人手不足を背景に、国内で働く外国人の数とともに、外国人を受け入れる企業の数も増えています。2025年には外国人を雇用する事業所が37万か所を超え、過去最多となりました。そのうち6割以上を占めるのが、従業員30人未満の事業所です。
受け入れ体制が十分に整っていない中小企業が外国人を雇用するようになり、現場でのトラブルも起こりやすくなっています。2027年4月に育成就労制度が始まると、本人の意向による転籍が認められるため、働きにくい職場からは人材が離れていくと考えられます。外国人材から選ばれる職場をつくれるかどうかが、これまで以上に問われます。
この記事では、職場に外国人材を受け入れる際に起こりやすい問題とその原因、企業ができる対策を解説します。
参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)|厚生労働省
目次外国人労働者の受け入れで起こりやすい問題
外国人労働者を受け入れる際、言語や文化の違いに起因するものから、労務管理や法令に関わるものまで、さまざまな問題が起こります。ここでは、現場で起こりやすい6つの問題を取り上げます。
言語の壁による意思疎通の難しさ
文化や習慣の違いによるトラブル
待遇・労働条件に関すること(低賃金、労基法違反)
早期離職・定着率の低さ
不法就労・在留資格管理のミス
技能実習生の失踪
言語の壁による意思疎通の難しさ
外国人労働者の日本語能力が十分でない場合、業務の指示が正確に伝わりません。作業のミスややり直しが発生し、現場全体の生産性が下がります。
日本語での日常会話に慣れていても、専門用語や業界特有の言い回しは理解が難しく、伝わらない場面も出てきます。日本語特有のあいまいな表現も同様です。「できるだけ早めに」や「もうちょっと〇〇して」といった言い方は解釈に幅があるため、指示した側の意図とは異なる対応をされることがあります。
意思疎通の難しさは、安全面にも影響します。危険箇所の注意喚起や保護具の着用といった指示が正しく伝わらなければ、労働災害につながりかねません。
うまく意思疎通できない状態が続くと、職場の雰囲気も悪化します。日本人従業員には「何度説明しても伝わらない」という徒労感が募り、外国人労働者も「聞き返しにくい」と感じるようになります。互いのやり取りが減り、業務の進行にも支障が生じます。
文化や習慣の違いによるトラブル
宗教や生活習慣の違いへの理解が職場になければ、外国人労働者にストレスが蓄積します。たとえば、イスラム教徒の中には1日数回の礼拝を行う人がいます。職場に礼拝できる場所がなかったり、休憩時間が礼拝の時間と合わなかったりすると、負担を感じるでしょう。
日本では当たり前とされている慣習が、外国人材には理解されておらず、誤解をまねくケースもあります。
時間に対する感覚は、その代表例です。日本の職場では、始業時刻の前に出社して準備を済ませ、持ち場につくことが前提とされています。しかし、外国人の中には始業時刻に出社すればよいと考える人もいます。こうした感覚の違いから、職場での摩擦が生まれることがあります。
このほかにも、報告・連絡・相談のタイミングに対する感覚の違いも摩擦を生みやすいポイントです。日本では「トラブルが起きたらすぐ報告する」ことが当然とされますが、国によっては「自分で解決してから報告する」「上司に悪い報告をするのは失礼」という価値観もあり、問題の発覚が遅れる原因になることがあります。
待遇・労働条件に関すること(低賃金、労基法違反)
待遇や労働条件の問題は、法令違反にあたるものと、違反ではないものの不満につながるものに分けられます。
法令違反の代表的なものが、労働時間と賃金のトラブルです。時間外労働の上限や割増賃金の支払いなど、労働基準法の規定は国籍を問わず適用されます。それにもかかわらず、十分な休日を確保しないまま長時間働かせたり、残業代が支払われなかったりするケースが指摘されています。
一方で、法令に違反していなくても、待遇の差が不満につながることがあります。たとえば、同じ業務に従事しているにもかかわらず、賃金が日本人より低く設定されていれば、外国人は納得できないでしょう。
年功序列を前提とした制度も不満の要因になります。海外には、実力に応じた評価が一般的な国も多くあります。成果を上げても勤続年数が短い間は処遇に反映されない日本の制度は、不公平だと受け止められる可能性もあります。
