な原因
- 油断や不注意から生じるヒューマンエラー
- 良好な職場環境を維持する5Sの不徹底
- 不十分な報告体制による情報共有の遅れ
- 【業種別】ヒヤリハットの事例と対策
- 製造業
- 建設業
- 倉庫業
- 介護業界
- 医療業界
- ヒヤリハット対策に有効な報告書を作成する4つのポイント
- 1.ヒヤリハットが発生したらすぐに作成する
- 2.現場の状況は5W1Hを意識してまとめる
- 3.客観的視点から事実のみを記載する
- 4.特定の人しか理解できない専門用語は避ける
- ヒヤリハット対策を現場に定着させるコツ
- 報告が会社にとってプラスになることを伝える
- ITツールの導入で報告作業を簡略化する
- ヒヤリハットについて報告する時間を設ける
- ヒヤリハットの確実な情報共有と対策で職場の安全性を高めよう
ヒヤリハットとは
ヒヤリハットとは、業務の中で危ない体験・発見をしたものの、幸い重大な事故には至らなかった事象を指します。予想外の出来事にヒヤリとしたり、危険な状況にハッとしたりする様子から名付けられています。
ヒヤリハットそのものは他の工程に大きな影響を及ぼさない出来事のため、危険な状況に直面しても多くの場合は対策を後回しにされがちです。
しかしヒヤリハット対策を放置した結果、実際に重大な事故や災害が発生すれば、従業員の怪我や病気だけでなく情報漏洩による社会的信用の失墜など、企業にとっても大きな損失が生じます。
職場で起こりうる事故や災害を徹底的に防いで安全な職場づくりを実現させるには、ヒヤリハットの発生時にできるだけ早く情報共有し、原因特定や再発防止策の検討など必要な対策を迅速に行わなければなりません。
ヒヤリハットを見逃さない管理体制を構築することで安全性が高まると、事故の発生による業務停滞や従業員の離脱が減少するのはもちろん、高い作業効率や生産性が維持され、顧客満足度向上につながる良質な製品・サービスを提供できます。
インシデントやアクシデントとの違い
インシデントとアクシデントは、ヒヤリハットと意味が混同されやすい言葉です。いずれも職場で発生する重大な事故や災害に関する用語ですが、そのリスクに気付いているか、実際に問題が起きているか、という点で違いがあります。
3つの違いを以下の表にまとめました。
名称 | 特徴 | 具体例 |
|---|---|---|
ヒヤリハット | 業務の中で危ない出来事を体験・発見したものの、幸い重大な事故には至らなかった事象 | フォークリフトの走行中に従業員と鉢合わせになりかけた |
インシデント | ミスやトラブルは発生しているものの重大な事故や災害には至っていない状況 | 事故は起きていないものの運転者がフォークリフトの通行ルールに従わず走行している |
アクシデント | すでに重大な事故や災害が発生しており従業員や顧客が何らかの被害を受けている状態 | 従業員がフォークリフトと接触したことで転倒し、膝を強打したため病院での診察が必要になった |
ヒヤリハット・インシデント・アクシデントの違い
上記から、あらゆる事故や災害を未然に防いで職場の安全性を高めるには、アクシデントの一歩手前であるヒヤリハットへの対策を徹底することが重要だといえます。
軽微な異常を体験・発見した段階で再発防止策を講じれば、幅広い側面から潜在的な危険性や有害性を取り除けるため、インシデントやアクシデントの発生リスクが減少します。その結果、従業員の安全が確保されて作業効率や生産性を維持でき、良質な製品・サービスの提供につなげられます。
ヒヤリハットとハインリッヒの法則の関係
ヒヤリハットの重要性を説明するとき頻繁に用いられるのが、ハインリッヒの法則です。ハインリッヒの法則とは、アメリカの損害保険会社に勤める安全技師ハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが数千件の労働災害を統計学的に調査した結果から提唱したものを指します。
