製造業にとって生産性向上は、少ない資源で効率的に製造量を増やし、顧客満足度の向上や売上アップにつなげる上で重要な取り組みの一つです。しかし、多くの企業では従業員の人手不足や長時間労働、作業ミスやムダの発生などの課題により、継続的に生産性を上げられない状態が続いています。
企業の生産性を上げるには、まず現場が抱える課題を特定し、正しい手順に沿って改善策を検討・実行する必要があります。原因が曖昧なまま生産性向上の取り組みを進めても、作業スピードや従業員にかかる業務負担は改善されず、効率的に製品の供給量を増やせません。
そこで本記事では、製造業で生産性向上に取り組むべき理由や生産性低下が起こる原因、解決策、生産性向上の取り組みに成功した企業の事例を解説します。
製造業において生産データを活用する方法をまとめた資料は、以下からダウンロード可能です。記録のための記録ではなく、データを使って業務改善するための「資産」にするための方法をまとめているので、併せてご活用ください。

目次- 製造業における生産性向上とは
- 製造業で生産性向上に取り組むべきだと言われる理由
- 1.人手不足問題に対応するため
- 2.コスト削減による利益増大が期待されるため
- 3.企業としての競争力を強化できるため
- 4.品質の安定化につながるため
- 製造業の現場で生産性低下が起こる原因
- 1.マニュアル不徹底によるヒューマンエラー
- 2.部門間のコミュニケーション不足
- 3.非効率的な管理体制によるムダの発生
- 4.従業員教育を行う人材や時間の不足
- 製造業で生産性向上の取り組みを進める手順
- 1.生産性向上の目的を明確にする
- 2.重点的に取り組む課題を洗い出す
- 3.課題解決に向けた改善策を検討する
- 4.数値目標を設定し、改善策を実行する
- 製造業における生産性向上に有効な最新技術
- ロボット
- IoT
- AI
- 帳票やマニュアルの電子化システム
- 製造業における生産性向上の取り組みに成功した企業の事例
- 30種類の紙帳票をデジタル化、年間50日分の業務時間を削減
- 紙帳票のペーパーレス化で製造工程のトレースを実現
- 製造業における生産性向上の意義を理解し、限られた資源でより多くの製品を生み出そう
製造業における生産性向上とは
製造業における生産性向上とは、ヒト・モノ・カネなど限られた資源で多くの成果を得るために、業務改善や管理体制の見直しを行う取り組みの一つです。製品を生み出すために投じる労働力や時間、資本に対する製造量や利益が多いほど生産性が高いといえます。
生産性向上を目指す企業では従業員数や作業時間、原材料を必要最小限に抑えつつ、より多くの製品を生み出す管理体制を構築しなければなりません。生産性を上げることで製造量の増加やコスト削減はもちろん、作業効率化による従業員の負担軽減や品質の安定化による顧客満足度向上、企業に対する信頼度アップなども期待されます。
製造業における生産性は、以下の計算で数値化が可能です。
生産性 = 製造量(アウトプット)÷労働力、設備、原材料など(インプット)
たとえば、100人の従業員が1ヶ月に10,000個の製品を製造している場合、生産性は10,000個÷100人=100個/人という計算で割り出せます。従業員1人あたり1ヶ月で100個の製品を生み出す計算です。
生産性の高さを表す指標には、労働生産性と付加価値生産性の2種類があり、上記の計算式を活用することで測定できます。2つの生産性の意味や計算式を下の表にまとめました。
なお、付加価値とは企業が新しく生み出した金銭的な価値のことで、売上高から原材料費や外注加工費、機械修繕費などを引いた金額で表します。
生産性の指標 | 意味 | 計算式 |
|---|---|---|
労働生産性 | 従業員1人あたりまたは労働1時間あたりでどれだけの成果を出したのかを表す指標 | ・製造量÷従業員数 |
付加価値生産性 | 製造工程で企業独自の価値をいかに効率良く生み出したのかを表す指標 | ・付加価値額÷従業員数 |
生産性を表す指標と意味、計算式
