製造現場を管理する立場になると、「生産目標を達成できない」「現場は忙しいのに生産数が伸びない」といった課題に直面することがあります。
こうした課題を解決する手がかりとなるのが、サイクルタイムです。サイクルタイムとは製造現場の生産能力を示す指標です。サイクルタイムを正確に把握すれば、どの工程に時間がかかりすぎているのか、なぜ作業時間にばらつきが生じているのかを明らかにできます。
本記事では、サイクルタイムの定義と計算方法をはじめ、タクトタイムやリードタイムとの違い、改善によって得られるメリット、具体的な改善方法について解説します。生産現場の課題を数値で明らかにし、改善につなげたい方はぜひ参考にしてください。
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目次サイクルタイムとは
サイクルタイム(Cycle Time:CT)とは、1つの製品について工程開始から完了までに実際にかかる時間のことです。加工や組立などの作業時間だけでなく、待機時間や検査時間も含めた時間を指し、製造現場の生産能力を示す指標として広く活用されています。
サイクルタイムは次の計算式で求められます。
サイクルタイム=稼働時間/実際の生産数
たとえば、ある製品の組立工程が1日8時間(480分)稼働し、その間に240個の製品を処理できた場合、組立工程のサイクルタイムは以下のように求められます。
稼働時間(8時間=480分)/実際の生産数(240個)=サイクルタイム(2分)
つまり、この組立工程では1個の製品を処理するのに平均2分かかっていることになります。
計算式の稼働時間は、ストップウォッチで作業の開始から完了までを複数回計測し、平均値を用いることも可能です。ただし、計測のたびに時間が大きく異なる場合は、生産が安定していない可能性があり、時間にばらつきが生じる要因を分析する必要があります。
サイクルタイムの時間単位は、生産する製品や工程の性質によって異なります。時間単位ごとのサイクルタイムの代表的な活用場面を以下にまとめました。
時間単位 | 活用場面の例 |
|---|---|
秒 | ・ロボットによって自動化されている組付け |
分 | ・手作業で行う部品の組付け |
時間 | ・大型機械の組立など、工程が複雑で作業時間が長い製品の製造 |
サイクルタイムの時間単位毎の活用場面例
サイクルタイムの把握と管理がとくに有効なのは、同じ製品を大量に繰り返し生産する現場(少品種大量生産の現場)です。一方で、少量多品種を生産する現場では作業工程が製品ごとに異なり、サイクルタイムが安定しにくい傾向があります。そのため、少量多品種を生産する現場では、サイクルタイムよりも製品の切り替え時間や工場のレイアウトに着目する方が、生産性の改善につながりやすいと考えられます。
サイクルタイムとほかの指標の違い
サイクルタイムと混同されやすい指標に、タクトタイムとリードタイムがあります。それぞれの指標を正しく使い分けると、現場の課題をより正確に把握できるようになります。サイクルタイムとタクトタイム、リードタイムの主な違いは次のとおりです。
項目 | サイクルタイム | タクトタイム | リードタイム |
|---|---|---|---|
定義 | 1つの製品を製造するために実際にかかる時間 | 1つの製品の製造にかけられる時間 | 発注から納品までにかかる時間 |
目線 | 自社目線 | 市場目線 | 顧客目線 |
計算式 | 稼働時間/実際の生産数 | 稼働時間/必要生産数 | ー |
目的 | 現場の生産能力の把握と改善 | 生産ペースの基準値の把握 | 納期管理と顧客満足度の向上 |
変化の要因 | 作業者の熟練度、設備の故障 | 市場の需要(注文数) | 在庫量、物流スピード |
目指すべき状態 | タクトタイムに合わせる | 顧客の要望に合わせる | 短ければ短いほど良い |
上記3つの指標の違いについて、次から詳しく解説します。
サイクルタイムとタクトタイムの違い
サイクルタイムとタクトタイムの違いは、「実際に何分で作れているか」を示す実測値か、「何分で作らなければならないか」を算出した理論値かという点にあります。
タクトタイム(Takt Time:TT)とは、1つの製品の製造にかけられる時間のことで、ピッチタイムとも呼ばれます。タクトタイムは次の計算式で求められます。
タクトタイム=稼働時間(定時稼働時間)/必要生産数
稼働時間には、休憩時間を除いた定時稼働時間(実際に作業を行える時間)を使用します。
1日の勤務時間が8時間(480分)で休憩時間が60分の工場では、定時稼働時間は420分となります。この工場で1日に100個の製品を生産する必要がある場合、タクトタイムは以下のように求められます。