待遇や労働条件への不満が解消されなければ、早期離職や失踪につながります。個々の会社の問題にとどまらず、日本企業全体の評価が下がれば、将来的に外国人材の確保が難しくなることも考えられます。
外国人材が転職したいと思ったキッカケには、「給与・賃金の情報」「会社での働き方の情報」の2つが37.6%で上位となっています。

参考:【調査】技能実習生・特定技能外国人の「日本での就労意識・就労環境」|株式会社カミナシ(2026年1月発表)
早期離職・定着率の低さ
外国人労働者が短期間で職場を離れる理由として、まず挙げられるのが、前述した待遇や労働条件、評価制度への不満です。
さらに、キャリアの見通しが立たないことも離職につながります。外国人労働者が技能実習から特定技能への移行を希望していても、企業側が受け入れ体制を整え、必要な手続きを進めなければ実現しません。在留期限が近づいても移行の見込みが示されなければ、確実に働き続けられる企業を探すようになります。
技能実習生・特定技能外国人を対象とした調査では、60.4%が、日本で働く自国出身者のSNSコミュニティに参加しており、参加者の約8割(77.0%)が、そこで得た他社の待遇情報を見て「転職(転籍)したい」と考えた経験があることがわかっています。

参考:【調査】技能実習生・特定技能外国人の「日本での就労意識・就労環境」|株式会社カミナシ(2026年1月発表)
職場の人間関係も、離職の理由に挙げられます。業務のやり取り以外で会話する機会がなく、休憩時間も一人で過ごす状態が続けば、職場になじめず離職に至ります。
離職が起きると、受け入れ体制の整備や教育に費やした時間とコストが無駄になってしまいます。新たな人材を採用することになっても、関連機関との調整や在留資格の申請手続きなど、多くの手間がかかります。その間の欠員は既存の従業員で補うことになり、現場の負担が増します。
不法就労・在留資格管理のミス
不法滞在の外国人や、就労が認められていない在留資格の外国人を雇用すると、不法就労になります。在留資格で認められた範囲を超えた業種や職種で働かせた場合も同様です。
不法就労が発覚すると、本人が処罰されるだけでなく、雇用していた企業も不法就労助長罪に問われます。懲役や罰金が科されるほか、技能実習生や特定技能外国人の受け入れが停止されることもあり、事業への影響は小さくありません。
注意したいのは、不法就労者であることを知らなかった場合でも処罰の対象になる点です。実際に起こりやすいのが、在留期限の管理漏れです。在留期間の更新申請は、本人が行います。しかし本人が手続きを忘れることもあり、企業側が期限を把握していなければ、予期せず不法就労の状態が生じる可能性があります。
「知らなかった」は原則として免責されないため、在留カードの確認は採用時だけでなく、更新のたびに行う運用にしておくことが重要です。
技能実習生の失踪
ここで扱うのは技能実習生に特有の問題ですが、特定技能や他の在留資格であっても、待遇や労働環境への不満が離職・失踪の引き金になる構造は共通しています。技能実習生が実習先から離れ、行方がわからなくなることがあります。ただし、2025年の失踪者数は3,950人で、2023年の9,753人と比べると大幅に減少しました。
失踪者が減った背景には、関係機関による複数の取り組みがあります。失踪者を多く出した送出機関からの新規受け入れを停止したこと、受け入れ企業が待遇の改善に努めたことなどが、複合的に影響したと考えられています。
数値の上では状況が改善していますが、失踪がゼロになったわけではありません。外国人労働者が長く働きたいと思える職場環境や労働条件を整えることが、企業には引き続き求められています。
外国人労働者の受け入れで問題が起きる原因
ここまで見てきた問題の原因を、受け入れ企業側、外国人側、制度側の3つに分けて整理します。原因を切り分けて把握し、自社で対処できる範囲を見極めましょう。
受け入れ企業側にある原因
まず挙げられるのが、受け入れ体制の不足です。外国人雇用に関する知識がないまま採用に踏み切れば、在留資格や労務の管理で問題が生じます。契約書や就業規則、作業手順書が日本語だけで記載されていては、内容を正確に理解してもらうことは難しいでしょう。仕事や生活面のサポート体制が整っていなければ、困りごとを抱えたままになってしまいます。
人権意識の低さも指摘されています。外国人労働者を、安価で人手不足を補うための手段として考えていると、人権への配慮が薄れます。日本人従業員が敬遠する作業を任せる、日本語の理解が不十分なことをからかう、指導の場面で強い言葉を使うといった行為は、本人が意図していなくても差別やハラスメントにあたります。