社内で生産性向上の取り組みを進める際は数値目標を設定し、どの指標をどれだけ高めるのか明確にすると、客観的・定量的に分析した現場の課題に基づく具体的な解決策を検討でき、スムーズに業務内容や管理体制を改善して生産性向上につなげられます。
製造業で生産性向上に取り組むべきだと言われる理由
製造業で生産性向上に取り組むべきだと言われる理由は、以下の4つが挙げられます。生産性を継続的に上げることで品質向上や利益増大につながるのはもちろん、製造業の大きな課題である人手不足の深刻化や国際競争力の低下への対応も可能になります。
人手不足問題に対応するため
コスト削減による利益増大が期待されるため
企業としての競争力を強化できるため
品質の安定化につながるため
生産性向上の重要性を理解し、目的意識を持って取り組みを進めることが管理体制の見直しや業務改善の効果を高める上で大切です。
1.人手不足問題に対応するため
製造業で生産性向上に取り組むべきだと言われるのは、作業効率化を図ることで深刻化している人手不足に対応するためです。現在の日本は少子高齢化が進んでおり、製造業に限らず幅広い業界で企業の人手不足が問題視されています。
経済産業省の「2024年版ものづくり白書」では、製造業における若年就業者(34歳以下)数が2003年から2023年の20年間で102万人減少している一方、高齢就業者(65歳以上)数は30万人増加していることが明らかになりました。

画像引用元:2024年版ものづくり白書 第2章 就業動向と人材確保・育成|経済産業省

画像引用元:2024年版ものづくり白書 第2章 就業動向と人材確保・育成|経済産業省
人手不足を解消するには新たな人材の確保が必要ですが、若年層の人口減少が進む中、採用コストをかけて従業員を増やすのは厳しい状況にあるといえます。そこで、限られた資源で製造量を増やす生産性向上の取り組みを行えば、少ない人数でも円滑な業務の遂行が可能になり、作業負担の軽減や労働時間の短縮も実現できます。
その結果、人手不足でも安定した経営状態を維持し、顧客ニーズに応える製品を継続的に提供することで企業としての成長も見込めます。
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2.コスト削減による利益増大が期待されるため
製造業における生産性向上は、原材料や在庫管理などのコスト削減によって、利益増大が期待されるため、重視されています。
生産性向上の取り組みでは、現場の稼働状況や管理体制を見直し、さまざまな角度から徹底的にムダを排除して効率化を図ります。その結果、発注・作業ミスによるムダな材料使用や時間ロス、機械の長時間稼働によるエネルギーコストなどが削減され、少ない資源で多くの製品を提供できます。
コストを最小限に抑えて製造量を増やせば、同じ価格の製品を提供しても得られる利益が大きくなり、経営の安定化や新規事業への成長投資も可能です。製造量が増えることで突発的な受注への迅速な対応も可能になれば、新規顧客の獲得やビジネスチャンスの拡大などの成果も期待できます。
3.企業としての競争力を強化できるため
製造業が生産性向上に取り組むべきだと言われる理由としては、企業としての競争力を強化できることも挙げられます。生産性を上げるためにムダな作業やコストを削減した分、他者との差別化を図る価格設定が可能になる上、良質な製品の安定的な提供で顧客の信頼度も増すためです。
たとえば、製造業で多く使われる紙の帳票を電子化すると、点検・記録作業の効率化によって記録漏れや記入ミス、不良品の発生リスクが軽減し、製品の品質を高い水準で維持できます。在庫をリアルタイムで可視化できる仕組みを整えれば、過剰在庫や欠品を防ぎ、原材料のムダや生産ラインの停止リスクも最小限に抑えられます。
近年は海外企業の競争力が高まっており、公益財団法人 日本生産性本部の調査「労働生産性の国際比較2024」では、製造業を含む日本全体の労働生産性がOECD加盟38カ国中29位と、諸外国に比べて低いことが明らかになりました。
今後も顧客ニーズに応える製品提供によって売上を伸ばすには、国内だけでなく世界各国の製造業者にも対抗できる競争力が必要であり、企業独自の価値を生み出す生産性向上の取り組みが重要だといえます。