定時稼働時間((8時間=480分)-(8*10分=80分))/必要生産数(100個)=タクトタイム(4.2分)
タクトタイムは必要生産数から計算されるように、市場の需要をもとに算出する理論値です。一方で、サイクルタイムは現場で計測した実測値です。タクトタイムが市場目線の指標であるのに対し、サイクルタイムは自社目線の指標といえます。
タクトはドイツ語で指揮棒を意味する言葉です。オーケストラが指揮者のタクトに合わせて演奏するように、タクトタイムには工場全体の生産リズムを決める基準値としての役割があります。そのため、サイクルタイムとタクトタイムを比較することで、実際の生産が需要に追いついているかを判断できます。
サイクルタイムとタクトタイムの関係
サイクルタイムとタクトタイムの関係は、以下の3つのパターンに整理できます。
サイクルタイムとタクトタイムが等しい(CT=TT)
サイクルタイムがタクトタイムを上回っている(CT>TT)
サイクルタイムがタクトタイムを下回っている(CT<TT)
1.は市場の需要どおりに生産できている理想的な状態です。
2.は生産が需要に追いついておらず、欠品や納期の遅延が起こるおそれがあります。どこかの工程で時間がかかりすぎている可能性があるため、各工程にかかる時間を計測して原因を特定し、改善に取り組むことが必要です。
3.は市場の需要以上のペースで生産できている状態で、過剰在庫になるおそれがあります。作業者の人数や稼働時間、設備の稼働率を見直し、生産量を調整する必要があります。
サイクルタイムがタクトタイムを上回っている状態=ボトルネック
ボトルネックとは、生産ラインの中で最も時間がかかる工程のことです。ほかの工程がスムーズでもボトルネックとなる工程に時間がかかっていると、ライン全体の生産ペースが落ち、サイクルタイムがタクトタイムを上回っている状態です。
ボトルネックを特定するには、各工程にかかる時間を計測して比較する方法が効果的です。ほかの工程よりも時間がかかっている箇所が見つかれば、そこがボトルネックであると判断できます。特定した工程について無駄な動きや非効率な手順がないかを分析し、改善につなげましょう。
なお、ボトルネックは作業工程だけでなく、工程間で部品や製品が滞留している箇所が該当するケースもあります。
サイクルタイムとリードタイムの違い
サイクルタイムとリードタイムの違いは、「実際に何分で作れているか」を示す自社の生産能力を示す指標か、「注文から手元に届くまで何日かかるか」という顧客の視点に立った指標かという点にあります。
リードタイム(Lead Time:LT)とは、ある作業の開始から完了までにかかる時間のことで、運搬や検査の時間も含みます。顧客が発注してから納品までにかかる時間を指すことが一般的です。
リードタイムの範囲は業種や製品によって異なります。製造業では、開発リードタイム、調達リードタイム、生産リードタイム、納品リードタイムといった工程ごとに分けて管理されます。
サイクルタイムが自社目線の指標であるのに対し、リードタイムは顧客目線の指標といえます。また、サイクルタイムは生産リードタイムに関連しており、サイクルタイムの改善がリードタイム全体の短縮にもつながります。
サイクルタイムの改善により得られるメリット
サイクルタイムの改善は、生産性を高めることはもちろん、顧客満足度の向上にも寄与します。それぞれの効果について詳しく解説します。
生産性が向上する
サイクルタイムを短縮すると、同じ稼働時間内により多くの製品を生産できるようになります。たとえば、1個あたり2分かかっていた工程を1.5分に短縮すると、6時間の稼働で生産できる数は180個から240個に増加します。
生産性が高まれば、残業や休日出勤を増やさずに生産目標を達成できるようになり、人件費などのコストを削減できます。また、新たな設備投資や人員の追加をしなくても、既存のリソースで受注量の増加に対応できるため、利益率の改善も期待できます。
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顧客満足度が高まる
サイクルタイムを改善すると生産リードタイムが縮まり、発注から納品までの時間を短縮できます。生産ペースに余裕が生まれることで、納期より早く製品を届けられるだけでなく、急な追加注文や仕様変更にも柔軟に対応できるようになります。
納期短縮によって他社との差別化が図れれば、新規顧客の獲得も期待できます。また、安定した供給を継続することで顧客からの信頼が積み重なると、長期契約や取引拡大の可能性も高まります。
サイクルタイムを改善する方法
サイクルタイムを改善するには、ばらつきの原因やボトルネックとなっている工程を特定し、状況に応じた対策を講じる必要があります。ここでは、サイクルタイムの短縮に有効な5つの方法について解説します。
