未然防止型QCストーリーとは、問題が起きる前にリスクを特定し、根本的な原因を特定して具体的な対策を図る方法です。製造現場での品質不良や現場トラブルは、発生後の対応では遅い場合があります。
トラブルの程度によっては企業の信頼を大きく損なう可能性もあり、リスクを未然に防ぐ対策が重要です。しかし、いざ未然防止型QCストーリーを活用しようと思ったときに、具体的な進め方や対策が分からず悩む方も多いかと思います。
本記事では、未然防止型QCストーリーを活用したい方に向けて、課題達成型や問題解決型など、他のQCストーリーとの違いや具体的な進め方を分かりやすくまとめています。
未然防止型QCストーリーは、製造現場で課題となりやすい品質の維持や業務の標準化に活用できます。ミスやトラブルが起きる前に先手を打った対策をするためにも、ぜひご覧ください。
QCストーリーの進め方を具体的に解説した資料は、以下から無料でダウンロードできます。ぜひ参考にしてください。

目次未然防止型QCストーリーとは
未然防止型QCストーリーとは、問題が起きる前にリスクを特定し、根本的な原因を特定して具体的な対策を図る方法です。製造業の現場で事故やミスが発生すると、関係者はトラブル処理に時間と労力を費やさなければなりません。
未然防止型QCストーリーでは、下記の8つのステップに沿って取り組みます。リスクを事前に予測し、具体的な対策を講じることで、重大なミスや事故の発生を未然に防ぐことを目的としています。
ステップ1:リスクテーマを選定する
ステップ2:現状把握と目標設定する
ステップ3:活動計画を策定する
ステップ4:改善機会を発見する
ステップ5:対策案を作成して計画的に実施する
ステップ6:効果を検証する
ステップ7:標準化と管理の定着に取り組む
例えば、食品工場では異物混入が大きな問題になります。現在は異物混入が起きていなくても、混入する可能性を見据えて、未然防止型QCストーリーに取り組みます。他にも、以下のような課題の対策に活用することが可能です。
食品工場の異物混入を防ぎたい
加工ミスや品質のバラつきを抑えたい
不良品によるクレームを防止したい
オペレーターの操作ミスによるトラブルを防ぎたい
未然防止活動は、品質管理の基本です。未然防止型QCストーリーを活用することで、トラブルや事故が起きる前に具体的な対策を講じる体制を整えられます。
未然防止型QCストーリーと他の型との使い分け
QCストーリーには主に4つの種類があり、それぞれ目的や特徴が異なります。未然防止型QCストーリーはまだ顕在化していないリスクを扱う手法であるため、他の型とは改善の対象が異なります。
ここでは、未然防止型QCストーリーと代表的な3つの型(問題解決型と施策実行型、課題達成型)との違いを整理しました。
QCストーリーの型 | 概要 | 改善の対象 |
|---|---|---|
未然防止型 | 未発生のリスクに対して具体的な対策を実施して問題の発生を防ぐ方法 | ・起こりそうなミス、トラブル |
問題解決型 | 既に発生している問題の原因を分析して改善することであるべき姿(標準の状態)を目指す方法 | ・既に発生している重大問題 |
施策実行型 | 問題解決型のQCストーリーの一部で原因が明確な問題に対して迅速にアクションを起こす方法 | ・原因が明確でスピード感のある改善が求められる問題 |
課題達成型 | 達成したい目標を目指して改革、改善をする方法 | ・理想に近づくための改善 |
QCストーリーの概要は、下記の記事で詳しく解説しています。
▶ 【図解あり】QCストーリーとは?3つの型と進め方をわかりやすく解説
問題解決型QCストーリーとの違い
問題解決型QCストーリーと未然防止型QCストーリーは、問題に対応するタイミングが違います。
問題解決型QCストーリーは、すでに発生している問題を対象に、その原因を分析し、再発防止のための対策をする方法です。そのため、対象となるのは、すでに発生している問題です。
例えば、製品の不良率が高いという課題がある場合、その原因を明らかにし、不良を減らすための改善策を講じます。すでに問題が顕在化している場面で効果を発揮します。

問題解決型QCストーリーのイメージ
一方、未然防止型QCストーリーは、まだ発生していない潜在的な問題に対して、リスクを事前に予測し、先回りして対策を講じる方法です。この場合、対象となるのは、まだ発生していない問題です。