4.品質の安定化につながるため
生産性向上の取り組みでは、マニュアルの見直しによる業務標準化やITツールの導入など、社内全体の作業レベルを高める施策を行うため、結果的に品質の安定化が可能になります。
たとえば、マニュアルの内容や運用方法の改善によって、経験値やスキルを問わず全従業員が正しい手順に沿って作業できると、品質のバラツキや不良品の発生リスクが軽減され、顧客も安心して製品を手に取れます。
ロボットやAIの活用も生産性を上げつつ、常に同じ作業スピード・レベルで安定した品質の製品を顧客に提供する方法の一つです。
業務標準化や作業レベル向上の取り組みを進め、製品の品質を一定以上の水準に保てば、顧客や取引先からの信頼度が向上し、結果として企業イメージやブランド価値の上昇につなげられます。
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製造業の現場で生産性低下が起こる原因
製造業の現場で生産性低下が起こる背景は企業によって異なりますが、主な原因としては以下の4つが挙げられます。製造工程における問題点だけでなく、従業員同士のコミュニケーションや社内の教育体制も生産性低下を招く要因の一つです。
マニュアル不徹底によるヒューマンエラー
部門間のコミュニケーション不足
非効率的な管理体制によるムダの発生
従業員教育を行う人材や時間の不足
実際に現場を見たり従業員の意見を聞いたりしながら、生産性低下につながる根本的な原因を把握しましょう。
1.マニュアル不徹底によるヒューマンエラー
生産性が低下する原因としては、マニュアルの不徹底によるヒューマンエラーが挙げられます。マニュアルの内容が曖昧だったり、従業員に正しい作業手順が伝わらなかったりすると機械操作や部品の取り付けなどでミスが起こりやすくなり、生産性が低下するだけでなく、労働災害、不良品の発生や顧客からのクレームに発展する可能性もあります。
たとえば、マニュアルの定期的な見直しや改善が行われず、常に最新の状態を維持できなければ、作業中にトラブルが発生しても従業員は解決策がわからず、他の工程にも影響が出て生産ラインが上手く稼働しなくなります。
他にも、部品の組み立てに関する説明がマニュアルにないため不良品が増える、古いマニュアルに沿った設備メンテナンスで機械が故障するなどの問題が発生するリスクもあります。
従業員によるミスが常態化すると、良質な製品の確保が難しくなるだけでなく、顧客離れや売上低下にもつながるため、生産性向上のためにはエラーが生じやすい工程を特定し、正しい手順に沿って作業できる仕組みを整える必要があります。
ヒューマンエラー対策をまとめた資料は以下からダウンロードできます。ミスを起こさない仕組みはもちろん、ミスに対する考え方や、ミスが発生してしまったときの対応まで網羅しています。ぜひご覧ください。

2.部門間のコミュニケーション不足
部門間のコミュニケーション不足も、製造業で生産性低下が起こる原因の一つです。部門間のコミュニケーションが不足しているために情報共有が遅れると、トラブル時の対応が遅れたり、作業のやり直しや製品・材料の廃棄が発生したりして生産性が低下します。
たとえば、営業部門が取引先から「予定よりも早めに納品してほしい」という要望に応じたものの、それを現場の従業員に伝え忘れると、スケジュールが間に合わず、企業としての信頼を下げる可能性があります。
また、現場の従業員が不具合の発生に気づいても、それを管理者に伝えられなければ、不良品の増加につながり、企業の売上に悪影響を及ぼすかもしれません。
製造業では製品の完成までに多様な部門が関わっているため、社内サイトの積極的な活用やチャットツールの導入など、従業員同士が円滑なコミュニケーションを図る施策の実行が求められます。
円滑なコミュニケーションを取るなら、外国人従業員を雇用している企業では、自動翻訳付きのチャットを使ったり、連絡を見たかまでを確認したい場合は、既読機能付きのツールを選んだりするなど、目的に合致したものを選択するとよいでしょう。

多言語対応、既読付きチャットツールでメッセージをやり取りしている例
