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公開日 2025.02 .01

更新日 2026.04.16

FMEA(故障モード影響解析)とは?分類や進め方を7つの手順でわかりやすく解説

FMEA(故障モード影響解析)とは?分類や進め方を7つの手順でわかりやすく解説

製品開発や製造プロセスにおける潜在的なリスクを未然に防ぎたい場合に実施することの一つが「FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)」です。

FMEAの活用により、設計や工程計画段階における潜在的な故障モードとその影響を予測、評価し、事前対策が可能となります。これにより、品質向上やコスト削減に加え、重大なトラブルの回避にも貢献します。

本記事では、FMEAの基本的な考え方や目的、なぜ品質管理において重要視されるのかを分かりやすく解説します。また、設計FMEAや工程FMEAといった主要な種類とその特徴、そしてFMEAを導入することで得られる具体的なメリットについても解説します。

さらに、FMEAを実践する上での評価方法(影響度や発生頻度、検出難易度、リスク優先度数の計算など)や、具体的な実施手順をステップごとに詳しく紹介します。FMEAを効果的に進めるための注意点やISO9001、IATF16949といった関連規格との連携についても触れるので、ぜひ最後までご覧ください。

故障モードが特定できたら、その状態になっていないかを日常点検や定期点検で必ず確認しましょう。点検の記録は、紙でもExcelでも、システムであっても、すぐに見れる状態にしておくことが重要です。

目次

FMEA(故障モード影響解析)とは?

FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)とは、製品や設計段階に潜む故障モードを予測、抽出し、その影響を評価、分析して、事前に対策を講じる管理手法です。

故障モードは、製品を構成する部品の破損や故障を指します。具体的には、パソコンが起動しない場合の基板の破損や電源ケーブルの断線などが故障モードに該当します。

FMEAの主な目的は、品質保証や信頼性、安全性の向上です。さらに、事故の未然防止や故障モードに対する対策の優先順位付けを行うことも重要な目的です。

FMEAの起源は諸説ありますが、その1つにNASAやJAXAなどの航空宇宙分野があるとされています。現在では、自動車業界や電子機器など、様々な分野でFMEAが活用されています。

FMEAが品質管理において重要とされる理由

FMEAは、製造業における製品や工程の品質確保において重要なツールです。設計段階や工程計画段階でのリスク評価をすることで、欠陥品の流出や製造ライン停止による納期遅延などを最小限に抑えることができ、顧客満足度の低下を防げます。

後工程での手戻りや市場クレームの大幅な削減も期待できるため、コスト削減にも大きく貢献します。

また、FMEAで洗い出した問題点や対策の積み重ねによって、類似製品や次世代製品の開発、設計への貢献、顧客への価値提供が期待できます。

なお、国際自動車産業特別委員会(IATF:International Automotive Task Force)が策定する自動車産業向け品質マネジメントシステム規格のIATF16949では、FMEAが製品品質を担保するためのコアツールとしても定義されています。

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FMEAの主な種類とその特徴

FMEAは、着目する視点で以下の2つの種類に分類されます。

  • 設計FMEA(D-FMEA)

  • 工程FMEA(P-FMEA)

製造ラインにおけるリスク管理では主に工程FMEAが、製品開発における設計上のリスク管理には設計FMEAや機能FMEAが活用されるのが一般的です。

いずれもFMEAとしての大まかな流れは同じであるものの、対象となる故障モードが異なります。ここでは、FMEAの主な種類とその特徴を説明します。

設計FMEA(D-FMEA)

設計FMEA(D-FMEA:Design Failure Mode and Effects Analysis:設計故障モード影響解析)とは、製品の設計段階で、潜在的な故障モードとその製品への影響を予測や評価することにより、顧客の使用時や後工程で発生しうる問題を未然に洗い出し、リスクを低減することを目的とした管理手法です。

例えば、設計段階で部品の形状や公差が複雑すぎると、製造時の組み付け不良や歩留まり低下といった問題を引き起こす可能性があります。こうした設計起因の潜在的な製造リスクを設計FMEAから、後述の工程FMEAへ早期に共有や検討することで、製造しやすい設計への見直しや、工程管理策の事前準備が可能になります。

従来はリスク優先度(RPN:Risk Priority Number)といった相対的な指標で対策の優先順位を判断することが一般的でしたが、近年では、より客観的な基準や、AIAG & VDA FMEAハンドブックで導入された処置優先度(AP:Action Priority)のように、処置の必要性をより明確かつ直接的に示す、いわば絶対評価に近い考え方やアプローチが重視される傾向にあります。