ハインリッヒの法則では、1件の重大事故の背景には29件の軽微な事故が隠れており、その背後にはさらに300件の異常(ヒヤリハット)が存在すると示されています。つまり、1件の重大事故を防ぐには300件のヒヤリハットに対処する必要があり、そのためには小さな事象も見逃さず社内で共有しなければなりません。
些細な異常でも、ヒヤリハットの発生時に徹底した原因特定や業務改善を行うことは、社内の安全管理体制を強化させ、重大な事故や災害を未然に防ぐ上で大切です。300件のヒヤリハットに対処できると29件の軽微な事故が発生するリスクも減らせるため、より安全な職場づくりを実現して従業員や顧客の安心感を高められます。
ヒヤリハットが起こる主な原因
ヒヤリハットが起こる主な原因として挙げられるのは、以下の3つです。単なる従業員のミスだけでなく、職場環境や業務に関する報告体制もヒヤリハットを引き起こす原因となります。
油断や不注意から生じるヒューマンエラー
良好な職場環境を維持する5Sの不徹底
不十分な報告体制による情報共有の遅れ
ヒヤリハットが発生したときは、上記を含めた多角的な視点から原因を突き止め、根本的な問題解決につなげることが従業員の安全を確保する上で大切です。
油断や不注意から生じるヒューマンエラー
ヒヤリハットが発生する原因として多いのは、従業員の油断や不注意から生じるヒューマンエラーです。業務に慣れた従業員がルールを無視して作業を進める、疲労やストレスから集中力を維持できないなどの要因で判断ミスや確認不足が起こりやすくなり、ヒヤリハットにつながってしまいます。
従業員が新人の場合、業務に必要な知識・スキル不足で作業中の危険を察知できないためにヒヤリハットが起こるケースもあります。毎日同じ作業を繰り返し行っている場合も気が緩みやすく、ヒヤリハットを引き起こす可能性があるため注意が必要です。
ヒューマンエラーが原因で生じるヒヤリハットの再発を防ぐには、誰でも読みやすいマニュアルを用意することや、全体の業務量を見直し適正に再分配するなどの方法で、従業員がルールに沿って快適に働ける環境を整える必要があります。
上記の対策でヒューマンエラーが解消されると、ヒヤリハットの再発防止だけでなく業務効率化や品質の安定化なども期待でき、良質な製品・サービスの提供につなげられます。
良好な職場環境を維持する5Sの不徹底
現場で働く従業員の作業レベルに問題がなくても、良好な職場環境を維持する5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)の不徹底によってヒヤリハットが発生する場合もあります。
5Sとは以下の活動を通して作業場のムダを徹底的に排除し、清潔な状態を維持して生産性向上や作業効率アップを図ることです。必要なものをすぐに使えるよう配置し、小さな汚れも丁寧に取り除くことで作業場は清潔な状態に保たれるため、重大な事故や災害の発生リスクを大幅に減らせます。
活動名 | 内容 |
|---|---|
整理(Sorting) | 必要なものと不要なものを区分する |
整頓(Setting-in-order) | 必要なものを誰でもすぐに使えるよう定位置を決めて置く |
清掃(Shining) | 定期的な清掃や点検を行い、いつでも問題なく使える状態を維持する |
清潔(Standardizing) | 整理、整頓、清掃の流れをマニュアル化して清潔な状態を維持管理する |
しつけ(Sustaining) | マニュアル化したルールを守れるよう従業員向けの研修、教育を行う |
5Sの内容
一方、整理整頓や清掃を十分行わず資材や道具が散乱していると、床の油で足を滑らせそうになった、期限切れの薬品を使いそうになったなどのヒヤリハットが起こりかねません。
そのため、職場の安全性を高めるにはヒューマンエラーを減らすだけでなく、5Sを徹底して事故の起こらない職場環境を維持する対策も求められます。
不十分な報告体制による情報共有の遅れ
社内全体の報告体制が整っていないために情報共有が遅れることも、ヒヤリハットが発生する原因の一つです。
従業員のスキルが十分で良好な職場環境が整っていても、作業の流れや変更点、注意事項がスムーズに伝わらないことで判断ミスが生じ、従業員の怪我や情報漏洩につながるヒヤリハットが起きてしまいます。