例えば、現時点では不良率が低いものの、今後の工程変更や設備の老朽化によって不良が増える懸念がある場合、そのリスクを見越して予防的な対策を検討します。
このように、すでに起きた問題への対応か、将来起こり得る問題への備えかによって、QCストーリーの選択が異なります。
問題解決型QCストーリーについては、下記の記事で詳しく解説しています。
▶ 問題解決型QCストーリーとは?課題達成型との違いや進め方、ポイントを紹介
施策実行型QCストーリーとの違い
施策実行型QCストーリーと未然防止型QCストーリーは、既に原因が判明している問題にすぐに手を打つか、将来のリスクに備えるかの点で違いがあります。
施策実行型のQCストーリーは、問題解決型のQCストーリーの一部に位置づけられます。問題が発生して、かつ原因が明確で迅速な対処を重視する場合に使用します。そのため、既に発生している問題が対象です。
例えば、生産ラインで不良の原因が検査装置のセンサー不良と特定されている場合に、迅速な解決策を模索します。
一方、未然防止型QCストーリーはまだ起きていない問題に、予防策を講じる方法です。この場合、まだ起きていない問題が対象です。例えば、センサー不適合の可能性を先読みして、複数のセンサーを準備しておくなどが該当します。
このように、施策実行型QCストーリーは既に発生している問題をいち早く解決したい場合に、未然防止型QCストーリーは今後起こり得る問題の対策をしたい場合に使います。
課題達成型QCストーリーとの違い
課題達成型QCストーリーと未然防止型QCストーリーには、理想を目指すのか、既に起きている問題を解決するのかの対象とする問題の違いがあります。
課題達成型QCストーリーは、現状に大きな問題はないものの改良の余地がある場合に使われる手法です。課題の攻め所(改善の余地)を見つけ、目標を定め、今までとは異なる方法でありたい姿(理想の状態)を目指して取り組みます。
例えば、不良率が4~5%の許容範囲で安定している場合でも、さらに品質を高めるために不良率を3%まで下げる目標を設定し、達成に向けて改善を進めるケースが該当します。

課題達成型QCストーリーのイメージ
一方で、未然防止型QCストーリーは、将来起こり得るリスクをあらかじめ予測し、それを防ぐための対策をする手法です。
現状では問題が見えていなくても、工程の変化や人的ミスなどによって起こり得る問題に備えて、先手を打つことを目的としています。
このように、課題達成型QCストーリーは理想を追求するための積極的な改善活動に適しており、未然防止型QCストーリーはリスクの予防を目的とする対策に適しています。
課題達成型QCストーリーについては、下記の記事で詳しく解説しています。
▶ 課題達成型QCストーリーとは?攻め所や方策立案などの具体的な進め方を紹介
業界別のQCストーリーの進め方やQCストーリーの型を分かりやすくまとめた無料のホワイトペーパーもご用意しています。QC活動の推進にお役立てください。

未然防止型QCストーリーに取り組む必要性
未然防止型QCストーリーを活用すると、起こり得るリスクに対して事前に対策ができます。製造業の現場では、起きたトラブルに一時的に対応するだけでは、問題が繰り返し発生する可能性が高く、根本的な解決が求められます。
しかし、現場では、クレーム対応や目先の問題に追われてしまい、将来起こり得るリスクへの対応が後回しになりがちです。
そこで、未然防止型QCストーリーを活用して、組織全体で起こり得るリスクを防ぐ体制を整えることが重要です。未然防止型QCストーリーの取り組みによってミスを起こさない仕組みを構築できれば、品質の向上が見込めます。
事前にリスクを知ることで現場レベルでの危機感も高まり、リスク感度の高い組織文化の醸成にもつながるでしょう。
製造業で欠かせない未然防止の考え方は、下記の記事で詳しく解説しています。
▶ 未然防止とは?考え方や再発防止との違い、QCストーリー視点での対策方法を紹介
未然防止型QCストーリーの進め方
ここからは、未然防止型QCストーリーの進め方を8つのステップに沿って解説します。未然防止型QCストーリーを含む、すべてのQCストーリーでテーマの選定から対策の実施、振り返りや改善をステップにわけて実施することが推奨されています。
ステップ1:リスクテーマを選定する
ステップ2:現状把握と目標設定する