これにより、本当にリスクの高い項目への対策が、より確実に実施されることを目指しています。なお、設計FMEAの一環として機能FMEAという分析手法があります。

機能FMEA

機能FMEAとは、製品やシステムが果たすべき機能に着目し、各機能が期待通りに動作しなかった場合に、不具合モードの状態や、それが製品全体、利用者、または周囲環境へ及ぼす影響を予測や分析をする手法です。

この分析を通じて潜在的なリスクの重大性を評価し、製品を構成するハードウェアやソフトウェア、システム全体の機能に関する問題点に対して効果的な対策を講じることで、信頼性を確保することを目的とします。

工程FMEA(P-FMEA)

工程FMEA(P-FMEA:Process Failure Mode and Effects Analysis:プロセス故障モード影響解析)とは、製品が実際に生産される製造工程や組立工程を対象とし、そこにある潜在的な不具合の発生要因(故障モード)とその影響を予測や分析し、事前に対策を講じるための体系的な手法です。

対象となるのは製造工程を構成する要素の4M+1E(Man:人、Machine:機械、Material:材料、Method:方法、Environment:環境)と設備や作業者、材料、方法、計測です。

工程FMEAのリスク管理効果は、工程管理システムとの連携によって大幅に高めることができます。

例えば、工程FMEAで特定した重要な管理項目(許容範囲や手順など)や異常検知のルールを工程管理システムに設定します。これにより、システムはリアルタイムで工程データを監視し、設定値からの逸脱や異常の兆候を検知した際には即座にアラートを発し、迅速な対応を促すことができます。

FMEA導入による具体的なメリット

FMEAを導入することで、製品やそのプロセスに潜むトラブルを未然に防止できます。ここでは、FMEA導入による以下の3つのメリットを具体的に解説します。

  • 開発や生産コストの最適化と効率改善

  • 重大故障の未然防止と市場クレーム削減

  • 技術やノウハウの蓄積と従業員のスキル向上

開発・生産コストの最適化と効率改善

FMEAによって量産開始前に潜在的な問題点を特定し対策を講じることで、市場投入後の手戻りや設計変更にともなうコストを大幅に削減できます。

削減できるコストの具体例として、不良品の削減による再加工費や廃棄コスト、材料費の削減などがあります。

さらに生産ライン立ち上げ後の修正リスクも低減されるため、安定稼働までの期間短縮が可能です。また、トラブル対応に追われる時間や体制整備の工数を削減できるため、人的リソースを有効化できます。

重大故障の未然防止と市場クレーム削減

FMEAは、製品や工程に潜む重大な故障モードを事前に特定し、そこに対策を講じることで、未然防止につながり、製品の安全性と信頼性の大幅な向上が期待できます。

リコールやPL(Product Liability:製造物責任)訴訟といった重大な経営リスクを回避できるだけでなく、顧客満足度の向上にもつながります。

欠陥品の流出や市場クレームで、企業のブランドイメージ毀損によるダメージは計り知れません。製品の質を担保し、企業のブランドイメージを維持する上でも、FMEAは効果的です。

技術・ノウハウの蓄積と従業員のスキル向上

FMEAの実施によって、技術やノウハウの蓄積と、従業員のスキル向上も期待できます。実施プロセスやFMEAシートを通じて、製品設計や工程に関する技術的な知見、過去のトラブル事例やその対策ノウハウが組織内に蓄積されます。

そして、蓄積された情報は類似製品や次世代製品の開発、新人教育や技術伝承に有効活用されます。

より良い製品を生み出すだけでなく、従業員のリスク意識や問題発見力、分析力の向上に加え、FMEAへの主体的な参加を通じて自らが品質改善に関わっているという参画意識が高まります。

結果として、品質改善への参画意識が高まり、従業員のモチベーション向上にも繋がる可能性があるという点もFMEAの大きなメリットです。

FMEAの評価方法

FMEAにおいてリスクを定量的に評価するための重要な指標として、以下の3つが挙げられます。

  • 影響度(Severity):その故障モードが発生した場合に、最終的な顧客やシステムに与える影響の深刻さ

  • 発生頻度(Occurrence):特定の原因によってその故障モードが発生する可能性の高さ

  • 検出難易度(Detection):故障モードが市場や顧客に影響を及ぼす前に、現行の管理策(設計管理や工程管理など)によってそれを検出できる可能性の高さ

上記の3つを組み合わせることで、RPNの算出ができます。ここでは、それぞれの指標とRPNの評価方法を解説します。

影響度(S:Severity)