たとえば現場で使用している機械に不具合が生じたとき、一部の従業員に報告し忘れたまま作業を続けていると、誤操作による巻き込まれ事故の発生リスクが高まります。
製品の仕様変更に関する報告がなく納期遅れ寸前になる、取引先の新しい連絡先を伝えてもらえず別の宛先に機密情報を送信しそうになるなどのヒヤリハットも起こる可能性があります。
報告体制が不十分なためにヒヤリハットが発生する場合は、報告における基本ルールの明文化、ビジネスチャットツールの活用などの方法を全社的に取り入れ、情報共有のスピードを上げる必要があります。
効率的な報告体制を整えると、業務に関する細かな情報も迅速に関係者間で共有できるため、ヒヤリハットを防ぐための適切な対応が可能になり、従業員は常に安全な環境下で作業を進められます。
このように、従業員個人や働く現場環境、企業の体制も含め、会社全体でヒヤリハット対策を講じることで、重大な事故やミスを防げます。

作業ミスや事故が多発する現場では、管理者の「安全教育の質」が問われます。とくに新人指導やルール徹底に悩む声は多く、曖昧な指導では現場が変わりません。
本資料では、ヒヤリハットの共有やOJTの設計など、現場で活かせる教育ポイントを具体的に解説。安全教育をただの「研修」で終わらせず、定着させる工夫が詰まっています。事故防止に向け、実効性のある一歩を踏み出したい方はぜひご活用ください。
【業種別】ヒヤリハットの事例と対策
正しい対処でヒヤリハットの再発を防ぐため、職場で起こりがちなヒヤリハットの事例と主な対策方法を以下の業種別に紹介します。
製造業
建設業
倉庫業
介護業界
医療業界
上記の事例をもとにヒヤリハット対策を進めると、職場の安全性を高める再発防止策を検討しやすくなり、重大な事故や災害の未然防止につなげられます。
より多くのヒヤリハット事例について知りたい方は、厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」で公開している事例を参考にしましょう。
参考:ヒヤリ・ハット事例|職場のあんぜんサイト
製造業
製造業で起こりがちなヒヤリハットには、作業中に機械の安全カバーを外したまま再稼働しそうになった、設備点検中に別の作業者が機械の電源を入れそうになった、ポケットに入れていたペンが製品の上に落ちそうになったなどがあります。
ポケットのペンが製品の上に落ちそうになるヒヤリハットの場合、主な原因には所持品に関するルールの不明瞭さや作業服のデザインなどが挙げられます。そのため、対策としてはルールの明確化や新しい作業服の導入などが効果的です。
原因 | 対策 |
|---|---|
私物の持ち込みルールが曖昧だった | 私物や文具の管理方法についてルールを明確化する |
作業服に胸ポケットがある設計になっていた | ポケットがついてない作業服を導入する |
異物混入の危険性について十分周知できていなかった | 作業前点検でポケットに何も入っていないかチェックする |
製造業におけるヒヤリハットの原因と対策
製造ラインでの異物混入を未然に防げると不良品率が減少するため、製品の安全性が保たれて顧客や取引先からの信頼性が高まるのはもちろん、コスト削減や生産性向上による利益増大も見込めます。
建設業
建設業では足場の段差に気づかず転倒しそうになった、高所作業中に工具を落としそうになった、重機の死角に従業員が入り接触しそうになったなどのヒヤリハットが起こりがちです。
重機と従業員が接触しそうになるヒヤリハットが発生するのは、安全確保に必要な環境や仕組みが整っていないことが原因だと考えられます。ヒヤリハットの再発を防ぐには、視覚的にわかりやすい方法で区画を整理したり、注意事項を従業員と共有したりする対策が必要です。
原因 | 対策 |
|---|---|
作業エリアの区画整理が不十分だった | 重機周辺の立入禁止エリアを看板等で明確に表示する |
車両の誘導員が適切な箇所に配置されていなかった | 重機の動線を見直した上で誘導員の配置を改善する |