ステップ3:活動計画を策定する
ステップ4:改善機会を発見する
ステップ5:対策案を作成して計画的に実施する
ステップ6:効果を検証する
ステップ7:標準化と管理の定着に取り組む
1.リスクテーマを選定する
まずは、現場の問題を洗い出してリスクテーマを選定します。漠然と選定するのではなく、現場で起こりうる具体的なリスクを洗い出した上で、取り組むテーマを決めます。
未然防止型QCストーリーでは、下記の2つが重要なポイントになります。
過去の失敗やヒヤリハットから起こり得るリスクを抽出する
リスクの兆候や初期症状を整理してスコア化する
ポイント1:過去の失敗やヒヤリハットから起こり得るリスクを抽出する
現場で起こり得るリスクを洗い出すときは、過去の失敗やヒヤリハットを参考にします。
抽出方法 | 概要 | 例 |
|---|---|---|
過去の失敗 | 実際に社員が体験した過去の失敗のこと | ・業務の引継ぎを忘れて工程が滞った |
ヒヤリハット | 重大な事故や災害に直結しそうな出来事 | ・手袋をしたまま旋盤を操作した |
過去の失敗は、社員が実際に体験した失敗のことです。過去の小さな失敗の中に大きなトラブルに発展する予兆や、重大な事故を引き起こすリスクが潜んでいる可能性があります。現場でのヒアリングやアンケート調査などをして、丁寧にリスクを洗い出すといいでしょう。
ヒヤリハットとは、重大な事故や災害に直結しそうな出来事です。例えば、散乱していた工具に躓いて転びそうになったなどが該当します。
ヒヤリハットの報告書や事例を保管している場合は1つずつ確認して、起こり得るリスクの傾向を把握します。
ヒヤリハットについては、下記の記事で詳しく解説しています。
▶ヒヤリハットとは?業界別事例や報告書の書き方、事故を防ぐための取り組みを紹介
ポイント2:リスクの兆候や初期症状を整理してスコア化する
過去の失敗やヒヤリハットから見えてきた、起こり得るリスクを整理します。下記のように、起こり得るリスクを一覧にしてまとめます。
老朽化しているシステムの故障
作業手順書の未更新による操作ミス
工具の取り間違え
設計変更の情報伝達ミス
フォークリフトの操作ミス
起こり得るリスクを整理できたら、取り組むべきテーマを決めるために優先順位をつけます。優先度をつけるときに有効なのが、リスクをスコア化する方法です。
下記のように、リスクの兆候や起こりやすさ、影響の大きさなどを基準にして、それぞれのリスクに点数をつけて評価します。
リスクの兆候 | 出現頻度 | 影響 | 優先度 |
|---|---|---|---|
工具の取り間違え | 高(4) | 中(3) | 高(7) |
作業手順書の未更新による操作ミス | 中(3) | 高(4) | 高(7) |
フォークリフトの操作ミス | 低(2) | 高(4) | 中(6) |
リスクをスコア化する例
また、テーマの抽象度が高いと具体的な対策を検討しにくいため、できる限り具体化しておくことがポイントです。例えば、フォークリフトの操作ミスであれば、走行前のフォークの爪の下げ忘れやバック時の後方確認忘れなど、具体的なシーンを決めます。
リスクをスコア化する際は、リスクアセスメントシートが役に立ちます。記入するだけで、改善すべき作業の優先度がわかるテンプレートは、以下の記事で配布しています。
▶ 【テンプレ+記入例あり】リスクアセスメントの書き方とは?実施手順もわかりやすく解説
2.現状把握と目標設定する
未然防止型QCストーリーのテーマが決まったら、次に現状把握と目標設定をします。作業の流れや使用する設備、関わる人員や過去の実績などを総合的に確認し、どこに潜在的なリスクが潜んでいるのかを洗い出しましょう。ここでは、現状把握と目標設定で押さえたい2つのポイントを紹介します。
リスクの兆候がある部分を重点的に洗い出す
具体的な目標を設定する
ポイント1:リスクの兆候がある部分を重点的に洗い出す
現状を理解できていないと的確な対策を実施できないため、初めにリスクの予兆がある部分を重点的に洗い出します。
下記のように管理不良や技術不良、ヒューマンエラーなど多角的な視点から調査をしましょう。
現状把握の調査内容 | 例 |
|---|---|
管理不足 | ・品質基準が明確になっていない |
ヒューマンエラー | ・手順を飛ばして作業している |
設備トラブル | ・設備が老朽化している |