影響度(S:Severity)は、故障モードが発生した場合に、それが顧客や最終使用者、製品システム、安全性、法規などにどの程度の影響を及ぼすかを評価する指標です。

具体的な評価基準は、対象となる製品の特性、製造プロセス、関連する業界の標準などによって異なりますが、ここでは一般的な目安として、10段階評価の例を以下の表に示します。

例えば10点の場合、人命に関わるような致命的な影響やシステム機能の完全な喪失といった極めて深刻な状況を示します。反対に、点数が低くなるにつれて影響は軽微となり、最も低い1点では実質的に影響がない状態を表しています。

影響度

影響の大きさ

10点

人命に関わる、システム機能完全喪失

9点

特定の条件下で機能喪失

8点

機能しない恐れがある

7点

特定の条件下で機能低下

6点

機能低下の恐れがある

5点

機能はするものの優先的に改善が必要

4点

軽微な影響、機能はするものの改善をした方が良い

3点

ほとんど影響ない

2点

影響を考慮する必要がない

1点

影響なし

FMEAの影響度の例

評価の観点は、機能停止や性能低下、安全性への脅威、法的規制違反、顧客不満足などを加味して、分類分けすると良いでしょう。

影響度が極めて高いと評価された故障モードは、たとえその発生頻度が低く、また検出が難しいと予測される場合であっても、他の要因を優先して具体的な対策を検討し、実施することが求められます。 

発生頻度(O:Occurrence)

発生頻度(O:Occurrence)は、特定の故障モードがその原因により実際に発生する可能性を評価する指標です。評価の根拠となるのは、過去の類似製品や工程のデータ、信頼性予測、専門家の経験などで、ここでは一般的な目安として10段階評価の例を以下の表に示します。

例えば10点の場合、「ほぼ確実に発生」といった非常に高い発生頻度を示します。逆に、点数が低くなるにつれて発生の可能性は低くなり、1点では「まず発生しない、極めて稀」な状態を表しています。

発生度

故障が発生する頻度

10点

ほぼ確実に発生、頻繁

9点

1週間に1回以上

8点

2週間に1回以上

7点

1ヶ月に1回以上

6点

6ヶ月に1回以上

5点

1年に1回以上

4点

2年に1回以上

3点

3年に1回以下

2点

5年に1回

1点

まず発生しない、極めて稀

FMEAの発生頻度の例

評価の根拠としては、過去の類似製品や工程のデータ、信頼性予測、専門家の経験などを取り入れて判断します。

発生頻度の評価値を効果的に低減するためには、設計段階での見直しによる故障原因の排除(設計改善)や、製造工程における管理体制の強化(工程管理強化)といった未然防止策を講じることが極めて重要です。

検出難易度(D:Detection)

検出難易度(D:Detection)とは、故障モードやその原因が市場に出る前(設計段階、製造段階、検査段階など)に、現行の管理策や検査方法で発見される可能性の程度を示す指標です。
主な評価の観点には、検査方法の有効性、検査頻度、自動検出システムの有無、ヒューマンエラーの可能性などが挙げられます。

具体的な評価基準の一般的な目安として、以下の表に10段階評価の例を示します。この評価では、例えば10点が「検出不可能」を、最低点の1点が「ほぼ確実に検出できる状態」を表します。

検出度

故障を発見する確率

10点

検出不可能

9点

製造段階において10%

8点

製造段階において20%

7点

製造段階において30%

6点

製造段階において40%

5点

製造段階において50%

4点

製造段階において70%

3点

作業の次の工程において100%

2点

作業工程において1~99%

1点

作業途中での検出率が100%

FMEAの検出難易度の例

なお、検査方法によって検出の確実性は大きく異なります。

例えば目視検査は作業者のスキルや状態に依存し検出率が変動しやすいため見逃しのリスクがあります。一方、自動検査システムは安定した検出が期待できるものの、その検出ロジックの限界や適用範囲をそれぞれ考慮して評価することが重要なポイントとなります。

RPN(Risk Priority Number:リスク優先数)

RPN(Risk Priority Number:リスク優先度数)とは、製造工程や製品に潜むリスクのうち、優先的に対策すべき故障モードを数値化したものです。計算方法は、発生頻度と検出難易度を掛け合わせたものです。


RPN = 影響度(S)× 発生頻度(O)× 検出難易度(D)


RPNの閾値(対策を講じる基準となる値)は、企業や組織ごとに設定するのが一般的です。RPNの数値が高いほど、故障モードに対するリスクが大きくなるため、優先して取り組む必要があります。