運転者が十分な目視確認を行っていなかった | 運転時の安全確認ルールを朝礼やミーティングで定期的に共有する |
建設業におけるヒヤリハットの原因と対策
重機との接触事故は従業員の命にも関わる問題です。上記の対策でヒヤリハットの再発を防げると、従業員だけでなく顧客や取引先の安心感も高まり、信頼できる企業として良好な関係を構築できます。
倉庫業
倉庫業では、高所棚での作業中に荷物が崩れて落下しかけた、重量物を一人で持ち上げて腰を痛めそうになった、荷下ろし作業中に台車同士がぶつかって従業員が巻き込まれそうになったなどのヒヤリハットが起こる可能性があります。
荷下ろし作業中のヒヤリハットを例にすると、台車同士がぶつかるのは作業前後における確認作業の不徹底が原因だと考えられます。そのため、ヒヤリハットの再発を防ぐには確認作業のマニュアル化、安全確保に関する従業員教育の実施などの対策が求められます。
原因 | 対策 |
|---|---|
十分な作業スペースを確保できていなかった | 台車の動線上に障害物がないか事前に確認する |
台車にストッパーがかけられていなかった | 台車の積載後ただちにストッパーをかけるよう従業員に指導する |
台車操作時に従業員同士で声を掛け合う習慣がなかった | 声掛けルールのマニュアル化と周知徹底を行う |
倉庫業におけるヒヤリハットの原因と対策
安全な作業環境を確保できると、事故の発生による従業員の離脱や作業の一時中断を防げるのはもちろん、業務中に扱う荷物の安全性も確保でき、顧客や取引先からの信頼性向上につなげられます。
介護業界
介護業界で起こりがちなヒヤリハットには、利用者の移動介助中にバランスを崩して一緒に転倒しかけた、ベッド柵の戻し忘れで利用者が落ちそうになった、利用者の自宅で調理道具立てを倒してしまい包丁が刺さりそうになったなど、利用者の安全を脅かすものが多い傾向にあります。
ベッド柵の戻し忘れで発生したヒヤリハットの場合、主な原因には業務の慣れや疲労による注意力不足などが挙げられます。そのため、対策としては他業務の効率化と同時に安全確認のマニュアル化を進めるのが効果的です。
原因 | 対策 |
|---|---|
業務の慣れにより安全面の確認を怠っていた | 介助作業後のチェックリストにベッド柵に関する項目を追加する |
介助作業後に行う声掛けを徹底していなかった | 2人体制による確認作業や声掛けをマニュアル化する |
人員不足などで気持ちに余裕がなく注意力散漫になっていた | 事務作業の業務効率化を進めて介助作業の時間を十分に確保する |
介護業界におけるヒヤリハットの原因と対策
ヒヤリハット対策で転倒事故を防げると、利用者や家族の信頼性が高まるだけでなく、業務効率化によって従業員の作業負担も軽減できます。その結果、従業員の職場に対する安心感が高まり、離職率が減って人手不足問題の解消にもつなげられます。
医療業界
医療業界で起こりがちなヒヤリハットは、点滴のラベルを確認せず取り違えそうになった、医師の指示を正しく聞き取れず間違った処置をしそうになった、車椅子での移動中に患者が急に動いて落ちかけたなどです。
点滴のラベルに関するヒヤリハットの場合、主な原因には忙しさによる確認作業の省略や整理整頓の不徹底などが挙げられます。これらの原因を解消するには、マニュアルの見直しや職場環境の整備を進める必要があります。
原因 | 対策 |
|---|---|
忙しさや慣れで確認作業を省略していた | 投与前に患者名と薬剤名、投与量の指差し呼称を義務化する |
薬剤の整理整頓が不十分で見分けが難しかった | 保管棚に仕切りを設置して薬剤の混同を防ぐ |
使用前のダブルチェック体制が整っていなかった | チェック欄への署名などダブルチェックを記録化する |
医療業界におけるヒヤリハットの原因と対策
ただし、マニュアル化や義務化ばかりで職員の負担を増やすと、再発防止策が現場に定着しない可能性があります。そのため、ヒヤリハットの対策を進める際は、他の業務で効率化できる部分はないかも合わせて検討することが求められます。