作業を標準化する
計測した稼働時間にばらつきがある場合、作業者によって手順や作業内容が異なっている可能性があります。誰が行っても同じ時間、同じ品質で作業できるように業務内容を見直しましょう。
そのために取り組みたいのが、作業手順書の作成です。作業の手順や内容、使用する道具などを文章化し、写真や図を交えてわかりやすくまとめます。
作業手順書を作成したら、作業者が手順書通りに作業できているか、時間にばらつきが生じていないかを定期的に確認しましょう。手順書と現状のずれを都度修正していくことで、標準化の精度が高まります。
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5Sを徹底する
5Sとは整理、整頓、清掃、清潔、しつけの5つの頭文字をとった活動です。5Sを意識して作業環境を整えると、設備トラブルや作業ミスを防止でき、作業効率を高められます。
サイクルタイムが長い原因は、作業工程そのものにあるとは限りません。工程間での製品や部品の移動、工具の準備に時間がかかっているケースもあります。
不要な資材を撤去して工場内を整理したり、工具や部品の置き場所を工夫して取り出しやすくしたりすると、作業中の無駄な動きを減らせます。数秒の差ではありますが、小さな改善の積み重ねがサイクルタイムの短縮につながります。
工程を最適化する
作業工程にムリ、ムダ、ムラがないかを見直し、非効率な箇所を洗い出しましょう。不要な作業を省いたり手順をシンプルにしたりして工程を最適化すると、作業時間が短縮され、ボトルネックを解消できます。
改善策を検討する際に役立つのが、ECRSの原則です。ECRSの原則とは、以下の4つの視点から業務を見直す手法です。
Eliminate(排除):不要な工程や作業を省く
Combine(結合):複数の工程を一つにまとめる
Rearrange(入れ替え):順序や担当を入れ替える
Simplify(簡素化):手順や工程を簡単にする
たとえば、製造工程と検査工程の場所が離れており移動時間が発生している場合、入れ替えの考え方をもとに各工程の配置を見直すと、移動時間を短縮できます。
また、複数の工具を使っていた部品の取り付け作業を、専用工具を導入してワンステップで完了できるようにすると、作業が簡素化され生産性が高まります。
作業者のスキルを向上させる
作業者のスキルが不足していると、作業に時間がかかるだけでなく、人為的ミスによる手戻りが発生し、サイクルタイムが長くなります。作業効率を高め、ミスを削減するために、教育や研修を通じてスキル向上に努めましょう。
また、一人の作業者が複数の工程を担当できる多能工化を目指すことも有効です。特定の人にしかできない作業がある場合、その人に負荷が集中し、疲労による作業スピードの低下やミスが起きやすくなります。さらに、その作業者が不在の際にラインが止まるリスクもあります。
スキルを高めて多能工化を進めると、特定の作業者への依存が減り、サイクルタイムが安定しやすくなります。
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作業の自動化を進める
機械やAIを導入して作業を自動化すると、常に同じ速度で作業が行われるようになり、サイクルタイムのばらつきを削減できます。
また、人為的ミスが減ることで手戻りが少なくなり、サイクルタイムが安定します。人間の作業速度が追いつかず生産の遅れをまねいている工程を自動化すれば、処理速度が上がり、ボトルネックの解消が期待できます。
ただし、機械やAIの導入には初期費用やランニングコスト、メンテナンス費用がかかります。導入前に、投資に見合う改善効果が見込めるかを十分に検討しましょう。
サイクルタイムを把握して、改善の糸口を見つけよう
サイクルタイムは、製造現場の生産能力を数値で把握するための指標です。サイクルタイムを改善すると、生産性や顧客満足度を高められます。
まずは現状の把握に取り組みましょう。稼働時間にばらつきが見られる場合は、作業の標準化や自動化、作業者のスキルの向上を試みます。ボトルネックが見つかれば、5Sの徹底や工程の最適化を図ります。
サイクルタイムの改善は一度で完結するものではありません。計測や分析、改善を繰り返し、現場の生産性を高めましょう。
サイクルタイムを改善するために、まずは何をどのくらい精算しているのかを把握することから始めませんか?記録や承認を一元管理できる「カミナシ レポート」。帳票のデジタル化に成功した企業の事例や、現場DX・デジタル化の進め方をまとめた資料集は以下からダウンロード可能です。是非ご覧ください。


