ただし、影響度が極めて高い場合は別途考慮する必要があり、総合的な判断が求められます。対策実施ごとはRPNを再評価して、リスク低減効果を確認しましょう。

FMEAの実践的な進め方と実施手順

FMEAを効果的かつ体系的に進めるためには、正しい手順で取り組む必要があります。FMEAの実施手順は以下の通りです。

  • 手順1.FMEAの準備と対象範囲の明確化

  • 手順2.故障モードの抽出と影響の分析

  • 手順3.故障原因の特定と発生頻度の評価

  • 手順4.現行管理方法と検出度の評価

  • 手順5.リスク評価と処置優先度の決定

  • 手順6.改善策の検討と実施計画の策定

  • 手順7.改善策実施後の再評価と効果確認

手順1.FMEAの準備と対象範囲の明確化

FMEAを効果的に進めるための最初のステップは、適切なチームを編成し、分析の対象となる範囲を明確に定義することです。

例えば、多様な専門性を持つメンバーでチームを構成しなければリスク評価に偏りが生じる可能性があります。

また、目的や対象範囲が曖昧なままでは評価にばらつきが生じ、期待した成果が得られないこともあります。これらの注意点を踏まえ、計画的にFMEAの準備を進めることが重要です。

FMEAチームの編成と役割分担

FMEAを効果的かつ網羅的に実施するためには、個人で行うのではなく、設計や製造、品質保証、保全、営業といった多様な関連部門の知見を持つメンバーでチームを構成することが重要です。

個人の視点だけでは分析に偏りが生じたり、抽出できる潜在的な故障モードに限界があるためです。

複数の専門分野のメンバーでチームを編成することにより、多角的な視点からのリスク評価が可能となり、分析の客観性が高まります。

さらに、チーム内での役割分担(例:チームリーダーやファシリテーター、書記、各専門分野の担当者など)を明確にすることで、効率的で建設的な意見交換を促進し、FMEAの質を向上させることができます。

FMEA実施計画と記録フォーマットの準備

また、FMEAの目的と対象範囲を明確に定義した上で、記録フォーマットを準備します。目的や範囲を明確にすることで、項目の漏れや評価スケールのばらつきを防げます。

記録フォーマットに記載する項目は、機能や故障モードや潜在的影響、潜在的原因、現行管理策、影響度(S)、発生度(O)、検出度(D)、RPNなどです。なお、評価のばらつきを防ぐため、評価基準は事前にチームで共有し合意しておきましょう。

記録フォーマットは企業や目的ごとに異なりますが、共通のものを用意することで、製品同士の比較や担当者とのやり取りがスムーズになります。

手順2.故障モードの抽出と影響の分析

FMEAの準備が整ったら、次に対象範囲における潜在的な故障モードを洗い出し、それぞれの故障モードが発生した場合に、及ぼす影響を具体的に分析します。

このステップでは、過去のトラブル事例や設計・工程の知見、さらには起こりうるあらゆる可能性を考慮して、網羅的に故障モードを抽出することが求められます。そして、特定された各故障モードが顧客、製品システム、安全性、法規などに与える影響の深刻度を評価することで、リスクの大きさを把握する基礎を築きます。

想定される故障モードの洗い出し

定義した対象範囲に対して、想定される故障モードを網羅的に洗い出します。故障モードとは、製品や工程が設計通りに機能しなくなる可能性のある、個々の具体的な故障の様式や状態を指します。これには部品の物理的な損傷やシステムのエラー、プロセスの逸脱などが含まれます。

過去のトラブル事例や専門家の知見、顧客からのフィードバックなどを参考に、考えられる故障モードをブレインストーミングなどを用いて洗い出します。

なお「故障」や「不良」と「故障モード」は異なる概念です。これらを混同すると、定義が曖昧になり、適切な対策を講じることが難しくなりますので注意してください。それぞれの定義は以下の表の通りです。

名称

定義

故障モード

故障やトラブルを引き起こす原因や構造破壊のこと

故障

故障モードが原因で機能が損なわれること

不良

設計段階で規格外れ、要求仕様を満たしていない状態のこと

洗い出した故障モードが発生した場合に、顧客や最終製品、システム全体、安全性などにどのような影響を及ぼすかを具体的に記述します。影響の範囲が局所的か広範囲かに加え、深刻度も考慮して評価する必要があります。

手順3.故障原因の特定と発生頻度の評価

故障モードとその影響が明らかになったら、次にそれぞれの故障モードが発生する根本的な原因を深く掘り下げて特定し、その原因によって実際に故障が発生する頻度を評価します。