投薬ミスによる医療事故を防げると、患者の命を守れるだけでなく健康被害の発生による法的リスクも回避できるため、医療機関としての信頼性を維持し、安定した経営活動を続けられます。
ヒヤリハット対策に有効な報告書を作成する4つのポイント
適切な対策で重大な事故や災害の発生リスクを抑えるためには、危ない出来事を体験・発見したときに報告書を作成してヒヤリハットの情報を共有するのが効果的です。報告書の書き方を4つのポイントに絞って紹介します。
ヒヤリハットが発生したらすぐに作成する
現場の状況は5W1Hを意識してまとめる
客観的視点から事実のみを記載する
特定の人しか理解できない専門用語は避ける
正しい情報が記載された報告書をもとに原因特定や再発防止策の検討を行うことで、ヒヤリハットの再発を徹底的に防ぐ取り組みを進められます。
ヒヤリハット報告書を初めて取り入れる企業は、厚生労働省が公開している以下のページを参考にテンプレートを用意しましょう。
参考:ヒヤリ・ハット報告書|厚生労働省
1.ヒヤリハットが発生したらすぐに作成する
現場の状況を正確に記録し、原因特定や再発防止策の検討に役立てるためには、ヒヤリハットの発生後すぐに報告書を作成する必要があります。
記憶が鮮明なうちにヒヤリハットの情報を残すことで、根本的な原因を特定しやすくなり、現場の実態に合った確実な対策で重大な事故や災害を未然に防げます。
ただし、現場の状況によってはヒヤリハットの発生直後に報告書を作成するのが難しいケースもあります。その場合は、ヒヤリハットの発生状況を簡単なメモに残す、簡単に記載できるテンプレートを用意するなどの方法を取り入れ、従業員の作業負担を減らしつつ迅速かつ確実に情報共有できる体制を整えましょう。
正確なヒヤリハットの情報によって、現場に潜む危険性や有害性の特定が容易になると、業務停滞や不良品の発生などのトラブルが発生する前に素早く対応できます。その結果、作業効率や生産性が維持されるため安定した品質の製品・サービスを提供でき、顧客満足度向上や売上アップにつなげられます。
2.現場の状況は5W1Hを意識してまとめる
ヒヤリハットが発生した状況を正確に伝えるためには、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を意識して必要な情報をまとめることも大切です。
重大な事故や災害を防ぐために必要な情報を漏れなく記載できるのはもちろん、現場の状況を簡潔に伝えられるため、読み手がスムーズに内容を理解した上で適切な対策を検討できます。
たとえば、製造現場のプレス機を使った作業中に発生したヒヤリハットの場合、現場の状況や実際に行った対応、原因は以下のようにまとめられます。
5W1H | 記載例 |
|---|---|
When(いつ発生したか) | 20☓☓年☓月☓日、午後2時40分頃 |
Where(どこで発生したか) | ◯◯工場、機械加工エリア内 |
Who(誰が体験・発見したか) | 加工担当者◯◯ |
What(何が起こったのか) | 金型が十分に固定されないままプレス機械を起動しており、該当作業者の手が挟まれそうになったため緊急停止ボタンを押して回避した。 |
Why(なぜ起こったのか) | 作業手順書に「固定ボルトの締め付け確認」が義務付けられていたものの、見た目だけで判断して確認作業を省略していた。また、作業前に実施する相互チェック体制が機能していなかった。 |
How(どのように対処したのか) | 事故につながるおそれがあったためすぐに機械を緊急停止し、安全を確保した上で上司に報告した。その後、機械と金型の点検を実施して正しく再固定した。 |
5W1Hを意識したヒヤリハット報告書の記載例
文章だけで伝えるのが難しい事象については、写真や図を添付すると現場の状況を詳細に把握しやすくなります。現場で行った措置については、時系列に沿って記載することで再び同じ事象が発生しても適切に対処しやすくなり、改善策を検討するときの参考資料としても活用できます。
3.客観的視点から事実のみを記載する
ヒヤリハット報告書を作成する際は、主観や推測を抜きにして客観的視点から事実のみを記載しましょう。読み手が問題の発生状況を正しく把握でき、確実な再発防止策で現場の安全性を高められます。