知識不足 | ・接着剤の硬化時間を知らずに出荷している |
スキル不足 | ・はんだ付けのスキルに差がある |
現状把握の調査内容と例
リスクの予兆を見つけるときは、三現主義(現場、現物、現実)に基づき、現場に足を運び起こり得るリスクを確認します。
例えば、フォークリフトの操作ミスを未然に防ぐテーマの場合は、現場に足を運び操作の状況や周辺環境を確認します。操縦者にも話を聞いて、リスクの予兆となる現状を正しく理解します。
三現主義については、下記の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。
▶ トヨタが掲げている三現主義とは何か?重要な理由や五現主義について
ポイント2:具体的な目標を設定する
目標が抽象的だと未然防止型QCストーリーの成果を可視化しにくいため、下記のようにリスクを防ぐ対象と期間、達成基準の3つを具体化します。
リスクを防ぐ対象 | 組み立てライン第2工程の部品AとBの取り付けミス |
|---|---|
期間 | 3ヶ月間 |
達成基準 | 部品取り付けミスを0件 |
目標設定の例
防ぎたいミスによって、一度の未然防止型QCストーリーの取り組みでは、解決が難しいこともあります。無理に高い目標を設定するのではなく、段階的に目標を設定することがポイントです。
例えば、組み立てライン第2工程全体のミス防止にいきなり取り組むと、ハードルが上がる可能性があります。まずは、部品AとBの取り付けミス防止に対象を絞ることで、現場の実行力やモチベーションを保ちやすくなります。
3.活動計画を策定する
目標設定が完了したら、未然防止型QCストーリーを推進する具体的な活動計画を立てていきます。計画は実行可能な内容であることを前提として、日常業務と並行できるか確認します。
対策を検討するだけで終わったり、責任の所在があやふやになったりしないよう、担当者や実施内容、スケジュールなどをあらかじめ決めておきましょう。
担当者の専門性を考慮してメンバーを選定する
ガントチャートで計画を可視化する
ポイント1:担当者の専門性を考慮してメンバーを選定する
未然防止型QCストーリーの計画時には、責任を負うメンバーを明確にすることが大切です。メンバー選出時に役立つのが、RACI(Responsible/Accountable/Consulted/Informed)と呼ばれる概念です。
RACIはプロジェクトマネジメントに必要な責任、役割を明確にする概念で、下記の4つのポジションを明確にするように勧めています。
Responsible(実行責任者) | 未然防止型QCストーリー全体の実行に責任を持つ担当者 |
|---|---|
Accountable(説明責任者) | 現場でのタスクを管理する責任者 |
Consulted(相談先) | タスクを実行するときの相談先 |
Informed(報告先) | 進捗状況の確認、管理をする報告先 |
RACIの4つのポジション
未然防止型QCストーリーでは取り組むリスクに応じて、メンバーの中から専門性を考慮した担当者を選定します。
例えば、設備トラブルの未然防止が目標であれば、説明責任者に設備保全担当者を選定するなどの工夫ができます。各責任者が連携をしつつ円滑に計画を進めるためにも、目標に合うメンバーを意識して集めてみてください。
ポイント2:ガントチャートで計画を可視化する
未然防止型QCストーリーのメンバーが明確になったら、ガントチャートを活用して具体的な計画を立てます。
ガントチャートとは、プロジェクトの工程や進捗状況を横棒グラフで表現して、タスクごとに誰がいつ、何をするのか明確にする手法です。縦軸にタスク、横軸に時系列を記載して、未然防止型QCストーリー全体の計画を可視化します。
ガントチャートを作成したら現実的な計画になっているか、下記のような点をチェックしてみてください。
取り組む内容が正しい時系列で記載できているか
負担のある時間配分になっていないか
漏れているタスクはないか
また、未然防止型QCストーリーの計画はメンバーで話し合いながら全員が納得するスケジュールに仕上げましょう。

4.改善機会を発見する
具体的な計画が明確になったら、目標を達成するための改善機会を発見します。改善機会とは、リスクを未然に防ぐために必要な改善ポイントを見つけることです。