この段階では、なぜなぜ分析などの手法も活用しながら、表面的な事象だけでなく真の原因を突き止めることが重要です。

そして、特定された各原因に対して、過去のデータや信頼性予測、専門家の知見などに基づいて発生頻度を客観的に評価することで、対策の優先順位付けに必要な情報を得ます。

各故障モードの潜在的な原因の追究

各故障モードに対して、その発生原因となりうる要因を特定します。設計上の問題や材料の欠陥、作業者のミスなど、様々な原因が考えられます。

顧客のフィードバックや専門家の意見を参考に、原因を検討します。根本原因を探る「なぜなぜ分析」なども有効です。「なぜなぜ分析」とは、あるトラブルや課題が生じた際、「なぜそれが起きたのか?」という問いを段階的に深掘りしていく問題解決アプローチです。

この「なぜ」を繰り返すプロセスを通じて、事象の背後にある一連の因果関係を明らかにし、最終的に根本原因を特定します。多くの場合、5回ほど掘り下げることで本質的な原因が見えてくるとされています。

発生頻度の評価と根拠の明確化

特定された各故障原因に対し、それが誘因となって該当する故障モードが実際にどの程度の頻度で発生しうるのかを、客観的なデータや知見に基づいて評価します。

この発生頻度の評価にあたっては、憶測や感覚に頼るのではなく、以下のような信頼できる情報を根拠として用いることが極めて重要です。

  • 過去の類似製品や工程における不具合実績データ、統計的工程管理(SPC:Statistical Process Control)の記録

  • 市場からのクレーム情報、保証修理データ、顧客からのフィードバック

  • 信頼性試験(加速寿命試験や耐久試験など)の結果やシミュレーションデータ

  • その分野の専門家や経験豊富な技術者が持つ知見や経験則

  • 業界標準や公的機関が発行するデータベース

どの情報を参考にして、どのように発生頻度を評価したのか、その評価根拠をFMEAシートなどに明確に記録しておくことが不可欠です。

これにより、評価の客観性と妥当性が担保され、後日その評価を見直す際や、類似のFMEAを実施する際の貴重な参照情報となり、継続的な改善活動にもつながります。

手順4.現行の管理方法と検出度の評価

次は、既存の管理策がどれほど有効に機能し、故障の発生を未然に防いだり、市場流出前に検出しうるのかを客観的に評価します。

具体的には、製品の設計段階や製造工程、検査工程において、故障の発生を未然に防ぐための予防策や、万が一発生してしまった故障やその原因を市場へ流出する前に検出する策が、現在どのように実施されているかをリストアップします。その後、どの程度、効果的に検出できるかを評価します。

現在実施されている管理・検査方法の確認

まず、各故障モードやその根本原因に対して、現在、組織内で実施されている管理策を「予防策」と「検出策」の観点から洗い出し、具体的に記述します。

  • 予防策(Preventive Controls):故障モードの発生そのものを未然に防ぐ、あるいは発生頻度を低減させるための措置

  • 検出策(Detective Controls): 万が一、故障モードが発生した場合やその原因が存在する場合に、それが顧客に影響を及ぼす前に、あるいはできるだけ早い段階で発見し、流出を食い止めるための措置

これらの管理策は、関連する設計図書、工程フロー図、検査基準書といった文書の確認や、実際に作業を担当しているエンジニアやオペレーターへのヒアリングを通じて、抜け漏れなく特定します。

特定された管理策は、FMEAシートの該当する故障モードや原因に紐づけて具体的に記録し、後の検出度評価の基礎情報とします。

故障モードや原因を検出できる可能性の評価

次に、特定された検出策が、故障モードやその原因を市場流出前にどの程度効果的に検出できるか、その検出度(D)を客観的に評価します。なお、評価の際は、以下の点を総合的に考慮します。

  • 検出タイミングと場所(検出がいつ、どこで行われるか)

  • 検査・検出方法の有効性と信頼性(目視検査では作業者のスキルやヒューマンエラーの可能性、自動検査ではシステムの精度や限界)

  • 検査対象と頻度(全数か抜き取りか、抜き取りの場合の統計的妥当性)

  • 故障の顕現性(発見のしやすさ)