たとえばヒヤリハットの発生状況や原因について、以下のように作成者の主観的な視点を交えて記載すると何が本当の原因なのか特定しにくくなり、誤った対策で重大な事故や災害の発生リスクを高める可能性があります。
▼主観や推測が混じっているヒヤリハット報告書の記載例(悪い例)
現場は慌ただしかったため、誰も安全確認をしていなかったと思われる
該当作業者の◯◯は他の業務でも怠惰な姿勢が見られるため今回の事象が発生した
該当作業者には疲れた様子が見られたため、注意力が落ちていたと推測される
客観的事実をもとに報告書を作成するには、見た・聞いた・触れたなど五感で感じたことをそのまま書いたり、数字やデータなどの根拠をもとに説明したりするのがポイントです。
▼客観的視点に基づくヒヤリハット報告書の記載例(良い例)
当該時間帯の作業記録からは、安全確認を実施している様子が確認できなかった
手順書の一部に汚れがあり、該当作業者が読み飛ばしたため今回の事象が発生した
該当作業者に聞き取りしたところ「疲労が溜まっていた」との発言があった
個人的な感情を排除した上でヒヤリハットの情報を客観的に記載すると、マニュアルや教育体制の見直しなど根本的な業務改善につながり、業務効率化や品質の安定化が進んで企業の売上アップに貢献できます。
4.特定の人しか理解できない専門用語は避ける
ヒヤリハット報告書は他の部署や部門、社外の関係者に共有する場合もあります。そのため、報告書を作成する際は誰が読んでもスムーズに内容を理解できるよう、専門用語を避けてわかりやすい表現を心がけましょう。
たとえば製造現場でよく使われる、チョコ停やノギスなどは「機械が数分程度停止すること」や「部品の細部を細かく測る道具」のように表現を変えると、誰が読んでも現場の状況を正しく把握できます。
KYTや5Sなどの略語も「危険予知訓練」や「職場の環境整備とルール遵守」のように正式名称や噛み砕いた表現にすることで、どのような対策を実行するのか伝わりやすくなり、スムーズに現場での定着を図れます。
ヒヤリハット対策のために必要な情報を誰にでもわかる形で伝えれば、関係者間で連携を取りやすくなるため、重大な事故や災害の発生リスクも大幅に軽減されます。
ヒヤリハット対策を現場に定着させるコツ
ヒヤリハット対策を現場に定着させるには、従業員の理解と協力を得る必要があります。具体的には、以下3つのポイントを押さえてヒヤリハット対策の重要性と取り組み方を広めましょう。
報告が会社にとってプラスになることを伝える
ITツールの導入で報告作業を簡略化する
ヒヤリハットについて報告する時間を設ける
ヒヤリハット対策を現場に丸投げせず、経営層が積極的に取り組むことで企業としての本気度や重要性が伝わり、安心して働ける職場づくりや業務効率化、生産性向上につなげられます。
報告が会社にとってプラスになることを伝える
ヒヤリハットについて報告すると自分のミスが上司や同僚に伝わるため、多くの従業員は注意や叱責を恐れて報告をためらいがちです。
ヒヤリハットが発生しても、評価が下がるのではないか、処分の対象になるのではないかと心配する気持ちから隠ぺいする空気が生まれると、重大な事故や災害の発生リスクが高まってしまいます。
報告業務に対するマイナスイメージを払拭し、誰でも積極的に報告できる体制を整えるためには、ヒヤリハットに関する報告が会社にとってプラスになることを経営層や管理者から従業員に伝えましょう。具体的には、以下の内容を説明するのがポイントです。
報告内容について責任を追及しないこと
報告内容に応じて評価が下がるわけではないこと
ヒヤリハット報告が業務改善に貢献していること
より良い職場環境と働きやすさにつながること
上司がお手本としてヒヤリハットの報告をする姿を見せたり、ヒヤリハット報告によって改善された業務の事例を共有したりする方法も、従業員の安心感を高めるには効果的です。
ヒヤリハットに関する報告が自分達の安全を守り、企業の信頼性向上にもつながる行為だと理解できると、従業員は納得感を持ってヒヤリハット対策に取り組めます。