目標に応じた根本的な原因を特定して、リスクを未然に防ぐ対策を立てる材料にしていきます。改善機会を発見するには、下記の2つを実施します。
複雑な工程を理解しやすい形に整理する
FMEAを用いてスコアリングする
ポイント1:複雑な工程を理解しやすい形に整理する
製造業の業務工程は複雑で、潜在的なリスクを発見しにくい傾向があります。そこで、プロセスフロー図や機能ブロック図を用いて、対象となる工程を可視化してみましょう。
プロセスフロー図 | ・業務プロセスやタスクの流れを視覚的に表現する図のこと |
|---|---|
機能ブロック図 | ・製造業で扱うデータやシステムの流れを可視化する図のこと |
複雑な工程を理解しやすい形に整理する方法
例えば、組み立てラインでの部品AとBの取り付けミスを防ぎたい場合は、プロセスフロー図で工程を可視化します。プロセスに無理がないか、ミスにつながるタスクはないかなど、多様な視点から整理します。
同時に機能ブロック図でデータやシステムの流れを可視化すると、今まで把握できていなかったリスクを予測できるでしょう。
また、プロセスフロー図や機能ブロック図だけではリスクを発見しきれない場合は、各工程を一つ一つの細かい作業レベルまで分解して理解します。
ポイント2:FMEAを用いてスコアリングする
改善機会を発見するには工程の整理と併せて、FMEAを用いたスコアリングも実施するといいでしょう。FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)とは、製造ラインで発生する恐れがある問題を事前に見つけ、事前に対策を打つことを目的とした解析手法です。
下記のようなフォーマットに沿ってリスクを洗い出し、重要度と発生度、検出度を掛け合わせてリスクをスコア化(RPN:Risk Priority Number)します。

スコアが100を超える場合は、対策するべきリスクだと捉えられます。例えば、部品の取り間違いのスコアが100を超えている場合は、トラブルが起きる前に対策を講じる必要があると考えられます。
このように、プロセスフロー図や機能ブロック図、FMEAなどを用いて、未然に防ぐべきリスクを客観的に分析するといいでしょう。
FMEAの手順は、下記の記事で詳しく解説しています。
▶ FMEA(故障モード影響度解析)とは?製造業における重要性やFTAとの違いを解説
5.対策案を作成して計画的に実施する
起こり得るリスクを整理できたら、目標達成に向けて具体的な対策案を作成して計画的に実行します。
未然防止型QCストーリーではまだ起きていないリスクに対して対策をするため、1つの対策に絞らず、有効だと思われる対策をなるべく多く出すことが大切です。成果につながる対策を実施するためにも、下記の2つを実施します。
対策事例集や過去の対策をもとに多くの対策案を出す
有効そうな対策案を組み合わせ計画的に実施する
ポイント1:対策事例集や過去の対策をもとに多くの対策案を出す
未然解決型QCストーリーの目標に対して、過去の事例を参照するなど、下記のような有効な対策案を検討します。
過去に実施した失敗防止対策の中で効果があった事例を収集してまとめる
対策事例集やチェックリストから活用できそうな対策をまとめる
現場の声を収集する
多くの対策案が揃ったら、対策分析表を使って有効性のありそうな対策を絞り込みます。例えば、対策案を効果や実現性、コストで分析します。
対策 | 効果 | 実現性 | コスト |
|---|---|---|---|
作業手順を変える | ◎ | ◎ | 〇 |
工具を変更する | 〇 | △ | △ |
チェックリストを作成する | 〇 | ◎ | ◎ |
センサーを設置する | 〇 | 〇 | △ |
工程を見直す | △ | 〇 | 〇 |
上記の場合は、作業手順の変更とチェックリスト作成の2つが、まず実施すべき対策案になります。
ポイント2:有効そうな対策案を組み合わせ計画的に実施する
複数の改善案の中から、有効性の高い対策を組み合わせて最終案を構成します。例えば、組立工程でのミス防止を目標に対策を検討するときは、センサーの設置や工程の見直し、チェックリストの作成などを組み合わせれば、未然にミスを防げる確率が高まるでしょう。
対策案が決まったら、ステップ3で作成した活動計画のスケジュールに沿って、具体的な対策に取り組みます。対策の実施はメンバーが孤立奮闘するのではなく、現場を巻き込むことが大切です。