3.非効率的な管理体制によるムダの発生
製造工程の管理体制が非効率なために、作り過ぎや在庫切れなどのムダが発生して生産性低下につながっている場合もあります。非効率な管理体制では現場の進捗状況や在庫数を正確に把握できず、過去の受注データから将来的な受注量を見立てる需要予測に基づく最適な生産計画を立てられないためです。
需要予測を誤って製造量が過剰に増えると、在庫を管理する倉庫が圧迫されて大きな保管コストがかかる上、在庫廃棄によって利益が減る可能性もあります。
在庫状況を正確に把握できなければ、必要な部品が不足して生産ラインが停止し、納期に遅れて大きなビジネスチャンスを逃したり競合他社に顧客を奪われたりするリスクもあります。
生産性向上の取り組みを進める際は、現場の作業効率を上げたりコストを削減したりするだけでなく、管理体制にも目を向けて改善点を探すことが根本的な解決を目指す上では大切です。
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4.従業員教育を行う人材や時間の不足
人手不足が進行している製造業では、多くの企業が従業員教育を行う人材・時間を十分に確保できず、業務に必要なスキルを伸ばせないために生産性低下を招いています。
人手不足に陥ると、多くの企業は教育・研修の時間を削りがちです。しかし、従業員のスキルが育たなければ全体の作業レベルが向上しないだけでなく、業務の属人化も起こりやすくなり、特定の従業員が不在のときに生産ラインが停滞する可能性があります。
たとえば、新人の従業員が業務に関する適切な指導を受けられないと、作業中のミスが多発して不良品や顧客からのクレームが増加し、受注数の減少や売上低下などにつながります。
適切な指導が受けられないために従業員が働きにくさを感じ、離職者が増えるとさらに人手不足が深刻化し、効率化を進めても業務を回せなくなるかもしれません。
不十分な教育体制は生産性の低下だけでなく、従業員の満足度低下や離職率の上昇にもつながるため、生産性向上のためには限られた人材・時間で効率的に従業員教育を行う取り組みも必要となります。
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製造業で生産性向上の取り組みを進める手順
製造業の現場で生産性低下が起こる原因を把握できたら、業務の見直し・改善に向けた取り組みを進めましょう。具体的には、以下4つの手順で生産性向上の施策を実行します。
生産性向上の目的を明確にする
重点的に取り組む課題を洗い出す
課題解決に向けた改善策を検討する
数値目標を設定し、改善策を実行する
取り組みを成功させるには、現場の従業員が混乱しないよう生産性向上の目的や施策の進め方を事前に説明することが大切です。従業員の不安や疑問を丁寧に解消することで、社内一丸となった取り組みが可能になります。
1.生産性向上の目的を明確にする
生産性向上の取り組みを進めるにあたって、まずは何のために業務改善や管理体制の見直しを行うのかを明確にしましょう。最初に目的を明確にしておくと、社内全体で取り組みの方向性を定めやすくなり、効率的に生産性向上を実現できます。
生産性向上の目的として挙げられるのは、利益を増大させることと、顧客満足度を高めること、品質を安定化させることなどが挙げられます。
利益の増大が目的の場合は、原材料の受け入れから出荷までに生じているムダなコストを削減する取り組みを進めることが考えられます。
顧客満足度の向上や品質の安定化を目指すのであれば、業務標準化によって従業員の作業レベルを統一させるなど、人的ミスや不良品の発生を未然に防ぐ取り組みが必要です。
このように、生産性向上の目的を明確にすると何の課題に、どのように着手すれば良いか検討しやすくなるため、生産性低下を起こす根本的な原因の解消が容易になり、結果として製造量の増加や品質向上による売上アップにつなげられます。
2.重点的に取り組む課題を洗い出す
生産性を向上させる目的が明確になったら、次は重点的に取り組むべき課題を洗い出しましょう。現場が抱える課題が曖昧な状態で施策を検討・実行しても、原因に対して適切にアプローチできず、高い効果も期待されないためです。