手順5.リスク評価(RPN算出)と処置優先度の決定

次に、RPN(Risk Priority Number:リスク優先数)で紹介した計算方法に基づき、リスク評価と処置優先度の決定を行います。

RPNの数値が大きいほど、その故障モードが持つ潜在的なリスクが高いと判断され、優先的に対策を検討する必要があることを示します。

多くの組織では、RPNの閾値(しきいち)を設定し、その値を超える故障モードに対して具体的な改善策の実施を義務付けたり、推奨したりします。

ただし、この閾値は絶対的なものではなく、組織のリスク許容度や製品・プロセスの特性に応じて適切に設定・見直しを行うことが重要です。

対策の優先順位を決定する際には、算出されたRPNの値を比較し、数値が高いものから順に対策に着手するのが基本的なアプローチです。

しかし、RPNの値だけに依存するのではなく、特に影響度(S)の評価点が極めて高い故障モードについては、たとえRPNの総合値が低くても、最優先で対応策を検討・実施しなければならないケースがあることを忘れてはなりません。

手順6.改善策の検討と実施計画の策定

次に、改善策の検討と実施計画の策定を行います。この手順では、特定された高リスクの故障モードに対して、そのリスクを効果的に低減するための改善策を立案し、その策を実施する人や期間(〆切)、具体策を実行可能な計画に落とし込みます。

計画を立てるだけでなく、確実に成果につなげるための極めて重要なステップです。

リスク低減のための具体的な改善策の立案

優先順位の高いと判断された故障モードに対し、そのリスクを効果的に低減させるため、以下の3点ごとに具体的な改善策を検討します。

  • 影響度(S)(例:冗長設計やフェールセーフ機能の追加)

  • 発生頻度(O)(例:設計変更や部品の信頼性向上、工程改善、作業標準の見直し)

  • 検出難易度(D)(例:検査方法の改善や検出システムの導入)

提案された複数の対策案の中から選ぶ際は、技術的な実現可能性や導入、運用にかかるコスト、対策完了までの期間を考慮する必要があります。

そして対策による波及効果や新たなリスクの発生がないかを総合的に評価し、現実的かつ効果の高い策を選定することが重要です。

改善策の実施と責任者、期限の設定

決定した改善策を確実に実行に移すためには、具体的な実施計画の策定が不可欠です。この計画には、「誰が(担当部署・担当者)」「何を(具体的な作業内容)」「いつまでに(開始・完了期限)」行うのかを明確に記述します。

実施計画が曖昧であったり、責任者が不明確であったりすると、対策が進まないなどの問題を招きかねません。

結果として、特定されたリスクが放置され、FMEAを実施した意味が失われてしまいます。そのため、各対策項目に明確な責任者と達成可能な期限を設定し、進捗を管理することが重要です。

手順7.改善策実施後の再評価と効果確認

最後に、講じた対策が実際にどの程度の効果を上げ、潜在的なリスクが許容できるレベルまで低減されたのかを客観的に再評価し、その効果を確認することが不可欠です。

この最終ステップを通じて、FMEAが一過性の活動ではなく、継続的な品質改善サイクルとして機能することを確実にします。

また、得られた教訓や成功事例を組織の知識として蓄積し、将来の製品開発やプロセス改善に活かすための重要な手順です。

改善後のRPNの再計算とリスク低減効果の検証

改善策を実施後、発生頻度や検出難易度、影響度などを再度評価し、RPNを再計算します。対策によってリスクが目標レベルまで低減されたかを確認し、効果が不十分な場合は追加の対策を検討します。

立案された改善策を実施した後、その効果を定量的に検証するため、再度FMEAの評価項目を見直します。

具体的には、対策によって変化が期待される発生頻度(O)や検出度(D)を中心に、場合によっては影響度(S)も含めて再評価を行います。

この再評価された値を用いてRPNを再計算し、対策前のRPNと比較します。この比較により、実施した改善策が実際にどの程度リスクを低減できたのか、その効果を具体的に把握します。

目標としていたリスクレベルまでRPNが低減されていれば対策は成功と判断できますが、効果が不十分で目標値に達していない、あるいは新たな問題点が見つかった場合には、その原因を分析し、追加の対策を検討や実施をする必要があります。

FMEA文書の更新と横展開

最後に、実施した対策内容と再評価結果をFMEAシートに記録し、文章を最新の状態に維持します。FMEAで得られた知見や効果のあった改善策は、類似の製品やプロセスにも活用し、組織全体の品質向上につなげましょう。

改善策の実施結果と再評価によるRPNの変動、最終的なリスクレベルなどをFMEAシートなどに正確に追記し、常に最新の状態に維持管理することが重要です。

この記録は、将来同様の問題が発生した際の貴重な参照情報となるだけでなく、継続的な改善活動の証跡ともなります。

さらに、今回のFMEAを通じて得られた重要な知見、特に効果の高かった改善策や、新たに見つかった故障モードとその対策事例などは、個別の製品やプロセスだけに留めず、組織全体の知識やノウハウとして共有し、蓄積します。