対策の意図や取り組んで欲しいことを共有して、現場全体でリスクに備える意識を醸成することを心がけます。
具体的な対策としてチェックリストを活用する場合は、下記も参考にしてみてください。
▶ わかりやすいチェックリストの作り方を紹介!業務ミスや記録漏れをなくすための3つの工夫
6.効果を検証する
未然防止型QCストーリーの具体的な対策を実施した後には、効果を検証します。対策によって低減したリスクを明らかにし、計画が有効だったかどうかを事実ベースで判断することが大切です。
万が一期待した効果を得られない場合は、追加の対策を検討する必要があります。ここでは、効果検証のポイントを紹介します。
リスクスコア(RPNなど)の変化を数値で確認する
効果を得られない場合は追加対策を検討する
具体的な対策をして終わりではなく成果につなげるためにも、振り返りが必要です。
ポイント1:リスクスコア(RPNなど)の変化を数値で確認する
未然防止型QCストーリーの成果を測定するときは、改善前と同じ条件で比較をします。RPN(Risk Priority Number:危険優先度)を比較すると、同じ条件で比較できます。
例えば、対策前のRPNが180、対策後のRPNが72だった場合は、対策に一定の成果がありリスクが軽減していると捉えられます。
対策前のRPN | 180 |
|---|---|
対策後のRPN | 72 |
対策前後のRPNの比較例
また、数値化できる有形成果だけではなく、無形成果にも着目しましょう。例えば、リスク管理意識が向上したことや自主的にチェックシートが使用できるようになったなど、現場に起きた好影響も成果として把握します。
ポイント2:効果を得られない場合は追加対策を検討する
リスクを未然に防ぐ対策を実施しても期待した効果が得られなかった場合は、原因を再分析します。改めて現場の状況や関係者の意見を整理して、原因を深掘りしましょう。既存の対策を調整したり、新しい角度から追加対策を立て直したりすることも検討します。
例えば、部品取り付けミスを防ぐためにチェックシートを導入しても効果が出なかった場合は、チェックの形骸化が起きている可能性があります。
対策の内容を見直して、作業が終わったときに写真を撮って記録を残すなど、より確実にチェックできる方法への変更を考えてみましょう。効果が出なかった場合も取り組みを無駄にせず、次の改善に結びつけることが大切です。

7.標準化と管理の定着に取り組む
未然防止型QCストーリーの取り組みで一定の成果が出た場合は、現状を維持できるように標準化と管理の定着に取り組みます。標準化と管理の定着をまとめて、歯止めと呼ぶこともあります。
例えば、フォークリフトの操作ミスを防ぐ対策が一定の成果を出したとしましょう。現状を維持する取り組みをしなければ以前の状態に戻ってしまい、未然にミスを防げない可能性があります。
未然防止型QCストーリーの目的であるミスを未然に防げる状態を維持するためにも、下記の2つを実施します。
予兆の検知ポイントや対策を標準書に組み込む
未然防止策が形骸化しないように現場での定着を促す
ポイント1:予兆の検知ポイントや対策を標準書に組み込む
未然防止型QCストーリーの対策内容は標準書に落とし込み、日々の業務で実践できるようにします。標準書を作成するときは曖昧な表現を避けるなど、下記のポイントを意識します。
追加した工程や作業が分かるようにする
写真やフローチャート、図解を活用してわかりやすく記載する
誰が見ても分かるように1つ1つの工程を丁寧に記載する
異音や異臭、作業者の違和感などの予兆チェックリストを標準書に追加する
標準書の内容をナレッジやマニュアルにも反映させる
例えば、不良品の発生を防ぐために工程が増えた場合は、増えた工程が分かるように作業標準書に記載をします。ミスの予兆となるポイントが分かる場合は各工程に記載をして、意識すべきことを明確にします。
また、標準書は誰が見ても同じように作業ができるように、各工程を丁寧に記載しましょう。誰もが知っているとの前提で説明や手順を省かず、再現性を高めます。
標準書や作業手順書の作成方法は、下記の記事で詳しく解説しています。
▶ SOP(標準作業手順書)とは?マニュアルとの違いや作成方法をわかりやすく解説
▶ 製造業の作業手順書をわかりやすく解説!目的や効果的な作り方とは?