異文化への理解が進んでいないことも、日々のトラブルにつながります。母国の慣習を知らないまま日本のやり方だけを求める状態では、外国人労働者はストレスを感じます。
外国人労働者側に考えられる原因
就労前に日本語を学習するとはいえ、日本語能力には個人差があります。同じ指示を出しても、理解の程度は人によって異なります。
日本の文化や慣習への理解が十分でないことも、トラブルの要因になります。時間に対する考え方、報告のタイミング、勤続年数による上下関係など、日本の職場では当たり前とされていることを教わる機会がないまま働けば、意図せず周囲の評価を下げてしまいます。
制度上考えられる原因
在留資格制度は複雑です。資格ごとに従事できる業務が定められ、在留期間の上限も異なります。制度を正確に把握していなければ、悪意なく資格の範囲を超えた作業をさせてしまいます。
技能実習制度では、原則として実習先を変更できません。実習先で問題が起きても職場を移ることが難しく、失踪という選択をせざるを得ない構造がありました。この状況を受けて、2027年4月に施行される育成就労制度では、一定の条件のもとで本人の意向による転籍が認められるようになります。
育成就労制度に関しては、以下の記事で詳しく説明しています。技能実習制度との違いや対象職種、受け入れ方法などをわかりやすくまとめているので、ぜひ参考にしてください。
【セルフチェックリスト】自社の受け入れ体制を確認!
ここまで紹介した問題は、どれも「まさか自社では起きていない」と思われがちですが、気づかないうちに当てはまっているケースは少なくありません。対策に入る前に、以下の項目で自社の現状を確認してみましょう。
外国人労働者の受け入れ問題への対策
外国人労働者の受け入れ問題のうち、企業側の体制に原因があるものは、自社の取り組みで改善できます。ここでは、受け入れ企業で実施できる対策を5つの視点から解説します。
5つの対策すべてを同時に進めるのは難しいため、まずは自社で発生している、あるいは発生しうる問題に直結する対策から着手するとよいでしょう。たとえば早期離職が課題であれば「定着支援」と「労務管理」から、受け入れ直後のトラブルが多ければ「体制づくり」から始めるといった優先順位づけが有効です。
迎え入れる体制づくり
外国人労働者を迎える前に、社内の理解を得て、書類の翻訳や生活環境の準備を進めておきましょう。
日本人従業員に戸惑いなく受け入れてもらうには、事前の説明が欠かせません。なぜ外国人を雇い入れるのか、どの業務を担ってもらうのかを伝え、共に働く仲間として迎える姿勢を共有しておきましょう。
書類やマニュアルの翻訳も、受け入れ前に進めておきます。契約書や就業規則、作業手順書は受け入れる外国人の母国語で用意します。また、給与の内訳や控除の理由を説明できる状態にしておけば、入社後の行き違いを防げます。
あわせて用意したいのが、動画マニュアルです。細かな手の動きや工具の使い方は、文章で説明するより映像で見せる方が正確に伝わります。何度でも繰り返し見られるため、聞き直すことに抵抗がある人にも向いています。
生活環境の準備も進めましょう。住居の手配や日用品の用意など、来日してすぐに生活を始められる状態にしておきます。近隣のスーパーや病院、ゴミの出し方といった生活に関わる情報もまとめておきましょう。
社会保険の加入手続きも、受け入れ前に確認したい項目です。健康保険、厚生年金保険、雇用保険への加入に、国籍による違いはありません。本人が医療機関を受診する際に困らないように、確実に手続きを済ませておきましょう。
コミュニケーションと相互理解の促進
日々の伝え方を見直し、日本語を学ぶ機会を用意するとともに、互いの文化を知る場を設けましょう。
日常のやり取りでは、主語と述語を明確にしてゆっくり話すなど、伝わる日本語を意識します。「できるだけ早めに」ではなく「15時までに」というように、期限や数量、程度を具体的に示すと、相手は迷いなく行動できます。「やらないわけにはいかない」といった二重否定や遠回しな言い方も避け、「必ずやってください」のように端的に伝えましょう。

あいまいな指示から伝わる指示への言い換え例
労働条件や安全に関わる説明など、複雑な内容を正確に伝えたい場面では、翻訳ツールが役立ちます。日本語学習を後押しするためには、就業時間内に学ぶ時間を設ける、教材費や受験費用を補助するといった支援が考えられます。