現場の従業員に意見を求めたり、生産計画や製造工程を見直したりしながらボトルネック(全体の工程の中で最も業務の停滞や生産性低下を招いている部分)を探すことで、取り組むべき課題を整理しやすくなります。
生産性低下につながっている可能性が高く、全体への影響が大きい課題から重点的に取り組むと、短期間での効果も見込めます。労働生産性や付加価値生産性などの指標も使いながら、定量的かつ客観的に現状を分析して現場が抱える課題を整理しましょう。
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3.課題解決に向けた改善策を検討する
生産性低下を起こす原因や取り組むべき課題が明らかになったら、解決に向けて必要な改善策を検討しましょう。課題が複数ある場合は、今すぐに着手するべき課題と継続的な取り組みが必要となる課題に分け、それぞれ優先順位をつけると改善に向けた計画を立てやすくなります。
企業の利益増大を目的に生産性を上げる場合は、作業時間の短縮や在庫状況の最適化、設備の長寿命化など、同じ資源で製造量を増やす取り組みがおすすめです。顧客満足度を高める場合は、短期間で納品したり、進捗状況の可視化で急な変更に対応できたりする体制を構築するなどの施策が有効だといえます。
品質の安定化が目的であれば、従業員にとって見やすくわかりやすいマニュアルを作成し、誰でも同じレベルで作業できる環境を整える方法が挙げられます。
改善策を検討する際は、必要なコストや一定期間内で見込める成果なども想定した上で計画を立てると、予期せぬトラブルや追加費用で社内の取り組みが停滞するリスクを軽減できます。
品質の安定化のためには、標準化が必須。いつでもどこでも、誰でも見れる動画マニュアルを作るための方法やおすすめのツールは、コチラの記事で詳しく解説しています。
▶ あわせて読みたい!動画マニュアルの作り方。撮影・編集時のコツと代表的なツールまとめ
4.数値目標を設定し、改善策を実行する
生産性を上げるために実行する改善策が決まったら、課題をどこまで解消するか目標数値を設定しましょう。目指すべきゴールを数値化すれば現状との差が明確になり、定期的に効果を確かめることで施策の見直し・改善も可能になります。
数値目標の具体例は「原材料廃棄を30%削減」や「1ヶ月における従業員1人あたりの生産量を10%増加」、「不良品率を1.5%から1.0%に改善する」などです。従業員の負担を増やしたりモチベーションを下げたりしないように、一定期間内に達成できる現実的な数値目標を設定しましょう。
改善策を実施する際は、どのような方法で生産性を向上させるのか、新しい機械やツールを導入する場合はどのように操作するのかなど、現場の従業員向けに説明することが定着を図る上で大切です。
従業員の理解と協力を得ながら取り組みを進めることで効果が出やすくなり、短期間で生産性も上がって顧客満足度の向上や企業のイメージアップを実現できます。
製造業における生産性向上に有効な最新技術
製造業における生産性向上の取り組みを進める上で、以下の最新技術を導入すると業務効率化やコスト削減などの効果をさらに高められる可能性があります。
ロボット
IoT
AI
帳票やマニュアルの電子化システム
作業を電子化・自動化することで人的ミスを軽減できるため、不良品の発生防止や品質の安定化にもつなげられます。導入・運用コストを踏まえ、長期的な視点でどれくらいの効果を得られるか検証し、生産性向上を実現させる最新技術を取り入れましょう。
ロボット
精密さを求められる工程や運搬などの重労働でロボットを活用すると、従業員のミスによる不良品の発生リスクを大幅に減らし、高い作業効率を維持しながら一定の製造量を確保できます。
たとえば、小さな部品の取り付け作業をロボットが行えば、人間で起こりがちなスキルの差による品質のバラツキがなくなり、どの製品も同じ完成度で顧客に提供できます。物流ロボットで搬送作業を自動化すると、荷物の積み下ろしに要する従業員の負担が軽減される上、迅速かつ正確に荷物を運搬することで製造工程全体の作業効率化も可能です。