これらの情報を類似の製品開発プロジェクトや他の製造プロセスへ積極的に「横展開」することで、未然防止の範囲を広げ、組織全体の品質マネジメントシステムの強化と継続的な品質向上に繋げることが期待できます。

FMEAを実施する上での重要な注意点

FMEAは製品トラブルを未然に防止したり、品質を向上させたりといったメリットがある一方で、効果が発揮されないケースもあります。FMEAをより効果的に実施し、期待される成果を得るためには以下のポイントに注意しましょう。

  • チームでの多角的な視点による分析の実施

  • 評価基準の組織内での標準化し、一貫性を持たせる

  • 定期的な見直しと継続的な改善の実施

チームでの多角的な視点による分析の実施

FMEAの実施は、チームで行うことが推奨されます。1人で実施すると、抽出できる故障モードが限定的であり、影響度や検出度などの分析が偏る恐れがあるためです。

故障モードの見落としが生じると、トラブル発生時の対応が遅れるリスクも高まります。

主観的な評価を避け、多角的な視点から分析を行うことが求められます。そのためには、設計や品質保証、保全部門に加え、必要に応じて営業や顧客サービス部門など、多様な部署の担当者を含むチーム編成が重要です。

なお、複数部署の担当者でチームを組む場合は、あらかじめ議論の流れを整理しておく必要があります。さらに、経験豊富なリーダーが議論をリードし、各メンバーからの意見を引き出すなど、円滑に会議が進むよう工夫することが望ましいです。

評価基準の組織内での標準化し、一貫性を持たせる

評価者間の影響度や発生頻度、検出難易度といった評価基準のばらつきを防ぐためには、具体的な定義や事例をともなう明確な基準を設定し、標準化することが重要です。

明確な基準を設定すれば、FMEAの結果の一貫性と信頼性が高まります。また、評価基準のみならずRPNの閾値や対策判断基準も組織として合意しておく必要があります。

なお、本記事では評価スケールを10段階評価にしていますが、必ずしも10段階が最適とは限りません。対象や目的によっては3段階や5段階が適しているケースもあるため、柔軟に調整してください。

定期的な見直しと継続的な改善の実施

FMEAは一度作成したら終わりではなく、継続的に改善することが推奨されます。

見直しのタイミングは対象となるプロセスや製品によって異なりますが、例としては新たな故障モードが発見されたとき、市場クレームが発生したとき、4Mが変更されたとき、または定期的なレビューの際が挙げられます。

FMEAの結果は、次世代製品の開発や対象製品の品質向上に活かしましょう。さらにFMEA自体を改善していくために、継続的な改善サイクル(PDCA:Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善))を回すことも重要です。

FMEAと関連する規格・手法

FMEAは単独で存在するものではなく、他の品質管理規格やリスク分析手法と関連しています。

代表的な規格、手法として以下の4つが挙げられます。

  • ISO9001におけるリスクベースの考え方とFMEA

  • IATF16949で要求されるFMEAの活用

  • FMEAとFTAの主な違い

  • FMEAとDRBFMの関係性

ISO9001におけるリスクベースの考え方とFMEA

ISO9001(品質マネジメントシステムに関する国際規格)では組織全体で「リスク及び機会への取組み」を実践することが一貫して求められています。これは、潜在的なリスクをあらかじめ特定や評価し、その影響を低減または回避するための予防的な活動を計画や実行、目標達成につながる機会を積極的にとらえることを意味します。

このリスクベースの思考を具体的に実践する上で、FMEAの体系的なアプローチは非常に有効なツールとなり得ます。特に、以下のISO9001の要求事項において、FMEAの考え方や手法が役立ちます。

  • 6.1 リスク及び機会への取組み

    組織の目標達成に関連するリスクと機会を特定し、取り組む計画を求めている

    FMEAは、製品やプロセスに潜む潜在的な故障モードとその影響を特定や評価し、優先順位をつけて対策を計画する活動そのものであり、この要求事項に直接的に貢献する

  • 8.3 設計・開発

    設計FMEAは、設計の初期段階からレビューや検証、妥当性確認、最終的なアウトプットに至るまでを対応

    各段階で潜在的な故障モードとそれが製品機能や安全性に及ぼす影響を予測や評価し、製品の品質と信頼性の確保、およびリスク低減に貢献する

このように、FMEAを適切に活用することは、ISO9001が求めるリスクベースの思考を組織内で具体化し、品質マネジメントシステムの有効性を高め、継続的な改善を促進する上で強力な手段と言えるでしょう。