ポイント2:未然防止策が形骸化しないように現場での定着を促す
標準書の作成と併せて、未然防止策が形骸化しないように社内教育と体制管理に取り組みます。
管理の定着の内容 | 例 |
|---|---|
社内教育 | ・作業標準書や教育動画の共有 |
体制管理 | ・対策が正しく実施されているかの確認 |
社内教育や体制管理の具体例
社内教育では、対策によって得られた成果を全員が継続できる状態を目指します。例えば、フォークリフトの安全運転と事故の未然防止をテーマに、研修を実施します。特に発生頻度の高いミスについては、ヒヤリハット映像を共有して、注意喚起と意識づけをします。
体制管理では、危険作業前はチェックリストに沿ってポイントを再確認するなど、現場でミスを未然に防ぐ対策を導入します。
8.振り返りと継続的な改善をする
未然防止型QCストーリーの取り組みを一通り終えたら、全体の振り返りをします。一時的な取り組みで終わらせず、下記の2つを意識してPDCAを回します。
新たな課題が発見された場合は次の活動に組み込む
成功事例や成果を社内外に共有する
ポイント1:新たな課題が発見された場合は次の活動に組み込む
未然防止型QCストーリーの振り返りでは、取り組みの過程で見えたリスクや改善点を話し合います。メンバー全員が率直な意見を言い合える場を用意して、下記のようなポイントを踏まえて振り返ります。
取り組むテーマは合っていたか
改善機会の発見は正しくできていたか
対策時にトラブルや課題はなかったか
取り組みを通じて新たに発見したリスクはないか
例えば、改善機会の発見が不十分だったとの意見が出た場合は、次回のQC活動での分析方法を話し合います。
また、対策時に新たなリスクが見つかった場合は、次回以降扱うテーマとして共有できます。このように、今回の課題を次回に活かせるようにして、QC活動の精度を高めます。
ポイント2:成功事例や成果を社内外に共有する
未然防止型QCストーリーで得た成功事例や成果は、社内外に共有します。未然防止型のQCストーリーはミスやトラブルを起こさないことが成果のため、効果が可視化しにくく周囲に伝わらない可能性があるためです。
例えば、月次報告や社内の情報共有ツールなどで取り組みの過程と成果を伝えると、活動の意義が伝わり共有認識を持ちやすくなります。
また、成功事例を他部署やグループ会社にも展開すれば、組織全体のリスク感度が高まり、より効果的な改善サイクルが生まれます。
未然防止型QCストーリーを活用して、トラブルゼロの現場づくりを目指そう
本記事では、未然防止型QCストーリーの必要性や具体的な進め方について解説しました。
QCストーリーは大きく分けると4つの型がありますが、今後起こり得るリスクを未然に防ぎ品質を維持したい場合は、未然防止型QCストーリーが向いています。
未然防止型QCストーリーなら、事故や品質トラブルが起きる前にリスクを洗い出し、対策ができます。問題解決型QCストーリーでは間に合わない未然のリスクにも先手を打てるため、安定した品質を実現できるでしょう。
ぜひ本記事を、製造業の現場で欠かせないトラブルや事故の未然防止活動にお役立てください。

なお、QCストーリーを含めたQCサークル活動の進め方をまとめた資料を以下のボタンから無料でダウンロードできます。QC活動の推進にお役立てください。






