日本人従業員の側も、異文化を理解する機会が必要です。外国人労働者がどのような生活習慣や宗教、価値観を持つのかを学ぶ研修を実施すれば、日々の行動の背景がわかり、誤解を防げます。食事会やスポーツ、花見など、業務以外で交流する場を設けることも相互理解につながります。
労務管理の適正化
法令を正しく理解し、賃金や労働時間、評価の仕組みを見直しましょう。
労働基準法や最低賃金法は、日本人と外国人のどちらにも等しく適用されます。技能実習制度や特定技能制度には、日本人が従事する場合と同等以上の報酬を支払うという要件もあります。労働関係法令と制度上の要件の両方を確認した上で、雇用条件を設定しましょう。
賃金は、業務内容や能力に見合った金額を設定します。全員が納得できる形で説明できるように、技能や資格に応じた賃金の基準を明文化しておきます。
労働時間については、タイムカードや勤怠システムで始業と終業の時刻を把握し、時間外労働が上限を超えていないかを定期的に確認します。休憩や休日についても、日本人従業員と同じ基準で運用します。
評価の仕組みは、能力や実績にもとづいて判断できるように整えます。担当できる工程の数、品質不良の発生率、後輩への指導実績など、客観的に測れる項目を評価に組み込めば、国籍や在籍期間にかかわらず処遇を決められます。
定着に向けた支援の仕組み化
安心して生活できる仕組みを用意し、この職場で目指せる将来像を示しましょう。
外国人が安心して日本で暮らすには、生活面のサポートが欠かせません。業務の指導担当者とは別に、生活面について相談できる担当者を置くと、仕事上の評価を気にせずに話せます。ゴミの分別と収集日、病院の場所や受診方法、携帯電話の契約、災害時の避難場所など、暮らしに必要な情報も企業から提供します。
社内に担当者を置くことが難しい場合は、監理支援機関や登録支援機関のほか、自治体が設けている外国人向けの相談窓口を案内しましょう。
困ったことがあれば言ってほしいと伝えるだけでは、本人から切り出すのは難しいものです。月に一度など定期的に面談の場をつくると、相談するきっかけが生まれます。日本語では本音を引き出しにくい場合もあるため、通訳を介したり、翻訳ツールを使ったりする方法も検討しましょう。
さらには、働き続けた先の見通しを示すことも、定着につながります。技能実習から特定技能への移行を受け入れる方針であれば、早い段階でその旨を本人に伝えましょう。この職場で働き続ける将来をイメージでき、仕事の習得や資格取得にも目標を持って取り組めます。
資格取得を目指す外国人には、受験費用の補助や学習時間の確保といった後押しができます。資格を取得したりスキルを身につけたりしたときに賃金がどう変わるのか、どのような立場を目指せるのかを具体的に示すと、この職場で働き続ける理由が生まれます。
在留資格管理の徹底
在留資格や在留期限の管理は、本人に任せきりにせず、企業側も把握しておきましょう。
受け入れの際は、在留カードの原本を確認します。氏名や在留資格、在留期間の満了日に加えて、就労制限の有無もチェックします。雇い入れたときは、外国人雇用状況の届出書をハローワークへ必ず提出しましょう。
在留カードの写しをファイルに保管しているだけでは、誰の期限がいつ来るのかを把握できません。在留期限は一覧にまとめ、あわせて更新の準備に入る時期も決めておきます。更新の時期が近づいたら声をかける、手続きのために平日の休暇を取りやすくするなど、本人が動きやすい環境を整えることも後押しになります。
在留資格に応じて任せられる業務の範囲は、現場のリーダー層まで共有します。人手が足りない場面で範囲外の業務を割り当てないように、総務や人事だけでなく、現場で人員を配置する担当者も把握しておきましょう。
外国人労働者の受け入れ問題は、企業側の取り組みで乗り越えられる
外国人労働者の受け入れでは、言語や文化の違いによるものから、労務管理や在留資格に関わるものまで、さまざまな問題が起こります。ただし、そのすべてが避けられないわけではありません。受け入れ体制を整える、異文化への理解を進めるなど、企業側の取り組みで改善できる部分も多くあります。
2027年4月に施行される育成就労制度では、本人の意向による転籍が可能になります。外国人労働者に長く働いてもらうための取り組みが、これまで以上に求められます。まずは自社の受け入れ体制を振り返り、外国人労働者にとって魅力的な職場に整えていきましょう。





