IATF16949で要求されるFMEAの活用

IATF16949(自動車産業品質マネジメントシステム規格)においても、FMEAは5つのコアツールの一つとして明確に位置づけられています。

これらは、製品の企画段階から設計、製造、測定、出荷に至るまでの各プロセスにおいて品質を確保し、継続的な改善を促進するための実践的な手法群として位置づけられています。

各ツールは相互に連携し、品質リスクの未然防止、製造工程の安定化、そして測定システムの精度向上といった目的を達成するために重要な役割を担います。なお、FMEA以外のコアツールは以下の通りです。

  • APQP(Advanced Product Quality Planning and Control Plan:先行製品品質計画)

  • PPAP(Production Part Approval Process:生産部品承認プロセス)

  • MSA(Measurement System Analysis:測定システム解析)

  • SPC(Statistical Process Control:統計的工程管理)

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FMEAとFTAの主な違い

FMEAとFTA(Fault Tree Analysis:故障の木解析)はどちらも信頼性や安全性を確保し、トラブルを未然に防ぐための手法ですが、それぞれ目的や解析アプローチ、適用対象、期待できる効果の点で違いがあります。

両者は補完的な関係にあるため、目的に応じて使い分けたり、組み合わせて活用したりすることで、トラブルの未然防止や発生時の迅速な対応につながります。

主な違い

FMEA

FTA

正式名称

Failure Mode and Effects Analysis
(故障モード影響解析)

Fault Tree Analysis
(故障の木解析)

目的

不具合を予測して未然に防止する

すでに発見されているトラブルの防止と対策の策定

解析アプローチ

ボトムアップ:部品/工程の故障モードからシステム全体への影響を解析

トップダウン:システム全体の故障から原因となる部品や事象を解析

適用対象

設計初期や新規要素が多い場合に適している

既存要素の流用が多い製品やトラブルが発生した際の対策に適している

期待できる成果

未知の不具合を未然に防止できる

既知のトラブルに対して対策を講じることができる

FMEAとFTAの主な違い

FMEAとDRBFMの関係性

DRBFM(Design Review Based on Failure Mode:トヨタグループが活用している品質不具合の未然防止手法)は、故障モードに基づく設計レビューを通じてトラブルを予測し、対策を講じる手法です。FMEAを補完する方法、あるいはFMEAの更新の一環として活用されますが、その進め方には大きな特徴があります。

DRBFMでは、開発者自身が設計の「変更点・変化点」に徹底的に焦点を当て、そこから派生しうる心配点(懸念される故障モードや不具合)を深く掘り下げて主体的に洗い出します。

そして、その分析結果と対策案を経験豊富な有識者や関連部門のメンバーなどの視点から徹底的に議論し、検証することで設計の妥当性を高めていくというプロセスを重視します。

この点が、有識者によるレビューを必須とする点がFMEAとの違いです。

しかし、DRBFMが効果を発揮するためには、設計基盤(良品設計のノウハウ)や過去のFMEA、類似製品のトラブル事例といった情報が組織内に十分に蓄積・共有されていることが前提となります。

FMEAでリスクを最小限に抑えよう

本記事で紹介したFMEA(故障モード影響解析)は、製品やプロセスに潜む潜在的な故障モードを未然に特定し、それに対する対策を事前に講じる強力な体系的リスク分析手法です。

FMEAを適切に導入して、実施することで、市場クレームの削減や重大なトラブルの未然防止につながります。企業のブランドイメージ維持や信頼性向上、顧客満足度の向上など、多くのメリットが期待できます。

FMEAを成功させるには、専門家や各担当者の意見を聞き、影響度や発生頻度、検出難易度を用いてRPNなどによる客観的な評価を行うことが不可欠です。準備から効果確認まで適切に取り組むことで、高い効果を発揮します。

さらに、最も重要なのは、FMEAは一度実施して終わりではないということです。製品の設計変更時や製造プロセスの変更時や市場からの新たな不具合情報や顧客からのフィードバックがあった際などは、見直しが必要です。
このように、継続的な改善を通じて、常に最新かつ実効性のあるツールとして活用し続けることが不可欠です。

本記事を通じて、自社の製品やプロセスの品質改善および継続的なリスク軽減にFMEAを活用し、設備の停止を最小限に抑えましょう。

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執筆者:現場と人 編集部

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