ITツールの導入で報告作業を簡略化する
ヒヤリハット対策を現場に定着させ、重大な事故や災害の発生リスクを最小限に抑えるには、ITツールを導入して報告作業を簡略化する方法もおすすめです。
スマホやタブレットで簡単に報告書を作成できるテンプレートが揃っており、現場から手軽に提出できるITツールを活用すると、ヒヤリハットが発生したときも素早く関係者間で情報共有できるため、確実な再発防止につなげられます。
他にも、ITツールにはヒヤリハット報告書の作成、提出作業を効率化させる以下の機能が備わっています。
ヒヤリハットの発生日時や場所を選択式で入力できる機能
現場の状況について写真やイラストを挿入できる機能
システム上で一元管理しており関係者が現場を行き来しなくても閲覧できる機能
過去の報告書から必要な情報をスピーディに取り出せる検索機能
外国人従業員が多い企業には、国籍に関係なく誰でもスムーズに報告できる多言語対応機能付きのITツールがおすすめです。現場で実行すべき再発防止策の内容も全従業員に伝えやすくなり、組織的な取り組みを進められます。
有料のITツールを導入する際は、まず活用の目的や必要な機能を整理し、運用コストに見合うリターンを得られるのか計算した上で自社に合うツールを選びましょう。
ヒヤリハットについて報告する時間を設ける
ヒヤリハット対策を進める際は、定期的に報告する時間を設けて情報共有を図り、報告業務に対する従業員の作業負担や心理的ハードルを軽減させましょう。ヒヤリハットに該当する事象や報告すべき内容を把握することで、従業員はヒヤリハットが発生しても迷わずスムーズに情報共有できます。
ヒヤリハットについて報告する時間としておすすめなのは、朝礼や終礼など習慣的に従業員が集まるタイミングです。前日や当日に発生したヒヤリハットに関する情報共有を行うことで、従業員は報告の流れを掴める上、現場に潜む危険要因も把握できるため注意深く作業を進められます。
従業員の協力を得るためには、作業前や作業後、余った時間など業務負担を圧迫しない範囲で報告の場を設けるのがポイントです。最初に上司からヒヤリハットの報告をしたり、ヒヤリハットなのか判断しかねる事象について話しても良いことを伝えたりすると、報告しやすい雰囲気が生まれて従業員も気兼ねなく発言できます。
全従業員がヒヤリハットについて報告できる時間を確保すると、幅広い側面から職場に潜む危険性に気付けるため、迅速な対応で徹底的にヒヤリハットの再発を防げます。その結果、職場全体の安全性が高まると、顧客からの信頼獲得や企業イメージの向上、業務効率化や生産性向上などさまざまなプラスの効果を得られます。
ヒヤリハットの確実な情報共有と対策で職場の安全性を高めよう

現場で働く従業員の安全を守り、信頼できる企業として顧客から高い評価を得るためには、ヒヤリハットが発生したとき迅速に情報共有し、徹底的に再発を防ぐ仕組みづくりが欠かせません。
ヒヤリハットが発生する原因には、従業員のミスだけでなく職場環境や社内の報告体制などさまざまな要素が挙げられます。適切なヒヤリハット対策で安全性を高めるには、これらを含めた多角的な視点から根本的な原因を探り、現場の実態に合った対策を検討しなければなりません。
ヒヤリハット対策に取り組む際は、ヒヤリハットの発生状況や原因、再発防止策などを記載した報告書を活用するのがおすすめです。ヒヤリハットについて報告しやすい雰囲気をつくり、些細な事象でも積極的に共有できる仕組みを整えると、ヒヤリハット対策が現場に定着し、従業員が安心して働ける職場づくりを実現できます。
本記事を参考にヒヤリハットの確実な情報共有と対策を行い、職場の安全性を高めましょう。
ヒヤリハット対策をしないといけないとわかっているが、報告の形骸化や事例共有のネタ切れが起こっている企業も多いのが現状です。そのためまずは、小さなことから現場の改善を進めてみても良いかもしれません。業務効率化や標準化に繋がる改善事例をまとめた資料集「現場DX3点セット」は以下のボタンから無料でダウンロード可能です。ぜひご参考にしてみてください。





