導入・運用コストはかかるものの、作業時間の短縮やヒューマンエラーの削減をしながら一定の製造量を確保できるなど、長期的に見ると高い費用対効果を得られます。その結果、良質な製品の提供で顧客満足度が向上し、売上アップや競争力の強化も見込めます。
IoT
製造業の生産性向上に役立つ最新技術としては、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)もあります。製造業におけるIoTとは、工場内の設備をインターネットにつなげることで、生産ラインを可視化したり機械の異常検知をしたりする技術のことです。
人間だけでは見落としがちな設備不良や工程上の問題を早期発見し、ダウンタイムや不良品の発生を未然に防ぐことで高い生産性を維持できます。
IoTの活用方法としては、機械の稼働実績データの自動収集ツールによって手書きの記録・集計作業を削減、AIカメラと連携させた画像認識による機械判定で加工食品の外観検査を自動化するなどがあります。
IoTを活用すると、点検・記録など毎日行わなければならない作業にかかる時間を短縮でき、記録漏れや誤記入による不良品やムダなコストの発生リスクも最小限に抑えられます。その結果、限られた労働力やコストで多くの製品を生み出す生産活動が可能になり、品質の安定化や利益増大にもつなげられます。
AI
AIはロボットやIoTなど、他の最新技術と連携させながら活用することで高い効果が期待できます。AIの活用によって作業負担を軽減し、効率化を図ったり現場の人手不足に対応したりするのはもちろん、データ分析や学習機能によって管理体制の強化も実現可能です。
具体的には、過去の受注データから正確な需要予測を行い生産計画を最適化する、設備・機械の故障データから不具合が発生しやすい要因や傾向を学習し、将来的な故障リスクやタイミングを予測する、AIロボットの導入で原材料の形状や性質に合わせた作業を行うなどの活用方法があります。
AIを活用すれば、適切な在庫管理や生産計画によって原材料や作業のムダが大幅に減少し、機械の故障や不良品の発生によるコストを最大限に抑えて生産性を高められます。
帳票やマニュアルの電子化システム
紙の帳票やマニュアルの電子化システムは、金属や食品加工など分野を問わず多くの企業で取り入れやすい最新技術の一つです。帳票やマニュアルを電子化すると、点検・記録や各工程における作業負担が軽減されるため、従業員は業務改善やスキルアップなど生産性向上に必要な業務に注力でき、効率的に多くの製品を生み出せます。
また、帳票を電子化するとスマートフォンやタブレット端末を使った点検作業が可能になるため、記録漏れや記入ミスが起こりにくくなり、品質のバラツキや不良品の発生も防げます。点検時に異常を発見した場合もリアルタイムで報告すれば、生産ラインの停止や品質低下を防ぎ、顧客満足度の向上につながる製品を提供できます。
従業員にかかる作業負担だけでなく、電子化によって紙の印刷・保管にかかるコストも削減できると、結果的に生産性向上を実現し、他社と差別化を図る価格設定や品質の維持が可能になって売上アップにつなげられます。
電子帳票システムやマニュアル作成ツールを用いて、現場DXを実現した企業の事例を30以上掲載した資料は、以下から無料でダウンロード可能です。是非ご覧ください。

製造業における生産性向上の取り組みに成功した企業の事例
製造業における生産性向上に有効な最新技術の中でも、多くの企業で取り入れやすい帳票・マニュアルの電子化システムを活用した事例を紹介します。いずれの企業も紙帳票を電子化することで、業務時間や作業ミスの削減による生産性向上を実現しました。
30種類の紙帳票をデジタル化、年間50日分の業務時間を削減
紙帳票のペーパーレス化で製造工程のトレースを実現
電子化システムを導入した場合の使用イメージを膨らませ、自社の目的や現場の実態に合ったツールを選ぶ際の参考にしましょう。
30種類の紙帳票をデジタル化、年間50日分の業務時間を削減
京都府亀岡市を拠点に産業用乾燥機を設計・製造している株式会社CTI(2024年に中央技建工業株式会社より社名変更)では、製品の検査や設備点検など、さまざまな業務を紙の帳票で行うアナログな業務体制が定着しており、業務効率化だけでなく品質面における課題も抱えていました。

画像引用元:2030年を見据えたペーパーレス化と従業員の意識改革を推進|株式会社カミナシ
毎日積み重なる紙の帳票は保管・処理するのに多大な手間がかかり、紛失や誤廃棄などのリスクもあったため、同社では2022年からデジタルツールの導入に着手しました。ペーパーレス化を推進する中で決まったのが、帳票の電子化システムであるカミナシ レポートの活用です。
導入時、カミナシ レポートの効果について、現場で働く従業員の多くは疑念を抱いていました。しかし、導入を進める過程で紙の帳票の印刷・提出が不要になることや、検査結果を写真撮影して報告できることに利便性を感じてからは、システムの定着が加速していきました。
現在、同社では可搬ポンプや脚立、高所作業用工具などの月次点検に加え、製品の社内研修や日報、安全パトロールの記録など、さまざまな帳票がカミナシによって電子化されています。その結果、検査表などの作成時間は1種類あたり平均20分削減され、年間では50日分の業務時間削減に成功しました。
今後もカミナシの活用によって電子化をさらに加速させ、2030年までには完全ペーパーレス化を実現する予定です。
事例を読む!2030年を見据えたペーパーレス化と従業員の意識改革を推進
紙帳票のペーパーレス化で製造工程のトレースを実現
徳島県の洋菓子メーカーである株式会社イルローザでは、異物混入など商品の問題が発生したときに製造工程や原材料をトレースする仕組みがなかったため、原因の特定に時間がかかる課題を抱えていました。

画像引用元:あきらめず目指した品質管理の向上、カミナシ導入で製造工程のトレースも実現|株式会社カミナシ
現場には管理用の紙帳票が膨大にあり、取引先から「製造現場に紙はできるだけ持ち込まないほうがいい」という声も上がっていたため、紙の削減に向けた具体的な手立てを講じる必要がありました。
そこで現場の大きな課題だったトレースを実現でき、紙帳票も大幅に減らせる電子化システムである「カミナシ レポート」の導入を決めました。
導入当初は従来のやり方に慣れた従業員から歓迎されなかったものの、現場で利用している紙帳票と似た雛形がカミナシには用意されていたため、それを反映させることで従業員への定着を図っていきました。
また、現場の定着が進まないときはカミナシのカスタマーサクセス担当者に来てもらい、関係者全員で電子化の目的を共有しながら改めて方向性を明確化することで、最後まで粘り強く取り組みを続けました。
その結果、同社では2023年6〜7月にかけ、製造ラインで使っていた紙帳票をカミナシ レポートへの移行を完遂し、焼きオーブンの温度と焼成時間を画像に残すことでチェック時に起こりがちな抜け漏れの解消に成功しています。
清掃状態も写真で残せる上、同じ画面で業務の記録や振り返りができるため、管理業務にかかる負担も大幅に軽減されました。
製造機械の点検についても、見本画像や問題発生時の対処方法をシステム内で確認できるため、誰でも同じ品質での作業が可能になり、生産性向上にも寄与しています。
事例を読む!あきらめず目指した品質管理の向上、カミナシ導入で製造工程のトレースも実現
製造業における生産性向上の意義を理解し、限られた資源でより多くの製品を生み出そう
製造業にとって生産性向上は、労働力やコストを最小限に抑えながらより多くの製品を生み出し、顧客満足度向上や売上アップにつなげる上で重要な取り組みです。生産性を向上させるためには、視察や聞き取りを行いながら根本的な原因を把握し、計画的に改善策を実行する必要があります。
取り組みを進める際は、生産性向上の目的を明確にし、従業員の理解や協力を得ながら確実に定着を図りましょう。ロボットやAI、電子化システムなどの最新技術も活用することで、生産性向上の効果をさらに高められる可能性があります。
本記事をもとに、製造業における生産性向上の意義を理解し、限られた資源でより多くの製品を生み出す管理体制を構築しましょう。























